IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第30話

 試合開始のブザーが鳴ると同時に一夏はブレードを手こちらに突っ込んで来た。

俺は後退して距離をとりフィールドランサーを呼び出す。

そして一夏の右側に回り込みシールドバリアに突きをくり出す。一夏はその勢いでバランスを崩すが持ち直してブレードを横に斬りつけてくるが急速に後退してかわす。

「一夏!動きを止めるな!常に動いて狙いを定めさせるな!」

俺は一夏の周りをグルグルと周り一夏を翻弄する。

一夏はこちらに突っ込んで切りつけてくるが攻撃は当たらない。

「ムキにならずにしっかりと回り込んで攻撃するんだ!」

一夏の軌道が直線的になったところで体当たりをして体制を崩したところに再び突きを入れる。

「クッソー!トウヤさんの動きが早すぎなんですよ!」

一夏は焦っているようだ。

「相手は合わせてはくれないぞ!!」

 

しばらく一夏と遊んでいる。申し訳ないが遊びのレベルだ。動きが直線的でフェイクすら入らないし攻撃に繋ぎすらない。恐らくは今の段階なら箒の方が強い。

仕方ないな。話によると中学生の時は千冬を助けるためにアルバイトわしていて部活などは一切やっていなかったそうだ。

 

「どうした一夏!全く攻撃が当たっていないぞ!模擬戦だからって甘ったれるなよ!」

と言い回し蹴りを一夏に食らわせる。

「ぐあ!!」

一夏が派手にすっ飛んでいった!アリーナのシールドにぶち当たった。

観客席にいた女生徒達が後ろに倒れた。そりゃ全高3メートル程のISが吹っ飛んでくればビックリするだろう。

 

一夏は起きあがると再び突っ込んできた。しかも次はブレードを振り上げて雄叫びを上げている。

「だから直線的になるな!雄叫びをあげるな!」

と叫びながら次は跳び蹴り入れる。

「ギョア!」

再びアリーナのシールドにぶち当たった。

そこで一夏の白式が光な包まれた。

「なんだ?どうした一夏」

もしかしてこれがファーストシフトと言うやつなのか?

光が収まった白式はその名の通り真っ白な機体になっていた。

「お?随分綺麗な機体だな」

「やっとフィッティングが終わりました」

「よし!ならば此処から全力で行くぞ!」

俺はブレードランサーを構えて左右にフェイクを入れながら一夏に近寄る。そして一夏の下に回り込みそして後ろから蹴り飛ばす。そして吹っ飛んだ一夏にフィールドランサーを突き立てて先端を開く。するとバリアが解除されてそのまま一夏にフィールドランサーを切りつける。すると一夏は後退して距離をとった。今のは絶対防御が発動しただろう。

一夏はブレードを構えるとブレードがビームの様な物を纏った。切り札なのか?

そしてこちらに突っ込んできたのでこちらもフィールドランサーを構えてあえて正面から打ち合った。一夏のブレードがかすると一気にシールドエネルギーが減った。俺は驚いたが一夏にフィールドランサーを突き立てシールドを破り次は一夏の胴を狙った。もろに突き刺さりそこでブザーが鳴った。

『織斑機シールドエネルギーエンプティー!勝者マツナガ機』

 

試合が終わった。

一夏はISの解除はしなかったようだ。

「さすがトウヤさんですね!全く歯が立たなかったです」

「いや、最後のあれはなんだ?一気にシールドエネルギーが持っていかれたぞ?」

ブレードが光っていたやつだ。

「あれはワンオフアビリティーの零落白夜です」

ワンオフアビリティー…機体オリジナルの固有の必殺技みたいなものか。

「そうか…あれは凄いな。ひとまずピットに戻ろう」

俺たちはピットに飛び中へと入った。そこには千冬達が待っていた。

「まぁ、当然の結果だな」

千冬が腕を組んで一夏へと話しかけた。

「うん、やっぱりトウヤさんは強かった」

一夏はISを解除すると千冬に答えた。

俺もエステバリスを解除すると千冬がタオルを渡してきた。

「ご苦労だったな。やはり強いな」

「まぁ、一応はな」

詳しくは言えないので曖昧な返事になってしまった。いつか話せる時が来るのだろうか。

「やはり機動射撃が凄いな。近接格闘も機動をおりまぜたトリッキーな物も見られた。操縦に関してはもはや生徒の域を越している。もしかしたら学園の教官でマツナガを落とせる者はいないかもしれない」

