遊馬vsNo.96 5となっております。
最後の最後まで、油断するんじゃない。
それでは、どうぞ。
「ぐっ…」
俺の口から思わず呻き声が漏れる。
ライフはともかく、俺もアストラルも身体のダメージが多い。
でも、まだ…‼ まだ、負けるわけにはいかねぇ‼
『ライフは残り900。身体はボロボロ。そんな調子でまだ戦うつもりか?』
「まだ…俺達は負けてねぇ‼」
痛む身体にムチを打ち、なんとか立ち上がる。
「いくぜ‼ かっとビング、だ…⁉」
ドローしようと手を伸ばした瞬間、身体に激痛が走り、そのまま倒れ込む。
『クククッ…意気込みはともかく、身体が着いて行かないようだな?』
「くっ…」
『遊馬、君はよくここまで戦ってくれた。少し休め』
「何、言ってんだ。俺、全然大丈夫…」
そう言って起き上がろうとするも、俺の身体に思うように力が入らず、起き上がろうとしない。
『遊馬、後は任せてくれ』
そう言うとアストラルが片腕に自身のデュエルディスクを装着した。
俺の手札とデッキが光になり、アストラルへと納められていく。
『遊馬、君はいつも諦めない心。そして振り向かず、まっすぐに歩み続ける意思を持っている。信じたものへ向かって』
「アストラル…」
『遊馬、どのような形になっても私達は戦っている』
そう言うとアストラルは小さく笑い、No.96へと視線を移した。
『No.96‼ ここからは私が相手だ‼』
『諦めない心。まっすぐに進む意思…アストラル世界によく似ている。ほんのわずかなシミで崩壊する世界。その証拠に、俺
『それはどうかな? いくぞ、私のターン、ドロー‼』
俺の手札には既にエクシーズ召喚できるだけのカードは揃ってる。
ぶつけてやれ、アストラル‼
『エクシーズ・チェンジ・タクティクスを発動‼』
エクシーズ・チェンジ・タクティクス
永続魔法
自分フィールド上に「希望皇ホープ」と名のついたモンスターがエクシーズ召喚された時、500ライフポイントを払い、このカードの効果を発動できる
デッキからカードを1枚ドローする
「エクシーズ・チェンジ・タクティクス」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない
『私はガガガリベンジを発動‼ 墓地からガガガと名のつくモンスターを特殊召喚し、このカードを装備する‼ 蘇れ、ガガガマジシャン‼』
アストラルのその言葉と同時にガガガリベンジが光を放ち、墓地の穴からガガガマジシャンが飛び出した。
『さらに、アステル・ドローンを召喚‼』
アステル・ドローン
☆4 地属性 魔法使い族
ATK 1600
DFE 1000
このカードをエクシーズ召喚に使用する場合、このカードはレベル5モンスターとして扱う事ができる
また、このカードを素材としたエクシーズモンスターは以下の効果を得る
このエクシーズ召喚に成功した時、デッキからカードを1枚ドローする
フィールドにピンクのマフラーを巻いた金髪の小柄なモンスターが現れる。
そのまま手に持つ杖を振るうと、黄色い星が散った。
『レベル4…いや、5か? さあ、何を出す‼』
『フッ…2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ 来い、No.39 希望皇ホープ‼』
フィールドで一際大きな爆発が起こると見慣れた黄色と白の戦士が現れた。
そのまま大きく自身の名前を叫ぶと悠然と構える。
『ガガガリベンジの効果により、攻撃力が300ポイントアップ‼』
No.39 希望皇ホープ 2500→2800
『他のナンバーズを捨て、ホープを選ぶだと⁉ だが、今更ホープ程度に何ができる‼』
「ホープは俺とアストラルの最初の絆だ‼」
