ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

89 / 161
こんにちは。
シャークvsアビス 2となっております。

先日、録画していた5D's最終回を久しぶりに見ました。
やっぱ面白いですね、5D's。EDの最後のライディングを見てそう思いました。
久しぶりに遊星とタッグ組もうかな。

それでは、どうぞ。


第89話

「‼」

 

深くなっていた霧が唐突に晴れると、俺は何処かの玉座に座らせられていた。

目の前には3人の男が首を垂れており、俺の傍らにはあのアビスと全く同じ服装をした璃緒らしき少女がいる。

ここは一体…?

「国王陛下‼ ご報告申し上げます。各方面の軍勢は我が軍の劣勢。ベクター軍はゴルゴンを使い、我が軍の防衛線を次々と突破。このままでは、我が国はおろか近隣諸国すらも皆殺しに‼」

 

兵士らしい男の言葉に俺の混乱はさらに増すばかりだ。

 

国王陛下とは誰だ?

ゴルゴンとは何だ?

何故ここにベクターの名前が出る?

 

何を言っているんだ、コイツは。

いや、それよりも

「俺に何をしろって言うんだ」

そんな言葉が腹立ち紛れに口から出た。

 

「お兄様、皆はお兄様の指示を待っています」

璃緒らしき少女がそんなことを言う。

「俺の?」

「そうです。この国の国王であり、指導者でもあるお兄様の指示を」

そう言った璃緒らしい少女の言葉に俺は思わずカチンときた。

何が何だかわからないが、コイツらは俺に命を預けているらしい。

だが、そんな重いものをいきなり俺に預けるな‼

なによりその姿、その声が璃緒を思わせることに腹が立つ。

「ふざけるな‼ 俺に貴様らの人生を押し付けるんじゃねぇ‼」

 

そう叫ぶと周囲の人間のざわつく声が聞こえる。

「どうしたの、お兄様⁉ お兄様はこのポセイドン海の連合国を束ねてきた指導者じゃない‼」

「俺が…⁉」

どういうことだ…⁉

 

ー乗り越えろー

 

周囲に光が落ちたかと思うと、そんな言葉が聞こえてくる。

この声はアビスか…‼

 

「何処にいる‼」

そう叫び、周囲を見渡すと鏡に映る俺が俺を見つめていた。

 

ー試練を乗り越えろ。この世界の戦いにも、デュエルにも勝つのだー

 

「黙れ‼」

力まかせに鏡に向けて拳を振るうと鏡の俺にヒビが入る。

それと同時に暗転が起こった。

周囲が再び明るくなる。

 

「国王…?」

「お兄様…?」

周囲からそんな言葉が聞こえてくる。

…俺の試練。

面白ぇじゃねぇか…‼

 

「俺は指導者じゃねぇ。だがな…負けるつもりはねぇ‼」

そうだ。わけのわからねぇこんな世界でも、デュエルでも、負けるっていうのはイラっとくるぜ‼

 

 

「…ここは…⁉」

瞬きの次の瞬間、俺の視界には元のデュエルのフィールドが広がっていた。

視界にはデュランダルとアビスの姿がはいる。

 

「今のは…」

「我は1枚伏せてターンエンド‼」

 

アビス LP4000

手札 3

モンスター 1

アーティファクト−デュランダル 攻撃

魔法・罠 1

⁇?

 

 

「何故ここに…?」

「お前達を追ってきた」

わかってはいたが、一応聞いてみるとそんな答えが返ってきた。

「それで? ここでデュエルをするか?」

「デュエルか…それもいいかもしれないな」

 

…?

なんだろう。

ドルべから覇気というものを感じることができない。

何か悩んでいるのか?

