IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第36話

 しばらく歓談をしているとエリックと金髪の男性っぽい人、シャルル・デュノアが入ってきた。スーツ姿で金色の髪の毛を後ろで束ねていて長さは背中程まである。確かに中性的だが男性と言うには骨格があまりにも違いすぎる。見る人が見ればばれるだろう。

シャルルはアドルフ社長の隣に立つとアドルフ社長がシャルルを紹介した。

 

「私の息子で世界で3人目のIS操縦者のシャルル・デュノアだ。シャルル、挨拶を」

「シャルル・デュノアです。宜しくお願いします」

 

挨拶をするとお辞儀をする。

 

「やあ…初めまして、私は国際IS委員会の日本支部の二階堂だ。宜しく頼むよ。まさか本当に男性とは…今年は素晴らしい年ですな」

 

二階堂さんが挨拶すると続いて篠田さんが名刺を取り出し

 

「富士見技術研究所の社長、篠田でございます。宜しくお願いします」

 

と名刺を渡した。

シャルルはエリックの隣に座りエリックから経緯を聞いている。何回か頷くと突然驚いた顔をしてまたすぐに戻った。

 

「では面談でしたかな?私は立ち会っても宜しいのそれかな?」

 

アドルフ社長は二階堂さんに尋ねるが二階堂さんは首を横に振り

 

「面談は私と彼とそうだな、私の護衛も立ち会ってもらう。心配はしなくても彼は優秀な護衛だ。秘密を漏らしたりはしない」

 

そういうと他の者は部屋を出て行った。通訳も残ろうとしたが二階堂さんが外で待つように言い渡し部屋から出て行った。どうやって話をするのかと思いきや二階堂さんがフランス語でしゃべり始めた。俺はフランス語が分からないが突然シャルルが日本語をしゃべり始めた。

 

「この程度ですが良いのでしょうか?」

「十分伝わっているよ。さて色々と質問をさせて貰うが構わないね?」

「はい」

 

シャルルの表情が強張った。

 

「まずはなぜこの時期に転入なのだい?会社の方での事情もあるだろうが1人目の男性操縦者が発見されてから二か月はあっただろう?」

 

二階堂さんはシャルルの目を見て質問を投げかけた。

部屋の中は静まっており外の音すら聞こえない。

 

「ISの検査は3月の後半に行われました。そこで僕のIS学園への入学が決まりました」

 

ここら辺の話は設定だな。情報はこちらでも掴んでいる。

 

「そうか。では会社の者から情報の報告の命令は出ているかい?例えば男性操縦者のISの情報を送れとかだ」

 

この質問にシャルルは体を少しだけ強張らせた。受けているのだな。

 

「心配しなくても良い。会社に報告をするのは当然だ。だが過度の情報を送るとそれはスパイ行為になってしますから注意してほしい」

 

その言葉を聞くとしシャルルは首を縦に振った。

 

「一応は報告書は送れと言われています。ですが模擬戦とかの試合を行ったりした場合と言われています」

「そうか。では最後の質問だ」

 

二階堂さんはそう告げるとこちらを少しだけ見た。本命の質問をするらしい。俺は体を少しだけ沈めいつでも動けるようにする。

 

「シャルル君、いや、シャルロット・デュノアこの茶番は君が望んでやることなのかね?それとも誰かに強要されてなのかね?君はこの行いが君の人生を左右する行動だと分かってやっているのか?」

 

二階堂さんの言葉にシャルロットは顔を青くしてさらに体を震わせている。

 

「あ…な…何のことでしょう?わ…僕はシャルル・デュノアですが…」

 

シャルロットは声も小さく言葉を絞り出している。この様子からこの件がばれたときの末路を分かっているのだろう。

二階堂さんは優しい笑顔でシャルロットに話かける。

 

「シャルロット君、心配をしなくていい。我々は君を救いに来たのだよ。そこの護衛は男性操縦者のマツナガ・トウヤ君だ。君の話を聞いて救い出したいと言ってこの提携の話をデュノア社に持ち込んだのだよ。デュノア社に第三世代機の開発に目途が立てば君がこのような真似をしなくて済むであろう?」

 

二階堂さんの話にシャルロットが驚きの顔で俺の方を見る。俺はサングラスを外して

 

「初めましてシャルロット。私がマツナガ・トウヤだ。君の事情は調べさせて貰ったが君は進んでこのようなスパイの真似事などしないだろう?もっと言ってしまえばこのばかげた話を君と社長に持ち込んだのは社長夫人なのだろう?もし君がこのような事をしたくないのであれば私たちの話に乗らないか?」

 

挨拶と事情を説明するとシャルロットは涙を流し始めた。

 

「なんで僕なんかを救ってくれるのですか?僕は生まれて来てはいけない子だったんですよ!?」

 

シャルロットの目から光が消えている。

よっぽどつらい目にあったんだろう。

 

