まさかここまで増えるとは思いませんでした!
今後とも宜しくお願いします!
翌日の午後、今は事務棟で二階堂さんを待っている。前回とは違い今日は二階堂さんは遅れているようだ。窓から外を眺めると桜の木は緑に変わり始めている。この景色はこっちもむこうも変わらない。これだけを見るならば異世界にいるとは思えない。けど俺は間違い無く異世界にいてさらに異世界に根付いている。
俺は戻れるのかな。
そんな考えが頭をよぎる。
そんな時に応接室のドアが開いた。振り向くと二人の男性が部屋に入ってきた。片方は二階堂さんだ。
「やぁ、待たせてすまなかったね」
二階堂さんはにこやかに詫びてきた。
「いえ、突然の面談のお願いに応えていただきありがとうございます」
頭を下げてお礼を言う。
「いやいや、君のサポートも私の仕事なのだよ。それで今回はお客さんを連れてきたのだよ。こちらはISの装備やパーツの開発を行っている富士見技研の篠田社長だ」
二階堂さんが紹介すると篠田社長は名刺を出してこちらに突き出した。篠田社長は見た目の年齢は45歳ぐらいの黒髪だが白髪が多めに混じっている。二階堂さんと同じぐらいか?
「富士見技術研究所株式会社の社長をしております篠田です。以後お見知り置きを」
名刺を受け取ると俺も挨拶をする。
「マツナガ・トウヤです。宜しくお願いします」
挨拶が終わると二階堂さんは椅子に座ったので俺も座る。
「すまないが先にこちらの用件を話しさせて貰うね。率直に言うとこちらの富士見技研とパートナーになって欲しい。君のISは模擬戦の映像を見させて貰ったがとてもバランスが良い機体なのではないかと思う。しかしあの模擬戦をみる限りでは槍がもっとも突破力がある武装なのではないかね?」
二階堂さんの指摘の通りだな。
「その通りです。あの槍が一番の突破力がある武装です」
「そこで富士見技研と組んで武装とパーツの開発と研究をして欲しい。富士見技研はISの開発は行っていないが世界でも有数の技術力は持っている。日本の国軍の自衛隊にも武器、弾薬の納入を行っている。どうだろうか?」
この話…デュノアの件に使える?
「答えを言う前に私の話をしても良いですか?繋がりそうな気がしますので」
「おお、すまない。どうぞ」
二階堂さんは頭を触って笑っていた。
「フランスのご令嬢の話は篠田さんには?」
「あぁ…篠田君、すまないが隣の待合室で少し待っていてくれないか?後で呼びに行く」
二階堂さんがそう告げると篠田さんは一礼して外に出ていった。
「そうか、デュノアの話は君にも伝わったか。やはり君は千冬君にも楯無君にも信用されているのだね。それでどうして富士見技研とデュノアが繋がるのだい?」
「更織の報告だとシャルロットはスパイをするような人物ではないと聞きました。ならば会社側の命令で性別を偽って転入してくるのだと思っています。つまり大人の事情で彼女は犯罪者に仕立て上げられようとしているのです。教育機関のIS学園がそんなのを見過ごしてはならないと私は思います。ならば富士見技研と私が手を組みそしてデュノア社に技術提携、もしくは協同開発をすればシャルロットに犯罪の片棒を担がせることは無くなると思います。そして二階堂さん、出来れば手を貸して頂きたいのですが、この性別を偽って転入させようとした黒幕は社長夫人の様なのです。その告発をして頂きたいのです」
説明を終えると二階堂さんは考えているようで目を瞑り唸っている。
「二階堂さん、どうかお力添えを!」
俺は頭を下げる。
「良いんじゃないか?いや!上手く行くぞ!マツナガ君、是非やろうじゃないか。富士見技研の研究も進むしデュノア社も外の技術が入って新型の開発が進むだろう。よし!篠田君を呼んでくるよ」
二階堂さんは部屋を出ていった。
なんとか第一段階はクリアーだ。後はデュノア社側がこの話を飲むかどうかだ。この話は富士見技研の技術がデュノア社よりも上を行っていなければならない。しかし二階堂さんがのったと言うことは恐らく条件が一致したのだろうか。
ちょうど考え事が終わった所で二人が戻ってきた。
