はい
亀更新です
それでも楽しみにしてくださる方々がいて嬉しいです
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親衛隊の損害は部隊全体の3割を超えていた。
同行している他部隊も同程度の損害を被ったらしい。あんな船を正式採用した奴等、いつか絶対にぶっ殺してやる。そいつ等の頭は絶対にバカガラス並だ。殺しても問題ない。むしろ殺した方がいい。
そんな物騒なことを考えるぐらい俺の心は荒んでいる。
「・・・皆、殿下のために今までよく戦った。・・・馬鹿野郎どもが。俺が殿下を独占しても知らねぇからな」
その呟きは嫌にひりつく風の中へと消えていった。この言葉が彼らの下に届くかどうか・・・。
俺が1人で立っているのは宿営地から少し離れた丘。そこで、俺達は宿営地の設置作業もそこそこに戦死者の埋葬を行った。
墜落した戦列艦に乗っていた奴らの遺体は回収できない。せめてもの変わりにと墓標に人数分の剣を突き立てた。
コルベットでの戦死者は弔うことが出できた。彼らは戦闘の最中、ペジテのガンシップから放たれた弾丸をその身で受け止め、殿下を守ったのだ。ある意味、奴らは幸福だったかもしれない。親衛隊として我等が殿下を守りきることができたのだから。
兜を脱いで、直に地上の風を感じると心が落ち着く。怒りも、悲しみも、虚無感も、消えはしないが少しずつ治まってきた。風がざわついているのが気になるが・・・。
「ナギ、貴様が居たか」
「・・・!殿下・・・」
「顔を上げたままでよい」
「ハッ・・・」
慌てて跪こうとしたが、先んじて殿下が制した。
まさか殿下がこのタイミングでいらっしゃるとは・・・。殿下の気配に気付かないなんて・・・俺も相当参っているようだ。
「貴様も負傷したのか」
「かすり傷程度です。ご心配には及びません」
殿下が俺の頭に巻かれた包帯を見る。既に止血されているが、大事を取ってと巻かれた物だ。心配させるのなら取ってしまおうかと考えていると、こちらを見る殿下の顔を見てあることに気付いた。殿下の頬に僅かな筋が・・・涙が流れた跡が残っていたのだ。
「殿下・・・」
「私は彼らの忠義を忘れない」
俺の一言で察したのか、殿下は俺から顔を背けて墓を見た。その仕草に、俺は言いようのない悲しみを抱いた。
「だが、私にできるのはお前達を死地に連れて行くことだけだ」
殿下の言葉は普段からは考えられない程に儚く脆い。抱きしめてしまいたい程に。だが、それはできない。あまりにも畏れ多すぎるから。
「それだけで十分です。殿下」
そう言って俺は殿下の前に跪いた。貴女だから俺達は身を盾にする。部下のために涙を流す貴女だから、俺達は喜んで共に死地へ赴ける。
「・・・阿呆が」
貴女に涙は似合わない。だからそうやって呆れたように微笑んで下さい。
「首尾は?」
「よくないですね」
宿営地のほぼ中心位置に設置された幕舎は指揮所として機能していた。俺が居ない間、ネイルが指揮を取っていたが、どうやら現状はあまり良いものではないらしい。
「人員があまりに減りすぎました。3割超えの損害なんて、普通なら壊滅と判断されてもおかしくありません。物資の喪失も無視できません」
「殿下が無事なら問題ない」
「勿論そうです」
苦言を呈しつつも、殿下の事には手放しで賛同するあたり、こいつも流石親衛隊である。とりあえず、そのあまり良くない現状を聞くことにした。
「カタリが陣頭指揮をとって宿営地の首尾を固めています。ただ、武器と弾薬の喪失で防衛用の火器が不足しています」
「駐機している戦列艦からある程度引っぺがせ。銃座の重機関銃があるだろ?」
「それと、周囲に偵察隊を派遣したところ、どうも人が居た痕跡がある、と」
「見張りを増やして警戒を強めろ。少し離れた所に蟲使いを置いてるだろ。報酬増やすから警戒に加わらせろ」
「分かりました。それで・・・もう1つ。少々面倒なことに・・・?」
「何だ?」
ネイルが溜息混じり話した内容に、俺も頭を押さえて溜息を吐くことになった。
原作で殿下がコルベットで泣くシーンがとても感動的で好きです