IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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今回はナデシコの歴史の復習みたいな回になりました。


第48話

デビルエステバリス戦に参加した俺たちはアリーナ内にある管制室に集められている。千冬の『命令』でだ。

管制室には俺らと千冬の他に山田先生だけがいる。

「さてお前達を呼んだのは今回のUnknownとの戦闘についてだ。このUnknownはマツナガが知っている様だがUnknownの説明をするにはマツナガについて話をしなくてはならない。マツナガ、頼めるか?」

千冬が此方に向き直り頷く。俺の正体を話してくれって事だよな?

「分かりました」

みんなの前に出て皆を見る。

「これから話す事は真実です。そしてこのメンバーだけに話をします。そしてこの話を知っているのは織斑先生と山田先生と国際IS委員会の日本支部の二階堂委員と篠ノ之博士だけです。他言無用でお願いします。それが守れないならこの部屋から出ていってください」

一旦話を切るが誰一人として部屋を出ない。それを確認すると話を続ける。

「では話を始めます。単刀直入に言うと私はこの世界の人間ではありません。別の世界から飛ばされた人間です」

この言葉で皆の顔が呆気に取られ。

「私は2176年生まれの地球人で地球連合宇宙軍所属、機動戦艦ナデシコエステバリス隊所属マツナガ・トウヤです。つまり私は別の世界のあなた方から見ると未来人ですね。私はその世界での戦闘中に爆発に巻き込まれるとこの世界に来ていました。そこで織斑先生に助けられたのです」

説明を聞いている皆の顔が困惑や驚きの顔になっている。

「そして今回の戦闘で戦ったUnknownは私達の世界で私達が乗っている機動兵器エステバリスを敵の…木製人の無人機動兵器である『バッタ』が乗っ取った通称『デビルエステバリス』と言うものです。しかし今回のデビルエステバリスはビーム兵器を搭載していたので同一の物かは分かりません。そして何故この世界に現れたのかという事も分かりません。今後も出現するかも分かりません。ひとまずは私の説明は終わります。何か今回の件で質問がある人は?」木製人→木星人

シャルが手を挙げた。頷くと喋り始めた。

「デビルエステバリスと言うのは無人機という事ですよね?」

「その通りです。」

「ではバッタの制御はどうやって行っているのですか?」

「不明です。ですが人工AIという見方が強いです。何らかの方法で基本的な指令を与えてそれに従い行動すると考えられています」

次はセシリアが手を挙げた。

「木星人と言うのは?」

「木星人とは過去に月、火星に入植し独立を求めて追われていった人々です。彼らは木星圏で生活をしていた。つまり元々は地球人でした…」

皆の顔が悲痛なものに変わった。

「元々、私達は機械と戦っていると思っていました、いやそう教わっていました。『木星の方角から切っても切ってもやって来る』と言う意味も込めて『木星蜥蜴』と呼ばれていました。しかしある日その正体が元は地球人だったと分かったのです」

次は鳳が手を挙げて喋り始めた。

「その木連は他にどんな兵器があるの?」

「基本的には無人機です。レーザー駆逐艦のカトンボ級、機動兵器としてオケラ、ゲンゴロウ、カナブン、ヤドカリ他にも無人機は色々と有ります。後は、有人の戦艦やジンタイプの人型機動兵器が有ります」

一夏が手を挙げた。

「それらは強いのですか?」

「今の私達から考えるとジンタイプが二機来たら負けます。彼らは戦闘のプロです。彼らは国力差が100倍以上差があるにも関わらず私達を火星から地球まで追い詰めたのてす。なるべく戦死者を出さないようにしてです。」

