IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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次回にはIS世界に行きます。


第2話

マツナガside

カタパルトを抜けると艦の前で迎撃を行うが数が多すぎてナデシコのディストーションフィールドに取り付くバッタの数が多くなりすぎている。

徐々にナデシコの速度が上がり始めてはいるがまだまだ遅い。

 

「マツナガさん!テツジン型が現れました!1時の方向、ボソンジャンプしながら近付いてきます!注意してください」

「チッ!」

メグミちゃんからの通信をうけて小さく舌打ちをしてしまう。

(最悪だ…テツジン型だけは倒さなきゃいけなくなった…どうする…アカツキ達を下げて総掛かりで行くか?それともアカツキ達はこのままフロントラインに残して俺が倒しに回るか?)

どっちを選んでも相当キツい。

状況を考えながらどう対応するか悩んでいるとアカツキから通信が入る。

「マツナガ!エンジェルスを向かわせる!お前はテツジン型の撃破に向かえ!」

「了解!あまり無理をしないでくださいよ」

アカツキからの通信に応じる。

 

「君に比べればなんてことないよ」

「はは!戻ったら火星丼を奢ってくださいね」

「りょ〜かい。じゃ頼んだよ」

アカツキの口調はいつもの軽いものに戻っていた。

エンジェルスとはナデシコのエステバリス隊の女性達だ。

緑色のショートカットで男勝りのスバル・リョーコ、茶髪のボブで明るい性格のアマノ・ヒカル、黒髪ロングヘアでダジャレが好きなマキ・イズミ。仲が良く何より腕が立つのスーパーエース達だ。

迎撃を続けていると彼方から青、赤、黄の機体がこちらに凄いスピードで向かってくる。

「おーいマツナガぁ!待たせたなぁ!」

リョーコだ。

「いや、すまない。尻拭い頼むわ」

「気にするなよ。むしろ殿をやらせちまってすまねぇ。ちゃんと帰って来いよ!そんときゃぁ俺が扱き倒してやる!」

「はっ!言ってろ!俺が返り討ちにしてやる!」

いつものやりとりが出来て俺もリラックスできる。

「リョーコぉ、もっと素直に…抱きしめて良い?ぐらいのこと言った方がいいよぉ?」

ヒカルだ。

「え?リョーコって俺狙いだったの?やたら絡んで来ると思ったら…ううむ…20歳の俺が言うのも何だが初々しいなぁ」

 

ヒカルのおちゃらけに俺も乗っかってみた。すると音声だけだったやり取りだったはずが、いきなりョーコの顔がドアップで現れた。顔が真っ赤になっている。

 

「コラー!ヒカルテメェ!なっ何言ってんだぁ!トウヤも乗っかってんじゃねぇ!…まぁどおしてもって言うなら抱きしめてやらないことも…」

 

やっぱりリョーコをいじるのは面白いなぁ。後半はよく聞き取れなかったが。

 

「戦闘(銭湯)に油断すると死ぬわ…愛に溺れてね…クククククク…」

イズミは相変わらずよく分からないな。

戦闘中にこんなやりとりをしていても戦果は落ちることはない。むしろ伸びる。これがエンジェルスの凄い所だ。

 

「おふざけはここまでにしてあとは頼みます」

そう言うと俺は1時の方向に向けて機体を進めた。

「おう!頼まれたぜ!」

リョーコもいつもと変わらない。

後方にナデシコが遠ざかっていく。

 

 

しかし本当に良く目立つ船だなぁ。船体の基本色は白色で船体と艦橋と機関部の上下が赤色になっている。

 

 

前方にボソンジャンプのかすかな光りが見えてくる。テツジン型だ。ゲキガンガーみたいな形をした大型機動兵器であるテツジンは胸にグラビティブラスト、両腕にロケットパンチの武装があり機動性はないが重武装なのである。

当然ディストーションフィールドもあり今までの対処は複数機で攻撃を仕掛けてフィールドランスでディストーションフィールドを突破して撃破するのだが今回は単機だ。どうしたらいいか…カワサキシティー戦の時みたいにボソンジャンプの出現時のディストーションフィールドがオフになる瞬間に射撃…これはあくまで出現場所を特定出来るときの戦術だ。

とにかくフィールドランスで突っついてみようか…右腕のラピッドライフルを腰のマウントにしまい左手のライフルは放棄。背中のフィールドランスを持って一気にテツジン型に突入する。

敵の右上辺りに取り付きフィールドランスでディストーションフィールドを破ろうとするが敵の左腕が飛んでくる。慌てて後退し距離をとる。

(やはり駄目か…ならば!)

