IS ~銀色の彗星~   作:龍之介

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すみません。今回は短いです。


第10話

 私たちは今、レゾナンスのパスタ料理のお店でパスタを食べている。

改めてトウヤの戦略眼には驚かされる。ISの弱点を既に分かっている。数の少なさと女性しか動かせない体力的な弱さ、兵器への過信による補給への軽視。スポーツであり続ければ気付かずに、気にせず済むが『女性が強い』等と思ってしまっている今の世界は悲劇を生みかねない。

 

…トウヤ、お前はやはり素敵な男だ!!

 

私はもう…

 

「千冬?このパスタ食べるか?」

おっと…いかん。

 

 

ッハ!…グフフ…

 

 

「ああ。食べさせてくれ」

「え?」

「あ〜ん」

トウヤと間接キス…濡れてしまいそうだ!!

 

フフフ…トウヤが困った顔をしている。

 

「だから、あ〜んだ」

 

私は巣で親鳥から餌を待っている小鳥の様に口を開けてトウヤのフォークを…いや、スパゲティを待つ。

トウヤは自分のスパゲティをフォークで巻き取ると私の口へと…

 

ハグ…

 

あぁ!なんて美味なのだ!!

トウヤのフォー…スパゲティは!!

そしてこれが伝説の『あ〜ん』なのだな!!!

 

「美味いな。じゃあ、私のもあげよう」

いたって冷静に…

自然に…

 

一口巻き取って…

「あ〜ん」

「あ…あ〜ん」

フフフ…トウヤの顔が真っ赤だ。意識してくれている。

 

ハグ…

 

「どうだ?」

「美味しいな」

そ、そうか!旨いか!

 

すかさずスパゲティを巻き取り自分の口へ運ぶ。

パク…

 

最高だ!!

私はこの一口であと3年は戦える!!

 

本当は毎日補給したいが…な。

 

その後私たちは銀行、本屋と回った。トウヤは本屋で時間をかなり使っていた。この世界の情報を欲しかったらしく、歴史の本を中心に読んでいた。

 

話を聞くにどうやらISが現れるまでの歴史に大差はなかったらしい。今度教えて貰おう。

 

だが!

 

私にはそれよりも気になっている事がある。

 

それは…

 

トウヤのISの待機状態の時の青色の宝石だが解析した時にあの宝石は未知の鉱石だったらしい。サンプルが無いため詳しい事は分からない。だがトウヤは『イヤリング』と言っていた。男があんなに大きなイヤリングを着けるとは思えない。

誰から貰ったのだろう。

それとも誰かに渡すために買ったのだろうか。

とても気になっている。

 

彼女がいたのか?それどころか結婚をしていたのか?

 

なぜか私は聞いていない…

 

怖くて聞けていない…

 

だが!それ以上に…

 

私と同じ部屋なのに全然襲ってくる気配がない!!

もうすぐ学生になるため寮へと移ってしまうというのに!

 

私はそんなに魅力が無いのだろうか…

 

こちらから襲ってしまおうかと何度思ったか…

 

欲求が不満だと騒いでいるではないか!!

 

隣を歩いているトウヤに寝不足の気配は無い…

 

意識していないと言うことか。

 

あと5日間。

 

何としても落としてみせる!

 

ブリュンヒルデの名に掛けて!!

 

あ…鼻血が出てきた…

 

 

 

 レゾナスの外、遊歩道を歩いていると俺の隣で千冬が鼻血を出している…

 

いきなりどうした!?

 

ティッシュで鼻を抑えている。

 

「大丈夫か?」

俺は両肩を掴んでベンチに座らせる。何か興奮してしまったのか。

 

「すまない。なぜか鼻血が出てしまった」

 

千冬の顔が赤くなっている。

 

「気にするな。誰だってあるよ」

俺も千冬の横に座る。

「血が止まったら少し横になるか?膝ぐらい貸すぞ」

 

俺の提案に千冬は

 

「すまない」

 

と言ってすぐに横になった。

 

少し緊張してしまうが千冬の顔がこっちを見ている。

 

「どうだ?少しは楽になったか」

「うん。楽になった。暫くこのままでいいか?」

「いいよ」

千冬は目を瞑って静かになる。

 

時々カップルや夫婦が通り恥ずかしいが…

 

平和だなぁ。

 

ナデシコのみんなは大丈夫だろうか。

あのボソンジャンプの後はどこに行ったのか。前回は火星から8ヶ月掛けて月軌道だったか。

 

考えても仕方ないが気になる。

 

千冬を見ると…寝ているのか?

