IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第29話

 アリーナのピットには俺と一夏、箒と千冬がいる。

今日は1組のクラス代表決定戦が行われる。初戦は俺とオルコット。次が一夏とオルコット。最後が俺と一夏だ。

「よし。それではマツナガはISを展開して会場へ向かえ」

千冬が指示を出してきたのでISを展開する。

展開を終えるとモニターには驚いた顔の一夏と箒が写っている。

「トウヤさんのISってシルバーなのですね。名前は?」

一夏の目が驚きから好奇心に変わっている。

「特に名前は無いがエステバリスだ。花の名前でな和名はナツザキフクジュソウって言うらしいんだ」

ナデシコで得た知識を一夏に披露する。何故かナデシコの周りには花の名前が溢れていたんだよな。ナデシコ二番艦コスモス、三番艦シャクヤク、四番艦カキツバタ、強襲揚陸艇ヒナギク、連合軍の船も殆ど花の名前だった。ナデシコ級は揃えていても連合は偶然?

「マツナガ!後がつっかえているから早く出ろ!…負けるなよ」

千冬の顔をモニターに映すと千冬の顔が僅かに不安が浮かんでいる。

俺は千冬に手を挙げるとそのままカタパルトに乗り足を固定させる。

『マツナガ機、発進準備完了』

「エステバリス、マツナガ機出ます!」

声と同時にカタパルトが射出され程よいGが体に掛かった。

懐かしい!この世界に来る切っ掛けとなった戦闘の出撃以来だ。

アリーナに出るとオルコットが既に待っていた。

「遅かったですわね?てっきり逃げ出したのかと思いましたわ」

相変わらずオルコットは高圧的な態度で話掛けてくる。イラっとするが戦闘前だ。冷静にならないと戦況を正確に把握出来ない。

「済まなかったな。一夏と君を倒したらどんな罰をしてやろうか相談してたら時間が過ぎていたんだよ。結局決まった罰は俺たちの前で土下座って事になったよ」

俺の話が終わるとオルコットは肩を震わせて怒りそして

「なんですってぇぇぇ!!!」

と叫びながら手に持っていた大型のライフルをこちらに撃ってきた。試合開始の合図を待たずに攻撃とか色々と不味いだろ。

迫り来るエネルギー弾を俺は左にスライド飛行で避けそのままオルコットと一定の距離を保ったままグルグルと回る。

ひとまず相手のデータを集める。

機体名はブルー・ティアーズ(青い雫)

イギリス開発の第3世代機でブルーティアーズと呼ばれるビット兵器が特徴。中遠距離型のようだ。

 

俺は右手にラピッドライフルを呼び出しブルーティアーズに向けて発射する。移動するブルーティアーズに対して一定距離だがブルーティアーズの上下左右と進行方向を一定にせずに動き回っている。周りから見たら俺は蜂の様にグルグルと回っている感じに見えているだろう。

「ちょこまかと動き回って小賢しいですわ!」

オルコットもこちらに向きを合わせているがオルコットが射撃するタイミングで俺は進行方向を変えている。無駄弾がアリーナのシールドバリアに当たり四散する。オルコットは頭に血が昇っていてガムシャラに打ちまくっている。俺がちまちまと撃つラピッドライフルが当たっているのもあるのだろう。

「もう面倒ですわ!」

オルコットは機体の機動を止めて4機の青い物体を射出させた。あれが恐らくブルーティアーズの名前の元になったビット兵器だろう。俺は左手にもラピッドライフルを呼び出し機体の速度を更に早めて目標をビット兵器の方に変える。ビットからビームが撃ち出される。正面からのビームを避けると後ろから撃ち出されたビームがエステバリスのシールドバリアに当たる。これが3回ほど繰り返される。

どうやら本命は後ろのビットの様だ。

正面のビームが撃ち出されるのと同時に後ろを向き後ろのビットにラピッドライフルを掃射する。その弾はビットに直撃して四散する。

「なっ!」

そして次の前からのビームが来ると同じ様に後ろのビットを撃ち落とした。

ビットの残りは2機だが俺はそこでビットから距離をとるように飛び回る。両手のラピッドライフルをしまい、先日納入されたレールガンを呼び出す。

オルコットは一カ所に留まりこちらに正面を向けている。

「もう終わりかしら!?ブルーティアーズのワルツはまだ終わりではありませんわよ!」

ビットが激しくビームを撃ってくるがどの方向からビームが来るか分かっているため軽く軌道を変えて避ける。

そしてレールガンをオルコットに狙いを定める、が威力が分からないのでひとまずは腰のアーマーを狙い、撃つ!

