ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
今回は真月君達の探索導入回となっています。
疑問に思っていたことを考えていたり?
それでは、どうぞ。


第36話

「………」

 

 時刻は放課後。

 昼間感じた感覚はどうやら俺だけでなく、シャーク・璃緒・遊馬も感じたらしい。

 そこで、たまたま側にいて、こちらの事情を知る小鳥も交えて屋上に上がり、神経を研ぎ澄ましあの感覚をもう一度感じようとしている。

 だが…

 

「どうだ? 真月」

「…ダメだ。何も感じない」

「真月でもダメかぁ」

 遊馬が僅かに落胆の色を見せる。

 結構期待されていた、ということなのだろう。

 なんとも、歯痒い。

 

 …それにしても、あの時の胸の痛みはなんだったのだろうか。

 なんというか…そう、まるで胸を貫かれたというか。

 

「でも、みんな同時に何かを感じるなんて」

「そして、零君は複数人の声を聞いた…」

 

 23ヶ所、8枚、遺跡のナンバーズ…

 

「多分、声の主はバリアンだ」

「バリアン?」

「ああ。多分バラバラに聞こえた言葉を並べ替えるとするなら、こうなると思う。『23ヶ所の遺跡に8枚のナンバーズがある』」

「そして、『遊馬達よりも先に』というのはそのまま、ナンバーズを先に回収するという意味だろうな」

 俺の言葉にシャークが続く。

 おそらく、そういうことなのだろう。

 つまり、わかりやすく言うならばこういうことだ。

 

 バリアンとの8枚のナンバーズを賭けた争奪戦。

 

 しかし…『8』枚?

 たしか、このナンバーズはミザエル、ギラグ、アリト、ベクター、メラグ、ドルべ、ナッシュ…バリアン七皇が人間だった頃の記憶そのものであり、同時にドン・サウザンドの力を封印したものだったはずだ。

 七皇なのだ。

『7』枚ならばわかる。

 しかし、『8』枚というのは一体…

 

 そうやって考えていると俺達に影が落ちた。

「なんだ?」

「おい、あれは」

 シャークが空を見上げ、俺達もそれにつられるように見上げると雲の向こうに何かの塊が見えた。

 楕円形の塊は何をするでもなく、現れたままを保っている。

 

「なんだ、あれ…」

 そう呟くと塊から光が降り、俺達を包み込むと次の瞬間にはあの船の中にいた。

 俺達を出迎えるかのように、アストラルが目の前にいる。

 …さっきのは船底の影だったのか。

 

「アストラル…?」

「な、なんだよ急に。ビックリすんだろ」

『すまない。だが、これを見てくれ』

 そう言うと立体的な映像の地球が現れた。

 くるくると回る地球には23の点がついている。

 

「これは…もしかして、ナンバーズの?」

『知っているのか?真月』

「さっき、声を聞いたんだ。23ヶ所の遺跡に8枚のナンバーズがある…らしい」

『なるほど』

「じゃあ」

『間違いないだろう。この地図は、ナンバーズを示している』

 ということは、これで遺跡の所在も割れた。

 バリアンよりも先に、ナンバーズを回収しなくては…

 

『そして、同時にこれも現れた』

 そう言うと正面に探検服を着た男の映像が映った。

 何処となく、遊馬に似ている気がしないでもない。

 

[遊馬、アストラル]

「と、父ちゃん‼」

 そうか、似ている気がした原因は父親だったからか。

 そういえば、遊馬の父親は冒険家…だっけか?

 随分前から、両親揃って行方知れずなのは聞いている。

 しかし、何故ここで父親の映像が…

 

[お前達がこの映像を見ているということは、事態は切迫しつつあるということなのだろう。地図に表示された点には、通常とは違った意味を持つ、特別なナンバーズがある]

 特別なナンバーズ…?

 

[一刻も早く、そのナンバーズを回収してくれ。そのナンバーズがバリアンの手に渡れば、封じられていた強大な力が目覚めることになる。遊馬、アストラル。ナンバーズを決してバリアンに渡してはならない。頼んだぞ]

 そう言ったところで姿が消えた。

 どうやら、映像はここまでのようだ。

「父ちゃんはナンバーズのことを知っていた」

『加えて、私のこともだ』

 

 …少し、『知り過ぎ』ている気がしないでもない。

 ナンバーズのこと、アストラルのこと。

 この2つはまあいい。

 この世界は、1枚のカードで世界が滅んだり栄えたりする程だ。

 冒険家である遊馬の父親がナンバーズを知ることもまああるだろう。

 アストラルについても、『皇の鍵』というものを介せば知ることもあったかもしれない。

 

 しかし、強大な力を封印していること、バリアンがそれを手に入れようとしていること。

 この2つを知っているというのはどうも腑に落ちない。

 

 ナンバーズは知ることもあるだろう。

 しかし、それが強大な何かを封印するカードと何故わかる?

 ナンバーズは、それ事態が既に強大な力を持っている。

 それを何故、普通の人間が違うと言い切ることができるんだ。

 

 そしてもう1つ。

 あの男が何処で『バリアン』を知ったか。

『イリアステル』という組織がある。

 この組織は、世界を表からも裏からも操り、正しい歴史を紡ぐという組織だ。

『巨大な組織』なら知ることもあるかもしれない。

『大きい』ということは、『情報が漏れやすい』ということでもある。

 どれほど徹底しても、どこからか、必ずほころびが生まれるものだ。

 

 しかし、バリアンは世界こそ巨大だが、実働は僅か7人の組織。

 しかも、現状2人を欠いているので、実働は5人しかいない。

『小さい』のだ。

 情報が漏れるとは、とてもではないが思えない。

 となると…ベクターが漏らしたか?

 いや、ベクターはああ見えてとても慎重な奴だ。

 秘匿事項は誰よりも守ろうとするだろう。

 

 俺は、遊馬の父親が決して悪い奴ではないということを『知って』はいる。

 本当に世界や、遊馬の身を案じているというのも、理解はしている。

 だから、あまり気にする必要もないのだろう。

 だが…

 

「そんなカードがバリアンに狙われているなら、指をくわえて見ているわけにはいかねぇな」

 そう言ったシャークの声に現実に引き戻される。

 いかんな、最近考え事が多い。

 これでは、璃緒にいらない心配をかけてしまう。

 

 …とにかく、今は遊馬の父親よりもナンバーズを優先すべきだろう。

 父親がなんであれ、バリアンはナンバーズを探し始めている。

 奴の封印を解くわけにはいかない。

 出てこないなら、それに越したことはないのだ。

 

「よし、行くぜ‼」

 

 そう言うと船はゆっくりと動き始めた。

 なんとしても、バリアンよりも先にナンバーズを…‼

 




いかがでしたでしょうか?
真月君の邪推…しかし、私自身畳まれることのなかったこの設定は気になっています。
彼は一体何だったのでしょうかね?
それでは。


特別短期集中連載 −今日のギラグ−
( ア ^ω^ )「どうした? ギラグ」
o(ギ `ω´ )o「おう、アリト! 5月のDPで俺の新規カードが出るってよ!」

(ア ≧∇≦)「マジかよ、やったな!どれどれ…アイス・ハンドにファイヤー・ハンド、マジック・ハンドにプロミネンス・ハンドか」
( ギ ´Д`)「まあ岩石には掠ってもないけどな」

o(ギ `ω´ )o「でもこれで、強化すりゃ遊馬達にリベンジを…!」
(ア -_-)「後半の出番、俺達ほとんどないけどな」
(´・ω・`)「………」

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