導入回となっています。
夏休みも終わりましたね。
皆さん、今年の夏は海に山にとリア充できましたか?
ハハッ…イヤミか貴様ッッ
それでは、どうぞ。
第93話
「なあ、真月」
「ん?」
「なんか、シャークの様子がおかしくないか?」
「………」
終礼前。
帰り支度も済ませ、後は担任である右京先生が来るまでの手持ち無沙汰な時間。俺は同じく暇そうにしていた遊馬の隣に座り、喋っている。
遺跡から戻ってから既に数日、病院で眠り続ける璃緒が目を覚ます気配はない。
ナンバーズに取り憑かれていたことも一因なのだろうが、おそらく璃緒も記憶を見たのだろう。
壮絶な最期だった。俺の脳裏には未だに海へと落ちる璃緒の姿がこびりついている。
「遊馬はどうしてほしいんだ?」
「…俺は、シャークの悩みに乗りたい。話してどうなるかはわかんねぇけど…でも、仲間だし、聞きたい」
仲間、か…遊馬やみんながそう言ってくれた時嬉しかったっけ。
「真月はどう思ってるんだ?」
「俺は…そうだな、あまり心配はしてない」
シャークはデュエルの最中、アビスの言葉に『俺は俺だ』と答えていた。
俺は、きっとその言葉こそがシャークの真意なのだと思う。
「そのうちシャークから打ち明けてくるだろうから、その時まで待っていればいいさ」
まあ、アウトローを気取るシャークのことだ。
多分、打ち明けるには手助けが必要だろうが…仕方ない、そこは機会を見付けて俺が引き受けるとしよう。
「それじゃあ終礼を始めましょうか」
ドアが開き、朗らかな右京先生の声が聞こえてくる。
「おっと、右京先生だ。じゃあ遊馬、また後で」
「おう」
『真月』
遊馬と小鳥が話しながら歩いているのを少し離れて見ていると、アストラルが話しかけてきた。
『君も遺跡の記憶を見たのか?』
「ああ。多分、ベクターの影響だ」
既に何度か説明しているが、ベクターから生まれた俺の根っこはベクターと同じだ。
となればシャークと璃緒、それに俺とドルべ、加えてナンバーズの管理をするアストラルが記憶を見ていてもおかしくはない。
『君はあの記憶をどう思う?』
「どうと言われてもな…」
俺になる以前の『俺』を思い出せない俺にとって、必要なのは今であり未来だ。
遊馬達や璃緒と積み重ねた過去が不必要だとは言わないが、しかし過去は過去だというのも事実。
「驚いたし、2人のことは心配してる。力にもなりたい。けど、これの答えは2人にしか出せない。だから、俺は2人の…璃緒さんの気持ちのはけ口くらいにはなるつもりだ」
『シャークは遊馬か?』
「ああ。遊馬ならシャークとぶつかり合えると思う」
あの2人は色々と縁があるらしいことは聞いているし、見ていてもわかる。
シャークはなんだかんだで世話焼きなのだ。
「ところでアストラル、ニュースでやってるーー」
異常気象について聞こうと口を開いた俺の視界に紫色のまるで修正テープのような形のバイクが見える。
あれは、たしかシャークのーー
「遊馬‼」
バイクから降りたシャークはヘルメットをとると俺達へと駆け寄ってくる。
「無事だったんだな‼」
「無事?」
「璃緒が」
そうシャークが言いかけると同時に空から黒い何かが降ってきた。
「なんだ?」
手のひらを空に向けるとそこに塵のような何かが乗る。
「っ⁉」
乗った塵は僅かに電流を放出するとそのまま消え去った。
これは一体…
「なんだ、あの雲⁉」
遊馬の言葉に全員が空を見上げる。
見上げたそこには雲が暗い中心目掛けて渦を巻いていた。
ークックックックッ…ー
何処からともなく、笑い声が聞こえてくる。
「バリアンか…⁉」
まさか本格的な侵攻がもう始まったのか⁉
「な、何だ⁉」
「これは…⁉」
遊馬の驚きの声とほぼ同時に俺達の身体を黄色く光る力が包み込むと、身体が地面を離れた。
「きゃあ⁉」
そのまま、突然感じる慣れない浮遊間に小鳥が上げた悲鳴を聞きながら、俺は小さくなるハートランドシティと黄色い光に視界が塗り潰されていった。
いかがでしたでしょうか?
まあ夏休みは終わっても本作は続きます。
もうしばらくお付き合いください。
…今年度中に終わる、かなぁ?
それでは。