 

髪の毛を撫でる。

反応が無い。

寝ている。

最近は俺の件と新入生の準備などで忙しかったのだろう。

千冬には本当に感謝している。

ゆっくりしてもらおう。

あっ!後で携帯電話を買わなくては…って誰と連絡とるんだ?

俺の知り合いは学園の中にしかいないのに。

 

太陽の光が暖かい。小春日和と言うのだろうか。

 

眠い。

 

俺も少し寝ようかな。

 

 

 

「トウヤ。トウヤ。トウヤ起きてくれ」

肩を叩かれて目を開ける。

 

千冬が目の前に立っている。

「そろそろ帰ろう。授業が終わってしまう」

「そうだね。帰ろう」

俺が立ち上がると千冬は行きと同じく腕を組んで、俺たちは学園へと足を向けた。

 

 

モノレールの駅でモノレールを待っていると

「なぁトウヤ?」

「なんだ?」

「トウヤの持っているイヤリングはトウヤの物なのか?」

 

え?まさかコノタイミング?

 

「いや…俺のではない」

「誰のなのだ?」

 

うげ…言うのが怖い…が言うしかないよな。

 

「同僚だ」

「親しかったのか?」

 

怖い…

 

「比較的…」

「どれくらいなのだ?」

 

怖い…怖い…

 

「食事を一緒にするくらい」

「それくらいで宝石が付いたイヤリングを渡すとは思えないな」

 

神よ…

 

「そうですよねぇ…」

「恋人だったのか?」

 

ん?

 

「違うぞ?恋人ではないな。話すと長いが聞くか?」

「聞かせてくれ」

「これを俺に預けたのはナデシコの副操舵士のエリナ・キンジョウ・ウォン。彼女は俺の世界の最大手のネルガル重工と言う会社の会長秘書だった」

「なに?会長秘書で副操舵士?」

「そう。会長もパイロットとしてナデシコに乗っていたので一緒に付いて来た。そして後から会長の護衛として俺も配属されたんだ」

「フムフム」

 

ここでモノレールが来たのでモノレールに乗る。

 

「俺がナデシコに月基地で乗る前日にとある会話の映像が月面都市中に放送されたんだ。その映像はナデシコの提督に会長とエリナが木星蜥蜴の正体が元々は地球人であったこと。その事は地球連合政府と極一部の人しか知らない内容だった。その為エリナは暗殺される危険があった。元々会長の護衛に着く予定だった俺が会長の命令でエリナの護衛に着く事になったんだ。それで仲良くなった」

「それだけか?トウヤはどう思っていたんだ?」

 

ぐ…随分突っ込んで来るな…

 

「俺か…俺は好きだったのかな」

「……」

 

 

千冬が何も言わない。

 

「千冬?」

 

「あぁ、トウヤにそんな相手がいたとはな」

「まぁ…な」

 

モノレールがIS学園前に着いた。

俺たちはモノレールを降りると学園に向けて歩るく。

レゾナスの時と違い楽しい雰囲気がない。

俺達は気まずい雰囲気になっている。

 

なんて言ったら良いのか。分からない。

千冬とはなんとか良い関係でいたい。

利用するとかでなく…

 

「あの、千冬?」

「なんだ?」

明らかに沈んでいる。

「まぁ…そのなんだ?あまり気にしないでくれ。俺は3年はここにいるから」

「そうだな」

「宜しく頼むよ織斑先生!」

こんなんで良いのかな…

 

正門を入り寮へと向かう俺達は、なんとか普通に会話するまで戻っていた。

 

 


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