IS 深海の探索者   作:雨夜 亜由

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第三十話 立ちはだかる同郷

「今日で全てが終わりか」

 

 一夏はトーナメント表を眺めながらそう呟いた。

 

「ボーデヴィッヒさんと当たるのは決勝戦だね。でも、それより先に――」

 

「準決勝で沙良と、か」

 

「それも、Aブロックを勝ち抜いたらの話だけどね」

 

 次の対戦相手は、三組のアメリカの代表候補生。

 専用機は持っていないようだが、その実力は高いだろう。

 一夏は、念入りに、イメージを固める。

 勝利を勝ち取るための動きを、その頭に強くイメージする。

 

『選手、入場してください』

 

「一夏、行こう」

 

 シャルロットが、ラファール・リヴァイブ・カスタムⅡを纏って、一夏に声をかける。

 

「ああ」

 

 一夏はすぐさま白式を纏うと、シャルロットの横に並ぶ。

 

「織斑、行きます」

 

「デュノア、行きます」

 

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

「くっ!」

 

 一夏は雪片弐型を盾のように扱い、銃弾を弾く。

 一夏は得意の接近戦に持ち込めないでいた。

 伊達にここまで勝ち抜いてきたわけではないというところか。

 位置の取り方が上手い。

 一夏は、ラファールがリロードを行う隙をついて、接近を試みる。

 

「させない」

 

 ラファールは、その機体を後方へ大きく投げ出す。

 しかし、一夏はその機体を追うように、瞬時加速を重ねた。

 

「なっ!? エネルギー切れが怖くないの!?」

 

「ここで決めれれば問題ない!!」

 

 一夏は雪片弐型にエネルギー刃を纏う。

 零落白夜。

 そのエネルギーの刃はシールドを無効化する。

 ラファールに乗る女生徒の顔に焦りが浮かぶ。

 女生徒は、ライフルを一夏に叩きつけると、その衝撃で、雪片弐型の軌道上から外れようとする。

 しかし、避け切ることは出来ない。

 肩に当たることになった雪片弐型は女生徒のシールドをガリガリと削った。

 

「拙い!」

 

 女生徒はすぐさま距離を離そうとする。

 それを、一夏は利用した。

 一夏は、距離を取ろうと、初動を起こしたラファールの腹部を、全力で蹴りぬいた。

 その衝撃と、背後に飛ぼうとしていた動きが重なり、女生徒は予想以上の後退をしてしまうことになった。

 それはアリーナの壁際まで達する。

 一夏は、すぐさま距離を詰める。

 零落白夜は発動させない。

 ここまで来たら雪片弐型だけで充分だ。

 背後に逃げ場はない。

 一夏はシールドを削りきるために連続でブレードを振るった。

 

「シャルル!」

 

 アメリカの代表候補生を担当していたシャルロットは、その機体を追い詰めていた。

 接近戦に持ち込んだと思ったら、近距離でゼロ距離射撃を行い、距離を離そうとしたら、いつの間にかブレードを手にし、機体に斬りかかる。

 シャルロットの得意とする戦闘スタイルだ。

 一夏はすぐさま代表候補生に接近する。

 タッグと言うものは、戦闘に参加しなくてもその些細な行為が大きな影響を及ぼす。

 代表候補生は、一夏が接近したことにより、二人を相手取れるように、その位置取りを変更する。

 その一瞬の隙が勝負を決めた。

 

 高速切替(ラピッド・スイッチ)

 

 先ほどまでアサルトカノンを手にしていたシャルロットは、いつの間にか、その手に大型の槍を持っていた。

 代表候補生は、顔色を変える。

 それは、シールドエネルギーを削るだけではなく、その後の連携にも繋ぐことが出来る。

 その意味を代表候補生は良く分かっていた。

 

「うおおおおおお!!」

 

 代表候補生は、ブレードを展開し、シャルロットがその槍を振るうチャンスを奪おうとする。

 その行為が、敗北に繋がるとは知らずに。

 一夏は、自分から意識が離れたことを確認すると、雪片弐型にエネルギーを纏わせた。

 