 

「ドルべ」

「何だ」

「遊馬達からバリアンが…その、人間だったと聞いた」

そう言うとドルべはピクリと反応を示した。

…やはり、悩んでいるのはそこか。

 

「…わからない」

「わからない?」

ドルべの言葉に俺は訝しむ。

というよりも、まさか乗ってくると思っていなかったが…

 

「真月、お前は何故戦う?」

「何故って…ベクターを止めるためだ」

 

あのベクターが、戦いの最中に何もしないとは思えない。

必ず何かしてくるだろう。

それに、奴には借りもある。

借りはのしを付けて返してやるつもりだ。

 

「…そうか。私はどうすればいいのだろうか」

「?」

なんというか、ドルべが漏らしたとは思えないらしくない言葉に俺は怪訝な面持ちで続きを待つ。

 

「お前達と行動を共にしたあの遺跡。あそこで私は遺跡の碑文を知った。いや、知ってしまった。あの時の、私ではない私が現れるような感覚。それからだ、私の中にズレがあるのは」

 

ズレ、か。

俺に話すくらいだ。

相当なものなのだろう。それこそ、これまでの自分を根底から覆しかねない程の。

 

「…まあ、俺が何か言えるとしたら」

そんなドルべを見ていたせいか、俺の口からそんな言葉が漏れ出た。

 

「調べるかな?」

「調べる?」

「ああ。ドルべ、バリアンの戦士になる前お前は何をしていたんだ?」

「なる、前?」

「ああ。他のバリアンの戦士もそうだが、まさか生まれた時からバリアンの戦士だったわけじゃないだろう? バリアンの戦士としての使命を持つきっかけがあったはずだ」

 

そこに全ての鍵があるといってもいい。

残された時間はそれ程多くはない。

それが何か、気付いた時ドルべがどういった結論を出すのか。

こういってはなんだが、楽しみだ。

 

「「⁉」」

ドルべに話したところで空が再び光を放つと、そこにはオーロラが現れた。

そこには璃緒とシャークのデュエル風景が映り込んでいる。

どうやら、遺跡の試練は既に始まっているようだ。

 

「…ってこんなことしてる場合じゃない。すぐに行かないと‼」

ただでさえ、迷宮に時間を取られているというのにこれ以上時間を無駄にするわけにはいかない。

 

「真月」

駆け出そうとした俺をドルべが止める。

「…すまない。助かった」

「…まあ、こんな事言うのもおかしな話だが、お互い悔いのない選択にしたいな」

「ああ」

そう言うとドルべはフワッと浮かんだ。

そういえばバリアンは空飛べるんだったなーーっておい‼

 

「行くなら俺も連れて行ってくれ‼」

そう叫ぶがドルべには聞こえなかったのか、そのまま飛び去った。

 

「ああ、くそ‼」

一先ず悪態をつき、ついで走ろうとすると腰のデッキホルダーから光が漏れていることに気付いた。

開いてみると、スターダスト・ドラゴンが光を放っており、強い光が溢れると俺の目の前にスターダストが現れた。

 

「は…?」

何が起こった?

 

俺の思考をよそに、スターダストは大きな翼をはためかせ、壁が壊れるのも構うことなく俺の前へと降り立つ。

そのまま無言で俺をじっとみつめた。

 

「…乗れってことか?」

そう呟くとスターダストは唸り声をあげ、乗りやすいように頭を下げる。

ありがたいが…しかしどうしてこうなった?

 

俺は首を捻りつつも、スターダストの背中へ乗ると咆哮と共に翼を広げたスターダストが地面を離れた。

あっという間に足元が遠くなる。

 

「…あれは?」

離れた場所にピラミッドの土台のような場所があり、そこには紫色の豆粒が見える。

多分、あれがシャークだろう。

ということは真向かいにいるのは璃緒か?

 

まあ、何はともあれ

「向かってくれ、スターダスト」

まずは向かおう。

待っていてくれ、シャーク。

俺に何ができるとも思えないが、すぐにそちらに向かう。

 

スターダストの首に腕を回し、向かい風を浴びながら俺はふと思い出す。

 

…そういえば、遊馬はどうしたんだ?




いかがでしたでしょうか?

オマケ −その頃の遊馬−
「また行き止まりかよ‼」
『遊馬。どうやらこの道は先程通った道のようだ。この壁の亀裂に見覚えがある』
「マジかよ‼ あーもう、シャークもどっか行ったし、この迷路からは出られねぇし。どうすりゃいいんだよ」
『‼ 遊馬‼』
「なんだよ…って、あれは真月のドラゴンか⁉ 真月の奴、デュエルしてるのか?」
『それはわからないが…どうやらあちらに向かうようだ。遊馬、追うぞ。デュエルをしているのなら、あのドラゴンの戻る先には真月がいるはず』
「おう‼ …って速ぇ‼ 待ってくれー‼」

それでは。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。