No.96の言葉にカチンときた俺は倒れたそのままで叫んだ。
「どんなヤバイデュエルの時でも、ホープは必ずいた。ホープは俺達と1番長く一緒に戦ってきた希望の仲間なんだ‼ だから俺達は信じるんだ‼」
『愚かな‼ 信じるという安っぽい感情は嫉妬や猜疑心、そして裏切りを生む‼ 個々の存在という煩わしいものを消し去り、ただ神だけである俺がいればいい‼ それこそが、理想の世界なのだ‼』
他には誰もいなくて、ただNo.96しかいない世界…そんな世界…
「くだらねぇ…くだらねぇよ‼ そんな理想の世界なんていらねぇ‼ みんなバラバラでいろんな奴がいるからいいんだ‼ そりゃ失敗や間違いはするさ。でも、間違ったなら誰かが教えてやればいい。その為に友達が…仲間がいるんじゃねぇか‼ そんで、2倍も3倍もすっげぇ力が集まるんだ‼ みんなで生きてるから面白ぇんじゃねぇか‼」
小鳥、鉄男、ナンバーズクラブのみんな、シャーク、カイト、真月、アリト、ギラグ達。
上手く行かねぇことは多い。
けど、だからこそ俺達はぶつかり合えるし、解り合える。
そうやって、絆を結んでいけるんじゃねぇか‼
気付けば、俺の身体には力が満ち溢れていた。
これなら立てる。俺は戦える‼
『遊馬』
「待たせたな、アストラル。いくぜ‼」
『ああ、ゼアルだ‼』
「俺は俺自身と‼」
『私で‼』
『「オーバーレイ‼」』
俺が赤い光の塊に、アストラルが青い光の塊となり空へと大きく跳ぶ。
「俺達2人でオーバーレイネットワークを構築‼」
『遠き2つの魂が交わるとき、語り継がれし力が現れる』
俺達がぶつかり合うことで光が溢れる。
俺がアストラルと、アストラルが俺と混じり合い1つになる感覚に包まれていく。
『「エクシーズチェンジ‼ ZEXAL‼」』
『きたか、ZEXAL‼ だが、この状況でどうすることもできまい‼』
「いいや‼ アステル・ドローンがエクシーズ素材となった時、1枚ドローする‼ さらに、エクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果‼ ホープが召喚されたので、ライフを500払いドローする‼」
ZEXAL LP900→400
ホープのユニットとなっているアステル・ドローンが薄っすら現れると杖を振るった。
光るデッキトップに指を添える。
いくぜーー‼
『「最強デュエリストのデュエルは全て必然‼ドローカードさえもデュエリストが創造する‼ シャイニング・ドロー‼」』
ドローカードは…アサルト・アーマー。
そして、RUM−ヌメロン・フォース。
『だが遊馬、ヌメロン・フォースはNo.96の禁止令で無効化されている。発動はできないぞ』
俺の前にアストラルが現れてそう言う。
「大丈夫だ‼」
「俺がドローした1枚はRUM−ヌメロン・フォース‼」
『馬鹿め‼ ヌメロン・フォースは禁止令で発動できない‼』
勝ち誇るNo.96の言葉を聞きながら、視界に小鳥達と共にいる真月を入れる。
「たしかに、ヌメロン・フォースは禁止令によって発動できない。だが‼」
そう言うと俺はヌメロン・フォースを掲げる。
ヌメロン・フォースはリミテッド・バリアンズ・フォースを書き換えたカード。
ならーー
『そういうことか。やるぞ、遊馬』
アストラルも俺の思惑に気付いたのか小さく笑みを浮かべる。
『「重なった熱き思いが、希望を友情の力に昇華する‼」』
ヌメロン・フォースから強い光が溢れ始める。
頼むぜーー‼
『「リ・コントラクト・ユニバース‼」』
そう叫んだ瞬間、ヌメロン・フォースが光に包まれた。
カードの絵やテキストが別の物へと姿を変えていく。
「出来た…⁉」
『う、くっ…‼』
安堵の息を吐こうとした俺とアストラルに痛みと嘔吐感が襲う。
「アストラル、大丈夫か⁉」
