IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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遅くなりました。仕事の日も頑張って投稿してましたが残業で出来ませんでした。
何とか帰りの電車から投下!

追記:お気に入り400件over!ありがとうございます!


第37話

 話が纏まると全員で車で10分ほど走ったホテルで昼食を採る事となった。案内された食堂のような場所は質素な作りで歴史を感じさせる作りだ。席に案内されると俺の席はシャルロットの隣になった。アドルフ社長がウエイターに話をするとワイングラスが運ばれてきた。どうやら社長二人と二階堂さんはワインを飲むようだ。ウエイターが皆にワインを注いでいるが俺とシャルロットは水をお願いした。

社長連中は契約条件の話をしているみたいだが俺は蚊帳の外だ。シャルロットも水をちびちび飲みながら大人しく座っている。

 

「なあ、シャルロットさん」

 

シャルロットを呼ぶとビックリしたのか体をビクッとさせてこっちを向いた。

 

「な、にゃにかな?ぼきゅのことはシャルロットって呼んでよ」

噛んだ。

シャルロットは顔を真っ赤にしている。

 

「いや、大したことじゃないんだが日本にお土産として喜ばれるフランスのお菓子ってあるかな?」

 

俺の質問にキョトンとした後、シャルロットはくすくすと笑って聞き返してきた。

 

「相手は女性?それとも男性?」

 

「両方だよ。シャルロットがこれからお世話になる、1年の先生と生徒会長と後はもう一人の男性操縦者だよ」

シャルロットは俺の言葉に少しだけホッとしたようだった。なぜかは分からないけど。

 

「ああ、織斑一夏君だっけ?彼はどんな人なの?」

「負けず嫌いなお馬鹿だよ」

 

俺の言葉にシャルロットはまたくすくすと笑った。

 

「そっか、お土産ならばパリ市内に良いお店があるから案内するよ。織斑君に会うのが楽しみだね」

 

「そうだな。きっと楽しい学園生活になるだろうな。ところでシャルロットの専用機はラファールリヴァイブ・カスタムだって事だがどんな機体なんだい?」

 

シャルロットの専用機について聞いてみる。

 

「僕の機体は量産機をよりも機動性とバススロットルを増設させた機体なんだよ。特別な能力は無いけど武器が豊富なんだよ」

 

俗に言うエース機ってとこだな。

武器が豊富なのはとても幅広い利点がある。対応できる敵が多くなるし継戦能力もアップする。

 

「それは良いな。完成された第二世代機の方が安心感や使い易さがあるだろうな。兵器は昔からそう言うものだよ」

 

各国の第三世代機は未だ実験機の域を出ない。そのため汎用性が低い。ブルーティアーズが良い例だ。自立制御出来ないビットと実体弾はミサイル2発のみ。バランスを考えたら間違いなく実弾装備をした方が良いはずだ。

 

「そっか。新型が貰えるならそれは楽しみだけどラファールリヴァイブにも愛着があるから少し淋しいかも」

「それもそうだね。練習機ですらそう感じるんだからな」

「練習機?」

「俺は元軍のパイロットだったんだが教育課程の時の訓練機だよ。復座で出力を抑えた機体なんだよ」

 

ナデシコ世界の話だけど。

 

「へぇ~

マツナガさんは軍人だったんですか!?」

 

シャルロットの目が輝いている。本当にこんな目は見られるんだな。

色々話をしているうちに料理が運ばれてきた。

料理を食べながら会話をして食事を進める。料理はとてもおいしかった。

 

昼食が終わると俺とシャルロットは社長達の勧めでパリ市内の観光をする事になった。シャルロットは大喜びで俺の手を握って歩き出しタクシーを拾い凱旋門やエッフェル塔色々と見て回った。途中でシャルロットオススメのお菓子を買ったりほかにも千冬に腕時計を買った。

 

シャルロットに織斑先生に時計を買うと言うと怪訝な顔をしていたがシャルロットにも買ってあげるととても喜んでいた。

 

日が暮れてきたのでホテルに向かってもらい走っている社内でシャルロットは語り始めた。

「マツナガさん、今日はありがとう。とっても楽しかった。マツナガさん達が助けてくれると言ってくれた時は本当に嬉しかったんだ。お母さんとの生活は楽しかった。お母さんが死んじゃった後はお父さんの奥さんに泥棒猫の娘って呼ばれたんだ。そしてとっても辛い生活が始まったんだ。何かある度に罵られて八つ当たりされてお前なんかが居るからだって言われるんだ。本当に辛かった。ある日から急に男として生きろって奥さんに言われてからは次は男扱い。男は弱い生き物だって言い出すし…死にたかった。何度も死のうと思った。でも我慢して良かった。こんな日が来るなんて思ってなかった…ヒック…本当にありがとう…ヒック…マツナガさん!」

