ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
今回から新章 真月の遺跡?篇です。

話は変わりますがペルソナQを買いました。
長らくペルソナから離れたせいか、資金集めのやり方を忘れていました。
おかげで始まってからこっち回復縛りという有様。辛い。
それでは、どうぞ。


遺跡篇 真月
第62話


「………」

 

 ハートランドシティにある病院。

 広い個室には眠ったままの真月の姿がある。

 まるで死んでしまったかのように動かない真月だが、胸の上下と心拍を伝える心電図の無機質な音が、今尚生きていることを伝えている。

 

「どうだ? アストラル」

 真月が片手に握ったままになっているナンバーズのカードを触れて反応を見ていたアストラルに、遊馬が声をかける。

 

『真月はナンバーズの中にいる』

「ナンバーズの…中?」

 予想外の答えに思わず聞き返した璃緒にアストラルは頷いてみせた。

『我々が地下で遺跡のナンバーズと闘っていた時、真月は小鳥に取り憑いた亡霊とデュエルをしていた。そうだったな? 小鳥』

 

「ええ…私が落ちていたカードを拾った時、声が聞こえて…そこからは途切れ途切れだけれど、真月君が私とデュエルをしていたのは間違いないわ」

『そして真月は勝利し、小鳥に憑いていた亡霊は消滅した』

「だが、真月はナンバーズに囚われた。 …ナンバーズは心の闇や欲望を増幅するんじゃなかったのか?」

 シャークのもっともな言葉にその場にいた全員は頷いた。

 

『そう。ナンバーズは心の闇を増幅する性質を持っている』

「…恨みという『心の闇』が本体が消滅した程度じゃ完全に消えなかったということ?」

『おそらくはそうだろう。亡霊の恨みが誰に向いていたかはわからないが、その恨みの矛先が真月に向いてしまい、結果真月はナンバーズに囚われてしまったのだろう』

 

「アストラル、なんとかならないのか?」

 なんとかしたいという気持ちがそのまま言葉に出たかのような遊馬にアストラルは首を振る。

『下手なことをすれば、中にいる真月を失うことになりかねない。私にできることは、No.85を回収しないことくらいだ』

「そんな…」

 

 アストラルの真月の為を思った現状維持という消極的な考えに小鳥が小さく漏らす。

 だが…

「わかった。なら、次のナンバーズを探そう」

 

 遊馬は納得したように頷き、そう言った。

「おい、遊馬‼ お前真月のことが心配じゃないのか⁉」

 その言葉にシャークが遊馬の胸倉をつかんで引寄せる。

 

「心配に決まってるだろ‼ けど、真月が言ったんだ。バリアンよりも先にナンバーズを集めろって」

 

「零君が?」

 それまで黙って真月の傍らに座っていた璃緒が不意に声を発すると、遊馬は黙って頷いた。

「それに、真月はこのままだって決まったわけじゃねぇ。きっと助ける方法もあるし、真月が何もせずに囚われたままとも思えねぇ」

 遊馬の瞳に込められた真月への信頼を見たシャークは口を開きかけ、そのまま閉じた。

 

「私は信じるわ」

 備え付けの椅子から立ち上がり、握り拳を固めて呟いた。

「璃緒」

「たしかに、このままここにいても何も始まらない。それどころか、事態は悪い方向に進むばかり。なら、私は前に進むわ。 …それに」

「それに?」

「帰ってきてから、なんだか零君頼もしくなったんだもの。そういう零君もいいけれど…頼るばかりじゃなく、頼られたいじゃない?」

 そう言うと璃緒は少し恥ずかしげに笑みを浮かべた。

 そんな笑みにシャークも俯き、苦笑を浮かべると顔を上げた。

 

「…わかった。遊馬、お前の気持ちを信じる」

「シャーク…‼」

「ナンバーズを集めつつ、真月を助ける方法も探す」

『それがいい。遊馬の言う通り、真月自身も脱出の為に動いているはずだ。我々も、外から真月を助ける手掛かりを探そう』

「おう‼」

 

 

「ぁ…?」

 フッと意識が戻ると俺は1人、教室に座っていた。

 もう放課後らしく、誰もいない。

 

「ん…くぁ…っはぁ。寝ちゃったのか」

 身体を起こし、大きく身体を逸らすと、コリ固まっていた身体からポキポキという音が聞こえてくる。

 最近バタバタしていたし、仕方ないか。

 

「誰か起こしてくれればいいのに…」

 そうぼやきながら鞄を片手に立ち上がると生徒玄関へと向かうべく歩き出す。

 

「ん…?」

 はて、何か忘れているような。

 なんだろう? 鞄の中身…は、忘れてないな。

 俺のデッキも…うん、大丈夫だ。

 抜け落ちたりはしてない。

 もはや相棒と言ってもいい程に使い慣れた【セイクリッド】がデッキホルダーにそのまま入っている。

 

 気のせいか?

 いや、でも何か忘れているような気も…

「やっと来た」

 

 声が聞こえ、そちらを見ると高等部の女子の制服である黒のスカートにルージュ色のブレザーを羽織った女性がいた。

 

 頭はピンクで途中から紺色へと変化する不思議な髪型は、しかし彼女の勝ち気なエメラルド色の瞳とマッチしており、とてもよく似合っている。

「寝ていたのかしら? 頬に机の跡が残っているわ」

 そう言うと女性は俺の頬を触りながらクスクスと笑う。

 

「えーっと…?」

 どうやら、女性は俺のことを知っているらしい。

 でも、俺はこんな女性を知らな…

 

 いや、何を考えているんだ俺は。

 彼女を知らない? そんなわけがないだろう。

 

「どうかしたのかしら? 零君」

「ごめん、まだ寝ぼけてたみたいだ。瑠那さん」

 

 そう言うと瑠那は俺にうっすらと微笑みかけた。

 俺もつられて笑みを返す。

 

 彼女の名前は瑠那。

 高等部に通う、俺の彼女だ。




いかがでしたでしょうか?

真月君に新たな彼女!
やったね真月君。ハーレムができるよ!(白目)

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