「そんなことないよ。生まれて来てはいけない子なんていないよ。ただ残念な事に子は親を選べない。生まれが少しだけ不幸な子はいるけどね」

 

俺の言葉にシャルロットは少しだけこちらを向いてくれる。

 

「今は辛いだろう。けど少しだけ我慢して幸せを掴む努力をしてみないか?シャルロット君がIS学園で過ごしながら我々の手伝いをしてくれればいいんだ。その間に君の不安材料は私たちと君とで解決しよう」

 

二階堂さんも優しく諭すように話しかける。

シャルロットの瞳に光が戻ってきた。

 

「僕は生きていてもいいんですか?」

 

シャルロットの涙は止まり希望が見えてきたのか少しだけ笑顔になる。

 

「もちろんだ。俺達と一緒に学園に行こう。シャルロットとしてね。そして君の幸せを一緒に勝ち取ろう」

 

俺の言葉にシャルロットは大きく頷いた。

二階堂さんも何度も頷いている。

 

「さて話もまとまった事だしこれからの説明をしよう。この後私が社長とこの件について話をする。私たちの調べで社長はこの件に乗り気ではないと思っているが違うかね?」

 

二階堂さんの言葉にシャルロットは頷く。

 

「そうか。そして社長夫人がこの件を強行させ社長は仕方なく容認した。そうだね?」

 

シャルロットはまた頷いた。

 

「ではひとまずは君は富士見技研に出向という形にさせる。この件は十分にデュノア社にとって生命線を断ち切るスキャンダルになるだろう。それを我々が未然に防いだのだ。これぐらいの条件はのんでもらおう。シャルロット君もその方が安心して生活できるだろう」

 

「ひとまず学園にいれば手出しはできませんからね。それに私が護衛に付きますから何かあっても必ず守ります」

 

俺の言葉にシャルロットは少し赤くなっている。いったいどこに赤くなる要素があったのだろうか。

 

「よし。ではシャルロット君社長たちを呼んできてくれたまえ」

 

シャルロットは部屋から出て行く。

 

「更識君の調べた通りだったね。デュノア社も浅はかだな」

「そうですね。よくばれないと思えますね」

 

俺達はため息をついてしまった。

 

 

しばらくするとアドルフ社長達が戻ってきた。

 

「どうでしたかな私の息子は?」

「そうですね。とても聡明なお嬢さんですな。状況をしっかりわかっておられる」

 

二階堂さんの言葉にアドルフ社長は青くなる。

 

「な…何を仰っていますかな。シャルルは男ですよ?」

「いいえ。シャルロット君はもう白状しましたよ。我々の調査力をおなどってもらっては困りますな」

「……」

 

二階堂さんの言葉にアドルフ社長は黙り込んだ。

 

「デュノア社長、我々はあなた方の無謀な計画を止めにここに来たのです。この富士見技研との提携もあなた方を助ける為の話なのです。そもそも計画が成功すると本気で思っていたのですか?」

 

二階堂さんは黙り込むアドルフ社長の語り掛ける。

 

「デュノア社長、我々は脅迫がしたい訳じゃないんですよ。どうですか我々の話に乗りませんか?」

 

二階堂さんの話にアドルフ社長が顔を上げる。

 

「どのような話ですか?」

「今回の提携の話はこのまま進めデュノア社は第三世代機の開発を推し進める。開発さえ上手くいけばシャルロット君はこんな事をしなくて済むのでしょう」

「その通りです」

「ならばシャルロット君は女性として学園に通わせればよろしい。そして試作した装備やパーツを他国の機体の集まる学園で試験を行えばいいのです。どうです?何も無理をする必要がないでしょう」

 

二階堂さんの言葉が終えるとアドルフ社長の顔は幾分血の気が戻る。

 

「しかし私の妻が…」

「何か問題でもあるのですか?」

「…いえ、おとなしくしているとは思えないのです」

「学園に入ってしまえば問題ないです。我々の方でもシャルロット君の護衛を付けます。護衛は彼です」

 

二階堂さんが俺を指さす。

 

「初めまして、と言うのも変ですが私はマツナガ・トウヤ、IS学園生徒会副会長です。以後お見知りおきを」

 

俺は頭を下げ再び上げるとアドルフ社長が驚いていた。

 

「なんと!彼が世界で二番目の男性操縦者だったのですか!?」

「そうです。彼は護衛の技術を心得ておりまして今回は護衛として着いて来てもらったのですよ。それでシャルロット君の身と学園生活を守るためにも彼女を富士見に出向させます。これは要請ではなく命令です」

 

二階堂さんの言葉にアドルフ社長が頭を下げる。

 

「ぜひそうしてください。娘の為にもそれが一番であると思います。娘をよろしくお願いします」

 

 

 

話はまとまった。アドルフ社長と篠田さんと二階堂さんで握手を交わす。ひとまず何もなくて良かった。

俺はシャルロットを見るとシャルロットはとても良い笑顔を浮かべていた。そして俺と目が合うと少し赤くなってまた笑顔になり頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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