IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第32話

虚さんとの会話も適当に切り上げて剣道場に行ってみると剣道部に混ざって一夏と箒が稽古をしていた。顧問を確認すると特に変わった様子は無いので取りあえずは安心だ。

道場を出ると俺は寮に向かった。

部屋に戻るとパソコンを立ち上げてレールガンの報告書を書き始める。

性能に問題はなく貫通力は絶大でありシールドバリアを貫通して相手の絶対防御を発動させた事を記載した。

それに写真やセシリアのシールドエネルギーの減り方のグラフなどを載せる。

あとは希望として小型化と連射性能の向上とマシンガンとの複合型だが希望であって要望ではないと注書しておいた。

 

パソコンに向かい作業をしているとドアがノックされた。右手を腰の銃に手をやりドアを開けるとそこにはセシリアが笑顔で立っていた。銃から手を離した。

セシリアは制服ではなく私服であった。上は白のシャツに青いカーディガンを羽織り下は白のロングスカートであった。

「どうしたか?」

俺も笑顔で尋ねるとセシリアはお腹の前で組んだ手をモジモジさせながら恥ずかしそうに

「夕食を御一緒しませんか」

と聞いてきた。俺は腕時計を確認するともう18時を越えていることに今気付いた。

「そうだね。行こうか」

俺は部屋を出るとセシリアと食堂に歩き出した。

隣を歩くセシリアはどこか上品な感じがする。

「セシリアはイギリスの貴族なのか?」

セシリアに尋ねると嬉しそうに返事をしてきた。

「そうですわ。オルコット家はイギリスの名門貴族のひとつですわ」

本物の貴族だったとは。

「凄いな。貴族で代表候補生とは正に騎士だな」

俺の言葉にセシリアは驚いたのか立ち止まり口元を両手で押さえてそしてホロホロと涙を流し始めた。

俺はビックリしてセシリアに歩み寄り

「すっすまん!何か気に触るような事を言ってしまったか?」

と聞くが首を横に振るだけで何も言わない。

俺はポケットからハンカチを取り出してセシリアに渡すと涙を拭ってゆっくりと喋り始めた。

「子供の頃に祖母から『貴族は騎士でありなさい。騎士は皆の憧れで手本なのです』と言われました。私はその言葉を守ってきましたが騎士と言われたのが初めてでしかも初めて言われたのがトウヤさんだったのが嬉しかったのです」

そう言うことか。人に認められることはとても嬉しいことだな。とても良く分かる。

「そっか。認められるのは嬉しいことだよな」

俺はセシリアの頭をポンポンと優しく撫でてあげるとセシリアは俯いてしまった。

「強くなって国家代表になろうな」

そう言ってあげるとセシリアは顔を上げて

「はい!トウヤさん、私を強くして下さいまし!」

と言って頷いた。

なかなか可愛いではないか。

 

こうして二人で食堂に向かって再び歩き出した。しかし俺は目撃者が居ることに気付いていなかった。

 

「トウヤ君フラグ建てたな…」

そこには扇子を閉める音がしたと言う。

 

 

セシリアとの夕食は楽しく終わりセシリアの部屋の前で分かれた。そして部屋に戻ると一夏と箒の部屋から見知らぬ先生が出てきた。

自分の部屋に入ると扉の前に待機する。距離が離れたのを確認すると部屋から出て後を付ける。そして楯無にコールして楯無が出たのを確認すると

「声を確認して欲しい。今から声を掛ける」

それだけ言うと先生に声を掛ける。

「すみません!先生!」

俺が声を掛けると先生は振り返る。

「どうかしましたか?」

「教えて欲しいのですが、購買は何時までやっているのですか?」

「 20時までよ」

「わかりました。ありがとうございます」

会話を終わると一夏の部屋の前に移動して一夏の部屋をノックをするが誰もいないようだ。

部屋に戻ると楯無に話かけた。

「どうだ?誰か分かったか?」

「あの声は2年現国の高山先生だね。何かあったの?」

「その高山先生が一夏の部屋から出てきた。済まないが調べて貰えないか?それまで一夏と箒は俺が保護しておく」

「分かった。それじゃあ終わったら連絡します」

通話を終わると一夏に連絡をすると部活上がりでそのまま食堂に向かったようだ。俺も小走りで食堂に向かうが突然廊下の陰から人影が飛び出してきた。

咄嗟に横にジャンプして人影を避け後ろを振り向くと先程の高山先生だった。

「マツナガ君?どこに行くのですか?」

高山先生の右手には大きめのナイフが握られていた。どうやら俺は刺される寸前だったようだ。

「食堂ですよ。でも食堂に向かうだけでなぜ先生に刺されなきゃ行けないのですか?」

俺は右手を腰にやり銃を握る。

そして腰を少しだけ落としていつでも動けるような態勢をとる。

「それはあなたが男だからよ。ISを動かせる男なんて必要ないの。あなたも織斑君もね」

そう言って高山先生はまたこちらに突っ込んで来た。高山先生を刺される寸前で左にかわして右手を銃から離し右手で首元を強打して先生が態勢を崩したところで左足で先生の腹部を蹴り飛ばす。ナイフを落としたところで先生の左腕をひねり上げて背中へ回し身動きを取れないようにする。