次は持ち前の機動力で敵の周りをグルグル周り敵を撹乱する。IFSの操縦だがGは感じる。目が回るがそれを抑える。そして背中辺りでディストーションフィールドにフィールドランスを突き立てた。

ランスの先が二つに割れてディストーションフィールドが解除される瞬間にテツジン型が向きを変えて腕を振るってきた。

また慌てて後退をし距離をとる。

(クソ!あと少しだったのに!)

だが次に狙う場所はもう決まっている。敵の後方の足元。

振り返って上下反転するしかない。と言うことは2動作になる上に背が高い分時間がかかる。これはイケる!

再びテツジン型に突入と攪乱を始める為に近付く。その時いきなり左腕のロケットパンチが飛んでくるが当たる直前に小さな動作で避ける。

敵は間違った!

(俺の勝ちだ!)

これで敵は片腕で対処する事になる。撹乱しながら左側の足元にフィールドランスを突き立てる。案の定敵は反応が遅く反転を開始するも間に合わずディストーションフィールドを破った!そのまま背中の相転移エンジンにフィールドランスでのディストーションアタックを行い損害を与えさらに正面に回って胸部グラビティブラストの発射口にもフィールドランスを突き立てた。グラビティブラスト発射口に大きな傷を与えた。

テツジン型はボソンジャンプをするかも知れない為、急いで距離をとるとやはりボソンジャンプをしてどこかにいる有人戦艦へと帰って行った。

 

ひとまずナデシコにテツジン型の撤退を報告するためナデシコに通信をいれる。

「こちらマツナガ。ナデシコ聞こえますか?」

「こちらナデシコどうぞ」

メグミちゃんだ。

「テツジン型の撤退を確認。相転移エンジンとグラビティブラストに損害を与えたため後退した。其方の状況は?」

「現在はナデシコの速度がエステバリスの巡航を越えたためエンジェルスは帰艦。アカツキ機もまもなく帰艦します。マツナガさんも急いでチューリップ方向に向かってください!」

メグミちゃんの声は緊張している。

「了解。急いで戻る」

機を予定地点に向けて急がせる。宇宙では一旦加速したら速度は落ちない。空気とかの抵抗が無いためである。そうすると推進力の強い方が速度が速くなる。そのためエステバリスはナデシコに追いつけないのだ。

 

俺も全力でチューリップに向かう。チューリップ突入直前に減速をしなければならずその時が最も危険な時間になる。

 

 

 

しばらく進むとバッタがこちらに飛んできた。遙か先には小さく口を開いたチューリップが見えるが、後続はもういないらしく出てくる機体はいない。

ディストーションフィールドを最大に上げ速度を落とさずにそのまま突っ込みディストーションアタックでバッタの群れに突撃する。次々とバッタを爆散させていくが気にせずチューリップに向かう。チューリップの前にレーザー駆逐艦のカトンボ級が見えてきた。 

(あれも落とさなきゃいけない!)

進路を少し左に振りカトンボ級を目標にする。どんどんカトンボ級の船体が大きくなっていきカトンボ級のディストーションフィールドに浅い角度でフィールドランスを突き立てながら勢いをそのままカトンボ級へ圧力をかけ船体を切り裂く!