「よそ見してていいのか?」

 

 一夏は背後から斬りかかる。

 その一撃は、必殺の煌きを以ってラファールに襲い掛かる。

 それをハイパーセンサーで感知した代表候補生は、すぐに体を捻り、ブレードを使い、その軌道を逸らそうとする。

 しかし、そんなことシャルロットが黙ってみているはずがなかった。

 シャルロットはその背部に『祓』を突き込む。

 その衝撃に、ラファールは機動を止めてしまう。

 衝撃が、響いている隙に、一夏はその刃をラファールに突き立てた。

 

『試合終了。勝者――デュノア・織斑ペア』

 

 会場が沸いた。

 現在は各学年八組しか残っていないため、観覧席は多くの学生で埋まっていた。

 その拍手を全身に浴びた一夏は、その場にへたり込む。

 

「勝った……」

 

 一夏は、その自分の両手を見る。

 一夏はこのトーナメントを通して、自分の実力が高くなっていくのを実感していた。

 

「一夏、やったね。僕ら、Aグループ代表だよ」

 

 シャルロットが、嬉しそうに一夏に近寄る。

 一夏はシャルロットに軽く頷きを返すと、対戦相手の元に向かった。

 

「流石だね。強かったよ」

 

「そんなことないよ。タッグだから勝てたんだ」

 

「ははは、素直に受け取っときなって」

 

 アメリカの代表候補生は、気持ちよく笑う。

 一夏もつられて笑みを浮かべた。

 こうして、一夏たちは準決勝進出を決めたのであった。

 

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 試合開始のベルと同時に沙良は動いた。

 まずは、相手を引き離す。連携を取られると後手に回ってしまう。それは避けなければならない。

 

 すぐさま『逆桜』で、斬撃の壁を構築する。

 それは縦横無尽に飛び回り、不可避の檻を作り上げる。

 しかし、それはあっけなく突破されてしまう。

 

 その方法は、ただ攻撃を受けながらも進むという、原始的な方法。

 同じ武装を利用するリナとフィオナは、その武装の特性を分かっている。

 斬撃は核となるエネルギーが最大の威力を持ち、そこから離れていくほど低くなる。

 要は、直撃さえしなければ大したダメージを与えられないのだ。

 そうは言っても、その全ての刃から直撃を免れることは簡単なことではない。

 

「くそ!!」

 

 沙良はすぐさま指向性スタングレネードを展開する。

 発射。

 その眩い閃光は、深い青の装甲を包みこんだ。

 沙良はすぐさま簪のフォローに向かおうとする。

 

「させないよ」

 

 閃光に包まれたはずの機体が沙良の前に回りこんでくる。

 

「ちっ!」

 

 沙良はその場で手を叩いた。

 すると、沙良と青い機体の間に爆発が起きる。

 機雷を放り投げたのだ。

 それを、ちょうど間で起動しただけ。

 沙良はその隙をついて、簪とスイッチを試みる。

 

「だからさせないって」

 

 しかし、その機体は、爆風の中を突っ切って来た。

 その機体は沙良の肩を掴むと、地面に叩きつける。

 

「うわぁ!?」

 

 沙良はすぐさま起き上がろうとするが、その深青の機体に、上に乗られてしまう。

 

「まさかセラに馬乗りになる日が来るなんてね。ああ、興奮するわ」

 

「ちょっと、リナ!? 目がマジだよ!?」

 

 必死にもがくが、そのたびに重心を動かし、拘束を抜け出さないように押さえつけられている。

 リナは顔を沙良に近づける。

 それを咎める様に、リナに銃弾が襲った。

 

「ちょっと、リナ?」

 

「ちょっと、フィーナ。味方に銃口を向けないでくれる?」

 

「それは、抜け駆けしようとしたリナが悪いもん」

 

「なによ、コミュニケーションじゃない。本国では普通だわ」

 

「人の上で喧嘩しないでよ!!」

 

