新訳のび太のバイオハザード ~over time in Gensokyo~ 作:たい焼き
昔の日本の風景が残るこの幻想郷の中に、その風景に全く合わない服装をしている男達が規則正しく歩いていた。
男達は外の世界から持ち込んだ武器で武装していた。相手に接近せず、また相手を近づかせることなく相手の命を奪える代物だ。そんな黒くて無骨なデザインのアサルトライフルと呼ばれる銃を肩からぶら下げ、両手でしっかりと持っている。
いつでも引き金を引くこと出来るだろう。
男達の内の一人が草むらの中に気配を感じたのか、ライフルの引き金を引く。
ダダダッ!!
規則正しく撃ち込まれた銃弾は、草むらの中にいた兎の命を奪う。白かった兎の毛皮は銃弾が作った傷口から溢れ出た血によって赤く染まる。
生物の命を容易く奪えるライフルの引き金を引くことに戸惑いがない。よく訓練された兵士だ。
「ちっ。ただの兎か・・・」
男は無関係の兎の命を奪ったことに罪悪感を感じることはなかった。妙に殺気立っている様子が見てとれる。
「おいおい、そう慌てるなよ。ターゲットは逃げやしないさ。」
同じ兵士の仲間が男の気持ちを落ち着かせる。ターゲットが逃げないというのは、そのターゲットが現在いる場所が一番安全な場所だということだ。わざわざ危険を冒して今よりも危険な場所に移動する意味もない。
「ああ、わかっているさ。それより本物の人を撃ち殺せるんだ。それが今から楽しみでよう・・・」
この部隊にいる人間は自主的に志願した者以外の大半が何らかの問題を起こして部隊に居られなくなった兵士や金で雇われた傭兵、もしくは解放を条件に連れてこられた罪が重い犯罪者達のような者だろう。
だからこそ他の生物の命を奪うことにためらいもない。使い捨てと思えばこれほど便利な駒はない。
「あまり無駄弾使うんじゃねぇぞ。始末書じゃ済まねぇぞ。」
先頭を歩いていた男が振り向いてその男を注意した。格好が他とは少し違うため、この男がこの部隊の隊長なのだろう。
「わかってますよ隊長。それより、例のハンターの群れを壊滅させた奴について何かわかったんですかね。」
数時間前、この辺りに配置していた新型ハンターからの信号が途絶えた。人からの命令を完璧に理解し遂行でき、それに加えて性能もコストも元より改善できた試作品だ。この部隊はその代わりに派遣された。
「それがわからんのだ。データ収集ように発信器と共に取り付けたカメラも敵が映る前に9mm弾の拳銃で撃ち抜かれていた。わかったことは我々のように銃を使う人間だということだ。」
数体いたハンターのカメラに一度も映ることなくカメラとハンターの急所を撃ち抜くことができるのだろうか?出来るとしたら相当の使い手だろう。
「それより俺達の休暇を奪いやがったことだけは許せん。とっととターゲットの拠点を殲滅して帰るぞ。」
「ああそうだな。男は皆殺し、女の能力持ちは捕まえてこいだったな。」
特殊な能力を持った幻想郷の住民は人間離れした戦闘能力を持っているが、その大半が少女や仲間意識の高い者のため、精神面がどうしても弱かった。そのため捕獲し、仲間や友人を人質にすれば簡単に戦力として引き込むこともできるし、洗脳装置も完成に近づいていた。
「まあもうすぐこの攻略戦も終わる。そうしたらうんと酒を飲もうぜ。」
「いいねぇ、俺も混ぜろよ。」
そんな会話を繰り返していると、目標地点への道を阻む竹林が見えてきた。その入り口の前には血で赤色に染まったボロボロの服を着た少年が立っていた。
「おいガキ。邪魔だどけ!!殺されたくなかったらな。」
気の立った男の一人がライフルを構えて少年に向ける。威嚇だと理解した少年は徐々に近づいてくる死の恐怖に怯え震える。
「待ってくださいよ。怯えているじゃないですか。」
男達の中でも確実に目立っている青年が銃を構えた男を止める。周りの男達の中と比べ、力もなさそうに見える。
「どうしたんだい?」
「お母さんが怪我をして薬がいるんだ。それで竹林のお医者さんに薬を貰いに行こうとしていたんだ。」
