IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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第12話

 外出の次の日。

俺は千冬に連れられて研究施設らしき場所に連れてこられた。

寮の出口から目隠しをされイヤーマフまで着けられ手を引かれてだったので詳しい場所は全く解らない。エレベーターに乗り上に浮かぶ感覚があったので地下であることぐらいしか分からないのだ。

「トウヤ、今日は束に会って貰う。一応は束に事前に話をしておいて興味を持ったようだから会話にはなると思う。多分…」

 

珍しい…千冬が弱気だ…

少し不安になっちまうじゃないか。

なんて考えていると突然部屋の扉が開くと外から兎の耳の生えた巨乳のアリスが現れた。しかも

「ちぃーーーちゃーーーん!!」

と叫びながらだ…

「ちぃーちゃん!会いたかったよぉ!ちぃーちゃんから電話来た瞬間に鼻から愛が溢れ出ちゃって大変だったんだよ!!さぁ愛を確かめ合うためにハグしよう!!」

アリス兎は千冬に抱きつこうとするが千冬の腰の入った右ストレートを額に食らって

「フベラっ!!」

ゴン!!

なんて声と音をあげて入ってきた扉に激突した。

 

何なのでしょう。この状況は…

 

吹っ飛んだアリス兎は何事もなかったかの様におでこを押さえながら立ち上がると

「ちぃーちゃんの愛は相変わらずハードだねぇ!また鼻から愛が溢れ出ちゃうよ!!」

などと言い千冬の方へまた走り出した。

 

まさか…効いていないだと!!

奴は化け物か!!

 

「束、いい加減にしろ。話が進まん」

千冬に向かい走るアリス兎の顔を手で押さえて抱きつかせない千冬。

ん?今、束と言わなかったか?もしかしてこの人が篠ノ之束博士なのか!?

「トウヤ、こいつが篠ノ之束だ。おい束、そこにいるのが私を倒した男で異世界から来たマツナガ・トウヤだ。自己紹介ぐらいしろ!」

篠ノ之博士が走るのをやめると千冬も手を離す。

篠ノ之博士がこちらを向くとジッと見つめてくる。

…なんだ?

「やあやあ、私があの天才な束さんだよ!宜しくね!君がちぃーちゃんを倒したっていうマツナガくんかぁー!これからはトーくんだね!」

そう言った瞬間にワンステップでこちらに飛んできた!

「ど、どうも…私がマツナガ・トウヤです」

あまりの出来事に呆気に取られてしまい名前しか言えなかった。

「トー君の模擬戦を見せて貰ったよ!凄いねぇ!ちぃーちゃんを倒すなんて!正直束さん作ってたISのプラモデルを握りつぶしちゃったよ!トー君のISも面白そうだしね!ちょっと調べさせて貰えないかな?」

え?

あまりの展開の速さについて行けず千冬の方を見ると頷いていた。きっと話が出来ているのかも知れない。

俺は首に掛けてあるエステバリスを篠ノ之博士に渡すと凄い早さで入ってきた扉の向こうへ走っていった。

 

「千冬さん?」

千冬が頭を抱えていたがこちらを向くと半笑いで

「あれがあいつの普通だ。気にするな」

 

天才と何とかは紙一重って言葉が有るぐらいだから篠ノ之博士もきっとそうなのだろう。

 

「千冬と篠ノ之博士はいつ頃から知り合いなのですか?」

千冬と俺は部屋にある椅子に腰を下ろし話を始める。

「私があいつの父親の剣道場に通い始めて会ったのが初めてだ。昔から人見知りが激しくて友達がいなかったみたいだ。だが何故か私と一夏には凄く懐いてな。それとあいつは妹の箒を溺愛している。あっ、そうだ言ってなかったが箒も新入生で入学してくる。仲良くしてやってくれ」

 

ホウキ?

 

「どんな字を書くんですか?」

「竹冠に帚星(ほうきぼし)だ」

篠ノ之家は名前の付け方がずれてないか?

「面白い名前ですね」

「いや、変わってるだろ」

二人して小さく笑ってしまった。

「分かりました。話してみます」

「頼む。箒は苦労しているんだ。6年前の白騎士事件が起きてから篠ノ之一家は離散してしまった。束かISのコアを作れないから、篠ノ之一家を人質にコアを作らせない為に要人保護プログラムで各地を転々とする羽目になってしまった。しかも束は行方不明。もしかしたら箒は束を恨んでいるかもしれないな。なんせ箒は一夏に惚れていたからな」

引き裂かれた初恋ですか…箒さん、歪んでなきゃ良いが。

「注意深く見ています。箒さんが一夏に惚れてたら押してあげますか?」

「そんな事はしなくて良い。女は奪い取るぐらいが良いんだ」

そりゃ千冬さんの考えでしょう…

さすがは世界最強の女性ですね。気構えが違うわ。 

 

「トー君!IS返すね!!面白いねぇトー君のIS!重力制御なんてしちゃってるしナノマシンは神経伝達に使ってるの!?あとなんで内燃機関がないのかなぁ!?」

扉が開くと同時に物凄い勢い部屋に飛び込んできた篠ノ之博士。俺の前でぴたっと止まり質問責めをしてきた。

「束、落ち着け。それとその話は後で時間を作るからすまんが私の話の返答を聞かせてくれないか?」

千冬は篠ノ之博士を椅子に座らせる。

「あ!うん!あの話ならOKだよ!束さんに任せといて!近日中に束さんから世界に発表しとくね!んでんでさっきのISはトー君の世界の兵器?」

話終わるの早い!

