ついついカクヨムとかなろうとか、そっちのオリジナルを書いちゃうんですよね……はよこっち終わらせろという話なんですけども……ほんとすみません。
「と、とりあえず、これはククールさんにお渡しします」
「俺? 貴重なものなんじゃないのか?」
「貴重は貴重なんですけど、宝の持ち腐れになってもアレですから」
ぎゅっと蓋をして外れないように封をしてからさっさとククールさんに渡してしまう。
「効果はベホマズンと同じです。祈りを込めて撒くと仲間の傷が癒えるそうですよ」
「これが?」
懐疑的な表情のククールさんに私は真面目に頷く。インパスで調べてもそうなので、間違いない。
「ククールさん、日に翳してもらえますか?」
トルネコさんに言われてククールさんが瓶を持ち上げて日に翳した。
すると液体の中に煌めくような金色の光が舞った。
「きらきらしていますね」
一緒に観察していたエイトさんが言えば、トルネコさんが頷いた。
「世界樹のしずくはこうして日に翳すと中に輝きが見えるんです。間違いなくこれは本物ですよ。
本当は世界樹自体が生きていれば死者蘇生を叶える葉を分けて貰えたかもしれませんが……」
「そういえば……城の本にそういう事が書かれたものがありました。
大昔、死者をも蘇らせる奇跡の葉を与える神聖な大樹があったが、戦乱の中で人の手により切り倒された。切り倒された大樹はさらに人の争いの種となり奪い合われた。
確かこんな内容だったかと」
エイトさんが思い出すように言った内容に、何だか胸がざわめいた。
そんな筈ではなかったのにと感じるのは、私なのかにゅーちゃんなのか。ちょっとわからないが、悲しい話であるのは間違いなかった。
「人は行き過ぎると善悪を忘れ神の慈悲を自ら壊してしまうのですね…。
我々商人は人の欲を叶える面もありますが、人と人を繋ぎ希望を繋ぐ事を忘れるとそちらに傾いてしまうのかもしれません」
明日は我が身なのでしょうと呟くトルネコさんはとても悲しそうに世界樹の跡を見ていた。
あちらで世界樹を見て、実際にその恩恵によって助けられた事があるのだろうか? ロザリーを助けているのなら間違いなくそうだとは思うが……さすがにそんな事を聞くわけにもいかない。
「……本物ってのなら若干使い辛い気もするが」
「だよね」
微妙な顔をしてぼそぼそ言うククールさんに同意するエイトさん。いやいやいや。
「ククールさん。エイトさん。必要とあれば出し惜しみせずに使ってくださいね? 全ては命あっての物種なんですから」
ちなみに私は出し惜しみしまくってラスボスでも結局使えないタイプだ。
「そりゃそうだが……わかったよ」
ククールさんはエイトさんと顔を見合わせ、そう言って腰に下げている袋に仕舞ってくれた。
……大丈夫かな。割れないかな……ちゃんとしたウエストポーチ作ろうかな……
この世界の荷物は袋に入れるというのが基本なので、どうにもそういう心配が出てくる。私とかは激しい運動をしないのでいいが、ククールさんは戦闘をこなすのでぜったい激しい動きになっているだろうし。
「で? これで頼み事っていうのは終わりでいいんだよな?」
「そうですね。ラパン殿の所に戻りますか」
「じゃ私ルーラしますね」
ウエストポーチの事は一旦置いといて。はい、と手をあげて私は未だに周りをウロウロしているキラーパンサー四体においでおいでと手招きして近くに寄ってもらい全員纏めてルーラでラパンさんのお宅へ飛んだ。
ラパンさんはトルネコさんから何があったのか説明されると、少し寂しそうに、けれど安堵したように弱く笑った。
「ありがとうございました。
友はきっと私の事を心配して行くに行けなかったのでしょう……」
そう言って、話を変えるようにキラーパンサーの貸し出しを許可してくれた。
思うところがあるだろうと他人の私達は邪魔をしないよう早々に表に出て、さてサザンビークに行くかという段階になって私は恐ろしい事実に気が付いた。
地図で見たのだがここからサザンビークまではかなりの距離がある。世界樹の跡があるところまでの距離と比べるとおよそ三倍。どう考えても乗っていられない。絶対落ちる。
いや、しかしバイキルトやスカラや、とにかく補助魔法を掛けまくればいけるか? 途中で切れたら……舌嚙みそうでしゃべる事も出来なかったけど……舌噛みながら魔法唱えるか……
「……ツさん?」
痛そうだな。いやいやそれぐらいは我慢して回復魔法掛ければ……ひたすら舌噛みながら回復を繰り返せば………拷問か。
「リツさん?」
「は? はい。すみません、何でしょう」
