前置き回みたいな感じです
では、どーぞ
旧ペジテ市 郊外
土鬼との戦争が始まったが、トルメキア王国はそれなりに優勢らしい。クシャナ殿下の兄上等(美しい殿下とは似てもに似つかない、ぶくぶくと太った肉団子のような奴。なお、この言葉を聞かれたら俺の首は飛ぶ、職的な意味でも身体的な意味でも)が率いる各軍団は着々と侵攻を進めていて、捕虜やら奴隷やらが何万と手に入って荘園がウハウハだとか・・・え?なんでそんなことを知っているかって?それはな・・・。
「クロトワという奴・・・少しは使えるようだな」
「そのようです。殿下」
王族専用の天幕。その中の豪奢なソファに殿下は寝そべっている。俺は殿下の側に立って、話し相手をしていた。そう、何で俺が戦争の状態を知っているのかいうと、ついさっきここに着任してきた参謀クロトワっつう奴が得意げ言っていたからだ。軍学校出で平民出身だということで、俺と少し似てるな。さっき一人でペジテ市に行って、巨神兵を見てきたらしいけど、蟲使いによる暗殺もとい試験的な力試しもクリアしたみたいだし、見所はあるかもしれない。
「腹に何を抱えているかは知らんが、使えるなら存分に使ってやろう」
「はい、殿下」
俺は話し相手になりつつも、殿下には目を向けないようにしている。今の殿下のお姿は非常に軽装である。いつも身につけている黄金の甲冑と純白のマントは天幕の脇に置いてある。滑らかな白い布で出来た動き易そうな長袖の服を着ているだけで、腰に申し訳程度の短剣で武装しているだけ。
つまり・・・心臓が持たないんだよぉお!!!何、その格好!?殿下、体つきいいし、そんなんだと体の線とか普通に分かるんだよ!?わざとか!?殿下、わざとやってんのか!?だが、その熱いたぎりを一切おくびにも出さず、俺はクールに、あくまでクールに言った。そうでもしないと親衛隊隊長などやってられない。
「殿下、我々の出陣ですが・・・」
本当の所は、心臓が持ちそうになくて早く話しを進めたかっただけですけどね。
「む・・・そうだったな」
俺の態度に少し気を悪くしたのか、僅かに眉をしかめる殿下。あぁ。そんなお顔もまたお美しいやいや、早く話を進めないと。ここからは真面目だ。
「我々の戦力は親衛隊の300のみ。たったこれだけ進軍するというのはあまりにも無謀です」
「だが、その代わりに辺境国の戦力は我々が使っていいことになっているぞ?」
俺の雰囲気を感じ取ったのか、殿下の雰囲気も変わった。俺を試すような、そんな表情を浮かべている。じゃあ、答えようか。
「正直、あてになるとは考え辛いです。使えるものはいれど、統率力に欠ける。反乱の可能性も。」
風の谷のガンシップはいい性能してるけど、他の国の戦力だとスクラップ間際の船とかが平然と混じっている。しかも、自分の国の兵力は残したいから参加するのも老兵ばっかだし。これは風の谷も言えるのか?多分、城ジイ達が出張ると思うんだけど。
「私が育て上げた第3軍は今は兄上の指揮下だ。その烏合の衆を頼らざるを得まい」
ペジテ市侵攻を含めた今回の出撃で殿下が直接指揮出来るのは俺ら親衛隊のみ。俺らと辺境国の連合軍だけで土鬼に侵攻とは、どうもキナ臭い。なら、どうするか・・・俺ならこうする。
「・・・私を含め、親衛隊、そして第3軍は殿下の手足です。殿下のご命令とあればどんなことでも完遂して見せましょう。・・・膿を出すことも厭いません。むしろ、そうした方がトルメキアの為です」
殿下の目がスッと細くなる。暗に滲ませただけだったけど、どうやら意味は伝わったらしい。
「第3軍を率い、兄上等を殺して全軍を掌握しろと?・・・王族である私を前にしてよくそのようなことが言えるな」
しっかりと伝わっていて何よりです、殿下。そして、あなただからこそ、このようなことが言える。俺は無言を貫いた。
「・・・今後、王族への不敬を禁ずる。分かったな?」
「御意に」
結局、殿下も思うことがあったのか小さな溜息だけで済んだ。
天幕から出た俺は、歩哨からの嫉妬の視線を悠然と受け止めつつ、親衛隊の指揮所へと向かった。さて、今から人員掌握して部下に出動準備の命令をだしてと・・・やることはたくさん「お~い、ナギ!」なんだ、この忙しくなりそうな時に。声の方向を見ると、朗らかな笑顔でカタリが来た。なんかムカついたので、間合いに入った瞬間、蹴りをかましておいた。
「痛ッ!?なんだよ、いきなり」
「うるさい。で、どうした?」
結構バチンといういい音が鳴ったのだが、あまり効いていないようで、最初は痛がっていたが、すぐにケロリとして話し始めた。
「親衛隊は総員異常なしで、今は出撃準備中であります!隊長殿!」
「お、おう・・・。って、まだ命令だして無いし!?」
一体全体どうなってるんだよ!?カタリはわざとらしい敬礼をして
言って、
「ネイルの奴がさっさと済ませておきましょうって、やっぱり仕事出来る奴は違うな」
いや、指揮系統をしっかり踏まえて・・・もういいや、確かに楽だし。
「じゃあ、さっさと・・・」
戻ろう・・・と続けようしたところで風が地面を舐めた。途端に胸が嫌にざわめく。思わず、口を閉じ風が吹いた方向に視線を向けた。ざわつきは止まない。
「どうした、ナギ?」
「いや、戻ろう、カタリ」
キョトンとしたカタリを置いて、先に足を進める。さぁ、これから一体どうなることやら・・・。
次は戦闘回かと
なんちゅう脆い船はこの話では生き残ることができるのか!?