なんだか心配して損した。

「そうです。エステバリス言う名前です。ナノマシンはIFS(イメージ・フィードバック・システム)で神経をエステバリスに接続して体を動かすイメージでエステバリスを動かします。重力制御は重力推進に使っていますし、私のいた世界では重力制御は戦艦やコロニーなど大容量のエネルギーが有るところで重力を発生させるのにも使用していました。エステバリスに内燃機関が無いのは母艦から重力波エネルギーを受けてエネルギーとしていたからです」

エステバリスの説明をすると篠ノ之博士は目を輝かせて俺の顔に自分の顔寄せてきて

「凄い!エネルギーを電波にしちゃう!!重力制御!!見たい!触りたい!作りたーい!!

トー君!束さんと仲良くしてね!困ったことがあったら束さん頑張って助けちゃうから」

と言った瞬間!

「たばねぇ!顔が近いぞ!!」

と篠ノ之博士の頭を鷲掴みして引き離した。

 

「あ、篠ノ之博士、宜しくお願いします。早速なのですが俺を元の世界に帰す方法とかを探して欲しいのですが」

「それは束さんでも分からないから研究するね!それとこれからは束さんの事は『ラブリィー束さん』って呼んでね」

「はい、分かりました、束さん」

ラブリィー束さんとか恥ずかしくて言えないわ。

「トー君のケチィー!」

束さんは頬を膨らませている。

あっ可愛いかも。

千冬は時計を確認してこちらを観ている。

そろそろ時間か?

「束、トウヤ他に何かあるか?」

立ち上がり腕を組んで束さんと俺を見る。

俺と束さんにアクションが無いことを確認すると

「よし、ならこれで終わりにするぞ。束、わざわざ来て貰って済まなかったな」

「束さん、ありがとうございます」

千冬と俺でお礼を言うと束さんはこちらを向いて

「お礼ならちーちゃんに『あいし…』ギャァーーー!!ちぃーーちゃん頭が割れるぅーー!!」

「さっさと帰れ!!」

千冬が束さんの頭を掴み扉の方へ投げた…

束さんは扉に激突したが何事も無かったかのように起き上がって

「ちーちゃん、トー君バイバーイ!!」

と言って走って消えてった。

嵐が去った後のように静かになった。

俺は呆気にとられてしまった。俺は千冬の顔を見ると千冬は束さんの出て行った扉を見て優しい顔をして笑っていた。

なんだかんだで束さんの事が好きなんだな。

「どうやらトウヤはお気に入りの仲間入りしたらしいな」

いつの間にかこちらを見ていた。

人見知りが激しいと言っていたがもしかして最初がそうだったのか?そうだとしたら人見知りなんてレベルじゃないぞ。存在を認識してないんじゃないか?

「そうなのか?」

「そうだぞ。アイツが人に対して騒ぐなんて見たことがない」

「そっか。助力を頂けるならとても助かる」

「助力で済めば良いがな」

「何ですかその意味深な言葉は」

「(ふふ、何でもない」

千冬は薄く笑いながらそう答えた。

 

俺はここに来たときと同じく目隠し、イアーマフをされて寮の入口まで戻された。

 

 

 

そして夕方、部屋でISの勉強をしていると千冬が慌ただしく駆け込んできてテレビを点ける。

「見てみろ。束だ」

テレビを見るとさっきと変わらない格好の束さんがテレビに映っている。

 

「世界中の束さんのファンの皆さんヤッホー!ちーちゃん見てるぅ?今日は束さんから皆さんに発表がありま~す」あ相変わらずのマイペース。千冬が頭を抱えている。

「発表と言うのは!なんと世界に2人目の男性IS操縦を紹介しちゃいまーす!名前はマツナガ・トウヤ君!束さんの護衛をして貰っていた人なんだよぉ!4月からIS学園に行くけど邪魔したら…分かるよね!!彼には束さん特性のISが有るから日本の政府の皆さん!面倒見てあげてね!でも面倒は掛けちゃダメだよ。それじゃあまたね~」

 

束さん…半端ねぇ。政府の役人に会うのマジで嫌になってきた…

俺のせいだけど迷惑かけてスミセン…

 

「あのバカ…面倒を増やしやがって…」

バキっ!!

手に持っていたリモコンが潰れた。

俺にオーラを見る力が有ったのならきっと今、千冬の周りは黒オーラを纏っているのだろう。

 

「トウヤ、きっと明日からは忙しくなるから覚悟しておけよ。それと明日から外にでる時間は自由になる。その代わりIS学園の制服を着て貰う。後で持ってくるからサイズの確認をしておいてくれ」

そういうと千冬は外に出て行った。

 

 

暫くは退屈しなくて済みそうだなぁ…

 

 

はぁ~。

 


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