「深刻そうな顔をしていたからどうしたのかと思って」
エイトさんが心配そうにこちらを見ていたので、考え込み過ぎていたかと苦笑い。
「ちょっとどうやって乗ろうかと考えていまして」
「どうやってって、昨日も乗っていただろう…が……」
言いながらククールさんは私が大樹のところで一人で降りれなくなった事を思い出したのか、言葉が尻すぼみに消えた。
「ぶっちゃけますと、落ちる自信しかありません。補助魔法重ね掛けしても切れたら危険なので縛ってもらっていればなんとか、という感じでしょうか……」
いやそれは。という顔をするお三方に、ですよねーと思う。
しかし本当にそれぐらいしか思いつかないのだ。途中で休憩しても疲労は蓄積するからどんどん危なくなるだろうし……。
「俺たちだけで行くか」
「だね。トルネコさん、リツさんはキラーパンサーを貸して貰うために念のために呼んだんですよね?」
「ええまぁ。我々だけでも問題なく乗せてくれそうですから、ここまでで大丈夫ですよ」
ちょっと苦笑交じりに頷いてくれるトルネコさんだが、いや笑いごとじゃないですって。こっちは死力を尽くしてしがみ付いていたんですよ。
「じゃあそういう事で、リツさんは船の方に戻っていてください。サザンビークに到着したら一旦戻ってルーラで飛びましょう」
助かった!!
と内心は盛大に大喜び。表ではしおらしく頭を下げて、安堵いっぱいで私はキラーパンサー君たちにみんなをよろしくねと撫で繰り回してから戻った。
海辺に立つ教会を目標に戻り、船へと戻ると甲板ではいつものようにライアンさんが剣を振っていた。
「戻りました」
「無事でなにより。他の者は?」
「足を確保したので、これからサザンビークに向かうところです。向こうについたら一旦こちらに戻ってきてルーラで飛ぼうという事になりました」
「なるほど」
甲板から船の中へと入ると、ゼシカさんと姫様が食堂でお昼の準備をしていたので一緒にそれを手伝う。
キラーパンサーに乗った話や、世界樹の話をすれば姫様もゼシカさんも世界樹が枯れていた事はさほど驚きはせず、そういうものかという反応だった。
やっぱり元々その存在を知らなければその程度の反応になってしまうのかと、仕方がないのかもしれないが少し物悲しい気がした。
「そういえばリツ」
「はい」
「ミーティア姫に何かした?」
「はい??」
藪から棒になんだろうと手が止まる。姫様も何の話だろうとゼシカさんを見ているので、姫様がゼシカさんに何かを言ったというわけではないのだろう。
「練習を見てたんだけど、習い始めにしては多いのよ。私がリーザスに居た頃よりもかなり多いの」
「それは、ミーティア姫の魔力量がという事ですか?」
「そうよ。たぶん今の私と同じか少し手前ぐらいあるんじゃないかしら」
「そうなんですか?」
それって結構な量なのでは?
すごいですね姫様。と、姫様を見れば戸惑った顔をしていた。
「あの、それは何かおかしいのでしょうか?」
「いいえ。魔法使いの家系ならそういうこともあるわ」
「魔法使いの……あ」
何かに気づいたように声を上げる姫様。
「それでしたら、曾お婆様が大きな魔法を使われていたそうですから、そのおかげかもしれません」
「魔法使いだったの?」
「はい。曾お婆様程ではないですけれど、王家では魔法を扱える者が時々現れるんです。逆にお父様のように剣の腕ばかりが上達する者も多いですけれど」
「へーそうなんだ」
意外だと目を丸くするゼシカさんに私も同感だ。
王族ってもっと傅かれてか弱いイメージが勝手にあった。あ、でもそうか、歴代ナンバリングの主人公って王家の人が多い。そもそも勇者ロト(正確にはロトは称号名で実態は3の主人公)が始まりとなって三つの王家が生まれたのがドラクエ1、2の世界だ。4は木こりの父親と天空人の母親の子だが、5は王族。6も確かそうだ。
この世界がリンクしているのかはわからないが、魔物が蔓延る世界で王家が戦う力を持っていても何ら不思議ではないのかもしれない。
ミーティア姫もこの見た目でかなり芯の強い性格だし、環境がそうさせるのだろうか。
「意外とトロデーンの王族は活発なんですよ?」
「あーそれはね、あの王様を見てるとわかるわ」
王の事を思い浮かべているのがわかる顔で頷くゼシカさんに、姫様はくすくすと笑った。
「実は、お父様だけじゃなくって、お婆さまも城を抜け出したりしていたんですよ。それである方と出会ったりしたのですけれど………」
不意に暗くなった姫様の表情に、私とゼシカさんは目を合わせて首を傾げた。抜け出した先で悪い事でも起きたのだろうか?
