IS 深海の探索者   作:雨夜 亜由

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第二十八話 エキシビション

 ピットには二つの影があった。

 一つは深い青で構築された機体。

 その横には青色に輝くボディに銀色のラインが走った機体がその出番を待つ。

 

「来てるね、来賓がわんさかわんさか。あ、あそこに社長がいる」

 

「あ、本当だ。おじいちゃんが来たんだね。てっきりカルラさんが来るもんだと思ってた」

 

 わざわざ日本に来るとは、それほどまでにこの催しに価値を見出しているのだろう。

 確かに、この模範試合は一種のアピールには最適である。沙良はそう判断した。

 実際には孫の晴れ姿を見に来ただけとは露にも思わないだろう。

 

「カルラさんは横に座ってるみたいね」

 

「折角見に来てくれたのなら、いいところ見せないとね」

 

 沙良は、手に持った太刀を一度光に翳す。

 その刃は、煌きを持って、沙良にその存在を示す。

 

「新武装のオンパレード。エスパーニャの開発力を見せ付けるにはもってこいのイベントね」

 

「そして、第三世代型の開発もきちんと出来てるって証明しないとね」

 

 沙良はソフィアの機体をコツンと叩く。

 

『只今より、本校生徒によるエキシビションが行われます』

 

「お、やっとだね」

 

「セラ、くれぐれも油断しちゃダメよ?」

 

「そっちこそ、墜ちないでよ?」

 

 二人は、拳をコツンと合わせる。

 

「深水沙良、行きます」

 

「ソフィア・アルファーロ、出ます」

 

 深海の如し青と、浅海の如し青が、空に潜った。

 

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 大歓声によって包まれたアリーナでは、既に出ていた二機が待ち受けていた。

 向かい合うように四機のISが対峙する。

 

 水のドレスと薄い水色に包まれた機体。

 洗練された銀灰色の装甲に守られた機体。

 深海を思わせる深い青で構築された機体。

 鮮やかな青に銀のラインが引かれている機体。

 それぞれが、自分の武装を手に持つ。

 

 楯無は大型ランス、『蒼流旋』を。

 簪は超高速振動薙刀、『夢現』を。

 沙良は背の丈程にも達する太刀、『逆桜(さかさざくら)』を。

 ソフィアは大型ハルバート、『El tornado(エル・トルナード)(竜巻)』を。

 

 沙良は簪と、ソフィアは楯無と戦闘を行う。

 その瞳は今か今かと闘志に燃えている。

 

『試合――開始』

 

 沙良が真っ先に動いた。

 簪、楯無との距離はおおよそ三十メートル。

 届くわけがないその距離にもかかわらず、太刀を二人の間を裂くように振るう。

 瞬間、斬撃が走る。

 それは、刀の軌道の延長線上にエネルギーを核と刃とする圧力波を放つ特殊機構兵器。

 春一番がカマイタチを起こす様に、沙良は斬撃を飛ばす。

 楯無と簪の間に奔った斬撃は、地面を削り取り、一瞬だが楯無と簪を分断する。

 それぞれの戦闘が始まった。

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

 沙良が『逆桜』を振るったと同時に、ソフィアは疾走していた。

 楯無にハルバードを叩きつける。それは、技術も何もない。ただ野生的に振るう小細工無しの一撃。故に速い。

 楯無はそれをランスで受け止める。

 

「重っ!?」

 

 しかし、容易に耐え切れるものではなく、流すことでその刃から逃れようとする。

 

「甘い!」

 

 ソフィアは楯無の脚部を鉤爪で引っ掛け、振り切る力を利用して、回転切りを放つ。

 斧槍特有の多彩な攻撃手段に、翻弄される楯無。

 バランスを崩され、距離を取ることも出来ないまま、ランスでハルバードの一撃を受け止めた楯無は、その勢いを殺しきることが出来ず、機体を吹き飛ばされてしまう。

 楯無が体制を整えた時には既に簪と沙良が空で刃を交えていた。

 しかし、そんなことに気を向けている場合ではない。

 楯無はすぐさま機体を右方向に移動させる。

 瞬間、元居た場所に、爆発音が響く。

 