千冬は笑みを浮かべて学園最強と言い出した。まさかそこまでの技量が俺にあるとは思えない。ナデシコでも戦果は一番少なかった。後方支援のマキ・イズミにも劣っていた。

「それは言い過ぎでしょう。教官達に勝てるだなんて。ISの扱いはそちらの方が上ですよ?」

「私の目に間違いが有るとは思えないが…なら今度教官とやってみてくれ。きっとみんな食い付いて来るはずだ」

相変わらず千冬は良い笑みを浮かべていた。

 

ひとまず俺の出番は終わりだ。

オルコットと一夏の試合はオルコットは復活して向こう側のピットで待機しているらしい。後は一夏のシールドエネルギーの充填待ちらしい。俺は千冬に連れられてアリーナの管制室に来た。本来は関係者以外は立入が禁止されているが今回は千冬に連れてこられたので良いらしい。

「それでオルコットはどうだった?」

「弱いです。一番頂けないのはビット兵器を止まっていないと扱えない所と頭に血が昇ったら冷静さを取り戻すのに時間がかかる2点です」

「一番が2つ有るとは…まぁその通りだな。良い点は?」

「予測射撃のセンスがあります。下手にビット使うよりあのライフルの方が良い戦いが出来るのでは?」

「そうだな。あいつは今後も努力を惜しまないよう指導だな。それにしてもトウヤの使ったあのライフルは?」

レールガンの事を言っているのだろう。

「この前富士見技研から納入されたレールガンです。今回が初めての射撃になりました」

「そうか。随分とエグいレールガンだな。シールドバリアを貫通とは」

「試射も何もしていなかったので念のためにオルコットの腰の装甲を狙っときました」

「絶対防御があるから大丈夫だ。今のところあれを破る攻撃手段は今のところ無いな」

「そうでしたか。では次回からは遠慮なく攻撃出来ますね」

「そうだな。今度は私も模擬戦をしたいよ」

千冬の良い笑顔が見れた。

 

『織斑機シールドエネルギーの充填完了です。試合行けます』

ピットからの通信でオペレーターが両者にアリーナへの移動が指示された。

 

 

モニターには一夏とオルコットが対峙している。

オルコットの顔には油断は全くない。

「先ほどは油断して負けましたが今回は最初から全力で掛かりますわ!」

オルコットはそう言うとライフル、スターライトmk3を構える。

「そりゃこっちも同じだ。トウヤさんに教えられた戦い方でお前を落とす!」

そう言うと雪片弐型を出現させた。

両者が向かい合って10秒後にブザーは鳴った。いきなり突撃をする一夏にオルコットは後退しながらライフルを撃ちそれを一夏が左右にフェイクを入れて避ける。

「一夏はもうフェイクを覚えたのか?」

「あいつの学習能力は身体を動かす事に関してはずば抜けたものがある。人の気持ちには全く学習しないがな」

俺たちは顔を見合わせて笑った。

 

一夏はどんどんと加速して距離を詰める。しかしオルコットもライフルで射撃を加えるもなかなか当たらない。

オルコットは動きを止めてビットを放ち一夏の周りへ飛ばし一夏の足を止めるようにビームを放つ。

一夏はこれにはたまらず、回避運動へと変わってしまった。

「さぁ!踊るのです!」

先程と違い前後左右から直撃弾が繰り出される。どんどん一夏のシールドエネルギーが減っていく。一夏もなんとかビットを落とそうと動いてはいるがなかなかビットを捕らえることが出来ない。

そして一夏は突然オルコットの方へと飛び出した!

そのままオルコットに肉薄すると小刻みな切り込みをオルコットへと放ち全てが当たった。

そして横へとスライドして後ろに回り込み零落白夜を発動し横凪にに一閃するがこれは交わされる。オルコットはそのまま逃げだすが一夏はそれを逃がさないように追いかける。オルコットもライフルでビームを放つが交わされる。

徐々に距離が詰まって行き一夏の間合いに入ったところで再び零落白夜を発動。

「しまったぁ!」

オルコットの悲鳴が挙がる。

一夏が上段から切ろうとした瞬間

『織斑機シールドエネルギーエンプティー!勝者オルコット機』

 

 

勝者のアナウンスが流れた瞬間にきっとアリーナ全体でこういう声が広がっただろう。

 

「「「「はぁ?」」」」

 

 

 

 


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