 沙良は、リナを巴投げの要領で放り投げる。

 すぐさまリナと距離を取ると、フィオナと戦闘をしている簪のフォローに入る。

 

「簪、支援!!」

 

 沙良は、『禊』を構えて、フィオナの機体に斬りかかる。

 

「折角、かんちゃんの機体を堪能してたのに」

 

「だからだよ!」

 

 簪とフィオナを戦わせるのは得策とは言えない。

 簪の『錦』の製造に関わったフィオナは、その細かい癖、挙動、されたら嫌な行動などを理解している。

 相性が悪すぎる。

 

「別に、沙良さんでも一緒ですけどね」

 

 フィオナは沙良と同じく、『禊』を展開する。

 そして、斬り合いが始まった。

 そう思わせて、フィオナはとんでもない行動に出る。

 わざと『禊』を食らったのだ。

 その機構が発動し、その衝撃が、装甲に響く。

 

「なっ!?」

 

 その奇を衒う行動に、沙良は一瞬だが、身を硬くする。

 その沙良を、横から衝撃が走る。

 沙良が、衝撃の方向を見ると、リナがハリマーを構えていた。

 その衝撃は、沙良の機体を浮かし、壁に激突させる。

 

「『禊』は相手の行動を止めると同時に、機構を作動させている間は行動を停止せざるを得ない。ですよね? その停止時間は一秒にも満たないですけど、わたしたちにはそれで充分です」

 

 フィオナはすぐさま簪に襲い掛かる。

 簪は、リナに斬りかかろうとしていた『夢現』をフィオナに向けて振るいなおす。

 フィオナはそれを悠々と受け止めると、返す刃で、簪に『禊』を叩き込む。

 その衝撃に簪の機体が大きな隙を見せる。

 

「せーの!!」

 

 リナが、簪にハリマーを突き立てる。

 それは、加速の力も加わり、物凄いスピードで沙良と逆方向に簪の機体を吹き飛ばした。

 その簪をフィオナが追う。その手にはハリマーが展開されている。

 

「簪!!」

 

「よそ見してていいの?」

 

 沙良は瞬時加速によって接近したリナにその両腕を押さえられる。

 その際に、膝を腹にぶち込まれる。

 

「うっ」

 

 加速の乗ったその一撃は沙良の身を壁に食い込ませた。

 リナは右手にハリマーを展開する。

 背に壁を背負っている沙良には逃げる場所がない。

 

「ちょっ、やばっ……」

 

 リナが物凄い笑顔を見せた。

 

「ちゃんと看病してあげるから」

 

 リナは無防備の沙良の腹にハリマーを突き立てる。

 その衝撃は、沙良の身をアリーナの遮断シールドに押し付ける。

 逃げ場のなくなった衝撃は、沙良の機体を破壊する。

 

「かはっ」

 

 沙良がその衝撃に身を捩った。

 確実に内臓にダメージが入っただろう。

 シールドエネルギーが一気に一桁まで下がる。

 

「あと一押し!」

 

 リナがその拳を沙良の腹部に叩き込もうとする。

 そこはハリマーにより、装甲が破壊されている。

 拳でも、絶対防御は作動してもおかしくはない。

 しかし、その拳は沙良に届くことはなかった。

 リナは背に横から衝撃を受け、沙良から距離を取らされる。

 

「……沙良から離れて」

 

 簪が『鳴神』によって、射撃を行っていた。

 

「なにこれ? エネルギー減りすぎじゃない!?」

 

「だって自信作だもん」

 

 フィオナが胸を張る。

 それに簪も苦笑をもらしてしまう。

 しかし、和んでいる場合じゃない。

 すぐさま簪は『百千颪』を展開。

 

「発射!!」

 

 様々な種類のミサイルが、フィオナとリナを襲う。

 その隙に、沙良は、簪の近くへと避難する。

 

「ごめん、助かったよ」

 

「ううん。無事でよかった」

 

 簪はほっとしたように笑顔を作る。

 

「……今ので、墜ちてくれればいいけど」

 

「そうもいかないだろうね」

 

