ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
今回は遺跡篇準備回となっております。
それぞれの思惑を胸に、各々は行動を取り始める。
それでは、どうぞ。



遺跡篇 ドルべ
第35話


 あれから数日。

 動く気配を感じさせないバリアンに警戒しつつ、俺はそれまでと同じように日常に戻っていた。

 

「よっと」

「やるな、真月」

「まあまだこのくらいならな」

 今は体育の授業中。

 なんにでもカードを絡めてくる謎のデュエル押しも、流石に体育に入り込む余地は無かったらしく、普通に体育を楽しんでいる。

 …まあ、デュエル中に吹っ飛んだ時の受け身なんかは学んでいるんだがな。

 

「よぉし、見てろ‼ 20段いくぜ‼」

「またか?」

 そう言うと俺は遊馬の前に積み上げられた20段の跳び箱を見た。

 遊馬は屋内でやる器具を使った体育で必ずこれをやっている。

 といっても、飛んではぶつかり、崩れた跳び箱の中に埋まるのだが。

 当然、そんな調子なのだから成功したところを見た者は本人を含め、誰1人としていない。

 

「零君」

「ああ、璃緒さん。遊馬がいつものやつをやるってさ」

「みたいね。ところで零君、放課後なのだけれど」

「ああ、うん。前言ってた買い物なら付き合」

 そう言いかけた瞬間、全身を包む異様な力を感じると同時に痛みのようなものが走り、膝をついた。

「ぐっ…⁉」

「零君⁉」

 

 

『…遺跡のナンバーズ…』

『…23ヶ所の遺跡に…』

『…8枚の…』

『…遊馬達より先に…』

 

 

 遺跡のナンバーズ…?

「零君」

「…もう、大丈夫だ」

 しかし、今のは一体…?

 

 

「遺跡のナンバーズ?」

「そうだ」

 バリアンの居城、そこに集まった私とミザエルの前に突然現れたベクターがそう告げた。

 サルガッソでの、あのボロボロの姿が嘘のように回復している。

 

「まだ遊馬とアストラルが回収していない強力なナンバーズが8枚あンだよ。そいつを奴らよりも先に回収し、俺達のものにする‼」

「8枚のナンバーズ…」

 なるほど…理解はできた。

 しかし

 

「そのナンバーズがどうしてあるとわかる」

 仲間を疑うような真似をするべきではないというのはわかってはいる。

 だが、相手はベクター。

 同じバリアンの戦士とはいえ、この男の言葉を鵜呑みにできないことはわかっている。

「何処からその情報を持ってきた」

「コイツだ」

 

 そう言ったベクターが握っていた手を広げると、そこには1匹の小さなハエがいた。

 よく見ると、人の顔らしきものがあるのがわかる。

「なんだ、その薄汚いハエは?」

「何を言う‼ 私は断じて薄汚くなどない‼」

 そうハエがミザエルに怒鳴り返す。

 

「それは?」

「コイツは俺が悪意の海から蘇らせた。コイツの正体はなんと、ハートバーニング‼」

 ハートバーニング…?

 そういえば以前、そのような事を叫ぶ男が人間界にいたような…

 

「それは私の決め台詞‼」

「そんな姿で決め台詞かァ? Mr.ハートランド」

「それで、そいつがなんだ」

「コイツがナンバーズの情報を知っていてなァ」

 このハエ…Mr.ハートランドが?

 

「私は見たのだ。Dr.フェイカーのラボで、23ヶ所の遺跡を九十九一馬が探り当てていることを」

 そう言うと漂っていたバリアライト鉱石に地図と23個の点が表示された。

「この中に8枚のナンバーズがあるというわけか」

「その通り」

「ならば、九十九遊馬達よりも先に我々が回収しなくては…」

 

 九十九遊馬、神代凌牙、天城カイトは強力な決闘者。

 彼らの力はサルガッソでのデュエルで把握している。

 それに加え、真月零の存在も気がかりだ。

 バリアンである彼を加えた彼らに勝利する為には、こちらも強力な力を手にしなくてはならないだろう。

 

「それに、ナッシュのことも何かわかるかもなァ」

「‼」

「元々俺達は7人揃って、バリアン七皇。だが、ナッシュとメラグは忽然と姿を消しちまった。あっちの世界に行けば、あるいは見付かるかもしれねェなァ」

 

 ナッシュ…

 たしかに、今の我々には力は必要だ。

 力が無ければ、バリアン世界を救うこともできない。

 我ら以外にも、数多くのバリアンとして行き着いた者達を守る為にも必要なことだ。

 だが、統率なき力はただの暴力。

 真に我らを束ね、導く存在が必要だ。

 

「いいだろう」

「ドルべ‼」

 ミザエルが非難の声を上げるが、今はその声に構ってはいられない。

 気持ちはわかる。

 ベクターの策になど、乗るべきではないのだろう。

 しかし、もはや猶予はない。

 早急に8枚のナンバーズを集め、力を蓄え、そしてナッシュを見つけなければならない。

 

「そのナンバーズ、手分けして探すぞ」

 

 待っていてくれ、ナッシュ。

 君が何処にいようと、私は君を見付けてみせる‼




いかがでしたでしょうか?
いよいよ遺跡篇、アニメ本筋にはなかった『真月零』というイレギュラーを加えた遊馬達、そしてバリアンはどうなっていくのか。
お楽しみに。


巻末短期集中連載 −今日のドルべ君−
「何⁉ 光天使に新カードが追加だと⁉」∑(゚Д゚ ド)
(ミ =゚ω゚)「ああ、wikiにも既に登録済みだ」

(ド-_-) 「スケール、スローネ、セプターというのか。中々強力な効果を持っているじゃないか。このカードさえあれば…」

(ミ ・Д・)「しかし枠がないぞ、ドルべ」
o(ド `ω´ )o「ならばソードだ!ソードを抜く! バリアンのメイン盾に剣などいらん!」
(ミ ≧∇≦)「か、かっこいいタル〜」
「⁉」∑(゚Д゚ ソ)

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