 手榴弾。

 

 それは数え切れない数をもって楯無を襲う。

 ソフィアは、その両手に手榴弾を六つ抱えていた。

 

「ちょっ、ちょっと!? スペインってこんなのばっかじゃない!?」

 

 楯無は水のヴェールを展開し、爆発の衝撃を最大限まで減少させる。

 その派手な爆発音に、会場が盛り上がるのがわかる。

 

「そりゃ、情熱の国だからね!!」

 

 ソフィアは会場に答えるように、新たな武装を展開する。

 それは十つの輪状の非固定浮遊部位。

 その独自稼動する一つ一つから銃弾が放たれる。

 しかし、その銃弾は金属ではない。

 放たれた銃弾は水で作られていた。

 それは、ISに当たると、超音波とエネルギーにより水の中に閉じ込められた特殊ガスが膨張と収縮を繰り返し、収縮して再び膨張する瞬間に、バブルパルスと呼ばれる急峻な圧力波を発生させる。

 それは単純な衝撃による金属の剪断以外に、空洞現象(キャビテーション)による壊食(エロージョン)も引き起こす。

 ソフィア専用機、『ジュゴン』の特殊武装である。

 

 ソフィアは水弾銃を四方八方から撃ちまくる。

 拡張領域には、必要最低限の武装だけを残し、残りは全て弾となる水で埋まっている。故に、ほぼ無限に撃つことが出来る。

 楯無は、水のヴェールでその水弾を受け止めるが、

 

「ウソっ!?」

 

 その水弾は、着弾した水のベールに圧力波を浸透させた。

 

「そりゃ、同じ水なんだからおかしくはないでしょう!?」

 

 ソフィアは水弾銃で楯無の回避先を絞りこみ、そこにハルバードを振るう。

 楯無は、ランスで、受け止めることを選択するが、その一撃の重さについ機動を止めてしまう。

 その瞬間に背後から衝撃波が襲う。

 

「くっ、ホント、悪趣味な兵装を考えるわね」

 

「ちょっと、沙良の思考に悪態つくの止めてくれる?」

 

 ソフィアは楯無を蹴り飛ばす。

 これは試合ではなく見世物なのだ。

 実力を示しつつ、観客を楽しませなければいけない。

 先ほどは、ソフィアが仕掛けた。

 だから次は、楯無の番だ。

 楯無は、ランスに超高周波振動の水を螺旋状に纏わせると、その先端をドリルのように回転させる。

 突く。

 それをソフィアは弾こうとするが、その超高周波振動により、ハルバードが弾かれてしまう。

 

「げっ」

 

 ソフィアは、その胴体に、突きの一撃を食らってしまう。

 しかし、自ら背後に飛び、その一撃を軽くすると同時に、距離を取る。

 楯無は、それを高圧水流を以って斬りつけることを選択する。

 それはウォーターカッターの原理を応用したもの。

 その間合いは十メートルまで届く。

 

「食らわない!」

 

 ソフィアは、量子変換で、大量の水を展開する。

 それを壁のように配置し、その水の斬撃をいなす。

 そのまま、楯無を大量の水で包み込む。

 

「え、なに!?」

 

「たっちゃん、覚悟!!」

 

 ソフィアは、大量の水を球体の形に整える。

 そして、超音波を利用し空洞現象を無理やり引き起こす。

 それは、装甲に壊食を発生させ、最終的にはバブルパルスを生み出す。

 水弾銃の原理を応用したもの。

 それは、魚雷や、機雷などの破壊力と等しい。

 

「爆発しろ!!」

 

 衝撃がアリーナを揺らした。

 ソフィアの武装は二つに分けられる。

 それは、接近用武器のハルバード。

 そして、十つの輪状の非固定浮遊部位。

 水弾銃としての使い方はメインではない。正しい使い方は別にある。

 

