でもラスボスとか黒幕な布都ちゃんを見たことがない。
アホの子ではない布都ちゃんがみたい。
この物語は太子復活までどれだけ布都ちゃんを格好良い子に出来るか、そしてどれだけ星蓮船キャラを好きになれるかを目標としています。
太子様、早くお目覚め下さい。
この世界に、人に救いはありません。
それがこの世界、「幻想郷」に求められた姿なのです。
***
絶賛混乱中である。
私は絶賛混乱中である。
駄目だ、まともに考えられていない。
誰かいないかと周囲を見渡せど、誰か居るわけでもない。荘厳な建築物――おそらく神殿に、動いているのは私だけである。閉所なのか微妙に薄暗く、時が止まったかのように静かなのが正直ホラーのようだ。動いたり独り言したりするのに躊躇われる。神聖な空気がするから襲ってくるものはいないだろうけど。
一人より二人、人は他者がいるだけで自分を客観的にみることが出来る気がする。少なくても私はそうである。
まずは行動だ、よく分からない時は更なる衝撃を感じることで落ち着きを取り戻すんだ。
その場から動いてはいけないとかいうのは迷子だった場合だ。私は迷子ではなく、ただ事態を把握することが出来ていないだけだ。
いや待て。
私は、誰だ?
***
――この時点で私が如何に混乱していたのかお分かり頂けただろうか?
自分自身に対する疑問、その切っ掛けを掴むことがその場で出来たのはある意味僥倖だった。
何しろ、下手に神殿から出たら世界の揺れにスキマ妖怪が早々この霊廟の存在に気づいてしまう可能性があった。
人の味方、人の救いは、この世界に必要とされていないから。
すでに気づかれている可能性は限りなく低いと判断した。何故ならあの超人すら、霊廟がある地に「何か危険なものがある」程度しか感じることが無かったから――まあ、妖怪と元人間な超人の魔法使いを同じ括りにしてはいけないのだろうが、超人が進言されて調べなければ大丈夫だった地だ。巫女が動くまで長いあいだ何も干渉が無かったことから気づかれてはいないだろう。……異変要員? 妖怪に危険性がある人物を、放置するだろうか、あの妖怪が。
確かに「完全な人間の味方」がいない現状を考えてはいたかもしれないが、妖怪のための世界に必要だとは考えてはいないだろう。
悪く考えすぎか? いや、敵は妖怪だから常に疑っていたほうがいいだろう。
……失礼、君には関係ない話になってしまったね。
ともかく私は目覚めた時酷く混乱していたんだ。
まさか自分が「ここはどこ?私は誰?」なんて事になるとは思わなかった。
ぐるぐると混乱している中で定番――私にとっては定番の、「私は誰なのか」という疑問にたどりついた。
そう、私は自分が分からなかったんだ。
頭が冷えたね。顔がサッと青くなった気がしたよ。なってたか自信ないけど。
そこから落ち着いた私は、思い出せることを一つずつ、連鎖のように出してみた。
するとね、不思議なことに此処よりも遥かに文明が進んだ世界で生きていた記憶と此処よりも文明が遅れてる所で生きていた記憶の二つがあるんだ。
しかも前者は普通に思い出せるのに、後者は朧げしか思い出せない。
おかしいと思うだろう? 生きて「いた」、なんて。
実はこの二つの記憶に共通する項目があって、どうやら私は既に死んでいるらしい。
ならば私は記憶を保持して転生とやらをしたのだろうかと考えたのだが、どうやら違うようで、私は死んで、復活したらしい。……生き返ったとは違うようだ。
記憶を掘り起こして一通り落ち着いたあとに周囲を調べてみたんだ。意外と身近なところに解決の糸口があると思って。よくあるよね。
そしたら書記――違うか、あれは日記か。私の日記を見つけてね。私は覚えてないけれど私の字だったし、朧げな記憶の方に、暇つぶしのように日記を書いてたような気がしたし。
藁にもすがる思いで読んだその日記にね、色んなことが書いてあってね、うん。私はほとんど覚えてないから他人事みたいに読んでたんだけどね、うん。
それで判明した事実に色々と言いたいところなんだけど、総合的に一言で済ませるとね。
私が『物部布都』ってどういうことさ。