青年が優しく声をかけたからか、少年も落ち着いて答えた。
「そうかい。それは大変だったな。僕達もそこに行くけど、僕達が住んでいる所の方がいい薬があるから後でそっちに連れて行ってあげるよ。」
少年が了承し、青年が少年を連れて行くことになった。
「おい、どうするんだよあのガキ。」
「アンブレラ社の施設で保護しましょうよ。この子には罪がないんですから。」
「まあいい。いざとなったらお前がそいつを守るんだぞ。子供の世話なんて御免だからな。」
部隊の男達も戦力を持たない子供だからという理由で同行を認めた。子供の服が血で濡れていたが、今の状況では然程珍しくない。どうせ里の人間が殺された時についた返り血だろうと思って見逃した。
子どもの服に付いていた血は、本当に人間の血なのかということも確かめなかった。
人里からかなりの距離があり、行く手を阻む迷いの竹林もあり、辿り着くことすら困難と言われている。
普段なら静かなこの竹林は、アンブレラ社の侵攻によって妖怪達が集まり、元々あった防壁や結界によって難攻不落な要塞と化していた。
それでもその中に閉じ込もることなく、周囲の哨戒や反撃の準備を整えるために行動する者も多い。
竹林の中を警戒しながら歩いている少女、鈴仙・優曇華院・イナバも例外ではない。彼女も幻想郷を取り戻すために行動する者の一人だ。頭から兎の耳が生えており、それが彼女の一番の特徴だろう。
「ねぇ鈴仙、そんなに警戒することないと思うけど・・・」
同じく形は違えど頭から兎の耳が生えている少女の因幡てゐは慎重過ぎる鈴仙を半ば呆れながら見ていた。
「何言ってるのよ!!何事も慎重過ぎる方がいいのよ。」
鈴仙は後ろを歩くてゐの方を見ながら歩いているため、前を見ずに足を踏み出す。
「きゃっ!!」
地に付くはずだった足は、地面がなくなったことで重力に従って落ちる。支えを失った体もそれに逆らわずに、てゐが掘った落とし穴に落ちる。
「・・・慎重に、何だって?」
泥と落ち葉と枝で汚れて見るも無惨な姿になった鈴仙を見て完全に呆れたてゐは落とし穴の上から中を見降ろしていた。捉え方によっては見下しているようにも見える。
「うるさいわよ!!それよりもう貴方も気が付いてるでしょ。」
鈴仙の顔が引き締まり、警戒を先程よりも強める。
「数は5~6ってところかなどうする?戦う?」
足音や会話等から相手の状況を確認する。鈴仙達から大して離れていない。
「あいつら此方には気が付いていないわ。それに真っ直ぐ永遠亭に向かっているわ。ここは先回りして戻ってこの事を知らせた方がいいわね。」
落とし穴から這い上がった鈴仙はその結論にすぐに辿り着いた。それはてゐも同じことだ。
「この距離ならあいつらよりも先に着いて反撃する準備する時間くらいとれるでしょ。」
鈴仙とてゐはその脚力を活かして、アンブレラ社の兵士の数倍速いスピードで永遠亭に戻り始めた。
幻想郷を征服しようとしているアンブレラ社は幻想郷の外の世界にあった企業だ。結果的にこの戦争は幻想郷の住民対外来人となっているが、中には幻想郷を守るために戦う外来人もいる。永遠亭に住み、アンブレラ社へ反抗する少女達を助けている青年、氷室零夜も例外ではない。
愛銃の手入れを行い、訓練も毎日欠かさず行い、気が向けば下手くそながらも料理を行い、好物のチョコレートを口の中に頬張る。ほぼ毎日この繰り返しだ。
傭兵として戦っていたころと一つを除いて殆ど変わらないが、幻想郷の少女達と共に暮らすことで零夜の周りの環境は明らかに変わった。その中で『こんな暮らしがずっと続けばいい』という限りなく可能性が低い願い望む自分が生まれ始めていることを零夜は気が付いていた。
「全くアンブレラ社の奴らめ・・・来て欲しくない時に来やがるくせに、準備ができてる時には来やしない・・・」
零夜の苛立ちは日に日に大きくなっていた。
「暇なら家事の一つや二つ手伝ったらどうなのよ。」