 それは超音波。

 

 液体に超音波を照射すると、空洞現象によって、百ミクロン以下のごく微小な気泡核を核として液体が沸騰したり、溶存気体の遊離によって小さな気泡が多数発生する。

 気泡は超音波が負圧になったときは膨張し、正圧になったときは収縮する。

 特に、超音波の共振径付近のサイズの気泡は音速に近い速度で急激に収縮するため、断熱圧縮の効果によって瞬間的に数千度以上の高温状態となる。

 

 ソフィアの専用機『ジュゴン』の特殊武装。

 特殊超音波システム搭載兵装。

 『マーメイド』。

 イメージ・インターフェイスを用いた特殊兵器である。

 

 ソフィアは十のマーメイドを構えて霧が晴れるのを待つ。

 水蒸気が立ち上り、視界が悪くなるなか、楯無の笑い声が聞こえる。

 

「ふふふ、お返しよソフィア!!」

 

 水蒸気が爆発した。

 

「なっ!?」

 

 ソフィアは、その衝撃に機体の体制を崩す。

 絶対防御が作動したのか、そのシールドエネルギーは大きく削られていた。

 

 清き熱情(クリア・パッション)

 

 ナノマシンを発熱させることで水を瞬時に気化させ、その衝撃や熱で相手を破壊する楯無の技。

 普段は水のヴェールを濃い霧状に変えているが、今回は、マーメイドによって生じた霧にナノマシンを含めたのだろう。

 お互い譲らない攻防に会場が沸く。

 

「くっ、やるわね、たっちゃん……」 

 

「ソフィアこそ……この技、結構きついんだから」

 

 二人は示し合わせたように、武器をぶつけ合う。

 ソフィアが縦横無尽にハルバードを振るい、楯無が、的確に捌いていく。

 それは、まるで踊るかのように舞台を盛り上げていくのであった。 

 

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 

 沙良は太刀を振るう。

 それは様々な型に振られ、縦横無尽に迫る斬撃の檻は簪に不可避の念を抱かせた。

 故に、簪は薙刀で斬撃を消し去る。

 

「はぁ!」

 

 その超高速振動によって、沙良の圧力波を掻き消すのだ。

 しかし、打ち消すことは出来てもその数が多すぎる。

 

「くっ……」

 

 簪は回避先を邪魔する斬撃だけを打ち消し、その身を高くに逃がす。

 沙良はその機動に合わせて、ライフル銃を展開する。

 その銃を見て、皆がアサルトライフルだと判断しただろう。

 それの正体を理解できた、一部の生徒は、苦い顔を作る。

 簪は狙撃に備えて、沙良の一挙手一投足に注意を集める。

 撃った。

 そこから放出されたのは弾ではなかった。

 それは、強烈な閃光。

 そう、一組の生徒には馴染みの深い、指向性スタングレネード。

 シャルロットの目を焼いたのと同様に、簪の目を焼く。

 

「きゃああああ!!」

 

 防御機構がすぐに作動し、その視力が奪えるのは良くて数秒だろう。

 簪は、悲鳴を上げるも、すぐに、その場から離脱する。

 そして視界による情報に頼らずに、すぐさま『百千颪』を展開する。

 

「良い判断だね」

 

 沙良はすぐさま簪から距離を取る。

 エネルギーシールドに反応して追尾を行うため、目で標準をあわせる必要がない。

 それを、沙良は全て打ち落とさなければならない。

 標準を合わせていないミサイルはソフィアにも飛ぶ恐れがある。

 沙良は、両手にアサルトライフルを展開する。

 『百千颪』からミサイルが発射される。

 四機八門から放たれた三十二発のミサイルは、アリーナを爆発に埋め尽くす。

 それを沙良は両手のライフルで一つ一つ打ち落としていく。

 しかし、落としきれない。

 

「くっ!!」

 

