IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第59話

俺は今、美女に囲まれている。一夏もだが…事の始まりは終業のホームルームになる。連絡事項を山田先生が告げた後に千冬に変わった。

 

「間もなく学年別トーナメントが開催される。例年ならば個人戦で行われるのだが今年はツーマンセルで行われることになった。理由はより実戦的な経験を積んでもらうためだ。よってペアに希望がある者は申請用紙を渡すので後で私の所に来ること。ペアが見つからなかった者は抽選となる。以上だ。質問のある者は?」

 

千冬が質問者を募るとセシリアが手を挙げた。

 

「なんだ?こむ…オルコット?」

 

千冬…あからさまに嫌な顔をするのは不味いだろ…それと『こむすめ』は不味いよ…

 

「ぐぬ…専用機同士のペアは構いませんか?」

 

「構わん…」

 

妙に納得のいかない顔をしている千冬だがこの理由は後々分かったのだがどうやら俺を一人で出場させたかったらしい。千冬曰く『マツナガは一機でも優勝の可能性があるので不公平である』だそうだ。だが他の教師から『それでは『ツーマンセルの訓練にならない』と言う反対を受けて激論の末に学園長決裁で俺もペア出場になった。これも後日談だが山田先生が千冬を飲みに誘い酔ったところで千冬に理由を聞いたところ『マツナガが他の『小娘共』と一緒に訓練するのが気にくわなかった。私が出れれば私とトウヤで総当たり戦でも優勝したのに』と語っていたそうだ。

 

「他には?」

 

教室内は妙なソワソワ感が漂っていて少しだけ気持ちが悪い…

 

「無ければこれで終わる」

 

ホームルームが終わると同時にほぼ全員が一斉に立ち上がり俺か一夏の席に集まった。更に廊下のドアが破られる音がすると廊下からも 女子達が押し寄せてきた。

 

一組の教室は完全に生徒達で溢れ返ってしまい身動きが取れなくなった。

 

「あの…皆少し落ち着こう…怪我をしてトーナメントに出れなくなったら元も子も無いだろう?一先ず皆戻ってくれ」

 

そう言うと俺の回りにいる女生徒達は戻っていった。だが一夏の方がまだ残っていたので俺が皆に話すと大人しく戻っていった。

 

「トウヤさんすみません…」

 

一夏が謝ってきたので肩を軽く叩くと

 

「仕方ないさ…正直こうなることは予想できた。それでペアになりたい奴はいるのか?」

 

俺の問いかけに教室にいる女子達の会話が止まった。

 

「まて…場所を変えよう。着いてきてくれ」

 

ここで下手に希望を聞かれて騒ぎになっても困る。俺達は教室を出ると生徒会室に向かった。途中で一年生の子達に何度もペアを組んでくれと頼まれたが今はまだ決められないと全て断った。

 

生徒会室に到着すると虚さんが居た。今、ふと疑問に思ったのだがこの人はちゃんと授業には出ているのだろうか?俺がここに来ると必ずいる気がする。

 

「トウヤさんに一夏くん。今日はどうしたのですか?」

 

虚さんがお茶を出してくれたのでお礼を言って学年別トーナメントのペアの件を話すと納得してくれたようだ。

 

「確かに予想の出来る事態でしたね。それで一夏くんは誰か組みたい人はいるのですか?」

 

虚さんが一夏に聞くと一夏は首を少しだけ傾げて

 

「特に組みたい人は…あえて言うならば箒てすかね?近接二人で組むのも可笑しい話ですけど上手くいけば面白い試合になるかなぁと…」

 

ほぉ…面白い事を考えるなぁ。バランスを考えるならばシャルか鈴かセシリアなのに箒を言い出したか…

 

「ふふ…一夏くんは面白いなぁ〜」

 

部屋の入口には楯無が立っていた。

 

「まさか箒ちゃんを選ぶとはね…でもその組み合わせだと優勝狙うなら相当の訓練が必要よ?個人技もそうだけど連携もよ?個人技が出来ても連携が出来なきゃ複数の利点を生かせないわよ?」

 

楯無はそう言いながら会長の席に座った。

 

