ようやく遺跡突入です。
でもまだ入っただけなんや…
それでは、どうぞ。
ネタバレ:ナッシュ登場
「零君‼ 起きて、零君‼」
「ぅ…璃緒、さん?」
俺がゆっくり目を開くと、視界いっぱいに璃緒の心配そうな顔があった。
…いや、ちょっと近くないか?
「良かった。意識が戻ったのね」
そう言うと璃緒はわかりやすい程にホッとしたように息を吐く。
どうやら、光の塊との衝突で船から投げ出された後、そのまま気絶してしまっていたらしい。
身体は…動くな。
痛みは少々あるが、たいしたことはない。
あっても精々が軽い打ち身くらいだろう。
デッキとDパッド、Dゲイザーも見たところ、無事のようだ。
2つの精密機械がきちんと動くかはわからないが…
なんにせよ、これで野生生物以外からは身を守ることもできる。
「璃緒さん、怪我は?」
「大丈夫よ。その…零君が、私を抱きしめて庇ってくれたから」
「う…」
そう言うと璃緒はほんのり赤くなって目を逸らした。
…たしかに、俺は璃緒を守る為に抱きしめていたが…光の塊との衝突で揺れる船から投げ出されないよう、自分と璃緒の身を守るのに必死で何も覚えていない。
…畜生。とてももったいないことをした。
「…ここは?」
気まずい空気を変える為、俺から話題を振ってみる。
「わからないわ」
そう返した璃緒が退き、俺も身体を起こす。
辺りを見回すと、周囲が鬱蒼とした木々に覆われていることがわかった。
それは同時に、現代的な文明の雰囲気を感じることはできないということでもある。
「Dゲイザーの反応だと、みんなとそう離れてないみたいだけれど」
そう言われ、俺は自分のDゲイザーを装着し、電源を入れた。
たしかに、遊馬達のDゲイザーからはあまり離れてはいないらしい。
「方向は…こっちか?」
「みたいね。どうする?」
「まずは合流しよう。こんな何処かもわからない森の中にいるわけにもいかない」
そう言うと俺は璃緒に手をさし出した。
「零君?」
「手、繋ごう。危ないし」
「え、あ、ええ。そうね」
そう言うと璃緒はおっかなびっくりといった調子で俺の手を握った。
「じゃ、じゃあ…行きましょうか」
「あ、ああ」
璃緒の異様な雰囲気に、若干気圧されながらも並んで歩き始めた。
…手をつなぐってもっとこう、暖かいというか…心地のいいものじゃなかったっけ?
なんでこんな、これから戦地に向かう兵士みたいな気持ちになるんだ?
歩き始めて十数分は経っただろうか。レーダーを頼りに道無き道をただひたすらに真っ直ぐ進んでいると、突然視界が開け、目の前に遺跡が現れた。
「これは…」
「遺跡、みたいね」
Dゲイザーの反応は…遊馬達はまだ先の方のようだ。
「どうする? 零君」
…このままここで待つか、先に進むか。
普通に考えれば、ここで待つのが1番だ。
もし、この遺跡の中にナンバーズがあるのならば、当然それを守る罠も待ち構えているはず。
俺1人ならともかく、璃緒も一緒となれば先に進むのは危険だ。
無論、必ず守りきるが、何処まで守ることができるかわからない。
しかし、先程の光と、その中にあった人影のような物体の存在も気にはなる。
もし、あれがバリアンなら奴らもこの遺跡を目指しているはずだ。
奴の復活阻止の為にも、先に奪われるわけにはいかない。
「…少し、入ってみよう。このままここで待っていても手持ち無沙汰だし、少し奥までなら危なくもないはずだ」
そう言うと俺達は手を繋いだまま、奥に向かって歩き始めた。
だが…
「行き止まり?」
5分もかからないうちに、俺達は開けた場所に行き着いた。
道もそこで終わっているようだ。
「璃緒さん、横道とかあった?」
「いえ、無かったわ」
ざんねん‼しんげつの ぼうけんは これで おわってしまった‼
じゃねぇよ。
横道もなく、ただひたすらにまっすぐ進んだら行き止まり…
とくれば、当然。
「零君、何を?」
「いや、何処かに押し込む場所でもあるんじゃないかと…」
このテのものは何処か押し込む場所があると相場が決まっているものだ。
遺跡の定番、とも言えるだろう。
そう考えながら1人、壁を触っていると足音が数人の足音が聞こえてきた。
「璃緒」
「あら、凌牙」
どうやら、シャーク達が追いついたらしい。
「真月君、何やってるの?」
「ここで行き止まりだから、多分何処かに押し込む場所があると…」
そう言いながら振り向くと、遊馬とシャークと小鳥に加え、眼鏡をかけた灰色の髪の男がいた。
「⁉」
お前は…‼
「真月、どうした?」
「…そいつは?」
バリアンだから、とかそういった理由ではなく、なんとなくわかる。
その髪型、その目。多分そいつは…
「私は、ナッシュ。ここには旅行で来た」
バリアン七皇の1人、ドルべだ。
いかがでしたでしょうか?
次々回辺りにデュエルの予定ですのでお楽しみに。
それでは。
しかし、遺跡パート長いな…