IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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少し短いです。


第49話

お茶を入れ終え一息付くと話を続けた。

「そして地球連合アジア地区最大手の会社のネルガル重工が一隻の戦艦を建造した。その戦艦が機動戦艦ナデシコであり木連の技術と並ぶ性能を有していた。そのナデシコは火星の生存者と資源の回収を目的として出航し地球連合軍の妨害をはね除けて地球を脱出し火星に到達するが生存者は1人しか救出が出来なかった上に火星で木連に敗北して命からがら脱出した」

シャルが手を挙げた。

「機動戦艦ナデシコって言うのはトウヤさんの乗っていた船だよね?どんな船なの?」

「ナデシコって言うのは今まで地球の舟船に搭載されていなかった相転移エンジンを搭載し、それまで木連の船しか使用出来なかったグラビティーブラストとディストーションフィールドの使用を可能にしたんだ。そしてそのディストーションフィールドを纏った当時最新の人形機動兵器のエステバリスを搭載したこと、それにより事実上地球最強となったんだ。」

「トウヤさんの乗っているのもエステバリスですよね?ではあのバリアーはディストーションフィールドと呼ばれているものなのですか?」

セシリアは首を傾げながら尋ねてくる。

「正直な所分からないんだ。エステバリスがディストーションフィールドを使用できる理由はナデシコから重力波を受けていたからなんだ。そもそもエステバリスには ジェネレーターが搭載されていないんだ。だから今の私の機体がなぜ動くのかも謎なんだ。対外的には篠ノ之博士のお手製となっているが今のところは解析待ちなんだよ。」

俺の発言に二人は目を丸くしている。

「え?じゃあトウヤさんの機体はISじゃない可能性があるってこと?」

シャルはなんとも言い難い表情で言っている。

「そうだな。でも多分ISなんだろうな…」

正直な所根拠はないが…ISのコアが有るのかも分からない。

「まぁその話は置いておこう。どこまで話をしたっけ…そうだ、その後は俺が配属されてからだな。俺がナデシコに乗ったのは月基地だ。ナデシコが補給の為に月基地に寄ったときに木星蜥蜴の正体が暴かれたんだ。これは今日の管制室で話した通りだ。木星蜥蜴は人類であった。その後のナデシコは各地を転戦し木連のチューリップの撃破をしている最中に俺はこの世界に跳ばされたんだ」

「ふぅーん。ナデシコのエステバリス隊は強いの?」

シャルが尋ねてくる。

「エステバリス隊どころかナデシコ自体が凄かった。ナデシコの乗組員は性格はともかく最高の腕を持つ人を集めていた。艦長は連合大学戦略シュミレーション無敗、操舵士は元秘書、副操舵士は現役秘書、オペレーターは凄腕少女、通信士は元声優、整備班長は潜りの凄腕メカニック、調理師はレストランのオーナー兼コック、現役会長のパイロット、地球連合宇宙軍からの引き抜きパイロット。とにかく腕は凄かった。お祭り騒ぎも凄かったけどね」

シャルとセシリアは苦笑いを浮かべている。きっと想像が出来ないのだろう。

「でもとても温かい船だったよ。とにかく人の命を大切にする軍艦じゃない軍艦だったね」

「何だかとても面白そうな船ですわね」

「僕もそう思うよ。何だか乗ってみたい気もするね」

シャルとセシリアがお互いを見合いながら頷いている。

「でも常に最前線だから大変だぞ?但し会戦になると後方に下げられちゃうけどね」

「え?何でですか?」

セシリアだ。

「回りと合わせられないからさ。とにかく勝手に動き出したり独自に行動しちゃうからね。火星から月に脱出した時は寝ぼけて味方を撃っちゃったみたいだし」

「寝ぼけて?」

「味方を撃っちゃった?」

二人が声を揃えて聞き返してきた。誰だってそうなるな。

「そう。敵のど真ん中にワープしてしまって何故か艦内はオペレーター以外が寝てて敵味方を確認せずに発砲、幸い味方に死人が出なかったから良かったもののってね」

「「…………」」

二人は声が出ないようだ。

「まぁ…そんな船なんだよ」

「なんというか…」

「豪快ですわね…」

「写真とか有ったら見せてあげられるんだけど戦闘中だったからみんな部屋に置いてきちゃったんだよな。」

本当に懐かしい。

「仲の良かった人とかいたの?」

シャルとセシリアの目が光っている。一体何なんだ?

「そうだな。整備班長と副操舵士かな?」

「その二人は女性?」

「整備班長は男性でウリバタケ・セイヤさんで確か…30歳ぐらいだったかな?とにかく腕はピカイチだったよ。結構飛行機や戦車とかの話で盛り上がって改造の話で盛り上がったんで仲良くなったんだ。副操舵士はエリナ・キンジョウ・ウォンで20歳でナデシコの建造元のネルガル重工の社長秘書なんだ。私がナデシコに配属されてからは彼女の護衛をしていたからシフトも一緒で仲良くしていたね」

この話をすると二人の目付きが変わった。

「エリナさん…どんなかたさですの?」

セシリアの目付きが怖い…なんだろうな、見たことがあるぞ。この目はヤバイよ。隣のシャルもだ…

「え…そうだな…とにかく向上心が強かったね。いずれは会長になるんだって勉強は欠かして無かったけど…人一倍臆病だったね。きっと競争ばかりで心が弱っていたのかも知れないね。護衛に付いてからは良く話をしたりいっしょに出掛けたりして凄く穏やかな感じになっていたみたいだね」

俺が話を終えると二人はヒソヒソと二人で話をしている。時々頷きなんだか…疎外感が酷い。ヒソヒソ話を終えるとシャルが良い笑顔でしゃべり始めた。

「そっか!エリナさんも大変だったんだね!トウヤは時々エリナさんに怒られたりしたでしょ?」

エリナが大変?何でエリナに怒られたことが解るんだ?

「そうだな…時々怒られたりしたな。時には『刺されるよ!』なんて言われたりしたしな」

シャルとセシリアは頭を抱えてため息をついた…俺は何かをやらかしたのか?

「トウヤさんはきっと気づかないうちに他にも仲良くしていた方がいるのでしょうね。ナデシコに乗って色々な方と話をしてみたいですわ」

 

俺はこのあとは消灯時間までシャルとセシリアに色々とお説教じみたこごとを言われながら過ごした。

 

改めて女性の恐ろしさを痛感した日でもあった。

 

というか色々とあった日だった…疲れた…


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