IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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混沌のクラス対抗戦の章
第40話


11時間程で飛行機は日本に到着し車で移動中だ既に外は真っ暗で車の交通量は少ない。学園には小一時間で到着した。

駐車場に車が停まると俺とシャルは車を降りる。

「二階堂さん。どうもありがとう御座いました」

後部座席の窓から顔を出している二階堂さんにお礼を言うと二階堂さんは首を横に振る。

「今回の件は君が成し遂げた事なのだよ。私はあくまでも切っ掛けを作ったに過ぎない。シャルロット君を救ったのは紛れもなく君だ。何か困ったことがあったらいつでも連絡をくれたまえ。出来る限りの力になろう。では次はクラス対抗戦に来るからその時になまた会おう」

そう言うと窓が閉まると車は動き出した。

俺とシャルは寮へと歩き出した。

後ろを歩いているシャルはキョロキョロと物珍しそうに建物を見回している。既に消灯間近の学園は外を歩いている生徒はいない。寮の建物だけが灯りが煌々と点いている。

「IS学園は大きいんだね。なんだか学校じゃないみたいだよ」

シャルは溜め息をつきながら語っている。

「そうだな。日本と言う国が世界の代表として作った機関だからじゃないのかな」

威信だとかの話なのだろう。

俺たちは寮に入りエレベーターで10階に上がり部屋を目指す。廊下を歩いていると向こうから黒髪のツインテールの背が小さめの女の子が走ってくる。表情は俯き気味だったのでよく分からなかったがきっといい表情では無かったのだろう。すれ違うと少しだけ背中を見送ったがまた部屋に向けて歩き始めた。

自分の部屋に着くとシャルは目を輝かせていた。

「ここが部屋だ1027号室だよ」

中にはいるとシャルが「おじゃまします」と言ったのが少しだけ微笑んでしまった。

中は出たときと殆ど変わらない部屋があった…はずだがベッドの様子が何かが違う。妙に綺麗になりすぎている気がする。

「それじゃあベッドは奥を使ってくれ。シャンプーやボディソープもシャワー室の備え付け使って構わない。っとその前に寮長に挨拶に行こうか」

俺はお土産のお菓子を持つとシャルもお菓子を持ち部屋を出た。

 

 

寮長室、千冬の部屋の前に着きノックをすると直ぐに千冬は出てきた。

「ト…マツナガ、よく戻ったな」

千冬はジャージ姿だったが腕を組んだ姿は相変わらず格好良い。

「はい。ただいま戻りました。これはフランスのお土産です。小さいのが織斑先生に、大きいのは職員室の皆さんで召し上がって下さい。それと…」

少しだけ下がるとシャルの背中を優しく押す。少し前に出たシャルは頭を少し下げて挨拶を始めた。

「初めまして。シャルロット・デュノアです。この度はご迷惑を御掛けして申し訳ありませんでした。これから宜しくお願いします」

千冬は少しだけ驚いた顔をしたがまた普段の表情に戻ると

「織斑千冬だ。お前の担任であり1学年寮の寮長でもある。宜しく頼むぞ。楽しい学園生活にするんだぞ」

そう言ってウィンクをしめ微笑んだ。

それを見たシャルは涙を浮かべて笑って

「はいっ!」

と返事をした。

「では、デュノアはマツナガと同室だ。明日は入学の模擬戦を行うので朝一で職員室に訪ねて来てくれ。その時に制服を渡す。いいな?」

千冬が明日の事を言うとシャルは頷いた。

「よし。ではもう消灯時間だが二人は一時間の延長を許可するのでシャワーを浴びて寝ろよ?」

「分かりました。では失礼します。おやすみなさい」

「あぁ、おやすみ」

俺達は千冬の部屋を後にした。

 

部屋に戻りシャワーを浴びると二人ともベッドにもぐり込んだ。

「マツナガさん」

部屋の灯りを消すとシャルが呼び掛けてきた。

「なんだ?」

俺は視線を移さずに返事をした。

「僕のためにフランスまで来てくれてありがとう。さっきの二階堂さんの言葉を聞いたときは凄く嬉しかったよ」

シャルはどんな顔をしているか分からないがきっと嬉しそうな顔をしているのだろう。

「いいよ」

俺はそれだけ言うと疲れていたのか意識が遠くなっていくのを感じ意識を手放した。

「僕は決めたんだ。僕はマツナガさんと……」

何か言っているみたいだったが聞こえていなかった…

 

 

 

『トウヤはどう思う?』

『ん?どっちだって良いと思うけど?』

『何よそれ!私は絶対にアオイ君を押すわ!』

『うーん…確かにアオイ君は優秀なのだろうけど…正直覇気がないって言うか完全に補佐とか参謀タイプだよね?

