IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第33話

解散の号令がでた後に俺は医務室で腕を縫合してもらい生徒会室に来ている。

「結局は一夏の部屋には何が有ったんだ?」

俺は楯無に尋ねると楯無は苦い顔をして答える。

「爆弾よ。両隣の部屋を軽く吹き飛ばせる程の強力な物よ。タイマー式で22時に爆発するようにセットされていた」

「標的は間違いなく俺と一夏か。そのためなら周りの学生も巻き込むのも厭わないって事か」

また大人の事情で子供が巻き込まれ掛けた。本当に大人と言うのは…

「今は高山先生から背後関係を調べているところよ。あの爆弾は間違いなくプロが絡んでいる。つまり組織が絡んでいる」

そうだな。間違いないな。

「ひとまずは学園内部を洗い直して学園内の安全の確保を最優先にします」

楯無はそう言うと俺の顔を見ると笑った。

「本当にあなたが居て良かった。一夏君だけだと大変な事になっていたかも知れないですしね」

「俺がいたからこの事件が起きたのかも知れないんだぞ?」

「それでもあなたは防いだ。どう?卒業後は更織に来ない?破格で迎えるわ?」

「それはやめておくよ。すまないが俺は平穏な生活が欲しいのだ」

「それは残念ね。でも気が変わったら何時でも言ってね」

楯無の話が終わると俺は生徒会室から出た。腕時計を見ると23時になっていた。早く部屋に戻ろうと歩き始めると向こうから千冬が歩いてきて俺の前で立ち止まると突然抱きついてきた。俺はビックリしたが千冬が震えている事に気づいて抱き締めた。

「大丈夫だよ。もう大丈夫だ」

だが千冬の震えは止まらない。

「一夏も無事だった。心配するな」

きっと心配だったんだな。

「千冬?」

千冬が顔をあげると

「すまない。もう大丈夫だ」

そう言うと千冬は廊下を戻って行った。

一体どうしたんだろうか。

千冬の背中を見つめながら考えるが理由が分からなかった。

部屋に戻りシャワーを浴びてベットに入ったのは0時を回っていた。

大変な一日だった。

 

 

今日も携帯の目覚ましで目が覚めたがいつもより遅い。朝のランニングは先生に止められてはいるので今日は止めておく事にしたからだ。洗面をして制服に着替えて外に出ると一夏と箒がいる。ここ最近の流れだ。そして食堂でセシリアと合流し食事を受け取り席に着き食べ始める。だが今日の朝の話題は昨日の夜の騒動だ。昨日の夜に何があったのか。一応は高山先生の取り押さえた現場の周りの部屋の生徒には箝口令を徹底したらしいが…

ただ高山先生が今日から居ないため高山先生が絡んでいるという話だけは流れてしまうだろう。見た目はいつもと変わらない食堂だが謎の騒動で不安に包まれている。

「結局は昨日の騒動は何だったんだろうな。トウヤさんは昨日の騒動の時に食堂に居なかったけど何か知ってますか?」

一夏の質問に首を振って答える。

「私と別れた後に何処かに行ってらしたのですね?」

「生徒会室で書類を片づけてたよ」

セシリアすまん。これは嘘だ。

「そうでしたか。トウヤさんは多忙なのですね」

箒は黙って食事を続けているが目線はこっちに向いている。俺の左腕だ。左腕は動かすと若干痛みがあるのでできれば使いたくないが仕方がない。

「さっさと食べて教室に行こう。今日は面白い話がHRで聞けるはずだからな」

「そうですわね!楽しみです」

俺とセシリアが同意したのが不思議だったのか一夏と箒が首を傾げている。

俺たちは食事を済ませると教室で予鈴が鳴るまで雑談をして過ごしていた。

本礼が鳴り山田先生が教壇に立つ。

「このクラスのクラス代表は織斑一夏君で決定しました!皆さん拍手!」

クラス皆が拍手で迎えてくれたようだ。

「先生!ちょっとまってください!俺は全試合負けたのに何で俺が選ばれるのですか!?」

一夏は立ち上がって抗議の声を上げてる。

「それは私が辞退したからですわ」

セシリアの声にクラス中がセシリアに向き直った。

「あの試合は搭乗時間や機体への慣熟度を考えますと明らかに私の負けでした。それが一番大きな理由です。それとトウヤさんに織斑さんに出来るだけ経験を積ませたいと相談を受けましたので決断いたしました」