皆の顔が青ざめた。

「あくまでジンタイプが現れたらです。一機ならば対処が出来ます。だからそんなに怯えないで良いよ」

みんなは少しは安心したのか笑顔になった。

「他に聞きたい事はあるか?」

シャルが口を開いた。

「マツナガさんは何時かは帰るのですか?」

皆の顔が少しだけ悲しそうな顔になった。

「…帰りたいとは思っている。」

俺も思わず言葉がすぐに出なかった。

「他にはあるか?」

千冬が暗くなった雰囲気を遮るように声をだした。

「なければ今日の事を他言しないという誓約書を書いてもらう。破った場合は聴いた者、喋った者、両者に監視が着くと思え。良いな?」

みんながその言葉に返事をした。

「よし。では山田先生、彼らに誓約書に署名をさせて下さい。マツナガは少し残れ」

「分かりました。では皆さん此方に来てください」

山田先生が皆を引き連れて管制室を出ていった。部屋の中が静かになる。

「トウヤ…今回の件はどう思う?」

「正直訳が分からないですね。あの機体が本当に私の世界の物ならば尚更ですね。考えられるのは私と一緒に飛ばされた…ぐらいですか。ですが私が飛ばされた時の戦闘ではデビルエステバリスはいませんでした」

「そうか…」

千冬は腕を組み考え込んでいる。

「今後も現れると考えた方が良いのでしょうね」

「やはりそう思うか…なんて説明したら良いか…正直に説明したらトウヤの身の上を知らせなくてはいけなくなる。そうすると…」

俺が実験動物になる可能性がある。

「公表…しないで貰えませんか?」

「…そうだな。いざとなったら公表してその時は束に泣きつくか。」

「そうして貰えると助かります。我が儘を言ってすみません」

「いや…私だって気持ちが分かるよ。人間ってものは…」

他人の事や自分とは異なる種族、人種、生物には冷酷になれる。恐らく俺もそれに含まれるだろう。

俺の世界でも同じ人類なのにボソンジャンプの実験を行っていたようだ。

「ありがとう…千冬」

頭を下げると千冬は笑いながら

「お前の為だ。私はお前を手放したりしない。お前は私が守る」

と言い俺も

「俺もだよ。俺も千冬と一夏、手の届く範囲では守って見せる」

と言い返すと俺たちは管制室を出た。

 

 

結局はクラス対抗戦は中止となり後日に一回戦のみはデータ取りの為に行われる事となった。

食堂でこの放送を聴いた時の女子達の落胆ぶりはかなりのものであった。

 

 

「トウヤさん…」

部屋で今回のクラス対抗戦での実戦データを富士見技研向けにまとめていると隣の机で何かをやっていたシャルが話掛けてきた。

「なんだい?」

「トウヤさんの世界ってどんな所なの?未来なんだよね?」

「そうだなぁ…」

シャルに俺の世界の話をしようとしたその時にドアがノックされた。俺がドアを開けるとそこにはセシリアが立っていた。

「セシリア、どうした?」

「こんな時間にお邪魔かとは思いましたがトウヤさんと話をしたくて参りました」

どうやら

シャルと同じで俺の話を聞きたくて来たのかも知れないな。

「いいぞ。入ってくれ。ちょうどシャルにその話をするところだったんだ」

部屋の中に招き入れるとシャルの眉毛が少しだけ動いた。セシリアは手前のベッドに腰を掛けた。

「俺の世界は2195年に木連から火星の侵攻を受けたんだ。当時は火星がテラフォーミングされていて火星に大気が存在していたが人間はドームの中に暮らしていた。木連から侵攻が始まると火星宙域で地球連合宇宙軍との会戦が始まった。その戦いは地球人にとって初の『宇宙人』との戦いとなった。その戦いは地球の大敗北で終わった。その理由は木連側の兵器が技術的に上回っていたからだ。当時の地球連合の兵器はレーザー砲によるか艦隊戦が主であったな木連は機動兵器と重力波砲、グラビティーブラスとディストーションフィールド…つまり空間を歪ませてフィールドを形成し光学兵器を反らす兵器簡単に言えばバリアを使用していた。この戦いで火星は占拠され火星に住んでいた人々は虐殺された。その後地球側は地球まで戦線を押されて地球各所に敵の兵器を送り出す門、チューリップを送り各所で地球は防衛戦を展開する事になる。一先ずがここまでが俺が学んだ歴史。お茶を入れようか」

そう言うとポットを用意しはじめた。お湯が沸くまでは皆は無言で待ち続けた。


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