「では話を進めよう。篠田君、富士見技研はデュノア社と技術提携を結ぶ気はないかね?」
二階堂さんはまたまた率直に話を振ったね。
「ええ!?あのフランスの量産型の大手のですか?」
篠田さんは驚いて目を大きく開けた。
「そうだ。もし話に乗るならばマツナガ君は提携するという。脅しになってすまないが、悪い話ではない。君の会社の技術をデュノア社の機体で試さないか?当然私も手伝わさせてもらう」
「二階堂さん!その話は非常にありがたいのですが私の会社で良いのですか?」
どうやら謙遜しているだけのようだ。
「そうでなきゃ話をしないさ。では頼めるのだね?」
「はい!宜しくお願いします。マツナガさんも宜しくお願いします」
篠田さん頭を下げた。
「では篠田君、これから話す内容は決して他言無用だ。これはフランス国の国益に関わる話になる。そして聞いた後に引き返す事は叶わない。いいね?」
篠田さんは一瞬躊躇したようだが頷いて返事をした。
「今、IS学園にフランスのデュノア社から男性操縦者の転入の打診が来ている。その話の裏付けをしてみると性別の偽りが発覚した。その操縦者はデュノア社社長の妾の子のシャルロット・デュノアでありその子にはスパイの指示が出されている様なのだ。だがシャルロットは強要されているようなのでなんとかこの計画を止めたい。そのためにデュノア社に技術提携をして欲しかったのだ。しかし私の考えでは両社に利があると思っている。なんならシャルロットにも君の会社のテストパイロットをやってもらってもいいぞ?」
二階堂さんの話しが終わると篠田さんも大きく頷き
「デュノア社も酷いことをしますね。私の力でシャルロットさんを救えるなら力添えさせて頂きます」
「よし!話は纏まったな。ではまずは富士見技研とマツナガ君の契約だが少し休憩にしよう」
二階堂さんは席を立つとノビをする。俺も席を立ち廊下に出ると携帯を取り出し千冬をコールする。今日の午後は授業の補佐と聞いていたので恐らく出るはずだ。
「トウヤ、どうした?」
「富士見技術研究所株式会社と言うところと専属契約を結ぶことにしたんだが問題ないよね?」
「篠田社長の所か、問題ないな。もう専属契約の話が来たのか。早いな。そうか、二階堂さんも話が分かっていたのかも知れないな。恐らくデュノアの話は上手く行くぞ」
千冬の声も少し弾んで聞こえる。
「そうか、分かった。これから契約なのでもう少し時間がかかると思うよ」
「分かった。それじゃあな」
携帯をしまうと部屋に戻る。椅子に座ると二人も座った。
「千冬君かい?」
二階堂さんだ。
「はい。一応は織斑先生に確認をしておきました」
「そこは織斑先生ではなく千冬だろ?」
二階堂さんの顔は含み笑いを浮かべている。
「そうですね。良き相談相手になってくれています。頼り頼られですか」
「そうか。それは良いことだ。ハハハハハ!」
笑い声が部屋に響く。俺も多少ひきつっているかも知れないが笑う。篠田さんも笑っている。
笑うところなのかな…
「それじゃあマツナガ君も授業中だし契約を進めよう。まず条件だが篠田君、マツナガ君から提供される機体のデータだがこのデータは日本政府の極秘に値する。そこら辺を肝に銘じておいてくれ。マツナガ君からは機体データ、スペックの提示、富士見技研から提供されたパーツの運用データと報告書の提出、技研側からのデータ取りの依頼の完遂、その他必要に応じた要請の完遂だ。そして技研側からは試供品の提供とそれに応じた改修やサポート、専用弾薬やエネルギー等の提供、後は報酬だ。その他必要な場合は協議の上決定。こんな物だが両者は了承するかね?」
二階堂さんは両方をみる。
「万が一に試供品を戦闘や模擬戦で破損させた場合は?」
「故意でない限りはこちらで持ちます」
篠田さんが応じた。
「では依存は有りません」
「こちらもです」
これで両方が了承したので契約書に俺と技研のサインがされた。
「よし。これで完了だ。フランスの件は近いうちにまた連絡をするので待っていてくれ」
俺は席を立つと篠田さんに手を差し出して握手を求める。篠田さんも立ち上がると握手をしてくれた。
着々とデュノア救済の話が進んでいく。