ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
今回は遊星 2となっております。

遊星を思い出す為、とりあえずTFをプレイ中。
遊星の戦士を置いたらターレットを出したがる謎のプレイングと、アホ強いブルーノちゃんに振り回され、たまにミスティやシェリーに浮気しながらデュエルを楽しんでいます。
TFの続編はまだなのか。
あれなら色んなキャラちょっとずつ出して、コナミ君プレイヤーキャラのお祭りゲーみたいなのでもいいのよ?
それでは、どうぞ。


第65話

「ここがハートランドシティ…」

 

昼過ぎに街へと入った俺は、休日なこともあってか、賑やかな街中を通り抜け、そのまま高台まで走らせるとバイクを降り、眺めた。

中央にある商業施設や遊園地を囲むように住宅街が広がっているのがわかる。

 

…この街にスターダストと真月という青年がいる。

 

俺は懐からPDAを取り出し、出発前に雑賀が調べた真月の情報に目を通しながらこれからどうするか考え始める。

 

真月は友人に後を託し倒れた。

そのまま病院へと運ばれていることだろう。

コレがあれば、多少強引かもしれないが通るはずだ。

 

そう考えながら、俺は懐にある1枚のカードを取り出した。

プラスチックに記されたそれは身分証明証と記されており、髪を寝かせた俺の顔写真の横に真月太郎という名前が書かれてある。

 

いわゆる、偽造証明というヤツだ。

法に触れている以上、バレてしまえばタダでは済まないだろう。

今は化粧で隠しているとはいえ、俺の顔半分には元犯罪者の証ーマーカーがある。

今はネオドミノシティと繋がっている、サテライトから侵入した時に付けられたものだ。

 

なので、あまり多用はできないが、ある程度はこれがあれば問題ないはずだ。

 

「…さて…」

 

病院の場所は確認した。

まずはそこへ向かおう。

 

 

病院へ入ると、清潔な空間が広がっており、ロビーで喋る患者の姿が視界に入る。

様々な行事予定や『カード泥棒出没注意!』と書かれたセキュリティからの注意喚起の掲示の脇を抜け、真っ直ぐに受け付けへと向かう。

 

「この病院に真月零という青年が入院していると聞いてきた」

「…失礼ですが、どちら様でしょうか?」

「真月太郎という。真月零の兄だ」

 

そう言うと俺は受け付けに偽造証明を置いた。

受け取った受け付けはマジマジと写真の俺と今の俺を見比べる。

 

「…お返しします。では、真月太郎さん。弟さんの病室ですがーーー」

ややあって、納得したのか返された偽造証明を受け取り、病室の場所を教えてもらう。

どうやら、個室らしい。

 

「ありがとう」

俺は礼を言って歩き出し、エレベーターのボタンを押した。

すぐに来たエレベーターに乗ると音も無く上がる。

 

 

無機質な廊下を目的地に向け、真っ直ぐに歩く。

先程から痣のあった腕が熱い。

俺は直感的に、間違いないことを悟った。

スターダストが近くにある。

 

「…ここか」

壁に書かれた真月零という名前を確認し、引き戸を開けた。

病室に入ると、個室にしてはやけに大きな室内と、大きな窓の外に見えるハートランドシティが視界に入る。

ドアを閉め、ポツンと置かれた1つのベッドに近付く。

その上には、意識のない青年ー真月零の姿があった。

 

…ついに、会うことができた。

 

意識のない左手には元凶となったカードが握られている。

黒く塗りつぶされてしまっており、名前はおろか絵柄すらも認識できないが、おそらく夢で見たクレイジーボックスというカードだろう。

 

「…ッ」

ベッドサイドに置かれた2つのデッキホルダーのうち、1つが光を放ち始める。

手に取り、中身を見ると光が消えたそこにはスターダスト・ドラゴンの姿があった。

 

「…スターダスト・ドラゴン」

 