『あ、ああ。君はどうだ?』
「へ、へへ。大丈夫に決まってんだろ」
『…おそらく、ZEXALの姿とバリアンズ・フォースの2つの相入れない存在が反発し合っているのだろう。それに』
リミテッド・バリアンズ・フォースの絵柄とテキストがブレようとしている。
『…強引に書き換えたこのカード。いかにZEXALといえど、効果は長くは保たないようだ』
「ああ」
真の姿の上から強引に違うカードを書き換えたんだ。
きっと、それが関係しているんだろう。
『馬鹿な‼』
「俺はRUM−リミテッド・バリアンズ・フォースを発動‼ 希望皇ホープを対象にオーバーレイネットワークを再構築‼カオス・エクシーズ・チェンジ‼ 現れろ、CNo.39 希望皇ホープレイV‼」
ホープが皇の鍵のような形態になるとそのまま回転しながら渦の中へと消え、爆発が起こる。
爆煙の晴れたそこには禍々しいホープの姿がそこにあった。
『クククッ…ハハハハハハッ‼ 何が友情‼何が絆だ‼ 結局、お前達が最後に頼ったのはバリアンの力というわけか‼』
「このホープにあるのは誰かを叩き伏せるような力じゃない‼」
『何ィ?』
俺の言葉を聞いて、No.96が笑うのを止め、こちらを見る。
「たしかに、いい思い出じゃないこともあった。けど、このホープには俺と真月の友情って力がある‼ 俺とアストラルとホープの絆の力が広がったっていう何よりの証拠なんだ‼」
俺は今も憶えてる。
ギラグとのデュエルで俺に託してくれた時の顔を。
俺と真月はあの時たしかに、お互いを信頼し合える奴になれた。
だから、このホープがただのモンスターなわけがねぇんだ‼
「ホープレイVの効果発動‼ CORUを1つ使い、相手モンスターを破壊‼ そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える‼ 俺が選ぶのは冥界龍 ドラゴネクロ‼」
『ぐおっ‼』
No.96 LP2950→1450
ホープレイVが輪になった剣を回転させながらドラゴネクロへと投げつける。
その輪はドラゴネクロに当たると削るような音を立て、ドラゴネクロと共に消え去った。
「そして、ホープレイVを対象にアサルト・アーマーを発動‼」
アサルト・アーマー
装備魔法
自分フィールド上に存在するモンスターが戦士族モンスター1体のみの場合、そのモンスターに装備する事ができる
装備モンスターの攻撃力は300ポイントアップする
装備されているこのカードを墓地へ送る事で、このターン装備モンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる
CNo.39 希望皇ホープレイV 2600→2900
「そして、アサルト・アーマーを解除‼ これでこのターン、ホープレイVは2度攻撃することができる‼ いけ、ホープレイV‼ ダイレクトアタック‼」
No.96 LP1450→150
『くっ…‼ ば、馬鹿な‼ 神たるこの俺が‼』
「二撃目だ‼ いけ、ホープレイV‼」
No.96 LP150→0
「っ…はぁ…はぁ…」
岩へと叩きつけられたNo.96を視認し、俺は両膝をつく。
『遊馬、大丈夫か?』
「お、おう。大丈夫だって」
俺をしきりに心配するアストラルに俺は笑って答える。
No.96…ようやく、奴を倒した。
「やった‼」
ホープの攻撃が決まり、小鳥が声をあげたところで、いつの間にかスターダストが姿を消していることに気付いた。
「冥界龍ドラゴネクロ…」
俺の足元にはNo.96の墓地から吐き出されたドラゴネクロが落ちている。
一体、あのモンスターは何だったのだろう。
あの瞬間、スターダストとドラゴネクロは互いに引かれ合っているように見えた。
俺の知らないシグナーの龍?
