服装はどこか東洋の雰囲気があり、白兵戦が強いらしい(クシャナ殿下も認めてるよ!)
個人的に好きです
てなわけで、どうぞ!
時は遡って数日前
クシャナ殿下率いる我ら親衛隊はペジテ市外縁部に駐留していた。
なぜかって?
そりゃ、ペジテ市を攻める為だ。
「しかし、正直・・・」
「やってられねーな・・・」
誰だ!?俺の台詞をとった奴は!?
「やってられなねーな」
「何故二回言った」
「そりゃ、やってられないことを強調する為だよ。あ、三回目だな」
「よし、ちょっと黙ろうか?」
俺は同僚の頭をはたいた。こいつ名前はカタリ。訓練生来の同僚である。今は兜をつけていないので、俺の籠手がもろに当たり悶絶している。
「というか、隊長には敬意を払え」
「ハハハ。ナギも冗談言うようになったんだな」
「・・・今度は脚甲がいいか?」
「どうもすみませんでした」
俺の蹴りは本気でやると骨が折れる。もちろん、装甲の上からでもだ。伊達に隊長してるわけじゃない。すぐさま土下座したカタリの判断は正しかっただろう。
俺はカタリを見下ろすと、そのまま視線を移して再びペジテ市の方を向いた。今は、大慌てで防衛ないし脱出の準備をしているのだろう。
「しかし、ヴ王も・・・」
「酷な命令だすよな」
「だから俺の台詞をとるな。というか立ち直り早いな」
「伊達にお前との付き合い長くない」
ぬかしおる
ちなみに、このやり取りも訓練生の時から続いており、もはや天丼である。
そんなことは置いておいて、今回の命令はさすがに酷いと思う。今まさに土鬼との戦争が始まろうとしているのに、何が悲しくて同盟国を滅ぼさなければならないのか。
「しかし、惜しいですね。ペジテ市は有数の工房都市なのですが・・・」
「まったくだ・・・、てお前も来たのか」
「ええ。武装点検は済みましたよ」
「ご苦労だった」
この丁寧な言葉遣いの奴はネイル。親衛隊の副隊長だ。俺やカタリとは違い、貴族出身のお坊ちゃんだ。しかし、お坊ちゃんと侮るなかれ。優しい顔して容赦のない攻撃が売りのバーサーカーだ。
「戦闘狂は言い過ぎかと」
「いや、お前は戦闘狂だ。だって俺模擬戦で肋骨折られたもん」
ああ、あれは酷かった。木刀でのネイルの横薙ぎがカタリの胸に直撃したのだが、音が酷かった。周りで見ていた奴ら血の気が引いていたしな。しかも、あの時のネイルは笑っていたからな。これを戦闘狂と言わずしてなんと言おうか。ちなみに俺はネイルよりも強い。というか強くなければこの年で隊長など勤められない。風の谷にいた頃にユパ様から鍛えられた俺に死角はなかった。
「そんなことはどうでもいいですよ。問題はこれからです」
「だよな~。今回の命令は流石に感じ悪いよな。女子供まで容赦なしだろ?」
「確かに」
隊長としてはそんなことを言ってはいけないんだろうが。
「でもまぁ・・・」
「クシャナ殿下の決定だしな」
「そうですね」
「そうだな。・・・だから俺の台詞を取るな!」
今一度、カタリの頭を叩いておいた。
さて、もうそろそろで動くだろうから、指揮所の方に戻っておくか。
「では、ここは私達が」
「頼んだ」
再び頭を押さえて悶えるカタリを放置して、俺は指揮所に向かって歩く。
命令に不満はある。納得もできない。だが、全てはクシャナ殿下が決めたことだ。ならば俺たちは殿下についていくだけ。それが親衛隊、もとい第三軍なのだ。
さてと・・・。
「総員!突撃準備!!」
俺の号令を受けて、200の装甲騎兵が陣形を整え、ズラリと並び立った。重厚な装甲騎兵が並ぶ様相はトリウマの高さと相まって、物言えぬ重圧感を放っていた。
工兵部隊も動き始めた。装甲騎兵の前進を援護するロケット砲の照準を付けながら今か今かと突撃の合図が出るのを待っていた。
俺は周りを見渡して準備が完了したことを確認すると、陣形の戦闘に立つ
「戦闘準備、完了しました」
「ご苦労」
ペジテ市を眺めていた殿下は、静かに告げた。
「ナギ。今回の戦、お前はどう思う?」
黄金の甲冑と白いマントを付けたクシャナ殿下。今は兜を被っておらず、頭に付けた髪飾りが目に入った。その真剣な横顔は・・・見惚れてもしょうがないよね?