カトンボ級は傷から炎が上がり爆散した。

「こちらマツナガ。ナデシコ聞こえるか?」

「はい!ナデシコです。カトンボ級の撃破はこちらでも確認しました。チューリップ突入までの時間はあと5分です。マツナガさん以外は収容を完了しています」

さすがメグミちゃんだ。こちらの欲している情報を伝えなくても与えてくれた。

「了解!チューリップ前で迎撃を開始する」

 

フィールドランスを背中にしまい両腕にラピッドライフルを装備しバッタに射撃を開始する。ナデシコの減速開始まで大体4分程それまで持ちこたえなくてはならない。

四方八方から飛んでくるバッタに同じ場所に留まらないようにしながらラピッドライフルを放つ。上下左右へと回転し

ながらひたすら撃つ。時々曳光弾が混じり光の線がとても綺麗に思える。ラピッドライフルの弾が切れると高速で飛びディストーションアタックをしながらマガジンを交換して攻撃の手をやめない。

「こちらナデシコ!マツナガ機を確認しました!これよりナデシコは減速を開始します」

メグミちゃんの声が聞こえ視界をナデシコの来る方向に向けるとナデシコが確認出来る。しかしナデシコは酷い有り様だ。船体前部のYユニットからも黒煙が上がり、さらに船体中央右部からも黒煙があがっている。

「そちらは大丈夫なのか?被弾が酷く見えるが」

「大丈夫です。ディストーションブロックのおかげで被害は小さく抑えられてます」

ウリバタケ様々だな。

「了解。こちらも弾がキツくなってきたのでなるべく早く突入してくれ!」

機体をナデシコに向けて飛ばしバッタを次々と落とす。

ナデシコとすれ違ったらUターンを行いナデシコの後部につく。

追いかけて来るバッタを次々と落としなるべく敵の数を減らしていく…減っている気がしないが…

「マツナガさん!またテツジン型が来ます!ナデシコの6時方向です!距離は近いです!」

嘘だろ…聞きたくない情報がメグミちゃんからもたらされた。

「マツナガさん!もう戻ってください。あと2分もあれば逃げ切れます!」

ミスマル艦長の声がコックピットに響いた。

(ダメだ!ここで引いたら右エンジンまでやられる!)

「艦長!それは無理ですよ。俺だったら機関部を狙います。仕事はきちっと最後までですよ」

若干下の方から巨大な人型が近付いてくる。

「ナデシコは予定通りにチューリップへ突入してください。俺もなるべく艦へ戻るようにしますが万が一には艦の脱出を優先させてください!」

背中のフィールドランスを取り出しテツジン型に向かう。テツジン型は右腕をこちらに伸ばしてロケットパンチを飛ばしてくるが左に交わしてテツジン型に肉薄する。テツジン型は肉薄されることも構わずにナデシコへと向かっている。

(こいつ!ナデシコに目標を絞っている!!まずい!)

テツジン型の足元にフィールドランスを突き立てるがすぐに腕が飛んでくる。

一旦テツジン型から距離をとりテツジン型の周りをグルグルと飛び回る。テツジン型はこちらを気にせずナデシコへの距離を縮める。

「チューリップへの突入を開始しました!マツナガさん急いで!」

メグミちゃんの焦った声が聞こえた。

メグミちゃんの声が聞こえると同時に再びテツジン型の踵辺りにフィールドランスを突き立てる。やはり足元の対応は遅く今回は突破が出来そうだ。

「クソーさっさと破れろってんだぁ!」

思わず声がでてしまった。

急に前へ進むのを拒む抵抗がなくなった。フィールドが破れた!

推力全開のままテツジン型の背中にある相転移エンジンを狙うため方向を変える。すれ違い様に横薙に斬りつけ傷を与える。そのまま肩越しに転回し胸部グラビティブラストを狙おうとした瞬間に視界にテツジン型の右手が目の前に迫った!

「しまった!」

とっさに上に進路をとるが間に合わず脚を掴まれてしまった!

…まずいぃぃ!

まずはフィールドランスを背中にしまいラピッドライフルを装備しテツジン型の頭部に銃撃をくわえる。

赤いカメラアイを破壊するがテツジン型の動きは止まらない。俺を捕まえた腕を激しく振り回し俺はコックピット内が激しくかき回される。

「離せ!離せってんだ!」

左手にフィールドランスを握りテツジン型の腕に突き立てるが、勢いがなく装甲に阻まれる。

(どうする!どうしたら!)

ナデシコはすでに船体の半分まで突入しておりもう時間がない。

(急がなくては!この腕さえ何とかなれば!)

俺を掴んでいる腕が急に止まる。目の前にはテツジン型の胸部グラビティブラストの発射口が見えて発射口の蓋が開いた。

 

…あ!やば…

 

 

 

 

 


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