バカガラスには固有名詞がないのでしょうか?むしろ、バカガラスという名が船の正式な名前?そんな馬鹿な
「なるほど・・・古代都市とはよい目印だ」
コルベットの船窓から地上を眺めたクロトワは感心したように呟いた。巨大な建物が腐海に呑まれている姿はどこか人類の現状を暗示しているようにも見える。第3王女クシャナが率いる親衛隊は、ここで辺境国から徴兵した戦力と合流することになっていた。
「おっと、マスクを付け忘れていた」
腐海の上空を飛んでいるのだ。いつ瘴気がやってくるか分からない。クロトワは慌ててマスクを着けようとするが、ブリッジの中央に座るクシャナは着けようともしない。
「あれ?殿下はマスクをお着けにならないんですか?」
「この高度へは瘴気は届かぬはずだ。その鳥が生きているうちはマスクはいらぬ」
ナギは嫌う考え方だがな・・・とクシャナは船体に取り付けてある小さな鳥籠に視線を向けて言った。
「ハハハ・・・。マスクなしとはありがたい」
それを聞いたクロトワは嬉々としてマスクを取って言った。
「ところで集合完了後はどこかに降りなければなりませんが?」
「着陸などせぬ。このまま一気に腐海を南進する」
この一言にクロトワは地図に伸ばしていた指を止めた。
「このまま・・・!?しかし、陣立てもせずに腐海を抜けるのは・・・」
「辺境諸国が動揺するというのか。だからこそ、彼らのガンシップがバージをひいて身重なまま進撃するのだ。わが軍の船は機動力でガンシップに遥かに劣る。いま作戦を教えては反乱が生じかねまい」
『5時の方向に船団を発見!!』
まるでタイミングを計ったかのように見張りの兵が発見の報をあげた。クワトロは彼女の考えを聞いてニヤリと唇を歪めた。
(で、足枷を付けてガンシップを連れて行くわけか・・・。顔もイイが頭もイイ。カワイイぜ、クシャナ・・・)
その瞬間、ゾクリと彼の背中に強烈な悪寒が走った。
(な、なんだ!?)
思わず辺りをキョロキョロと見渡すと、船窓からコルベットに続いて飛んでいる戦列艦がチラリと見えた。
(なんだったんだ・・・?)
クロトワは首を傾げるが、結局何なのか分からなかった。
「あの野郎!絶対、殿下に色目使ってやがる!おい!一番射手、あんの腐れ参謀撃ち殺せ!」
『了解!下種な目で殿下を見た奴は生きては返しませんぜ!』
「落ち着いてください、ナギ。そんなことをすれば、殿下も死んでしまいますよ」
「おい、射手!1発でも撃ったら、手前ェをぶっ殺すからな!」
『まだ、撃ってないから大丈夫です!』
あ~、なんか疲れた。ま、殿下に色目使ったとしても、あの参謀が痛い目見るだけだろう。
「なんで俺が殿下のお傍に居られないんだ!?」
「うるさいですよ、ナギ。ちゃんと指揮を執ってください」
俺の嘆きをネイルは簡単に一蹴してくれる。悲しいね。これでも、俺は親衛隊隊長なんだけど?
「だから、あなたをここに置いたんでしょう。如何せん、この戦列艦はバカガラスと呼ばれる脆いですからね。あなたがしっかりと指揮をとらないと親衛隊は全滅してしまうのですから」
「分かってる。けどな?殿下と見れないのは辛いんだよ?」
「分かってますよ。そして、それは私達全員に言えることです」
ですよね~、じゃなきゃ親衛隊に入ってないよね~。
なんか辺境諸国の戦力も来たみたいだし、そろそろ移動か。はやく宿営地に着かないかね
「ん?」
そんなこんな考えながらブリッジの椅子に座っていると、辺境諸国に船団が見えた。揃いも揃って、ガンシップとバージの組み合わせ。重そうだな~とか思っていると、見たことのあるガンシップが接近してきた。ていうかあれは・・・。
「風の谷のガンシップ。・・・ナウシカか」
ガンシップのコックピットに座るナウシカは、この前の蒼い飛行服と飛行頭巾に戦仕立てで各所に鎧を付けていた。
ブリッジ越しでもこっちを見ているのが分かる。やっぱり気付くよな。
何気なく手を振ってみると、あっちも控えめだが手を降り返してくれた。無視されなくてよかった・・・。
「辺境諸国の戦力も集まったので移動ですね」
「そうだな」
ゆっくりと移動し始めた前方の戦列艦を見た。つか、やっぱこの船めちゃくちゃ遅ぇ・・・。こんなんで、宿営地までどのくらいかかることやら・・・。
次の更新までどのくらいかかることやら・・・