「・・・はっ」
「何か言ったからとて罰する訳ではないぞ?」
「・・納得はしかねます」
「ふん。正直だな」
そんな風に笑わないで欲しい。心臓が持たない。
「ですが、我々は殿下についていくだけです」
「・・・そうか」
殿下はそう言うと兜を被ると面頬を下ろした。
さぁ、戦闘開始だ。
うん、まぁ・・・こうなるよね。
奇襲まがいの侵攻にペジテ市が、神速と謳われる第三軍の騎兵突撃をまともに防衛できる訳もなく、瞬く間に決着がついた。なけなしの敵戦力はロケット砲で吹き飛ばされるは、俺たち装甲騎兵に蹂躙されるはで壊滅。小銃などの銃弾などは分厚い装甲の前には大して効かないのでこちらの損害は軽微だった。
その後、殲滅戦へ以降。一隻船を逃したが、それ以外はほぼ完遂された。
胸が痛いな・・・。なぜ、ここまでしなければならないのか・・・。
俺は今、殿下に付き従ってペジテ市の地下工房を進んでいる。殿下と二人きり。いつもなら泣いて喜ぶ状況だが、流石に殲滅戦の後ではしゃぐ程の図太い神経は持ち合わせていない。
「どうした?今日は暗いな?」
「いつも明るいつもりはないのですが・・・」
兜で表情は見えないはずだし、声音も平静を保っていたはずだが、殿下は鋭いな。
「理由が聞きたいのだろう?なぜ、このようなことをしたのかのな?」
「・・・。・・・はっ」
今回の戦闘はいくら殿下に忠誠を誓う部下達でも疑問を生むのに足るものだった。それでも、親衛隊の中から殿下に歯向かうが出るとは思えないが・・・。
「そう思うのも最もだ。だから見せよう、これが理由だ」
殿下は工房全体を照らす灯りをともすと、『それ』が現れた。
「こ、これは・・・!?」
目の前の光景に思わず声を失った。
『それ』は骨格のような物に筋肉、そして心臓のようなものがあった。そして、あろう事かピクピクと動いている『それ』。
「巨神兵・・・!?」
巨神兵。1000年前に産業文明を崩壊させた「火の七日間」で世界を焼き払ったといわれる化物。
なぜこれがペジテ市の地下に・・・?いやそんなことより、だからヴ王は・・・。
「ペジテ市の奴らにこれを使わせるわけにはいかなかった、というわけだ。今回の作戦は巨神兵の確保だったが・・・」
殿下は近くに設置されている黒い箱のような物を顎で指した。
「こいつが巨神兵の胎盤らしいが、復活させる為の鍵のようなモノ、『秘石』がない。蟲使い共に探させてはいるが、おそらく逃げた船にあるのだろう」
蟲使いは、その名の通り蟲を使って探索すことを生業としている者たちだ。モノ探しに関しては彼らの右に出るものはいない。(ちなみに鼻が曲がるほど臭い)それでも見つからないということはそういうことなのだろう。つまり・・・。
「すぐに逃げ出した船を追うぞ。親衛隊の中から何人か選びコルベットに乗せろ。蟲使い共もだ」
「はっ」
殿下はマントを翻して元来た道を歩いて行くが、俺は一度振り返って巨神兵を見た。
こいつを見ても嫌な感じしかしないのだが・・・。まぁ、今はいいか。隊員の選抜とコルベットへの移譲、待機組への指示などやることは色々ある。
「ナギ、早く来い」
「只今」
殿下の呼ぶ声に返事しながら、俺は地下工房を後にした。
コルベットへの搭乗組は俺を含めた7人、待機組の指揮はネイルに任せた。カタリも待機組だ。
ペジテから逃げた船は、腐海に墜落していた。すぐさま蟲使いに探索させるが、秘石の匂いはあるがそれ自体はないということ。匂いで探すとか、本当に便利なことができる人たちだよね・・・。
捜索は打ち切りになるかと思いきや、一人の蟲使いが、ガンシップの着陸跡を見つけた。まだ新しいらしく、それに乗っていた奴らが秘石を持ち帰った可能性が高いということ。で、この付近でガンシップといえば、地理的に考えて風の谷の物であるのは間違いない。
そういうわけで、俺の碌でもない里帰りが決定したのであった。
何もなければいいが・・・
王蟲のオムライス食べたい~