「ゼシカさんには婚約の話があったのですよね?」
唐突な話題転換にゼシカさんは目を瞬かせたが、ちょっと嫌そうな顔で頷いた。
「母親がね、勝手に決めた相手がいるけど正直興味ないからどんなのか知らないわ」
「そうなのですか?」
「どこかの国の大臣の息子だとかなんとか」
大臣の息子……そうだったのか。
確かにゼシカさんっていいところのお嬢さんだからそういう話があってもおかしくないか。
っていうか、婚約者いたのか……
「ミーティア姫が知らないならトロデーンじゃないだろうし、アスカンタでも聞かなかったからもしかしたらサザンビークかもね」
「ゼシカさんもサザンビークなのですか?」
「も?」
「あ……はい。一応、サザンビークのチャゴス王子と婚約しております」
サザンピーク……って今エイトさん達が向かってるところじゃ……
ゼシカさんも気が付いたのか、気遣わし気な表情になった。
「そうだったの……じゃあ、サザンビークには行かないでいる? ちゃんとした立場で会いたいんじゃない?」
「……いえ、そういう事はありませんが」
眉間に珍しく皺を寄せた悲し気な様子に、これは……と私とゼシカさんは視線を交わした。
納得してないわね?
納得してませんよね?
互いに同じ事を考えたのだとわかり頷きあう。
「……ちなみに、どうして婚約する事になったの? うちは立派な跡取りが欲しいからとかなんとか言ってたからだけど」
「それは……トロデーンとサザンビークは、昔仲が悪かったのを、ご存知でしょうか?」
「えーと、確かそれ、じい様ばあ様の代じゃなかった?」
「はい。その頃、遊学のためと諸国を巡っておられたサザンビークの王子と、城から抜け出したお婆さまが出会ったのです。お互い何者なのかも知らずに会ううちに惹かれあったのですけれど、互いの国はそれを許すはずもなく引き裂かれたそうです」
敵国同士ならそりゃねという顔になるゼシカさん。
「その後、二人が王位につく頃には仲も改善され、互いの子が結び付いたらと考えたのです。結果として二人とも王子のみで姫が生まれず流れたのですが、今度はお父様の代になってからクラビウス王から打診があったのです。もうお婆さまもあちらの先代様も生きてはおりませんが、それでも子供を結びつけないかと。そうして生まれたのが私とチャゴス王子なのです」
「そのチャゴスって王子、どんなのなの?」
「それは……伝え聞くところによるとすらりとした背の高い美青年で下々にも優しく気高いお方とか……」
「へー……高評価なのね」
「はい……」
結構夢を見そうな評判だと思うが……この反応だと、もしかして姫様、好きな相手がいるんじゃないだろうか……
首を突っ込む事ではないと思いつつ、私は手を上げた。
「一つ質問してもいいでしょうか?」
「はい、なんでしょう?」
「結婚した場合、ミーティア姫が向こうに行かれるのですか? それともそのチャゴス王子がトロデーンに?」
「私がサザンビークにまいります。後継者は私に子が二人できればそれぞれ。できなければ血族で一番王家に近いものがなる予定です」
なるほど……しかしそこまでするほど意味のある結婚か?と思ってしまう。どう考えてもトロデーンには益が薄い。あの王だって姫様と離れて暮らしたい訳ではないだろうし、友好関係を保つという意味を持つにしても、姫様が輿入れするほどの意義が見出せない。
「あの、ちなみにサザンビークからトロデーンに対して何か贈られるような権利や物資や、約定なんかはあったりするのでしょうか?」
「いえ、そういったものは。あくまでも対等な国としての婚約ですから」
ますます意味が見出せない。そもそも本人達の意思を無視されて引き裂かれたところから始まっているのに、自分の子や孫に同じように意思を無視するような事を押し付けるというのがどうにも解せない。姫様には教えられていない何かがあるのだろうか。
黙された何かが無いのであれば………でも状況がな……トロデーンの呪いが解かれた後、経済的に打撃を受けてる事は間違いないだろうし、民の暮らしぶりを安定させるだけの力がトロデーン単体にあればいいが、無ければそれこそ他国に頼らなければならない事態も考えられる。そうなると姫様の輿入れは格好の政治として使われるだろう。
「ごめんなさい、変な話をしてしまって」
考え込んでしまった私に笑みを浮かべて謝る姫様に、いいえと首を振って、それ以上なんと言えばいいのかわからなかった。
「ねぇ、ミーティア姫、そんな事勝手に決められて嫌だと思わないの?」
直球! ゼシカさんとっても直球で聞いた!
