ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
真月vs瑠那 5となっています。

ふと思ったのですが、ストラクチャーデッキ「万丈目サンダー」はどうでしょう?
【おジャマ】で相手フィールドを埋めるテクニカルなデッキを駆使し、君も「俺の名は!」を叫ぼう!
需要は! …あるかな?
それでは、どうぞ。


第78話

「…わからないわ」

 

頭を抱える俺を前に瑠那が唐突に呟いた。

「わからない?」

「絶望的なライフ差。フィールドのアドバンテージも私がとってる。なのに零君、どうして貴方は諦めないの?」

「俺が憧れた決闘者達も諦めなかったからさ」

 

武藤遊戯。

遊城十代。

不動遊星。

…そして、九十九遊馬。

 

彼らはどんなに不利な状況に陥ったとしても、諦めることはしなかった。

なら、俺も諦めるわけにはいかない。

 

武藤遊戯が神を前に決して膝を折らなかったように。

 

遊城十代が多くの脅威の前に一歩も引かない戦いを繰り広げたように。

 

不動遊星が未来から来た強大な力の前に仲間と共に立ち向かったように。

 

遊馬が俺の為に異世界まで追いかけてきてくれたように。

 

「俺も諦めない。俺のターン、ドロー‼ 貪欲な壺を発動‼ 墓地のカードを5枚デッキに戻し、シャッフル‼ 2枚ドローする‼」

 

戻すカード

セイクリッド・プレアデス

セイクリッド・ソンブレス

セイクリッド・カウスト

セイクリッド・グレディ

セイクリッド・アクベス

 

墓地の5枚をデッキに戻すとオートシャッフル機能が起動し、高速でデッキがシャッフルされ始め、やがてピタリと止まった。

「瑠那さん、見ていてくれ。これが俺なりのかっとビングってヤツだ」

「かっとビング?」

「踏み出す勇気ってヤツさ」

 

背中が熱い。

でも、なんだろう。不愉快な熱さではない。

むしろ、心地いい。

ボロボロの身体に闘志が漲ってくる。

いくぞーー‼

 

「ドロー‼」

果たして引いたカードは…?

 

「いい内容だ‼ セイクリッド・ポルクスを召喚‼ 効果によりセイクリッド・アクベスを召喚‼ アクベスの効果発動‼」

 

セイクリッド・ポルクス 1700→2200

セイクリッド・アクベス 800→1300

 

「レベル4が2体…‼」

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ 来い、セイクリッド・ビーハイブ‼」

 

ポルクスとアクベスが大きく跳躍し爆発と共に消え去る。

爆煙が吹き飛ぶと、マントを翻し拳を握る戦士が現れた。

「いけ、ビーハイブ‼ ローザリアンに攻撃‼」

宣言と共にビーハイブが空高く跳躍し、拳を固める。

 

「ビーハイブの効果発動‼ ORUを1つ取り除き、ビーハイブ自身の攻撃力を1000ポイントアップする‼」

 

セイクリッド・ビーハイブ 2400→3400

 

「くうっ…‼」

 

瑠那 LP3300→2800

 

急降下してきたビーハイブの拳がローザリアンを貫き、破壊した。

瑠那が勢いに負けて吹き飛び、壁にぶつかる。

「1枚伏せてターンエンド‼」

 

真月 LP150

手札 1

モンスター 2

セイクリッド・ビーハイブ 攻撃

ローズ・トークン 守備

魔法・罠 1

⁇?

 

「うっ…くっ…」

座り込んでいた瑠那が顔を伏せたまま立ち上がる。

「…負けない。負けるわけにはいかない…‼ 私のターン、ドロー‼」

瑠那がドローカードを確認すると口元に笑みを浮かべ俺を見る。

 

「どうやら、運命は私に微笑んだようね。ローンファイア・ブロッサムを召喚し効果発動‼ ローンファイア・ブロッサムをリリースし、来なさい‼ 姫葵マリーナ‼」

 

姫葵マリーナ

☆8 炎属性 植物族

ATK 2800

DFE 1600

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、このカード以外の自分フィールド上の植物族モンスター1体が戦闘またはカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊できる

 

瑠那のフィールドに風が吹き荒れると大輪の向日葵と共にそこに植わる女性が現れた。

「マリーナ…」

 

瑠那の瞳には攻撃の意思が蘭々と輝いている。

ローズ・トークンもいるが…まさかビーハイブに攻撃するのか?

