IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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遅くなりました!




第46話

トーナメントが発表されてトーナメントを見た俺は笑いが出てしまった。まさかの『織斑一夏対鳳鈴音』と書いてあったからだ。まさか喧嘩中の二人が初戦から当たるとは。一夏のくじ運なかなか素晴らしいものがある。

一夏の試合は第二試合で約40分後になる。その間はピットで待つはずなので俺はピットに向かった。

ピットには箒とセシリアがいた。

「トウヤさん!まさかの初戦からリンですよ!」

一夏はピットのベンチに座っていた。すでにISスーツを着ておりいつでも出られる態勢のようだ。

「自分のくじ運の悪さを恨むんだな…」

俺の言葉に箒は頷きセシリアは笑っていた。

「そうなんですが!考えてもしょうがないか」

一夏はモニターに目を移す。モニターでは今現在行われている試合、3組対5組の試合が写し出されている。ラファールが二機で戦っている。お互いにサブマシンガンで移動しながら撃ち合っている。

どちらも

飛びながら撃ち合っているがやはりしっかりとした戦闘を習っていない為俺から見ればメチャクチャだ。お互いのシールドバリアに当たってはいるがそれはお互いに当たりに行っているようなものだ。射撃の為にスピードを緩めた所で被弾をする。

最後は少しだけ被弾の少ない方が有利になり結局は3組が勝った。

 

「よしっ!俺の出番だ!」

 

一夏はベンチから立ち上がるとタキシングスペースで白式を展開する。

「一夏、相手が鳳だからといってペースを乱すなよ。戦いは冷静さを保った方の勝ちだ。むしろ挑発しても良いからな?いいか?」

「おう!ペースを掴む…飲まれるな…飲んでやれ…」

一夏は緊張した面持ちでカタパルトに向かった。カタパルトに脚の固定が終わると一夏は箒に顔を向けると

「行ってくる」

と言い、箒は心配そうな表情から笑顔になると

「ああ!勝ってこい!」

と返していた。

鳳には申し訳ないがなかなかの良い雰囲気だな。セシリアの方を見るとセシリアも同じ事を思っていたのか慈愛に満ちた顔をしている。

「白式!出ます!」

そう一夏が言うとカタパルトが動き出して白式がアリーナへと飛んでいった。

 

俺達はピットから一番近い観客席行くとすでに観客席は大歓声が始まっていた。なんせ世界で初の男性操縦者と代表候補生との試合だ。これは世界初の出来事でもある。盛り上らない訳がない。

俺達はシャルが確保していてくれた席に座った。俺の右側にセシリアで左側にはシャルだ。

「織斑君はどうだった?落ち着いてた?取り敢えずモニターを観てる感じだと落ちついてはいるみたいだね」

シャルが俺に一夏の様子を尋ねてくる。

「落ちついてはいたが試合が始まってから雰囲気に呑まれなきゃ良いが…公式戦はこれが初だからな。初陣は大抵ガチガチになるもんだ」

懐かしい…思い出したくもない初陣…

「そうだね…僕もガチガチになったな」

「私もそうでしたわ。思ったような動きが出来ませんでした…」

シャルもセシリアも渋い顔をしていた。

「大丈夫だ…俺の初陣は悲惨だった。緊張から動けず、被弾して…死ぬかと思って…漏らしたわ…整備員に笑われて…自分で掃除して…洗濯して…部隊で笑われるんだぞ!!」

 

 

俺の初陣は地球近海の遭遇戦だった。連合宇宙軍の巡察部隊でエステバリス運用の為に改造された巡洋艦『ルピナス』のエステバリス隊に配属されて最初の任務だった。連合宇宙軍内ではまだまだエステバリスが流行っておらず巡察部隊も機動部隊もまだ創設されて半年しか経っていなかった。しかも3機編成の小隊が2個の6機だけだった。随伴艦も駆逐艦が2隻で機動部隊は搭載していなかった。

巡察を開始して8時間後に1機のバッタに遭遇して俺逹の第一小隊に出撃命令が出た。俺は新米だったので当然3番機で2機のバックアップとなった。バッタが1機だったこともあり楽勝ムードで出ると、バッタが逃げ出したので小隊で追いかけ始めた。するとどこからかバッタが集まり始め、あっという間に30機近くに包囲されてしまった。第二小隊にも出撃命令は出ていたが追撃をしていたため母艦からの距離が開いていた。1番機と2番機がオフェンスで俺がバックアップ。この形で対処すれば上手くいく予定だったが俺が恐怖と緊張から思うような動きが出来ず2番機が損傷してしまい結局は撤退…第二小隊が対処して戦闘は終了となった。