「思いません。お父様は私のことも国のことも考えてお決めになられたのだと思いますから」
「そう? 結構てきとうじゃない?」
私個人としては激しくゼシカさんに同意したいが、それしたら姫様が哀しみそうなので、頷きかけたまま微妙な姿勢で身動きが取れない。
「私はお父様を信じていますから」
少しはにかんで話す姫様はこの上なく可愛くて、愛らしくて……頼むからサザンビークの王子よ評判通りであってくれと願わずにはいられなかった。
「すごいわね……私だったら反発すると思うわ」
その言葉に間違いなくゼシカさんなら反発するだろうなと想像していると、姫様もそう思ったのかくすくすと笑っていた。
「確かにお父様は完璧じゃありませんけれど、でも、お母様が昔から聞かせてくれた子守唄があって、それを聞いていたからそんなお父様でもいいと思うんです」
「子守唄?」
「あなたのお父様という唄です」
「あぁ、あれね。うちもすっごく小さい頃に聞いたけど、そんなに良かったの?」
「全然。むしろ酷い内容ですよ」
なんだろう。二人は通じ合っているが、あなたのお父様?というのは有名な子守唄なのだろうか?
「どんな唄なんですか?」
「母親が父親の事を歌詞にして唄う子守唄よ。夫婦仲が悪いとしょっちゅう内容が変わる事で有名なんだけど、知らない?」
「知らないですが……」
すごい子守唄だな。仲悪いと暴言の嵐のような気がする。
「ねぇ、どんなのかちょっと唄ってみてよ」
「今ですか?」
「あ、私も聞きたいです」
「リツお姉様まで……わかりました」
姫様は少し顔を赤くして、こほんと咳払いをしてから恥ずかしそうに唄ってくれた。
あなたのお父様は とっても短足 びっくりするぐらい足が短いの
あなたのお父様は とっても小さい びっくりするぐらい背が低いの
あなたのお父様は とっても気分屋 びっくりするぐらい話す事がコロコロ変わる
あなたのお父様は とっても怒りんぼ びっくりするぐらい真っ赤になって怒るの
……びっくりするぐらい悪口が続いてるんですが。王よ、奥さんと仲悪かったのです?
でもね、あなたのお父様は とっても足が早い 泣いているとすぐに駆けつけて、小さな体でいっぱい抱きしめてくれる
でもね、あなたのお父様は とっても暖かい いつもあなたを笑わせようといっぱい考えて、あなたを泣かせるものを絶対許さない
とってもとっても優しい人が、あなたのお父様よ
……字余りがすごくて、無理矢理感溢れる歌詞だけど、歌い終えて照れたように目元を赤くしている姫様を見ていると、ご両親にとても愛されているのが伝わってきた。それから、王妃様が王を愛していた事も。
「……いい歌詞じゃない」
「ゼシカさんはどんな歌詞だったんです?」
「つまらない歌詞よ、アルバート家に相応しいとかそんな感じの面白みも何もない歌詞」
手を振ってあしらうゼシカさんだが、ちょっと声に動揺が混じっている気がする。唄ってと言われたく無いような、恥ずかしがっているような、そんな感じだ。
姫様は聞きたそうにしていたが、結局ゼシカさんはご飯を作らないとと言って有耶無耶にしてしまった。