「いくわよ‼ これが最後のカード‼ リバースカードオープン‼ ディフェンダーズ・クロス‼」

 

ディフェンダーズ・クロス

通常罠

バトルフェイズ中のみ発動する事ができる

相手フィールド上に守備表示で存在するモンスターは表側攻撃表示になり、そのモンスターの効果は無効化される

 

「私はローズ・トークンを選択‼ 攻撃表示になってもらうわ‼」

ローズ・トークンが守備表示である薄い青から本来の赤い薔薇と緑の茎へと色を変える。

「ローズ・トークンの攻撃力は800‼ マリーナの攻撃を受ければ150しかない零君のライフは0になる‼ バトル続行よ‼」

そう叫ぶとマリーナは両手のひらの間に力を込め始めた。

黄色いエネルギーの塊はやがて球体になるとそこから一直線にローズ・トークンへと飛んでくると俺のフィールドは光に呑まれた。

「これで零君は私の…‼」

 

「…そいつはどうかな?」

 

「⁉」

喜色満面の瑠那が視線を向けるとそこにはローズ・トークンの背後から拳を突き出すビーハイブの姿があった。

「なんですって⁉」

「俺はダメージステップにこいつを発動した」

「援護…射撃…⁉」

 

援護射撃

通常罠

相手モンスターが自分フィールド上モンスターを攻撃する場合、ダメージステップ時に発動する事ができる

攻撃を受けた自分モンスターの攻撃力は、自分フィールド上に表側表示で存在する他のモンスター1体の攻撃力分アップする

 

「この効果により、攻撃を受けたローズ・トークンの攻撃力はビーハイブの攻撃力分アップする」

 

ローズ・トークン 800→3200

 

「攻撃力…3200…‼」

「反撃だ‼」

俺が宣言するとマリーナの動きが止まった。

そのままグングン枯れていき、やがて姿を消してしまう。

 

瑠那 LP2800→2400

 

「…ターンエンド」

 

瑠那 LP2400

手札 2

モンスター 0

魔法・罠 0

 

「俺のターン、ドロー‼ …いけ、ビーハイブ‼」

俺の言葉にビーハイブは拳を固め飛び出す。

そのまま引かれた拳が瑠那に当たる瞬間

 

瑠那 LP2400→0

 

「………」

両手を抱き止めるように伸ばし、ビーハイブの拳を受け入れた瑠那はそのまま吹き飛んだ。

床に転がり、壁に激突し動きを止める。

 

Dゲイザーを外し、ゆっくり近付くと瑠那はゆっくりと身体を起こした。

「効いたわ、零君の一撃」

「瑠那さん」

「今すごくスッキリした気持ち。ああ…ベクターのことを許したわけじゃないわ。けれど…同じ顔だからかしらね?」

そう言うと瑠那は初めて会ったあの時と同じ笑みを浮かべた。

俺はなんとも言えず、ひきつったような笑みを浮かべる。

 

「このカードを貴方に託すわ」

「…クイーン・オブ・ナイツ」

瑠那のデッキから離れたナンバーズは俺の目の前で輝きを放ちながらクルクルと回っている。

 

「そういえば瑠那さん。何故ティタニアルじゃなくマリーナを?」

「…わからないの?」

瑠那が少し驚いたように俺を見るが、あいにくと俺にはサッパリ思い当たる節がない。

「はぁ…まあ、いいわ。零君、気になるなら自分で調べなさい」

そう言うと瑠那は呆れたように笑い俺の額を小突いた。

 

「さて、それじゃあここまでかしらね」

「え?」

俺がそう返した瞬間、揺れが起こり始めた。

「な、何が…?」

「役目を終えたこの遺跡は崩壊するわ。もうここに到達する者もいないでしょうしね」

そう言うと空間がそこだけ切り取られたかのような白い穴が現れた。

 

「その穴から外へと出ることができるわ」

「瑠那さんは?」

「………」

 

‼ まさか…

 

「この遺跡と共に自分を…‼」

俺の言葉に瑠那は笑みを浮かべたまま何も語らない。

「零君、貴方と過ごした時間はとても幸せだったわ。できれば、その幸せをもっと味わいたかったけれど」

「瑠…‼」

「じゃあね、零君」

 

そう言うと瑠那が俺を白い空間へと突き飛ばした。

急速に意識が遠退いていく。

穴の開いた場所がドンドン遠くなっていく。

 

 

「う…」

 

「零君⁉」

小さく呻く零君の声が聞こえ乗り出して見つめるとうっすらと目を開いた。

「璃緒…さん?」

 

「…もう‼」

思わずそう返すと私は零君を抱きしめた。

「何度も何度も心配かけて‼ どれだけ心配したか…っ‼」

「ああ…うん。悪い」

私の言葉に零君は曖昧な言葉を返す。

「…どうかしたの?」

「いや…色々あったんだ」

「寝ている間に?」

「ああ。きちんと話すよ」

 

そう零君が私に返すと扉が開き、先程デュエルをしたあの男が入ってくる。

「ちょ、ちょっと。入るならノックくらいしてもらえる?」

「すまない」

気恥ずかしくて零君から離れとりあえず文句を言ってみるものの、男に堪えた様子はない。

 

「起きたか、真月」

「なっ…」

零君は驚いているのか眼を見開き動きを止める。

 

「どうした?」

「あ、ああいや…まさか会えるとは思わなくて」

男の言葉に零君は思い出したように返す。

 

「…真月零です」

「不動遊星だ」

 

零君は珍しく狼狽えたような様子で不動遊星と名乗った男と握手を交わす。

「…璃緒さん、少し2人にしてほしい」

「え、ええ…」

零君のただならない気配に私は言葉をつまらせ、頷くことしかできなかった。

零君、一体何を…




いかがでしたでしょうか?
今回の裏話とお知らせもありますので、興味のある方はどうぞ。
それでは。

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