大学からの投稿でございます。
講義していても私の頭は次の展開で回転中。
これでいいのか? 私の頭。
それでは、どうぞ。
「この辺りならいいかな」
場所は河原。
あれから俺は璃緒を連れ、いつも登下校に通る河原にやってきた。
そのまま並んで原っぱに腰をおろす。
「そうだわ、忘れる前に」
そう言うと璃緒はポケットからデッキを取り出した。
「はい、零君。貴方のデッキ」
「俺の?」
「ええ。私と戦った零君が残していった【セイクリッド】よ」
セイクリッド…無いと思ったら、ベクターに奪われていたのか。
「ありがとう、璃緒さん」
「どういたしまして」
そう言って璃緒さんは俺にデッキを渡した。
すると、俺の耳にパズルのピースが嵌まるような音が聞こえる。
「ん?」
「零君?」
今、たしかにパチッという音が聞こえた気がしたんだが…
しかし、周りを見たところでそんな音をさせるものはない。
「零君、カードが」
そう言われるままに見ると、胸ポケットに入れたままのマインド・クラッシュが靄がかった光を放っていたが、一度強く光ったかと思うと消えた。
俺の手元に何の変哲もない、カードが残される。
「今のは一体…?」
「ベクターが俺にかけた呪いが解けたんだ」
ベクターがバラバラにした心のカケラの1つはセイクリッドに宿っていたのか。
「それじゃあ、零君は今度こそベクターのかけた呪縛から解かれたのね」
「まあ、そうなるかな」
…正確にはほぼ解けた、だったりする。
奥歯に詰まったというか…ほとんど埋まっただけに足りない、ということを感じとることができる。
そして、最後のピースはおそらく…
「あー…璃緒さん」
「何かしら?」
「璃緒さんさ、以前俺に…その、好きだって言ってくれただろ?」
「え、ええ…」
「その…」
…やっぱり、気恥ずかしい。
以前の俺がこのテに疎かったかどうかはわからない。なにせ、思い出せないからな。
覚悟を決めろ、真月‼
「俺も…好きなんだ」
「え…?」
「だから、俺も璃緒さんが好きです‼ 付き合ってください‼」
言った。
言ってやった。
最後はヤケクソだったけど。
でも、俺は璃緒さんに想いを伝えてやった。
はたして璃緒さんはどんな顔を…?
そう思いながら、璃緒を見ると璃緒はぽかんとした後、俺の言葉が理解できたのかどんどん赤くなり始めた。
「ぅ…あ…」
そのまま何か言おうとし、しかし言葉にならず、本当に珍しく、オドオドしたように俺を見ては目を逸らすという行動をし始めた。
「…プッ」
そんな珍しい璃緒が何故か面白く、そして愛しく見え、気付けば俺は噴き出してしまっていた。
「うっ…ククッ…」
「も、もう‼ 何も笑うことないじゃない‼」
むくれた璃緒が俺にそう言うが、そうやる姿すらも可愛げがあり、そうやって笑っていると璃緒も釣られたのか笑い始めた。
そうやってひとしきり2人で笑い、俺は河原を眺めた。
「一度死にかけたせいなんだろうけど、今幸せだって感じがする」
「幸せ?」
「ああ。こうやって並んで座って、笑いながら景色を眺めて」
「フフッ、そうね。私もそう思えるわ」
「璃緒さんも?」
「ええ。長い間ベッドの上に1人だったから。今こうやって誰かと時間を共有できているのが、すごく幸せ」
そう言うと、俺達はそのまま黙り込んだ。
肩に重みを感じ、視線だけそちらを向けると璃緒の頭が見え、なんとも言い表せないその感覚に口を開こうとし、しかしそのまま閉じた。
「ねえ、零君」
「ん?」
「私のこと、好き?」
「好きだよ」
「私も好きよ、零君のこと」
「ありがとう」
「零君は私のどういうところが好き?」
「凛としているところ。けど、たまに可愛くなるところ。他にも色々あるけど…嫌いなところは思い浮かばないかな」
「嬉しいわ」
「璃緒さんは?」
「優しいところ。たまにへたれることもあるけれど…でも、カッコいいところ。私と一緒にいてくれることも」
「嬉しいよ」
そうして再び俺達は黙り込んだ。
耳の奥で再びパチッという音が聞こえる。
…やっぱり、最後のピースは璃緒さん、だったか。
そうして黙っていると、街灯に灯りが点いた。
…どうやら、気付かない間にそれなりに時間が経過していたらしい。
空を見上げると夕陽はもう暮れかかっており、星が見え始めている。
そろそろ璃緒さんを帰さなければ。あまり遅くなると、シャークも心配するだろう。
「璃緒さん、そろそろ帰ろう…璃緒さん?」
「…くー…」
俺が璃緒の顔を覗き込むと璃緒は目を閉じ、眠っていた。
サルガッソでの戦いに肉体的にはもちろん、精神的にも疲れていたんだろう。
「…安心して寝ちゃってまあ」
そう呟いた俺の口は知らず知らずのうちに笑みを浮かべていた。
しかし困った。
俺は璃緒とシャークの家の場所を知らないんだが…
「…仕方ない、家に帰ろう」
居所さえ知れたら、シャークも一泊くらいなら許すだろう。
「よっ…と。さて、じゃあ帰るとしますか」
そう呟いた俺は璃緒をおぶさり、ゆっくりと歩き出した。
これから、俺には想像もつかないような出来事が待ち構えていることだろう。
でも、せめて璃緒だけは護っていきたいと思う。
この後、家で目が覚めた璃緒が普段の気丈さとは裏腹に、借りてきた猫のように大人しかったのは、また別の話だ。
いかがでしたでしょうか?
シャークさんとは時間をかけて進める予定です。
それでは。
あれが(星因子)デネブ、アルタイル、ベガ
君は指差す(高騰不可避な)3枚のカード