しかし、あのモンスターは融合モンスター。シンクロモンスターであるスターダストと種族以上の関連性があるようには見えない。
「………」
わからない。
帰ったら、遊星さんに連絡をとってみるか。
そう結論付け、ドラゴネクロをデッキホルダーに収め、No.96へと視線を向けるとだらんとしていた手に力が込められていた。
「遊馬‼ アストラル‼」
真月の鋭い言葉に、下げていた顔を上げるとNo.96が立ち上がっていた。
『アストラル‼ 貴様が勝ったというのなら、この俺を受け止めてみろ‼』
そう叫ぶとNo.96は形を失い、黒い塊へと変貌した。
その塊は黒い1本の槍へ姿を変えると真っすぐに俺達目掛けて飛んでくる。
『…‼ 遊馬‼』
アストラルが叫んだ瞬間、重なっていた俺達はアストラルに弾かれるようにして分離した。
『ぐあっ…‼』
勢いに負け、尻もちをついた俺の前でNo.96がアストラルの胸を貫通する。
その姿は、あのサルガッソでベクターに唆され、胸に黒い穴が空いたあの時を思い起こさせる。
「アストラル‼」
『来るな‼』
慌てて駆け寄ろうとした俺を、しかしアストラルは止めた。
『来てはいけない…‼』
ーアストラル、貴様にアストラル世界は救えない。俺は神。神なのだ‼ー
「アストラル‼」
No.96の声が聞こえると、アストラルが白から黒へと変貌していく。
ただ見ていることしか出来ないなんて…こんなところまであの時と一緒なのかよ…‼
ー全てを消し去ってやる。お前も、お前の仲間も‼ 全て‼ー
そう叫ぶとアストラルは苦しげな表情を浮かべつつも、俺や小鳥達へ視線を移した。
その目は、何かを覚悟したような…?
「アストラ…‼」
『ぉぉぉぉおおおおおお‼』
嫌な予感がし、声を上げようとした俺の声に、アストラルの叫びが重なるように遮る。
アストラルの身体から白い光が溢れ始め、やがてその光はアストラルと光の区別がつかない程に強くなる。
「アストラル…‼」
俺のその呟きを最後に光は俺の視界を呑み込んだ。
「っ…」
アストラルから溢れた光が消えると、先程までの空は消え、所々から晴れ間が覗いていた。
空からは爆発で巻き上げられたのであろう、小さな紅い結晶がチラチラと落ちてきている。
今のは…それに、No.96は一体…?
「アストラル‼ おい、アストラル‼」
遊馬の声にハッとしてそちらを見ると、遊馬と点滅を繰り返すアストラルの姿が視界に入った。
『遊馬、無事だったか』
アストラルの声は先程までの戦いが嘘のように穏やかだ。
「馬鹿野郎、無茶しやがって。なんでZEXALを解いたんだ」
『君を巻き込むわけにはいかない』
「なんでだよ。仲間だろ‼」
『仲間か…』
アストラルは噛みしめるように呟き、1度目を閉じる。
『遊馬、君には繰り返し教えられたな。仲間の大切さ。仲間を信じる心』
アストラルのそんな言葉に俺は漠然と嫌な予感を感じる。
まさか…
『お別れだ、遊馬』
「え?」
唐突に告げられた別れの言葉に遊馬は予想していなかったのか、聞き返す。
あの光、アストラルは最後の力を振り絞って…‼
「なんでだよ」
『ナンバーズを頼んだぞ』
アストラルが光の粒子となり、消え始める。
遊馬の問いかけに答えようとはしない。
「ふざけんなよ。なんでお別れなんだよ‼ 俺嫌だよ‼ 別れるなんて‼」
遊馬はアストラルに向け、手を伸ばす。
アストラルも応えるように手をゆっくりと遊馬へと伸ばす。
互いの手は後ほんの少し伸ばせば届く距離だ。
しかし…
「何処にも行かないでくれよ‼」
『ありがとう』
掴もうとした遊馬の手が粒子となった手を前に空を切る。
そのまま、完全に光の塊となってしまったアストラルは足元に広がる空間へと消えていった。
慌てて手を伸ばした遊馬の胸にぶら下げられていた皇の鍵が大きく跳ねると、アストラルの後に続くようにして落ちていく。
それと同時に、俺達の視界が再び光に呑まれ、気付けば吸い込まれる前に立っていた場所へと立っていた。
「アストラル…? アストラル‼」
遊馬がアストラルを探し、辺りを見回す。
だが、アストラルの姿は何処にもない。
「アストラルーーーーーッ」
遊馬の叫びが虚しく響き渡る。
ーーその日、俺達は大切な仲間を1人、失った。
いかがでしたでしょうか?
No.96の言い分に、僅かながらもダークネェス…を感じた人はGXが大好き。
私がそうなんだ。間違いない。
例の如く、活動報告に裏話やらデッキレシピやら載せましたので、よければそちらもどうぞ。
それでは。