「先生!もうやめて下さいよ。もし一夏を殺したら篠ノ之博士はコアをすべて停止させるかも知れないと考えないのですか?」

俺は自分のズボンのベルトを外して高山先生の両腕を縛り上げた。

周りを見ると騒ぎを聞きつけたのか 生徒達が集まり始めていた。

「全員部屋に入っていろ!!」

俺の一声で皆は散り部屋へと戻っていく。

携帯電話を取り出してたて楯無を呼び出す。

「どうかしました?」

「高山先生に襲われて今制圧した。一学年寮の10階だ」

「えっ!?すぐに人を向かわせます。一夏君達には本音を行かせます」

通話が切れると高山先生を立たせてナイフを回収してエレベーターホールへと向かう。

「そんなに男が憎いですか…」

「当たり前だ!貴様はISが生まれる前の女の扱いを知らないのか!?」

「気にしたことが有りませんね」

「だろうな。女は容姿端麗でなきゃ仕事にも就けないのだ!」

「はぁ~もう良いです。喋らないでいいです」

エレベーターが着くと警備員が4人降りてきた。見た目はただの警備員だがもしかして更織の手なのか?

「高山先生を預かります」

警備員の一人が高山先生の手に手錠を掛けている。

「分かった。宜しく頼みます。これが凶器です」

ナイフを渡すと高山先生は両脇を掴まれてエレベーターに乗せられて下に降りていった。

そのとき寮内に放送が流れた。

『一学年寮内の生徒に連絡します。寮内の生徒は至急食堂に集まって下さい。繰り返します。一学年寮内の生徒は至急食堂に集まって下さい。これは訓練ではありません。これは訓練ではありません』

放送が流れると生徒達は廊下に飛び出し小走りで階段を降りていく。

楯無は爆弾と読んだか。一番手っ取り早いからな。

女生徒達に混ざって俺も階段を降りる。みんな部屋着のまま出てきたのか少し目のやり場に困る服装の子もいる。

食堂に到着すると千冬を見つけたので近寄ると千冬は気付いて俺の右腕を取り調理場に連れて行かれ

「何が起きているのだ!?」

いきなり凄い剣幕で聞かれる。

千冬の焦りを感じる。

「高山先生が一夏の部屋に何かを仕掛けたようなのです」

千冬の顔は目が大きく開かれた。

「更に俺が高山先生が一夏の部屋から出てきたのを目撃してしまったので刺されそうになりましたが制圧して更織に引き渡しました。その時に何人かの生徒に目撃されましたので口止めをお願いしたいです」

千冬の顔は更に口まで開かれてしまった。よっぽど驚いたのだろう。

「楯無から連絡は?」

俺の問いかけでフリーズから復活したようだ。

「あぁ、とりあえす不審物が一学年の寮内に有るので学生を食堂に集めてくれとの連絡だけだ」

「そうですか。今、更織の方で確認作業をしているはずなので終わるまで待ちですね」

俺は先に調理場から出ようとすると千冬に腕を捕まれた。

「トウヤ、腕から血が出ているぞ」

千冬に捕まれた左腕を見ると制服が赤くなり手からも血が滴っていた。高山先生をかわした時に当たってしまったのか。千冬に言われるまで気付かなかった。

俺は制服の上着を脱ぎワイシャツになるとハンカチを取り出そうとポケットに手を入れるがハンカチは無かった。

そうだセシリアに渡したんだった。

周りを見回すが雑巾の様な物しかない。

ひとまず制服の赤く染まっている部分を傷口に当てて押さえておく。

「トウヤはここにいろ。その傷を他の生徒に見せると動揺してしまう。今、救護品を持ってこさせる。いいな?」

千冬はそう言うと調理場から出て行った。

俺はそこらに置いてあった椅子に座ると携帯を取り出した。まだ楯無からの連絡はない。

今更ながら左腕の傷が熱く疼いてきた。

「ダメだな。腕が落ちてきたのかな」

 

俺は背もたれに背中を預けてため息を吐く。ネルガルでさんざんやった訓練なのに傷を負ってしまった。保護対象者に血は見せてはならない。おびえて動けなくなってしまうからだ。

 

調理場に山田先生が救護品を持ってやってきた。

「マツナガ君、傷の手当てをしましょう」

俺はワイシャツを脱ぐと腕を出した。

「お願いします」

山田先生は傷を見ると消毒液で傷を消毒してガーゼを当てて包帯を巻いた。

「傷が意外と深いのでこの後に縫合して貰いましょう。ではこのワイシャツを着て下さい。それと制服は注文しますのでこれは処分します」

そう言うと血塗れの制服とワイシャツを救護品袋に入れると調理場から出て行った。

 

全員に解散が言い渡されたのは1時間後であった。

 


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