 何発か被弾してしまう。

 熱波はシールドエネルギーが防いでくれるとはいえ、気分の良いものではない。

 シールドエネルギーが四分の一も削られてしまう。

 しかし、下で戦闘を繰り広げているソフィアと楯無にはミサイルは飛ばなかったようだ。

 

――警告、ロックされています。

 

 ハイパーセンサーの警告に、沙良は咄嗟に急上昇する。

 先ほどまで居た位置に電荷を持った素粒子がビームとなって飛来する。

 簪は『鳴神』を構えていた。

 それは連射により、沙良の行動を制限する。

 直撃は避けなければいけない。

 一撃でも食らうと、連射によってあっけなく沈められてしまうだろう。

 沙良は必死で回避を始める。

 それは最小限で避けることもあれば、大きく引き離すこともある。

 だが、いつまでも避け続けることに限界を感じたのか、沙良はふと動作を止める。

 そして、その砲撃が当たる瞬間、手を前に差し出した。

 砲撃が拡散する。

 その手に現れたのは、透明なシールド。

 

 それはシールドエネルギーを用いた防御兵装。

 

 何発かの砲撃に耐え切ると、沙良は瞬時加速で簪に肉薄する。

 そして、その肩に蹴りを叩き込み、体制を崩したところで横蹴りを腹部に放つ。

 

「きゃっ!」

 

 簪はその機体を、地面と平行に飛ばされる。

 そして体制を立て直した際に、その脚部を摑まれる。

 

「墜ちないでね」

 

 沙良は簪を地面に向かって叩き落す。

 簪は地上間際で体制を整えようと考えた。

 しかし、それは叶わなかった。

 爆発。

 それは、空中で何の前触れもなく起こった。

 爆風により、また爆発が起き、それをきっかけにまた爆発が起きる。

 

 超小型空中機雷。

 

 威力は落ちるが、視認の難しさとその爆発範囲の広さから罠として好まれている。

 それを大量にばら撒いたのだ。

 簪は爆風で、機体の制御が疎かになる。

 沙良は即刻、『逆桜』で斬撃を放つ。

 それは遠距離から始まり、中距離、近距離と段々距離が近くなる。

 沙良は『逆桜』を袈裟切りで振るう。簪はそれを『夢現』で受け止めた。

 

「――っ!?」

 

 しかし、その受け止めたはずの刃が簪の身を切り裂く。

 

「そう、これは遠距離用の兵装ではないよ。こうやって、斬り合って初めて効果が出るんだ!」

 

 斬撃を飛ばす。

 それは牽制用の武装だと思われがちだが、真の目的は斬り合いにある。

 斬り合い、お互いの刃が打ち合っても、こちらの斬撃だけは向こうに通るのだ。

 これは、いくら太刀を、近接武装で止めようとも意味は無い。

 武器をぶつけ合った時点で斬撃が入ってしまうのだ。

 対処方法はただ一つ。

 避け続ける。

 それだけだ。

 

「いくよ!」

 

 沙良は、連続で太刀を振るう。

 袈裟、切り上げ、切り下ろし、足払い、回転切り、突き、回転切り、足払い、切り上げ、横切り。

 その刃は容赦なく振られる。

 それを簪は避け続ける。必死に体を捻り、スラスターを噴かし、隙を見つけては薙刀を振るう。

 その攻防は、下で繰り広げられている踊りのような攻防と相まって会場を沸かした。

 

『残り1分』

 

 個人間秘匿通信(プライベート・チャネル)により、残り時間が伝えられる。

 沙良は、簪と視線を合わせると、コクリと頷いた。

 沙良は、『逆桜』を収納すると、『禊』を展開する。

 

 残りは五十秒。

 

