新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~ 作:たい焼き
中庭でこれから殺し合いをする二人、藤原妹紅と蓬莱山輝夜が向い合っていた。
「寂しいぜ輝夜・・・今日でお前の顔も見納めだと思うとよ。」
「あら、殊勝なことね。潔く消え失せる覚悟ができたのかしら?」
両者から巨大な霊力が出る。それと同時に二人が殺気を見せる。
「消えるのはお前だ!!消し炭にしてやるよ!!」
妹紅の全身から炎が出る。体から出ている炎はまるで不死鳥を思い浮かばせるようだ。
「品のないこと。せめて死に際くらいは美しく飾ってあげるわ!!」
対して輝夜は玉がついた枝取り出す。
「行くぞ!!輝夜!!」
「来なさい!!妹紅!!」
両者の弾幕が互いに激突する。威力はほぼ互角である。両者の弾幕の流れ弾により、竹林と永遠亭に被害がでる。妹紅の弾幕は炎がメインなので、至る所で火事が発生する。
「ちょっと!!二人共やめてください!!」
二人の弾幕ごっこで起きた衝撃や音で気がついた鈴仙が中庭までやってきた。しかし、二人は弾幕の質をさらに上げる。
『蓬莱「凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-」!!』
妹紅が爆発する赤い弾幕をばら撒く。その弾幕はまるで火山の噴火を思わせる勢いだ。周りの気温が上がり、近くの草木が発火する。
『難題「蓬莱の弾の枝-虹色の弾幕-」』
今度は輝夜が枝から七色の弾幕を作り出し、円状全方位に発射する。発射された弾幕は壁に当たると反射して、その時点で追尾型になって妹紅を襲う。
しかし、互いに即座に作り出した弾幕で相手の弾幕を撃ち落とす。そのため、中々決着が着かず、互いに消極的な弾幕を撃ち続ける。
やがて、半刻程経っただろうか。殆ど力を使い切った様子で、肩で息をしていて、弾幕も殆ど出ていない。互いの衣服は泥や埃で汚れ、弾幕が直接当たったことによる傷や火傷も目立つ。
竹林にも飛び火しており、所々で火の手が上がっている。
「そろそろ決着を着けようじゃないか・・・輝夜・・・」
妹紅は片膝を地に付けてもなお、相手を視線から外さない。
「くっ・・・少しはやるようになったわね妹紅・・・」
対して輝夜は今までのぐーたら生活の影響か、余力が殆ど残っていない。普段の生活による影響がここで出ている。
「もうやめてくださいよ~。これ以上は永遠亭自体が持ちませんよ。」
鈴仙は必死に二人を止めようとする。しかし、ここまで殺し合いに夢中になった二人には声が届かない。
「諦めなさい。いつものことでしょう?」
永琳も騒ぎに気が付いて駆けつけてきた。
「ですが・・・このままじゃ永遠亭も竹林も焼け野原ですよ。」
「火は後で本人達に消させるわ。私達は壊れた物の修理に回るわよ。」
永琳はそう言って、永遠亭の中に入っていった。鈴仙も殺し合いをしている二人気遣いながら永琳の後に続いた。
しばらくして、お互いが力を全て使い切ったのか、二人共地面に大の字になって寝転がっていた。起き上がることもできない程、力を使った様子でお互い息が上がっている。
「ねぇ・・・妹紅。」
「なんだ輝夜・・・」
かろうじて体から力を振り絞って声を出した輝夜が妹紅にこう言った。
「久しぶりに運動したら、お腹すいた・・・」
「お前ってさぁ・・・ホント空気をブチ壊す天才だよな・・・」
妹紅は輝夜のその一言で殺る気が無くなったようだ。
「しょうがない。今日はこの辺にしておいてやるよ。」
妹紅は立ち上がり、輝夜に手を差し出す。
「そうね。今回は引き分けってことで勘弁してあげるわ。」
輝夜も妹紅の手を借りて立ち上がる。
「さて折角だし、二人でゲームでもやる?」