馴れない割烹着姿に着替えさせられた霊夢が洗濯物を干す手を止めずに零夜に声をかけてきた。
「悪いな。柄じゃないね。」
「あんたねぇ・・・覚えておきなさいよ・・・」
本当は近くにある物干し竿か何かで一発殴ってやりたいところだが、他の作業をしていた慧音と妖夢から声がかかり、そちらに行かないと行けなくなったため、一言残して行ってしまった。
そしてしばらく静かな時間が流れた。
「やっぱり暇だ・・・」
これなら家事を手伝った方がよかったかもしれないと内心後悔していた。
暇を紛らわすためにチョコを一口頬張る。たが暇潰しをする必要はなくなった。
「零夜さん大変です!!」
息を切らしながら障子を乱暴に開けて鈴仙が零夜の部屋に入って来た。零夜はそんな様子を見て鈴仙に近づき、鈴仙の服の襟元を掴んで持ち上げ、そのまま霊夢のところに持って行き・・・
「お~い霊夢、洗濯物追加だ。」
「え~もう勘弁して欲しいわ。」
零夜は落とし穴に落ちて泥と落ち葉で汚れた鈴仙を洗濯物を洗っていた霊夢に引き渡した。
「ちょっとふざけてる場合じゃありませんよ!!アンブレラ社が攻めて来ました!!」
「へぇ・・・やっとか。」
零夜は待ってましたと言わんばかりに整備を終えたばかりの愛銃を構えて戦闘体勢を取り始めていた。
「他の皆に知らせてくるわ。」
霊夢も巫女壮族の上から着ていた割烹着を脱ぎ、お祓い棒と札を取り出して洗面所から飛び出す。
「おう。サボったりするなよ。」
零夜が銃のセーフティを外しながら言った冗談を霊夢と鈴仙が小さく笑うと、その場の者の表情が真剣な物に変わる。
「敵の規模はどうなっている?」
「数は5~6です。多分人間だけだと思いますが・・・」
「他にも増援があるかもしれない・・・か。」
「そうです。」
本当に敵がアンブレラ社の兵士5~6人だけならこんなに慌てることはない。竹林内を哨戒していた鈴仙とてゐだけで十分だっただろう。だが、周りに他の敵がいるかどうかわからない状況では下手に手を出さず、退いて状況を報告しに来た鈴仙の選択は最善の手だ。
「作戦はいつも通りだ。何も変えずに応戦だ。皆に伝えてきてくれ。」
「わかりました!!」
勢いよく飛び出して行った鈴仙を尻目に、零夜は他の武器を取り出し始めた。
「懲りないですね。アンブレラ社も。」
既に襲撃に備えて屋根の裏や竹林の影に身を潜めている少女達の内、屋根の裏に隠れた文と妖夢が小言で会話していた。
「そうですよね。支部が一つ潰されてそれの立て直しに忙しいはずなのに。」
「他に何か理由があるのかも。新兵器の実験とか。」
「勘弁して欲しいですよね。こっちだって色々忙しいですし。」
「そうですよね。例えば妖夢さん達の珍しい割烹着姿の撮影とか。」
「昼頃姿を見ないと思っていたら、そんなことしてたんですか!!」
「いや~最近こういうことしていなかったですからね。いい気分転換になりましたよ。」
「焼き鳥になりたいんでしたら、いつ申し出てもいいですよ?」
「あやや・・・妖夢さんアンブレラ社と戦い始めてから精神的に強くなりましたか?」
「おかげでこんな時に冗談くらい言えるようになりましたよ。って来ましたよ。」
などと冗談を言い合っていると風が妖夢達の横を通り抜けるように吹き抜けて行った。恐らく守矢神社の風祝が傭兵達を風で導いているのだろう。
アンブレラ社の傭兵達が永遠亭の前に立った。
数は鈴仙が言った通りに6人、内一人は子どもだ。
「子どもを連れているわね・・・人質かしら?それともアンブレラ社の傭兵の一人かしら?」
「どっちにしても下手に手が出せないですよ。」
永遠亭の門の裏で待ち伏せしている霊夢と鈴仙が門の影から様子を伺う。それに気がついた傭兵の一人がライフル弾をフルオートで撃ち、顔を出せないように攻撃する。
「お前ら抵抗するんじゃねぇぞ。この子どもがどうなってもいいなら別だがな。」
アンブレラ社の傭兵の一人が大声で警告してきた。
「どうしますか零夜さん?」