 沙良の言葉に同期するかのように煙の中から、青い機体が二機ゆっくりと出てきた。

 

「ちょっと、何その武装? DivingSystemを作動してる状態にも拘らず半分しかないんだけど」

 

「私なんて『禊』を受けている分もっと少ないですよ。でも、やっぱ凄いですね。DIVEしてなかったら墜ちてましたよ?」

 

 第二世代型ISシークエスト。

 それは作業用に設計された機体と、軍用に設計されたものの二種類が存在する。

 沙良の機体は前者。リナとフィオナの機体は後者に当たる。

 二人の纏う機体は、製作試作機の沙良の『カイラ』とは違い、全体的に戦闘機能が向上している。

 スペックだけ見ると、第三世代型にすら負けていない。

 特筆するはその硬さ。

 Diving Systemを作動することにより深海の水圧にも耐えられるその機体は、全ISの中でもトップクラスの硬さを誇る。

 

――負けたくないなぁ。

 

 その想いが伝わったのか、『カイラ』がとあるメッセージを表示する。

 

――うーん、どうしようかな。

 

 それは、とある能力の使用の提案。

 沙良は一瞬だが考える素振りを見せる。

 

――あの二人だし、問題ないよね。

 

「簪、一分任せても良い?」

 

 沙良は、決意したように簪に開放回線(オープンチャネル)で伝える。

 

「何するの?」

 

「勝ちに行く」

 

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 沙良は、その場に目を閉じて全身の力を抜く。

 それを簪は守るように二人に立ちふさがる。

 

「かんちゃん一人でやるつもり?」

 

 フィオナは首を傾げる。

 

「任されたから」

 

「そう、じゃあ、やってみなさい!」

 

 リナは機関銃を展開する。

 普通はシークエストにはそんな大層な物は積んでいない。リナが追加で積んだものだ。

 その圧倒的弾幕を、簪はただ避けることもせず、ただシールドで受け止め続ける。

 その時間を稼ぐような動作に、フィオナは気づいた。

 

「リナ! セラを狙って!! ハックされてる!!」

 

「くっ!? そういうことね!?」

 

 沙良の単一仕様能力『神の管理領域』によるハッキング。

 その能力はあらゆるものへのアクセス許可の発行。

 それだけ聞くと、何でもできるように思えるがそうではないことをフィオナは知っている。

 許可を得るというだけであって、必ず成功するわけではない。

 フィオナが同じ能力を使えたとしても、せいぜい監視カメラのハッキングが精一杯だろう。

 

 それは扉の鍵であって、扉の前まで案内してくれるわけではない。

 その扉までの防壁は自分で乗り越える必要があるのだ。

 

 それは沙良が使うから意味がある。

 世界最高峰のハッカー。

 時間はかかるが沙良はコアネットワークに侵入し、ISをもハックする。

 その条件には多くの制約があると聞いたことがある。

 その一つにあったはずだ。

 

 コアネットワークに接続する場合は、機動を停止した状態で、全神経を集中させる必要がある。

 

 いまの沙良と同じ状態。

 『絶対的管理者』。

 咄嗟には使うことの出来ない使いづらい能力。その制約ゆえに戦闘に使われることはあまりない。

 それをあえてここで使うのか。

 狙いに気づいたリナが、その狙いを沙良に向けるより早く、簪が『鳴神』をぶっ放す。

 

「……させない。任されたから」

 

 簪は、電荷を持った素粒子を、秒間二発のペースで撃ち続ける。

 その砲撃はリナとフィオナを交互に捉え、沙良への攻撃を許さない。

 

――拙い。この時間のかけ方……沙良さんはセンサーハックするつもりだ。

 

 フィオナは、沙良が何をしようとしているのかに気付き、焦りを募らせる。

 フィオナは両手にライフルを展開する。

 それを、マニュアルで狙いをつける。

 

「させない」

 

 簪が『夢現』でライフルを切断する。

 そのまま簪は沙良が守れるように、『鳴神』を構えたまま、フィオナから離れる。

 

「邪魔しないで!」

 