 まるで、薙刀の型を行うように沙良と簪は優雅に薙刀を振るう。

 それは、ソフィアと楯無を踊るようにと評するなら、こちらは舞踊と言うのがしっくり来るだろう。

 その洗練された動きに、会場が息を呑む。

 残りは五秒。

 沙良と簪は一度距離を取る。

 そして、お互いが同時のタイミングで薙刀を突き出した。

 切っ先同士が触れると、その超高速振動と、衝撃透過機構によって、衝撃波が生まれる。

 それは試合終了のブザーと共にアリーナに響いたのだった。

 

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

 

 エキシビションを終え、アリーナが学年別トーナメント用に変わる。

 男性組みへと当て振られた更衣室で一夏とシャルロットはモニターで観客席の様子を見る。

 

 

「しかし、凄いなこりゃ……」

 

「三年にはスカウト、二年には一年間の成果の確認にそれぞれ人が来ているからね。一年には今のところ関係ないみたいだけど、それでもトーナメント上位入賞者には早速チェックが入ると思うよ」

 

「ふーん、ご苦労なことだ」

 

 一夏は興味なさげに呟くと、シャルロットはくすりと笑う。

 

「一夏はボーデヴィッヒさんとの対戦が気になるみたいだね」

 

「まあ、な」

 

 一夏は、鈴音とセシリアのことを思う。

 二人はトーナメント参加の許可が下りず、今回は辞退している。

 それは普通の生徒ならいざ知らず、国家代表候補生であり、なおかつ専用機持ちの二人にとっては、その立場を悪くする要因にもなるだろう。

 二人はなんでもない様に装っているが、実際は裏で色々と手続きをしているのだろう。しかし、身内第一の沙良が、鈴音のために動いていないことから、そこまで危うい立場ではないとは想像できる。

 しかし、そうとは言え、一夏はやりきれない怒りが湧いてくる。

 

「感情的にならないでね。彼女は、おそらく一年の中では現時点での最強だと思う」

 

「ああ、わかってる」

 

 一夏は瞳を一度閉じ、大きく息を吸う。

 開かれた瞳には、もう怒りは残っていなかった。

 

「そろそろ対戦表が決まるはずだね」

 

 突然のルール変更があったらしく、対戦表が作り直されていたらしい。

 

「あ、対戦表が決まったみたい」

 

 モニターがトーナメント表へと切り替わる。

 

「俺たちはAブロックだな。見た感じ脅威になりそうなペアはいないな」

 

「ボーデヴィッヒさんのペアはDだね。当たるとしたら決勝戦だね」

 

「おう、燃えてくる展開じゃないか」

 

 一夏は、打倒ラウラだけを考えていたのだが、それがすなわち優勝と言われると、燃えてこないわけがない。

 

「やっかいなペアはDとCに固まってるね。Bは……えっ?」

 

「どうしたシャルル?」

 

 言葉を無くしたシャルルが指差したところを良く見ると、一夏もぽかんとした声を上げてしまう。

 それも仕方ない。

 そこには先ほどエキシビションで活躍した沙良の名前があったのだから。

 

 

 

     ◆ ◇ ◆

 

 

 

 沙良は一人頭を抱えていた。

 どうしてこうなった。

 当初は一夏とラウラを一回戦でぶつけてしまうはずだった。

 しかし、突然、沙良たちも本戦に出なければいけなくなりトーナメントに食い込まれた結果。

 

「一番離れちゃったじゃんかぁ」

 

 不幸中の幸いとして、一夏のAグループには大したペアがいない。

 おそらく、準決勝までは勝ちあがってくるだろう。

 問題はBグループだ。

 そこには、沙良が棄権しようが、一夏ペアを倒せるペアが存在しているのだ。

 リナとフィオナのペアだ。

 身内の贔屓目無しに、その実力は一夏やシャルロットより高いと思われる。

 沙良は考える。

 どうしたら、舞台を整えられるか。

 その時、沙良は閃いた。

 

「そっか、勝てばいいんだ」

 

 簡単なことだ。

 沙良がリナとフィオナに勝てばいい。

 そしたら舞台が整うはずだ。

 沙良は立ち上がると、ペアとなる簪の元へと走るのだった。 


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