IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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千冬のターン!


第11話

 まさか!トウヤの膝枕!!

 

幸せだ!!

 

もう死んでも良いかもしれない!

 

いや駄目だ。私は彼の子を生むまで死なない!!例え世界のISが私に襲いかかって来ようとも私は生き抜いてみせる!!

 

高鳴る心臓をトウヤに知られないかと心配になるが段々と落ち着いてきた。

この暖かい日光のせいで段々と意識が遠退いてくる。

こんな時間が続けば良いなと思った。

 

 

 

ふと目が覚めた。どれくらい時間が経ったのか。トウヤは私を膝枕したまま寝てしまったようだ。

腕時計を見るともうすぐ戻らなくてはならない時間だ。

私は起きあがりベンチから立つとトウヤを起こすために腕を伸ばし後少しで届くところで手が止まってしまう。

 

トウヤの胸元にあの青い宝石が見えた。エステバリスの待機状態だ。

 

胸がモヤモヤする。

 

誰か分からない相手に嫉妬している。

この宝石の由来すら知らないのに嫉妬している。

 

このモヤモヤを晴らすために私はトウヤの唇に私の唇を合わせてしまった。

 

ほんの短い時間だった。

 

でもとても嬉しく思ってしまった。

そして至福の時間だった。

 

 

そしてトウヤを起こす。

「トウヤ。トウヤ。トウヤ起きてくれ」

 

肩を揺すると目を開けた。

私の顔は赤くないよな…

 

「そろそろ帰ろう。授業が終わってしまう」

「そうだね。帰ろう」

トウヤは立ち上がると私はトウヤの腕に抱きつき駅に向かって歩き始めた。

 

恋人…

 

今の気分は私たちは恋人だ。

 

いつかは本当の恋人になりたい。

けどイヤリングの事は聞かなくては。

 

駅に向かいながらそんな事を考えていた。

 

 

 

駅に着きモノレールを待っている。この時間でさえとても嬉しいが…

イヤリングの事が気になる。

「なぁトウヤ?」

「なんだ?」

「トウヤの持っているイヤリングはトウヤの物なのか?」

 

遂に聞いた!

気になっていたことをやっと聞けた!

トウヤの顔は見れない。怖くて見れない。

トウヤの答えが怖くて聞きたくない…けど聞きたい。

 

「いや…俺のではない」

 

やっぱりか…

 

「だれのなのだ?」

 

声が少し強くなってしまった。何に怒っているのだろう。

 

「同僚だ」

 

ただの同僚な訳がない。

 

「親しかったのか?」

 

嫌な女だな…私は。

 

「比較的…」

 

浮気を問い詰めるみたいだ。私は恋人でもないのに。

 

「どれくらいなのだ?」

 

きっと相手はトウヤの事が好きだったんだな。

 

「食事を一緒にするぐらい」

 

きっと楽しかったんだろうな。

 

「それくらいで宝石のついたイヤリングを渡すとは思えないな」

 

もうやめたい。

 

「そうですよねぇ…」

 

これ以上は聞きたくない!

 

「恋人だったのか?」

 

…いってしまった。

 

「違うぞ」

 

え?

 

「恋人ではないな。話すと長いが聞くか?」

 

恋人じゃない!?

 

「聞かせてくれ」

 

トウヤ曰く、このイヤリングはエリナというネルガル重工会長秘書兼ナデシコ副操舵士の物でトウヤの護衛対象だったらしい。

モノレールに載ってからも話は続くが…親しい。

間違いなくエリナはトウヤに依存していただろう。

辛い時に側にいたら惚れるだろう。

トウヤは護衛になったから仲良くなったと言っているがトウヤはどうなのだ?

 

「それだけか?トウヤはどう思っていたのだ?」

 

好きだったんだろうな。

 

「俺か…好きだったのかな」

 

やっぱり。

でもなんでそんなに自信ないんだ?

護衛対象として側にいたから分からなかった?

シークレットサービスとしては良くないから?

 

分からない。

 

まぁ良い!

聞きたい事は聞けた!! 

エリナは今此処にはいないのだ!

ここは私の世界だ!

 

世界一を掴み取った私に掴み取れ無い物などない!

 

「千冬?」

 

いかん…熱くなりすぎてしまった。

 

「あぁ、トウヤにそんな相手がいたとはな」

 

待っていろよトウヤ!お前は私のものだ!

 

「まぁ…な」

 

どうやって攻めるか。

モノレールを降りてからもトウヤをどう落とすか考えている。

・胃袋(一夏に教わる)

・既成事実(トウヤが3学年になったら)

・拉致(束に助けて貰う…束もライバルになりかねん)

 

今のところはこれぐらいしか思い付かない。

学園の小娘達はどう処理しようか。常に隣に居ることは出来ないからな。注意深く見ておくしかないか。

 

「あの、千冬?」

 

いかん旦那様を放っておくとはいけない妻だな。

 

「なんだ?」

 

「まぁ…そのなんだ?あまり気にしないでくれ。3年間はここにいるから」

 

当たり前だ馬鹿者。

3年で済むと思うな。

 

「そうだな」

 

70年は一緒に居て貰おう。

 

私たちは正門を潜り寮に向かう。

その後は好きな名前を教えて貰い生まれてくる子供達の参考にしていた。ノートに書き留めておいたのは言うまでもない。

 

 

 

 


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