「その前に、この火を消そうぜ。永琳の奴に叱られるぞ。」
妹紅の弾幕によって発生した火事は既にかなり燃え広がっていた。
「うわぁ・・・面倒臭いわね。」
その後、妹紅と輝夜は二人で火事を完全に消した。協力して消していたところを見ると、実は仲がいいのかもしれない。
「さーて、ゲームの続きでもやりますか。」
先程全ての力を使ったことが嘘のような元気を見せる。
輝夜の部屋に入ると、決闘前と部屋の様子が明らかに違った。食べ散らかしたり、飲み散らかしてあった物が全て片付けられており、代わりに新しいお菓子と座布団がテレビとゲーム機の前に置いてある。
「あれ?部屋片付けたの誰?うどんげ?」
輝夜は綺麗に片付けられた部屋を見て誰が片付けたかが気になる。
「あっ姫様。お部屋を片付けておきましたよ。」
のび太だ。永遠亭に住まわせてもらっている恩を少しでも返すために散らかっている部屋を片付けたのだ。
「あら?ありがとう。」
「それでは、ごゆっくり。」
のび太はそう言って輝夜の部屋から出て行った。
「危なかった。危うく気づかれるところだった。」
のび太は二人が殺し合いをしている時に何をしていたか。答えはゲームをやっていたのである。輝夜が遊んでいた昔のシューティングゲームを見て、懐かしく思い、つい夢中になってしまっていたのだ。
しかし、夢中になり過ぎてしまったたのえ、折角だし、日頃の感謝の気持ちを込めて部屋の片付けをしたのだ。
「それにしても、あのゲームそんなに難しいかな?あまり難しくなかったけど・・・」
のび太は輝夜達が弾幕ごっこで殺し合いをしていうたった一時間という短い間にクリアしてしまっていた。しかも、ハイスコアを大きく更新するというおまけ付きで。
「まあ、あの二人だったらいつかはクリアできるはずだ・・・。ハイスコア消しておいたし、バレないよね。」
やることが無くなったのび太は永遠亭の中をあてもなく歩いていた。
しばらくすると、人の声が聞こえる部屋の前についた。のび太はその部屋の中に入る。中には永琳と鈴仙がいた。どうやら先程の弾幕ごっこで壊れた道具や壁を直しているようだ。
「鈴仙さん。もう体は大丈夫なんですか?」
「ええ、おかげでもう大丈夫ですよ。」
すっかり元気になった鈴仙を見て、のび太も安心する。
「ちょうど良かった。これを直すのを手伝ってくれるかしら?」
「お安いご用ですよ。」
のび太は座って、渡された壊れた日用品を受け取り、手入れを行う。中にはかなりボロボロの物もあり、新し物と取り替えた方がいい物もあった。
「そういえば、ワイリーさんはさっきの弾幕ごっこの間、どこにいたんですか?」
鈴仙はのび太が隠しておきたいことを質問する。
「え・・・?」
「だって、気になるじゃないですか。さっきの姫様と妹紅さんの戦いを見に来なかったじゃないですか。」
のび太は返答に困っていた。まさかゲームに夢中になっていたなんて言えない。
「さあ・・・気が付きませんでした。」
「これだけ被害が出ているのに何を言ってるんですか。」
「ええっと・・・それは・・・」
のび太は壊れた桶の穴を手早く塞ぎ、鈴仙から逃げるように部屋から出ていこうとした。
「あっ、ちょっと!!まだ話は終わってませんよ。」
鈴仙ものび太の後を追いかけて部屋を後にする。部屋には永琳だけが残された。
「うふふ。仲がいいわね。」
永琳はのび太と鈴仙のやり取りを楽しんでいた。
ちょっと短いですが一区切りついたので投稿しました。その分早めに投稿したので許してください。
また、この小説のテーマソングのような物を一つ選んでみました。
そちらの方も視聴していただければ幸いです。
次回もこれくらいのペースで投稿できればいいなと思います。
感想お待ちしています。