IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第13話

 束さんの発表の翌日は朝から役人との面談の連続だった。先ずは国際IS委員会の日本の担当者。この人は元々千冬と知り合いだったらしく千冬から話が通っていたみたいで友好的で話がし易かった。千冬の功績の賜物だろう。

 

次は日本政府の役人だ。内閣府、防衛省、総務省、外務省、経済産業省と7人ぐらい来た。

先ずは束さんの発言について迷惑を掛けますと謝ったのだが、彼らの目的は束さんの居場所だった。

俺は

「知りません!」

と答えても

「護衛だったのだろう!知らない訳がない!」

と返ってくる。

そんなやり取りを繰り返すうちにいい加減頭に来たんで

「何だったら束さんに連絡取りましょうか?もし俺が『面倒』を掛けるって言った瞬間に何が起こるか分かりませんよ?ですから本来の話をしてくれませんか?」

 

って事でやっと話が進み。ISの稼働データを渡す代わりに報酬と更に弾薬の補充を受けれる事になった。

防衛省の役人にラピッドライフルの弾を渡し試作を作った後に試験をすることとなった。

後は今後の為の顔合わせとなった。

 

次はIS学園の理事長と会って話をした。女性の学園長で旦那様がこの学園の用務員をしているそうだ。

 

これだけで1日かかってしまった。入学まで残り3日だ。

だが今日から自由に学園を動ける様になったので夕方にIS学園をランニングがてら廻ってみた。

地図を観て知っていたが四方を海に囲まれていて、更に緑もあってとても綺麗な学園だ。港には海上自衛隊と海上保安庁の船が泊まっており警備は厳重の様だがこの島の中には駐屯地や分屯地は無いらしい。

つまり襲撃があっても陸上戦力は時間が経たなければ来ないと言うことだ。

今日は40分ほど走ったところで折り返した。

とてつもなく広い。アリーナが3つとキャノンボールファスト場があり一つ一つがとても大きい。

 

時々すれ違う女生徒達は俺を見てはひそひそと噂話しをしているようだ。

 

居心地が悪い…

 

寮に戻ると千冬が戻っていたが…シャワーを浴びたのか下着姿たった。

 

うん、とても綺麗だ!出るところは出て絞まる所は絞まっている。程よく筋肉もついていてとても健康的だ!!

 

俺はそのまま部屋を出て寮の外で10分程時間を潰した。

 

…戻りたくねぇ!!何されちまうんだ!?

 

部屋のドアをノックして恐る恐る中に入るとジャージ姿の千冬が自分のベットに座って雑誌を読んでいた。

「トウヤか。さっきの事は気にしなくて良いぞ。あれは私の不注意だったんだ。むしろすまなかったな」

千冬は怒る事もなくそれどころか謝ってきた。

 

「いや…こっちこそ済まなかった」

俺も頭を下げた。

故意ではなくても女性の下着姿を見てしまったのだ。

気にするなと言っている。何度も言われると恥ずかしいから止めてくれ」

千冬は顔を赤くしてしまった。

 

可愛い…

 

そう思ってしまったのは内緒だ。

「分かった。じゃあシャワーを浴びてくる」

俺はバスタオルと着替えを持ってシャワー室へ向かった。

大分前の千冬シャワー室乱入未遂事件以来、シャワー室の鍵を閉めるようにしている。

 

 

 

「トウヤ…いつになったら私を襲ってくれるのだ…あと3日で別々の部屋になってしまうのに」

ベッドで雑誌の『インフィニット・ストライプス』を読む振りをしながら私は悶々としていた。

私たちの関係は近付いているはず。一昨日のデートでも腕を組んでも嫌がる事もなくずっと廻った。膝枕もしてくれた。

 

でも私の下着姿を見ても反応するどころか逃げ出してしまった。

 

風呂上がりのあの姿でトウヤを待つのはとても寒かったのだぞ!

 

今からシャワー室に乗り込みいっそ私から襲ってやろうか…

 

でも嫌われたくない…

 

そんな事を私の頭の中ではグルグルとループしていた…

 

 

 

 シャワーを浴びながらこの世界に来てからの事を考えていた。

ずっと千冬に頼りっぱなしだった。千冬がいなくては俺はこの世界でこんな充実した生活を送れなかっただろう。

千冬には感謝している。

そうだ!千冬に感謝の気持ちを贈ろう!明後日の昼からレゾナンスに行って何か買ってこよう。

何が良いかな?腕時計は既に持っているし…ネックレス?良いかも…そうだ!ネックレスとピアスをセットにしよう!!