セシリアが話し終えるとクラスの女子から

「さすがセシリア!」

とか

「やっぱり織斑君だよね!」

などの声が上がった。

一夏は周りをキョロキョロして驚きの顔をしている。

そこで千冬も声を挙げた。

「マツナガは生徒会役員となりオルコットが辞退したから自動的に織斑になった。もう変更は認められないのでそのつもりで。腹を括れ織斑」

千冬の言葉でがっくりとうなだれ席に着いた一夏だった。

 

今日の午前はISの実習でアリーナに集まっている。女生徒は旧スクール水着の様なISスーツを着ておりかなり目のやり場に困っている。

ジャージ姿の千冬がやってきた。

「これより授業を始める。今日はIS実習だがまずはISの動きを見て貰う。織斑、オルコット、マツナガ前に出てきてISを装着しろ」

俺たちは前に出てISを展開する。しかし一夏だけは遅れていた。

「織斑!遅いぞ!もっと早く展開できるようになれ」

千冬の厳しい言葉に一夏は若干凹んだ様子である。

「よし。次は武装を展開しろ!」

三人は言われたとおり武装を展開する。俺はラピッドライフルをセシリアはスターライトmkⅢをそして一夏は遅れて雪片弐型を展開した。

「織斑!熟練した者ならもっと早く展開できるぞ!精進しろよ?それとオルコット!その構え方は直せ。何を狙うつもりだ?」

オルコットの片手で展開するスタイルが良くなかったのか注意を受けていたがセシリアは

「これは私が展開するイメージに必要な…」

と言い訳をしていたが千冬の

「直せと言っている」

の一言で大人しく従っていた。千冬に逆らうとはなかなか勇気のある行動ではないかセシリア君!私には真似ができる事ではないな。

「次は飛行を行って貰う。三人とも飛べ」

三人は空へと飛び上がった。俺、セシリア、一夏の順で飛んでいる。

「織斑!スペックではおまえはセシリアよりも速いんだぞ!」

千冬が地上から一夏に激を飛ばしている。千冬さん。それは無理だよ。搭乗時間はまだ1時間程度だぞ?

「そんな事言われても飛ぶイメージは頭の上に角錐をイメージだっけ?そのイメージが上手くいかないんだよなぁ」

確かにイメージとは難しい。しかも複数の動作をするのは尚更だ。

「織斑先生はああ言っているが徐々にイメージ出来るようになれば良い」

俺はフォローを入れるとそうだよなぁと一夏が納得していた。

「よし!次は地面から10センチ以内の急停止だ。織斑は無理せずに1メートルで良いぞ」

上から下を見ると皆の顔がよく見える。ハイパーセンサーの力は凄いな。確か宇宙空間での使用が前提のため倍率がとても良いのと遮光性能も良いだったかな。

ふと箒の顔を見ると心配そう

顔をしている。視線の方向には一夏がいた。完全に一夏LOVEだな。

「では先に行かせて頂きますわ」

そう言うと逆さまになってスラスターを吹かして急加速して地面へと急接近して反転するとスラスターを全開で吹かすと完全停止した。

「よし!オルコットは10センチ以内だな。次!」

さすがはセシリアだな代表候補生は伊達じゃない。

「一夏、次は俺が行くぞ。あまり無理するなよ?」

「了解です」

そう言って俺は反転してスラスターを吹かす。急激に周りの景色が移動する。一気に地面が近づき…再び機体を反転させてスラスターを全開!完全停止した所でホバリングに移行する。

「さすがマツナガだ。5センチ切ったな。次は織斑だ!」

着地して上を見上げると一夏が反転してこちらに近づいてくる。たがなかなか機体を戻さない。そのうち錐揉みを始めて…地面に激突した。地面でバウンドしてアリーナの壁に激突して止まった。

箒が一夏に駆け寄り一夏を起き上がらせるが一夏はピンピンしている。さすがはシールドバリアだな。

 

「よし。時間がまだあるからマツナガ、オルコット!ランデブー飛行をしてみろ」

セシリアに視線を移すとセシリアは頷いた。

取りあえず飛びあがり上空に上がるとセシリアと打合せをする。

「セシリアに合わせるから自由に飛んでくれ。念のためターンの時にコールを頼む」

「了解しましたわ。では参ります」

セシリアは飛び出した。セシリアの正面の1メートルに付いている。

「ライトターン…ナウ!」

その掛け声と同時に右旋回を始めて止まり直進に変わる。

「レフトターン…ナウ」

次の掛け声に合わせて左旋回をして直進に戻る。

それを繰り返してアリーナを一周し千冬の前に降り立った。

「二人とも素晴らしい出来だ。息が…んんっん!よし!では授業はここまでとする。解散!」

千冬の号令で全員が教室へと戻って行く。

 

 

俺と一夏はアリーナの更衣室を使っているため更衣室に向かい着替えて教室に戻った。

 

 


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