「気にするな。どっちにしても俺達が負ければ後々殺される。それに弾幕で牽制も混ぜながら攻撃すれば子どもを殺す隙も出来んだろうよ。」
傭兵達の様子を霊夢達の後ろで見ていた零夜が指示を出す。
「霊夢は結界で、文は風で防御しつつ他の奴らが弾幕で攻撃しろ!!隙が出来れば妖夢は白兵戦に持ち込んでもいい。」
零夜の指示はすぐに他の者達にも伝わった。
「それにあいつはアンブレラの犬如きに殺されるような奴じゃねぇよ。」
霊夢達は零夜が見せているいつもとは違う余裕に気が付いたが、その真意を理解出来なかった。
アンブレラと永遠亭、両者が交戦し始めてから10分程経ったが、戦局は硬直していた。お互いは攻撃方法は違えど、弾幕を撒くことで無理に攻めることが出来ない状況を作っていた。
「ここで大人しくしているんだぞ。」
青年に安全な位置に連れて来られた少年は誰も見ていないことを確認すると、血で汚れた服を脱ぎ捨て、持って来ていた服に着替える。
それは外の世界の傭兵や軍人が着ているような迷彩柄の戦闘服だ。それもただの服ではない。少年自身とその知人の技術者二人で開発した防刃・防弾・耐衝撃・耐熱・耐寒性を兼ね揃えた布で出来た、現在の技術でも再現出来ない程高性能な物だ。
そしてカモフラージュのために外していた眼鏡をかける。
「さて見せて貰おうか。この幻想郷のみんなの実力を。」
その少年、野比のび太は息を潜め、気配を消して戦いの様子を見守っていた。
のび太がアンブレラ社の傭兵達と来た理由は、もちろん誘導して実力を見るためだけではない。一人で行動して彼らに見つかり、一人で交戦して自分の存在を永遠亭に着く前にアンブレラ社にバレることだけは避けたかったからだ。
もしそうなれば合流はおろか、零夜達に味方と判断されず孤立し、アンブレラ社と一人で戦うことになることになる。
だからこそこんな面倒くさい方法を取った。ついでに傭兵達から情報も引き出せれば完璧だ。
「最も彼女達が負けるなんてちっとも思っていなかったけどね。」
既に決着はつき始めていた。
少女達の防御は完璧で、ライフル弾程度では突破出来なかった。ロケット弾等があれば別だが支給されていなかった。
その上リロード中は少女達の弾幕が降り注ぎ、確実にダメージを与えていった。
フォーメーションも取れず、傭兵達はバラバラになって倒されていった。
全員が気絶、または絶命して決着が着いた。
「なんか呆気なかったわね。」
終わってみて気がついたが、自分達は全く傷付かずに勝った。前からは全く想像もつかない結果だ。
「それでこいつらどうします?縛りますか?」
「そうした方がいいわね。情報も欲しいし。」
今まで永遠亭の中にいた紫が出てきて傭兵達を縛るためのロープを取り出した。気絶した者達の処遇で頭が一杯だった彼女達は、油断して彼らから離れて倒れていた一人の青年がライフルを構えて狙いをつけていたことに気がつかない。
「せめて一人でも・・・金のためだ。悪く思うなよ。」
青年は一番狙い易い所にいた紫に狙いを定め引き金に指をかける。
「危ねぇ!!」
紫の危険をいち早く察した零夜が紫を守るために壁になる。だが青年が撃とうとしていた銃は横からの衝撃で青年の腕から吹き飛び、青年の手が届かぬ場所に落ちる。
一体何が起こったのか、青年も零夜も少女達もそれを理解するのに時間がかかった。
「その辺りにしておいたらどうですか?。人殺しになりたくないでしょう。」
今まで物陰に隠れていたのび太が出てきており、紫を撃とうとしていた青年の銃を右手に構えたハンドガンで弾き飛ばしたのだ。
「君は・・・一体何者なんだ。」
先程まで見せていた臆病な姿は微塵もなく、代わりに力に満ちた逞しい顔を見せていた。
「アンブレラのふざけた幻想を壊しに来た、ただの人間ですよ。」
のび太は手を差し出し、青年が立ち上がるのを助ける。
「今日のところは気絶した人達を連れて帰ってくれませんか?彼女達には僕から説明しておきますので。」
「そうか・・・すまない。」