艦長にはなれるけど艦隊司令は無理って言うね』

『そうなのよね…そこが否定出来ない所なのよ…』

『きっとアオイ君なら安定した生活になるんだろうな。宇宙軍一番の有名なカップル、夫婦になるだろうね。でも妻の方が上だけど』

『やっぱりそう思う?そうなるわよね。じゃあ!私達は…?』

『俺達?会長秘書と護衛』

『…馬鹿ーー!』

『………』

 

 

 

 

目覚ましが鳴り洗面をしてジャージに着替える。今日からまたランニングを始める。いつも通り半周したところで柔軟体操をして部屋に戻る。

部屋に戻るとシャルはまだ寝ていたが起こさずに先にシャワーを浴びてしまう。

シャワーを浴びて着替えた所でシャルを起こす。

「シャル、シャル、起きろ。朝だぞ」

布団の裾から見える足を叩くと体をビクつかせて目を開ける。

「…マツナガさん…おはよう…」

シャルは目を半分閉じた状態だ。

「顔を洗っておいで。食事に行くよ」

そう言って俺は今日の授業の準備を始める。今日は座学のみだ。

それと今日からは銃をショルダーホルスターに仕舞う。シャルはが襲われたので念のためだ。

準備が整うとお土産を二つ持って廊下に出ると1024号室の扉をノックする。すると箒が出てきた。

「おはよう、箒」

「あ!マツナガさん。お帰りなさい。昨日戻ったのですか?」

「そうだよ。昨日の消灯前にね。それでこれは二人にお土産だよ。食べてくれ」

そう言ってからフランスで買ったお菓子を渡すと箒は喜んで受け取った。

「ありがとうございます。この後一緒に朝食に行きませんか?」

「OK。それじゃあ準備が出来たら私の部屋に来てくれ。あ、それと今日から一人人数が増えるんで宜しくな」

箒は不思議そうな顔をしている。

「どういう事ですか?」

「多分なんだが明日紹介される転校生がいるんだよ。その子も一緒に行くから」

「転校生ですか。分かりました。一夏にも伝えておきます」

そう言うと部屋の中に戻って行った。

俺も部屋に戻るとシャルは着替えを終えて机の椅子に座っていた。

「マツナガさん何処かに行ってたんですか?」

「隣の一夏達に土産を渡しに行ってたんだ。朝食は彼らと行くからな」

シャルは笑顔で頷く。

「うん、わかった

「それと今更だが私の事はトウヤで良いぞ?皆からトウヤって呼ばれているからな」

「うん。分かった。宜しくねトウヤ」

そう言ったシャルだが急にモジモジしはじめた。シャルはなかなか不思議な子なんだな。

その後に色々と学園の事を話しているうちにドアがノックされたのでシャルを連れて表に出ると一夏と箒と何故かセシリアまでいた。

「トウヤさんお帰りなさい!フランスはどうでした?」

「トウヤさん、お帰りなさいまし。私はお帰りを首を長くして待っておりましたわ」

一夏とセシリアは笑顔で迎えてくれた。

「ただいま。急に出掛けてしまって済まなかったな。皆に紹介するな。恐らく明日にクラスへ紹介されるとは思うが、フランスからやって来たシャルロット・デュノアさんだ。」

俺が紹介するとシャルは頭を下げると自己紹介を始めた

「シャルロット・デュノアです。フランスから来ました」

シャルロットの紹介にセシリアが口を開いた。

「デュノアってラファールのデュノアですの?」

「はい。僕は社長の親族です。もしかしてあなたはイギリス代表候補生のセシリア・オルコットさんじゃないですか?」

シャルの応答にセシリアは顔を明るくした。

「あら、あなたは私を知っていますの?」

「はい。何回か欧州の演習や展覧会であなたの顔を見たことがあります。貴族で代表候補生は凄いなぁと思っていました。正に貴族のかくある姿だと思っています」

シャルは落ち着いた口調でそう話すとセシリアはシャルの手を取り握手をした。

「ありがとうございます。私はそれを目指して頑張って来ました。これから仲良くやっていきましょう!」

 

セシリアの言葉を聞くとシャルはセシリアに抱き着いた。そしてセシリアの耳元で何かを言うと急にセシリアの顔が強ばった。そして二人は視線を交えて火花を飛ばし始めた。一体何が起きたんだか。

「取り合えず朝食に行こうか。時間が無くなるぞ。」

 

俺達5人は食堂に向かった。

 

 

 

シャル「仲良くはするけどトウヤの事は譲らないから覚悟しておいてね。貴族様」

 

 


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