ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
今回からベクターの遺跡篇本格始動です。
それでは、どうぞ。


第51話

 スカイ・ペガサスのいた遺跡を後にした俺達はその足で、次の遺跡へと向かうことにした。

 

「ここが?」

『そのようだ』

 少し離れた場所に古城が見える。

 どうやら、あれが目指す場所のようだ。

 

 ー…しいー

 

「?」

『どうした? 真月』

「いや…何か今…」

 声が聞こえたような気がしたんだが…

 耳を澄ませてみるが、声は聞こえない。

「…いや、なんでもない」

 

「よし、じゃあ行こうぜ」

 そう言うと遊馬を先頭に古城目指して歩き出した。

 

 

 5分程歩き、古城の外観を捉えることのできる位置までやってきた。

 ところどころ、遺跡と呼んだだけあり崩れたり汚れたりしているものの、しっかりとその外観を保っている。

 

『あそこに入り口があるようだ』

「よっし、じゃあ俺が1番乗りだ」

「あ、待って。遊馬」

「おい、遊馬。気をつけろ。バリアンがいないとも限らねぇ」

「わかってるって」

 そう言いながら遊馬、アストラル、小鳥、シャークは先に古城に入っていく。

 

「零君。私達も」

「ああ。行こう」

 そう言うと璃緒が先に入り、俺も足を踏み入れた。その瞬間

 

 ー苦しいー

 ー辛いー

 ー何故こんなー

 

「なっ…⁉」

 俺に向けて一斉に様々な声が聞こえてくる。

 押し潰されそうな程の怨念に俺の身体がガタガタと震え始める。

 

「…零君⁉」

 璃緒が俺の状態に気付いたのか降りかけていた足を止め、俺に近付いてきた。

 降りつつあった遊馬達も俺の尋常でない状態に慌てて戻ってくる。

「おい、大丈夫か⁉」

「真月‼ おい、真月‼」

 

 ー止めてくれ‼ー

 ー俺が何をしたとー

 ー私の子を返せ‼ー

 

 様々な怨念が俺に叩きつけられる。

「ぁ…ぐっ…」

「真月をここから出すぞ‼」

「あ、ああ‼」

 そう言うと遊馬とシャークが俺の両腕を抱え、古城から引きずり出した。

 それと同時に、怨念の声も聞こえなくなる。

 

 

「っ…はぁ…はぁ…‼」

「真月、大丈夫か⁉」

「…あ、ああ…」

 そうは言うものの、零君の身体の震えは一向に収まる気配がない。

 

「真月、一体何があった?」

 凌牙が零君の顔を覗き込みながら言う。

 先程よりもマシになってはいるが、零君の顔色は依然として青白い。

 一体零君に何が…

 

「…急に、大勢の声が聞こえてきたんだ。多分、あの城にこびりついた感情なんだと思う」

 城にこびりついた感情…それが零君にだけ襲いかかった?

 

「何か感じるか?」

 凌牙が振り向き、私に振る。

 そのまま振り向き、目を閉じて意識を集中させると、微かな声が聞こえてくる。

 

「…なにか聞こえるわ」

 私へ向けられたものではないから、害はないようだけれど…

 

『真月だけを狙ったものか…?』

 今まで黙っていたアストラルが不意にそう呟く。

「真月だけを狙った?」

『ああ。真月は我々にとって強力な味方だ。その真月だけを狙ったとするなら…』

 

 …まさか…

 

「ベクター…⁉」

『可能性は高い』

 ベクター…彼がここにいるかもしれない。

 そして、ここにいるということはナンバーズを狙っているということになる。

「なら、こんなところで休んでいるわけには…‼」

 

 そう言いながら、零君がフラつく身体にムチをうち、立ち上がろうとする。

「待て、真月」

 そう言うと凌牙が零君を押し留めた。

 

「シャーク…‼」

「入り口に踏み込んだだけでその有様なんだ。ベクターのいる場所まで行って何ができる」

「…‼」

 凌牙の言葉に零君は動きを止める。

 

 たしかに、こんな状態の零君が戦ったとして、あのベクターに勝てるとは思えない。

 ベクターは強い決闘者。

 きっと、最後まで気の抜けない厳しい戦いになる。

 なら、せめて万全の状態でないと。

 

「小鳥、真月を見ていてやってくれ」

「わかったわ。遊馬達は?」

「俺達はナンバーズを取りに行ってくる」

『真月、君はここにいるべきだ。君ではこの中は辛いだろう』

「…わかった。今の俺じゃ、足手まといにしかならないしな」

 

 遊馬君の言葉に息を吐いた零君はそう言いながら顔を上げた。

 相変わらず顔色は良くないが、それでも先程よりはマシだろう。

 

「よし、じゃあ行くぜ‼」

 そう遊馬君が声を上げるとその場に小鳥さんと零君を残し、私達は奥へと進み始めた。

 待っていて零君、私達が必ずナンバーズを回収してみせる‼




いかがでしたでしょうか?
真月君という戦力を欠いた遊馬達はどうなってしまうのか。
お楽しみに。

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