「そうなんですよね…ただ面白さを考えたらこの組み合わせだなぁと思ったんですよ。俺とのバランスを考えるならばシャルロットか鈴なのかな…ただリンはISの

蓄積ダメージがCを越えたから出場出来ないらしいんです。そしてセシリアは…ちょっと連携に不安が…」

 

「ふっ…くっ…」

 

俺は一夏の評価に笑いが出てしまった。一夏はまだセシリアに苦手意識をもっているのだろうか。

 

「トウヤさん!なんで笑うんですか?」

 

一夏が少し怒った表情になっている。

 

「いや…すまん。一夏がまだセシリアを苦手なのかなぁと思ったら笑いが出ちゃったんだよ。それでセシリアとの連携がなんでダメなんだ?」

 

「まだセシリアには背中を預けられるほどの信頼がお互いに無いかなぁと思いまして」

 

一夏の言う通りだ。ペアを組むのに最も大切な物は信頼だ。俺もナデシコにいた頃のペアでの戦闘には正直苦労した。ナデシコのパイロットは中々アクの強い連中ばかりだった。彼らの援護は大変だった…

 

「そうだな。信頼は一方通行では駄目だからな。一夏がそう思うなら組まない方が良いよ。誰と組もうが結局決めるのは一夏だ。博打に出るのも良いし確実さを求めても良いし」

 

「そうですね…じゃあ箒にします!」

 

一夏の宣言に俺は箒に心の中で拍手を送ってしまった。そして一夏から誘われる箒を想像して笑いが込み上げてくる。

 

「そうか。それじゃあ本番まで徹底的にコンビネーションの訓練をするんだぞ?」

 

「勿論ですよ!それじゃあ俺は箒を誘ってペア申請を出してきます!」

 

一夏はにこにこしながら生徒会室を出ていった。

それを見送り会長の方を見ると会長の表情が真面目な顔になっていた。

 

「会長も思うところが有りますか?」

 

「勿論よ。今回は何が飛び込んで来るのかしらね?見当は?」

 

「正直に言うと予想が当たった場合は最悪てす。エステバリスの5倍近い大きさの機動兵器です。口からはレーザー、胸からはグラビティーブラストと言う重力波を打ち出す大砲、そしてエステバリス並の大きさのロケットパンチ、これが攻撃でエステバリスの物より硬いディストーションフィールド、次が最も懸念の町を…此処ならば島を一つは吹き飛ばせる威力の自爆装置…これらを搭載したテツジン型…これが来たら…どうしたら良いですかね」

 

「なんなの…そのスーパーロボットは…」

 

楯無の眉がハの字になった。

 

「ナデシコでは集団で上下左右からのシールドを破る戦法で撃破していました。ですか今はこれを出来る機体は私の機体しかありません。会長の機体ももしかしたら破れるかも知れませんね。対策は後で案にして提出しておきますよ」

 

「そう…分かったわ。それでトウヤは誰と組むつもりなの?」

 

楯無の真面目な顔は急にニヤニヤし始めた。

 

「そうですねぇ…シャルかセシリアなのでしょうけど片方を選ぶと大変な事になる気がするのですよ。だから最後までペア申請を出さずに抽選にしちゃおうかと。そうすれば公平になりますよね?」

 

「確かにそうね、でも…怒るわよ?あの二人」

 

そこが悩み所なのだ。だけど公平さを求めるならば…

 

「今回は抽選にします。あの二人には話をして理解してもらいます。二人ばかり構っていると不満が出てしまいますからね。副会長としては不味いですしね。学年別トーナメントの成績にはこだわりませんしね。既に企業所属ですし」

 

「そう。そう言ってくれると会長としては助かるわ。正直、不満の声が少しだけ上がっていたのよ。部活、クラス、教師からとね。流石はトウヤ。気配りもなかなかね…」

 

「やっぱり不満が出ていたのですね…」

 

セシリアとシャルに話をしなきゃならないと考えると今から頭が痛い…今週末は千冬と出掛けなきゃと考えながら生徒会室を後にした。

 

「トウヤさん…大丈夫かしら?」

 

「やっぱり少し疲れてる?」

 

「ええ。ここは少し休んで貰わないと今後が…」

 

「分かったわ。二階堂さんに頼んで会社を動かして貰いましょう…」

 

 


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