 フィオナは簪にハリマーを投げつける(・・・・・)

 その機構により、簪は少しの距離だが後退を強いられる。

 フィオナはその隙に沙良に『禊』で斬りかかる。

 既に機構は作動しているため、ただの薙刀としか使えないが、今の状況ならそれで充分だった。

 沙良のハッキングを止めるには、攻撃を当てるだけで良い。

 しかし、寸前で沙良の姿が消えた。

 

「しまっ――」

 

 瞬間、背後から衝撃を受ける。

 しかし、衝撃がその身に襲おうとも、フィオナは沙良に気づくことはなかった。

 

――ハイパーセンサーをハックしましたね!?

 

 フィオナのハイパーセンサーは沙良の姿を捉えていない。

 ならば、とフィオナは、ハイパーセンサーに頼らず、自らの目で状況を見渡す。

 そこには、

 

「えへへ、看病はリナにお願いしてね」

 

 最高の笑顔を浮かべた沙良がハリマーを構えて立っていた。

 沙良の本気の突きをフィオナは腹に受ける。

 

「――――――っ!?」

 

 その衝撃は内臓を痛め、言葉を失わせる。

 しかし、それはまだ終わりじゃなかった。

 シールドエネルギーがゼロにはなっていない。

 沙良は笑顔のまま拳を腹にぶちかました。

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

「フィーナ!?」

 

 いきなりその身を壁まで吹き飛ばされたフィオナに、リナは気を取られた。

 沙良の姿がどこにも居ない。

 

――センサーハックか。

 

 すぐさまリナはハイパーセンサーを切る。

 それは沙良がこちらに向かう可能性を考慮したもの。

 沙良はそのままフィオナに追い討ちをかけようとしていた。

 

「させない!」

 

 リナはすぐさま沙良に接近しようとした。

 

「……シカトしないで」

 

「きゃあ!!」

 

 リナは地面に這い蹲った。

 おそらく、薙刀で叩き落されたのだろう。

 ハイパーセンサーを切ったのが裏目に出た。

 

「くっ」

 

 すぐさまハイパーセンサーを作動させ、簪を相手にする。

 展開するは『逆桜』。

 簪に斬撃の雨を降らせる。

 沙良と違い未だに使い慣れていない武装だが、それでも強力な武装であることは間違いない。

 簪はそれを距離を取って対処しようとする。

 

「逃がさない!!」

 

 その距離を詰めるようにリナは後を追う。

 その瞬間、簪が笑顔を作った。

 

「――っ!?」

 

 衝撃がリナを襲う。

 その正体は見えなくてもわかっている。

 沙良だ。

 リナは遮断シールドに激突する。

 すぐさまハイパーセンサーを切ろうとしたが、その前に、沙良が姿を現した。

 

「あら、時間切れだね」

 

 リナは見た。

 沙良がこれ以上ないほどに良い笑顔を作ったのを。

 

「リナ。ごめんなさいって言うなら今のうちだよ?」

 

 そう言っておきながら、言葉を待つような事もせず、沙良はハリマーを突き放った。

 

「きゃああああああ!!」

 

 絶対防御が作動し、そのシールドエネルギーが大きく削られる。

 

「まだ墜ちないか」

 

 沙良は無情にも同じ箇所に同じように突きを放った。

 

「――――」

 

 声にならない悲鳴が上がる。

 しかし、その猛追は、まだ終わらない。

 シールドエネルギーはまだ残っていた。

 沙良は笑顔のままハリマーを振りかぶる。

 

「せ、セラ? ちょ、ちょっと待って!? それは拙いって!?」

 

 流石に三発目は耐えられない。

 

「リナが僕にした事覚えてないの?」

 

 沙良の額には青筋が浮かんでいた。

 

――あ、死んだ。

 

「大丈夫、看病はちゃんとしてあげるから」

 

 リナは衝撃を腹部に受け、意識を手放した。




学校が休みなので、一日潰す勢いで書いてます。
いけそうなら3話目も上げます。
恐らく22時くらい。間に合わなかったらごめんなさい。

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