 

後でレゾナンスの宝石屋に電話して何が何でも取り寄せてもらおう!

 

急いでシャワーから揚がり、部屋に戻る。部屋の備え付けのパソコンを開きレゾナンスの宝石屋の電話番号を調べる。

すんなりと出てきたのでそれをメモして…どこで電話するんだ?

…………山田先生!!

 

制服に着替えなおして校舎へと走る!!

 

なんで俺は走っているんだ?

 

シャワーから出たばかりなのにまた汗をかいてしまったじゃないか!

 

改めて歩き校舎の職員室に着いた。

ここの場所は知っていたが入るのは初めてだ。千冬の職場でもある。大きく深呼吸をしてノックをして入るとやはり空気の違う空間が存在した。なんて言うか女の匂い?

「あれ?あなたがマツナガ君?」

知らない人が俺に声を掛けてきた。

「はい。マツナガ・トウヤです!宜しくお願いします」

なんて緊張して挨拶をしてしまった。

俺の挨拶に一斉に職員室中の人が此方を向いた…

怖いよ…

 

「あれ?マツナガさん!?織斑先生なら寮に居ませんでした?」

職員室の左の方から山田先生の声が聞こえた。

「あっ、山田先生に用があって来たんです。ちょっと良いですか?」

頭を少し下げると山田先生が此方に歩いてきてくれる。

「どうかしましたか?」

「実は少し携帯電話をお借りしたいのですが」

直球で言うと山田先生は不思議そうな顔をした。

「構いませんがどうしたのですか?」

「実はこの2週間お世話になった織斑先生に贈り物をしようと思いまして、レゾナンスのお店に見繕いを頼みたいのです」

そう言うと山田先生は笑顔になり

「素敵ですね!携帯電話を取ってきますからちょっと待ってて下さい!」

山田先生は走って職員室に戻っていった。

廊下に出て待つと山田先生が戻ってきた。

「はいどうぞ。使い方はどうですか?」

「ダイヤルは0から9ですよね?」

基本を聞いてしまった。

「はい。ボタンを押してロックを上にスライドさせて電話のマークを押してください。そしたらテンキーが出ますからダイヤルです。じゃあ私は職員室に戻っていますから終わったら返しに来てくださいね」

山田先生は職員室に入っていった。

ひとまず校舎を出て近くのベンチを探し座ると店に電話をした。

店は直ぐに電話に出たので

『贈り物をしたいがそちらには品物を選ぶために行くことが出来ないので予算が40万円(政府からの支度金で100万円あります)程でイヤリングとネックレスが欲しい。とても大切な人への感謝の気持ちを伝えたいのでそれに合った品物をお願いしたい。こちらが行けないのでノークレーム、ノーリターンで約束します。明後日取りに行きます』(要約)と伝えると了承してくれた。

最後に名前と電話番号を聞かれたのでマツナガと名乗った瞬間に大騒ぎになってしまった。

なんとかごまかしたが疑われているようだった。番号はこの携帯に掛けて欲しいがこれは借り物なので山田が出ると伝えた。

 

電話を切ると校舎へと歩き始めた。

そこへ突然背中に殺気を感じたので慌てて横の茂みに飛び込むと殺気の感じた方に更識が立っていた。

 

…イラっとしてしまった。

 

「更識!君はイタズラが好きなのか?折角今日卸したばかりの制服が汚れるだろうが!」

強めの口調で文句を言ってしまった。

更識は口元をまた扇子で隠して喋り始める。因みに扇子には『試練』と書いてあった。試験の間違えじゃないのか?

「マツナガさんが鈍ってないか試させてもらいました。問題無かったようですね。3日後の放課後に生徒会室に来て頂こうかと思って伝えに来ました。案内は同級生の布仏本音(のほとけほんね)が案内しますので教室で待っていてくださいね」

そう言うと扇子を閉じる。その口元は笑顔だった。

「分かった。だが今後は背中から殺気とかやめてくれ。いざという時に確認をするようになったら護衛対象が傷付く可能性があるんだからな。それぐらい理解しているだろうが」

「そうでした。試すような事をして申し訳ありません」

更識は頭を下げて素直に謝ったのだが…

「ですが電話の声はもう少し下げた方が良いですよ?『大切な人に感謝を伝える』マツナガさん」

そう言うと走って逃げていった。

 

 

聞かれてたのかよ!!

 

 

 


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