入学式は物凄い式典だった。各国の来賓が何人も来ていて祝辞が何本も読まれた。
新入生代表はイギリスの代表候補生のセシリア・オルコットと言う金髪の貴族の様な振る舞いの女生徒だった。日本語がかなり上手かったのがとても印象的だった。
結局入学式で午前中が終わり教室に戻ると一夏が俺の所に来て
「昼飯食いに行こう!」
と言うので頷いたが、窓際の席の篠ノ之箒が一人で座っているのに気付いた。篠ノ之箒は頬杖を付きながら外を眺めている。俺は一夏を呼び止めた。
「なぁ一夏、確か篠ノ之箒と幼なじみだったろ?昼飯に誘わないか?」
俺の提案に一夏は大きく頷いた。そして俺と一夏は篠ノ之の席に向かった。
「箒!久しぶりだな!すぐに箒だって分かったぞ!」
一夏がとても親しげに篠ノ之箒に話しかけている。篠ノ之箒は一瞬嬉しそうな顔をしたと思ったら急に真面目な顔をして
「一夏…」
篠ノ之箒…こいつは素直じゃないのか。
「箒、昼飯食べに行こうぜ!良いだろう!」
篠ノ之箒は小さく頷いて席を立つと一夏に付いて歩き出した。そして教室の後ろへ歩き出した。俺はその光景を笑顔で見ながら歩いていると。視界の左したに布仏本音と思われる人物がいることに気が付いた。
改めて視界を移動すると布仏本音は俺の視線に気が付いてダボダボの制服の袖をパタパタ振りながら
「ヤッホーマッツー!」
などと俺のこと呼んでいた。
顔が引きつってしまった。小さく手を振って一夏達に着いて行った。
3人で歩いている。一夏と箒は会っていなかった間の話で盛り上がっていた。一夏いわく箒は剣道の全国大会で優勝したらしい。凄い。これは本当にすごい。箒は赤くなって
「何故知っている!?」
と吠えていたが
「新聞で見た」
と冷静に受け答えしたが箒は
「なぜ新聞など読んでいるのだ」
と酷い事を言っている。
まぁ明らかに恥ずかしさをごまかしているみたいだが…
一夏と箒。なかなかいい感じじゃないか?
後ろには女子が連なっている。
「おい、一夏!後ろの状況は何なのだ!」
箒が苛立たしそうに一夏に聞いていた」
「朝からこんな感じなんだよ。俺達が珍しいんんだろ」
一夏は困った顔で答えた。
「篠ノ之さん、挨拶させてもらっていいかな?俺はマツナガ・トウヤだ。宜しくな」
俺は箒に挨拶をするとしまったっていう顔をして頭を下げた。
「すまない。篠ノ之箒だ。箒って呼んでくれ」
「織斑先生から君の事は聞いている。大変たったな。此処にいる間は外部からの煩わしさや危険は無いだろう。一度しかない高校生活を楽しんで欲しい。恋もな」
俺は少しだけ口元に笑みを浮かべると箒はたちまち真っ赤になってしまった。
相当な恥ずかしがり屋なのだな。
その後は俺ら3人で食事をとり午後の授業が始まるまで身の上の話をしていた。
午後から授業が始まり記念すべき最初の授業は山田先生によるIS基礎理論であった。ISの稼働の方法、概念、仕組みなど理論的、数値的に学ぶものだ。これがなかなか独特な理論だったため俺も覚えるのに苦労をした。
授業はきっとこれが女子校なのだろうなという展開だった。彼氏だのブラジャーだの顔が赤くなるようなワードが何回か出てきた。
「ここまでで分からない所は有りませんか?」
山田先生の理解を確認する呼びかけに俺を含めて誰も手を上げない。
「織斑君何か分からないところは有りませんか?」
山田先生が教卓の目の前の一夏に聞いた。
「何か分からないことがあったら聞いてくださいね。なんせ先生ですから」
エッヘン!って言ったように胸をはる。ありゃ凶器だな。
それを聞いた一夏は元気に手を挙げた。
「先生!」
「はい、織斑君」
「全部解りません!!」
ズダダダダーン!!!
本日2回目の轟音が教室に響きみんなが机に頭をぶつけていた。
俺もそれに漏れず含まれておりおでこをさすっていた。
千冬が一夏の横に行くと
「織斑、入学前に送られた参考書は読んだのか?必読と書いてあったはずだが?」
あの技術書の事だな。
「あの分厚いやつですか?」
「そうだ」
「電話帳と間違えて捨てちゃいました。
ズダダダダーン!!!
再び教室に轟音が響きそして
バシーーーン!!!
と千冬の愛の出席簿が一夏の頭にヒットした。
「必読と書いてあっただろう!捨てる奴があるかぁ!再発行してやるから一週間で覚えろ!」
アイツはお馬鹿決定だ。何をどう間違えたら電話帳と間違えるのだ。
「いや!あの厚さを一週間はむり…」
「覚えろと言っている…」
一夏は無理だと訴えるが千冬のドスの利いた声と眼孔で黙り込んでしまう一夏。
「他に分からない人は居ますか?マツナガ君はどうですか?」
山田先生は心配になったようで俺に確認してきた。
「私は大丈夫です。参考書は一応一通り覚えました」
俺の返答に安心したのか山田先生が笑顔になる。
「山田先生、コイツに構わずに授業を進めてください」
千冬の一夏切り捨て発言の後に授業は再開されて5時限目は終了し休憩時間になった。
俺は携帯でニュースを見てみるとIS学園での入学式の事が載っておりやはり俺と一夏の名前が載っていた。世界的な事象である事が改めて知れた。
一体どれだけの国や組織が一夏や俺を狙うか。一夏や俺の身体を調べたがっているはずだ。下手したらクローン技術を使って操縦者を作るだろう。
そんな事を考えていると一夏が俺の席にやってきた。その隣には箒もいる。
「トウヤさんはあの授業は分かったのか?」
一夏何当たり前のことを聞いているんだ…
「勿論だよ。ちゃんと参考書を読んでおけばある程度は解るぞ。箒、一夏に教えてやってくれないか?最初に転けてしまうと今後、学校が辛くなってしまう」
箒に頼むと彼女は真っ赤になって
「私ですか?私で良いのか一夏?」
と聞き返した。プロポーズじゃないんだから…
ここに青春真っ盛りの乙女いたれり。
「勿論!頼んだよ箒!」
そんな事を話していると突然
「ちょっとよろしくて?」
と長髪で金髪、ロールがある女生徒が声をかけてきた。新入生代表で代表候補生のセシリア・オルコットだった。
「あ?」
「なんですか?」
と俺達は返事をするとオルコットは驚きの顔をして
「まぁ!なんてお返事ですの?私に話しかけられるだけでも光栄なのですからそれ相応の態度というものがあるのではないかしら?」
オルコットは偉く高圧的な態度でこちらに話しかけてくる。これが今話題の女尊男卑をはなにかけた方々なのだろう。
「失礼した。ミス・オルコット。突然の事だったので無礼に振る舞った事、お詫びします」
と俺は頭を下げる。こういう時はひとまず引き下がるのが吉。
しかし一夏はだめだった。
「あ、悪いな。俺、君のこと知らないし」
爆弾落としたな。