白いカードフレームの中に描かれたスターダストの姿はキラキラと空に瞬く星のような儚く優しい光を放っている。

ほんの少しの短い期間だったが、共にあった在りし日の姿を思い出し、俺は自然と口角が上がるのを感じた。

 

「ん…?」

 

厚みを感じ、触ってみるとスターダスト・ドラゴンに重なるようにカードが1枚重ねられていた。

 

「Sinスターダスト・ドラゴン…?」

 

スターダストの後ろから現れたカードにはスターダストに黒い仮面が取り付けられており、翼や膝、腹部など白い身体の一部が黒く染められていた。

こちらのスターダストには儚さよりも力強さを感じられる。

 

「スターダストが…2枚?」

 

1枚は俺の知るスターダスト・ドラゴンだ。

エクシーズとは違う召喚方法であるシンクロが明記されていることや、シンクロモンスターの証である白いカードフレームから見ても間違いはない。

 

もう1枚は俺の知らないスターダスト・ドラゴン。

こちらはエクストラのスターダストをゲームから取り除けば特殊召喚できるが、フィールド魔法が無ければ自壊してしまうという、重いデメリットをもった効果モンスター。

 

これは一体…?

 

そう考えながら2枚を見比べていると、脳裏にふと、スターダスト・ドラゴンが更に進化した存在、セイヴァー・スター・ドラゴンの姿が浮かぶ。

なるほど…そういうことか。

 

「スターダスト、これが彼への力の貸し方ということか」

 

スターダスト・ドラゴンはシンクロモンスター。

本来、存在することすら許されないカード。

だが、真月の何かに役目を終えたはずのスターダストが応えたということか。

 

俺と共に戦ったスターダストと真月と共に戦うSinスターダスト。

この2枚のスターダストを介せば、真月の下まで辿り着けるかもしれない。

その為には…

 

「…デュエルをするしかない」

 

スターダスト・ドラゴン。

こいつの力をデュエルで引き出し、真月にフィールを与えることができれば、真月の意識を呼び戻すきっかけになるかもしれない。

しかし、俺は今1人だ。

そして、この街にシンクロを知られたとしても問題の起こらない知り合いはいない。

となると…

 

「連れて行くしかない、か」

 

真月をネオドミノシティへ連れて行くしかない。

ネオドミノシティへ戻れば、シンクロを知る俺の仲間達がいる上、相手にも困らない。

しかし、人を1人隠して連れて行くことは並大抵のことではない。

ここは街の中枢に程近い病院だ。

監視システム停止させるとしても、俺1人ではとても手が回らない。

となると…

 

…誰か、ネオドミノシティから呼ぶしかない。

クロウは明日も仕事がある。

アキ達は学校だ。

となると、ジャックなら頼めば来てくれるだろう。

 

そう決め、俺はとりあえず手に持ったままのカードを戻そうと真月のデッキホルダーを開いたところで引き戸が開いた。

扉を開いた人間らしい、長い青髪の少女と目が合う。

 

「「………」」

 

少女は俺を見て、手を見ると目を釣り上げ始めた。

彼女はたしか真月の…

 

「貴方が誰かとか、聞きたいことは山程あるけれど、それは全て後回しにするわ」

 

そう言うと手荷物を置き、鍵をかけるとこちらを睨む。

目に宿るものには明確な怒り。

 

「近頃はカード泥棒が出没するって話は聞いていたけれど…よりにもよって病院の、それも零君を狙うとは思わなかったわ…‼」

 

「えっ」

 

…どうやら、俺はカード泥棒と間違えられているらしい。




いかがでしたでしょうか?
次回デュエル予定。お楽しみに。

TFで1番お気に入りのシナリオは牛尾さんです。
あの、世界の存亡の裏でこういうことをしていた的な感じが好きです。
下っ端(予備)がクロウ(コピー)を引っ張り出してきたのには笑いましたがw
流石、環境を高速へと変貌させた【BF】の使い手。
それでは。

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