弾は大気との摩擦で少しだけオレンジ色に発光しながらオルコットに向かい飛んで行きオルコットに命中し爆発が起こる。

煙がはれるとそこには腰のアーマーが壊れたブルーティアーズがたたずんでいた。損傷は腰のアーマーだけのようだ。

状況を確認すると俺はオルコットの逃げそうな進路に弾を次々と放ち最後に直撃コースを撃つ。するとオルコットはその内の一発に当たり次は背後のアンロックユニットに直撃し爆発が起きた。

レールガンは残り7発。

次は足のスラスターを狙い撃ち吸い込まれるように当たる。

オルコットの左足のスラスターが破損して動きが緩くなる。

「あなたはいったい!?」

オルコットの顔が焦りで歪む。

「戦闘中に足を止めるな。止まった瞬間に狙い撃ちされるぞ!そして真っ直ぐに飛ぶな!軌道の予測がしやすくなる!そして大前提は知らない相手に油断するな!全力でもって戦え!」

オルコットに直撃弾を次々と与えて弾倉の最後の一発を当てた所でブザーが鳴った。

『オルコット機シールドエネルギーエンプティー!勝者マツナガ!』

アナウンスが流れると同時にオルコットのIたSが解除され地面へと落下していく。俺は慌ててオルコットに飛び抱き抱える。意識がない。ハイパーセンサーで状態を確認するとどうやら気絶しているだけのようだ。

そのままピットへと戻ると千冬と山田先生が担架を持って待っていた。

「すみません。やりすぎでしたかね?」

俺は千冬に聞くと千冬は笑いながら

「いや、これぐらい当たり前だ。今までが余りにも緩かったのだろう」

と返事してくれた。

オルコットは箒と山田先生でアリーナの治療室へと運ばれて行った。

「織斑、オルコットが戦えないから次はお前だ。もう行けるな?」

千冬の話しかけた方を見ると一夏が薄い灰色のISを纏っていた。

「え?俺まだフィッティングもフォーマットも終わってませんよ!?そんなんでさっきのトウヤさんと戦うなんて無理ですよ!」

そうだな。さっきの俺はまだ7分だ。

「そんなものは実戦で何とかしろ」

千冬…そりゃあんまりだよ。

「だったら俺が量産機で出ましょうか?」

俺が千冬にフォローを入れるが

「そんな面倒な事はしない。ならハンデとしてマツナガ機は接近戦用の武器のみとする。ちなみにマツナガは勝ってもクラス代表は出来ないから事実上織斑とオルコットの一騎打ちだ」

千冬の発言に一夏が驚きの声を上げる。

「何でだよ千冬姉!?グヘっ!」

千冬の主席簿アタックが一夏の頭に直撃した。

「織斑先生だ。マツナガは生徒会の副会長に就任したからだ。生徒会役員とクラス代表は兼任出来ない決まりになっている」

千冬の話を聞くと一夏はうなだれた。

「なんだぁ…ガチの対決じゃなかったんだ」

「織斑、お前は胸を貸して貰う側だぞ?何が対決だ。しっかりと勉強させてもらえ」

千冬にお説教を食らう一夏。

「まぁ…今回はそのISん?なんて読むんだシロシキ?の慣らし運転だな。本命はオルコット戦だ。いいな?」

「分かりました。この機体はビャクシキと言うんです」

そう言うと一夏はカタパルトに向かい歩き始めた。

「マツナガ!一夏を頼んだぞ」

「了解!」

千冬からプライベート回線で通信が入った。俺はそれに答えるとカタパルトに歩き出した。

一夏がカタパルトで飛び出していった。

俺も続いてカタパルトで飛び出した。

 

アリーナで向かい合い開始のブザーが鳴るのを待つ。

 

 

 


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