青年は近くのまだ息がある男達を抱えて永遠亭を去り始める。
「逃がしませんよ!!」
事態を理解できていない少女達の内、妖夢が真っ先に飛び出した。その行く手をのび太が阻む。
「邪魔しないで!!」
道を塞ぐのび太に対して抜刀した状態せ接近し、振るった刀は正確に首を狙う。のび太こ腰に備えた得物を取り出す。赤い筒だ。
にぎりしめるや否や先端から光が伸びる。筒から生じた光は、光の剣を形成した。
妖夢の右手から迫る刀とのび太の体の左から振り抜かれた剣が互いにぶつかり合い、火花を散らせる。弾けないと判断した妖夢はもう片方の手が握るもう一振りの刀でのび太を斬る。
その判断は間違っていないが、判断が遅すぎた。のび太はその行動を予測し、対処法を用意していた。
迫る手の手首を掴み、背負い投げの要領で妖夢を地面に投げ伏せる。
「ぐ・・・」
起き上がって反撃しようとした妖夢の目の前にのび太の得物が突き付けられる。妖夢はのび太を見上げることで始めて目の前の男に自分達を攻撃する意志がないことに気付く。
「妖夢!!」
のび太に倒された彼女を心配し、鈴仙も飛び出した。完全に虚をついて放ったハンドガンの弾ものび太を貫く前に顔を横にずらし回避され、代わりに鈴仙のハンドガンを手から弾き飛ばされ無防備になる。
鈴仙が落としたハンドガンに視線を奪われた隙にのび太は弾くと同時に腰に伸ばした手でハンドガンを取り出し、鈴仙の首に突き付ける。
そうしてのび太は一瞬の内に二人の戦士を戦闘不能に追いやった。
「やるなワイリーの奴。想像以上だ。」
今まで手を出さずに様子を伺っていた零夜がのび太に対しての感想を述べた。
「そうでしょ?彼も貴方と同じようにバイオハザードで大切な物をたくさん失ってから訓練を積み重ねていたからね。」
「そんなことあの時一言も言ってなかったじゃねぇか。知ってたのか?」
「ついこの前知ったのよ。貴方が彼と会った後よ。」
「まあいい。それでもこんなことされちゃあ黙って見てる訳にはいかねぇよな。」
零夜はハンドガンを抜いて前に出る。
「久し振りです零夜さん。」
「おう、ところで何で今更世界を跨いでまでこっちに来たんだ?」
「あの時のお礼を言いに行かされたんですよ。ほぼ強制的に。」
実際今回この世界に来たのは殆ど紫による物で、自分の意志は20%くらいが本音だ。
「そりゃどうもご苦労。ところでそこ退いてくれねぇか?」
零夜は兵士を一人も残す気はなかった。自分達の情報を渡すことになるからだ。
「退いたらあの人を殺しに行くんですよね?」
「ああ、そのつもりだ。」
「戦意が無くなった彼もか?」
「愚問だな。俺の目的はアンブレラ社の壊滅だ。そのために関係者を皆殺しにする。理に叶ってるだろ?」
零夜の言っていることは戦場にいる人間の意見としては実に正しい。だがそれは銃弾が飛び交う戦場だったらの話だ。殺意と銃声が無くなったこの場所はそれに当てはまらない。
のび太は少し間があった零夜との距離を詰め、零夜の目の前に立つ。
「その中に武力を持たない非力の人間も含まれているのか?」
「何?」
突然の質問に答えがすぐに出ず、言葉が詰まる。
「いいか?よく覚えておくんだ。目的ではない殺人は正義から逸脱するんだ。戦意のない彼のような人をも殺したら君は英雄から殺人鬼に成り下がるぞ。」
とても人間の子どもが出せるような物ではない気迫と共にのび太は零夜に言い放った。
「僕達が戦っているのは個人じゃない。組織だ。それだけは覚えておくんだな。」
零夜はのび太の気迫に完全に押されていた。何も言い返せない。
「分かったよ。どうせ俺じゃお前を突破出来ないしな。」
妖夢と鈴仙の二人を一瞬で倒したのび太を倒すことは今の状態では零夜には無理だった。
「まあ年上の意見くらい素直に聞いておいて損はないよ。」
「お前いくつだよ・・・」
「君よりは上だと思うよ。」
二人の直接交えることなく静かに幕を閉じた。
そういえばまだ何話書くか決めてないけだいいよね?
気分で終わるか続けるか考えよう。