シャルロットは泣いて俺に抱きついてきた。

そっと抱きしめて頭を撫でる。

 

「辛かったな。もう大丈夫だよ。俺達といれば心配いらないよ。俺が守るし俺に甘えてもいいよ」

そう言うとシャルロットは頷き泣きやんだようだ。しばらくすると寝てしまったみたい。

 

タクシーはホテルに向かって進み30分程で到着した。ホテルのロータリーで止まりシャルロットを起こすと恥ずかしそうにタクシーを降りた。

俺も荷物を持ってタクシーを降りシャルロットとホテルに向かい歩き始めると横からスーツにサングラスの男が歩いてきた。俺が視線を男にやると男はスーツの中に手を入れて何かを取り出した。

 

銃だ!

 

俺は咄嗟にシャルロットを抱きしめると地面に飛ぶと発砲音が響き俺の脇を弾丸が通り過ぎるヒュン!という音がした。

地面に倒れ込むと俺も銃を取り出し男に向かって発砲した。弾は男の左肩に当たり仰け反る。俺はその隙にしっかりと狙いを定めて右肩を撃った。弾は右肩にあたり男が倒れると男に駆け寄り拘束する。

「誰の指示だ!?」

 

男に聞くが答えない。十中八九社長夫人なのだろう。

ホテルのドアマンに救急車を呼ぶよう指示すると携帯を取り出し二階堂さんを呼び出す。

 

「マツナガ君どうしたのかね?」

「今はホテルのエントランスなのですが襲撃者です。恐らくはシャルロットが狙いではないかと。今は拘束していますが銃撃して両肩に傷を負わせました。警察沙汰にしてしまってよろしいてすか?」

俺の説明を聞くと二階堂さんは少し考えてから

 

「構わない。此方で政府の方から何とかしよう」

「分かりました。シャルロットを帰すのは危険ですのでホテルに泊めるようにします。それと部屋からは出ないで下さい。他に仲間がいる可能性があります。ドアを開けず窓から離れていてください」

「わかった」

二階堂さんに話を終えると通話を切った。

5分程で救急車とパトカーがやってきて男は救急車に乗せられて運ばれて行った。

俺は警察に学園のIDを見せシャルロットの通訳で事情を説明すると警官は驚き何処かに連絡をしていた。

 

シャルロットを警官と一緒に俺の部屋に向かわせると入れ替わりで通訳がやってきて警察署の署長に事の顛末を話すと解放された。

 

 

 

「まさかこんなに早く動くとはな…」

今は二階堂さんと部屋で話をしているが二階堂さんも今回の事が予想外だったらしく驚きを隠せない。いつかは来ると俺も思っていたがまさかこんなに早いとは思っていなかった。単独だったから助かったと思っている。

 

「シャルロット君は明日日本に連れて行こう。デュノアは信用できんな。殺されかねん」

 

二階堂さんの言葉に俺も頷い。

 

「少し早いが構わんだろう。では私は色々と手を回しておくのでシャルロット君に伝えて来てくれ。荷物は…会社は危ないか…」

「そうですね。デュノア社長に言って守って貰うようにした方が…」

会社で待ち伏せている可能性が高い。

 

「そうだな。そう伝えておこう。今夜はシャルロット君と一緒の部屋で過ごしてくれ。彼女も怖いだろう」

「分かりました。では戻ります」

 

俺は二階堂さんの部屋を後にした。自分のへ部屋に入るとシャルロットはベットに座っていてこちらに顔を向けていた。

「大丈夫か?」

声をかけるとシャルロットは小さく頷いた。怖かったのだろう。

「ところであの人はやっぱり…」

シャルロットの言葉に俺は小さく頷いた。

「恐らくは婦人だろう。事前に怪しい情報は上がっていた。けど直ぐには手は打たない。そこでシャルロットは明日、俺たちと一緒に日本に来ることになった」

シャルロットが驚いている。

 

「君の安全のためだ。それと申し訳ないんだけど部屋には戻危険過ぎて戻れないが社長に部屋を守って貰うよう二階堂さんの方から指示が出る。念のため社長と連絡が取れるなら大事な物だけでも預かって貰うよお願いしておくといいよ」

シャルロットの顔は今にも鳴きそうな顔だ。自分の父親の本妻から命を狙われている事が悲しいのだろうか。それとも部屋に戻って大切な物を、持っていけないからか。

俺には分からないが大人の勝手で子供が泣いている。

それだけは現実だ。

 

改めて大人の身勝手さに怒りを覚えた。

 

 

 

 

 


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