 

 

セシリアとシャルは俺の話を顔を赤くしている。

「俺の場合は命のやり取りだからどうしても恐怖が生まれてしまう。恐怖には打ち勝たなきゃいけないが忘れてはいけない。忘れたら大抵は死ぬ。二人とも無いに越したことはないが覚えておいてくれな?」

二人は頷き「はい!」と返事をしてくれた。

アリーナの方では一夏と鳳が言い合いしている。

「あんたねぇ!何で謝れないのよ!」

「俺はわるくねぇ!」

「そういう時は男が謝るのが普通でしょ!?」

「知るかよ!何で悪くも無いのに謝らなきゃいけないんだよ!大体リンが洗濯板なのは事実じゃねーか!」

…わぉ!!一夏の挑発?は凄いね…試合後のカバーが大変そうだな。

「…ろす!」

「はぁ?聞こえねーよ!」

「コロスって言ってんのよ!」

 

ここで試合開始のブザーが鳴った。

先に仕掛けたのは一夏だ。雪片弐型を呼び出して鳳へと突撃する。鳳も蒼天花月を呼び出して

一夏と鍔迫り合いになった。パワーは甲龍の方が勝っており鍔迫り合いは甲龍が押しきり白式が弾き飛ばされた。そこへ甲龍が追撃をかけるが白式がフェイントを下に入れてから上昇し少しだけ距離を稼ぐことに成功した。

「一夏!逃げんじゃないわよ!」

「うるせー!」

観客席に一夏と鳳の声が響き渡る。

白式を甲龍が追い掛ける形となりアリーナ内を高速で二機が飛び回る。速度性能は白式の方が勝っているが狭いアリーナ内では性能を十分には発揮できない。白式は左右に動き回りながら飛んでいるが突然何かに弾き飛ばされて地面に墜落しを転がり回った。

何が起きたのか…

「今のが衝撃砲なのかな!?見えなかったけど白式の弾かれた方向から考えると甲龍から放たれたと考えるべきだよね?」

シャルは背もたれから背中を浮かせてモニターから目を離さずに此方に話を振ってきた。俺もモニターから目を離さずに考えてみるが状況的に甲龍以外考えられない。そんなことを考えていると白式が再び吹き飛ばされた。

今ので分かった!一夏が吹き飛ぶ直前に甲龍の両肩のアンロックユニットの回りの空間が歪みが生まれ一夏が吹きとぷとその歪みが消えた。

「間違いない!あれが衝撃砲だ!」

なんとも使い勝手の良い武装なんだ!銃身もなく射角も広く砲弾も見えない。かなり理想的な射撃武装だ。

火薬式だと音と発火炎などが発生して大抵は位置などがばれてしまう。それが起きないのはかなりのメリットだ。

甲龍が起き上がった白式に対し衝撃砲を連射している。白式は左右にランダムに動き回りなんとか狙いを定めさせないようにしている。これはセシリアとの訓練の賜物だ。

その避ける動きを使いながら少しずつ甲龍との距離を縮めていく。そして甲龍との間合いが後少しで一夏の間合いになると言うところで甲龍が後方へと下がる。

「さすが代表候補生だな。間合いの取るタイミングが上手かった。さぁ一夏…どうする。相手は箒とセシリアを足して割ったような相手だぞ…」

一人で言葉を口にしてみたが回りには歓声のせいで聞こえてはいないようだ。

一夏は鳳を中心に上下に軌道を変えながら時計回りに回り始めた。甲龍は衝撃砲を時々撃つが当たらない。そしていつの間にか鳳は一ヶ所に留まる様になっている。

「そうか…相手の周りを回る事で一ヶ所に留まるように誘導したのか。なかなか上手いな」

一夏は時々円の軌道を少し変えて鳳に単発の攻撃を加えては離れそしてまた攻撃を加えるという行動を繰り返している。

…そうか!イグニッションブーストのタイミングを伺っているのか!

 

 

試合は動き始めている。

 

 

 

 

 

 

 


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