ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
ただいま第三次Zをプレイ中。
ですが、本作には響く程ではないので問題はないかと思います。
まあ万が一、ペースが少し落ちたらそれはそういうことで。
ゲッタービームがATフィールドに弾かれてワロタww
…ちくしょう。まさか負けるなんて…ブツブツ

それでは、どうぞ。


第33話

「…なんとか、脱出できたか」

 

 窓の外には先程までのサルガッソの景色はなく、ただ青々とした空間が広がっていた。

「危なかったぜ…」

「ああ、また死ぬかと思った」

 そう言い、俺が座り込んだまま笑っていると、俺の前にカイトが立ち塞がった。

「…お前が真月零か」

「ああ。そういうお前は?」

「天城カイト」

「カイト…ね」

「お前が知っているバリアンのことを話せ」

 …やっぱり、そうくるか。

 

「これからもバリアンとは戦うことになるだろう。ならば、敵について知っておかなければならない」

「カイト、何も今じゃなくても」

「遊馬」

「真月?」

 戸惑った様子の遊馬がこちらを見る。

 

「遊馬、そう言ってくれる気持ちは嬉しい。ありがとう。でも、話せる時に話しておいた方がいい」

 おそらく、カイトも遊馬を心配しているのだろう。

 だが、遊馬に任せるといつまで経っても話を振るとは思えない。

 なら、自分が率先して話を聞き出す。

 こんなところだろう。

 

「俺については何処まで聞いた?」

「零君がベクターと同一の存在なことと、零君自身を別の場所…でいいのかしら?そこから連れてきていたってことくらい」

「ああ。そうだな、なんというべきか…俺はこの世界と少し違う世界の生まれなんだ」

「少し違う?」

「ああ。カードのレアリティとか、科学技術とか…ARビジョンも俺のいた世界にはなかったな」

「ARビジョンのない世界…」

「そんな世界にいた俺が、ベクターにたまたま目をつけられて、気付いたらこちらにいたってわけだ」

 多分、ベクターは遊馬達に取り入ることさえできれば、誰でも良かったんだろう。

 それが偶々俺だった、というだけの話だ。

 

「ならば次だ。バリアンは何人いる?」

 

 ………

 

「バリアンは今5人だ。アリト、ギラグ、ミザエル、ドルべ…そして、ベクター。ただ」

「なんだ」

「本当は7人らしい。どういう状態にあるのかは俺にもよくはわからなかったが、後2人いるって話だ」

 

 …俺がここで

「実はナッシュとメラグというバリアンもいて、それはシャークと璃緒に生まれ変わっているんだ」

 そう言ってしまうのは簡単だ。

 だが、それを言ったところで、俺自身がバリアンだという点からみんなとの間に不和が生じてしまう可能性もある。

 なにより、どちらを選ぶか決めるのはシャークと璃緒だ。

 俺にできることは、2人と長く接していくことくらいだろう。

 

「他に聞きたいことは?」

「…改めて聞く。真月、お前はこれからどうするつもりだ?」

 

 …これからどうする、か。

 これまではベクターに引っ張られてきたことを知らず、ただその時の気持ちに任せて動いてきた。

 でも、これからはそれだけというわけにはいかないだろう。

 俺はベクターと袂を分かち、ドルべとミザエルには戦うと宣言した。

 ならば

「俺はベクターと戦う」

 

 無論、ベクターを止めたところでバリアンとの戦いが止まるわけではない。

 バリアンにはバリアン世界の存亡が懸かっている。

 ベクター1人止めたところで、この戦いはどちらかが降伏しない限り止まることはないだろう。

 なら、せめてベクターという引っ掻き回す存在を取り除くことで、戦いに邪魔をできないようにしたい。

 

「それで、その…良ければこれからも一緒にいさせてくれないか?」

 虫のいい話かもしれないが、俺はみんなと離れたくない。

 過去の自分に関することを忘れた俺にとって、もはやここにいるみんなしか頼れる存在がいない。

 

「何当たり前のこと言ってんだ」

 俺が不安な心境のまま黙っているとシャークがそう言った。

「そうだぜ、真月。お前と俺達は仲間じゃねぇか」

「そうよ。真月君」

「水臭いウラ」

「みんな…」

 そう言ってみんなは屈託無く笑った。

 これから多くの危険が迫るだろう。

 もしかしたら、俺のせいで起こる可能性もゼロではないかもしれない。

 

「真月を仲間に引き入れなければ」

 

 そうやって後悔する日が来るかもしれない。

 それでも、みんなはこうして俺を受け入れてくれた。

 …俺は本当にいい仲間をもった。

 

『我々のいた世界に帰ってきたようだ』

 眼下を見ると見知った街並みが見える。

「…ともかく、今日は解散するべきだ。バリアンの侵攻はこちらでも目を光らせておく」

「ああ。頼むぜ、カイト」

「着陸するでアリマス」

 そう言った声が聞こえると船はそこから急に建築が終わったかのような、更地のようになっている建物の側に横付けされた。

 

『遊馬、先に戻っていてくれ。私はこの船をしまわなくてはならない』

「わかった。それじゃあ帰ろうぜ」

「ええ、もうクタクタ」

 

「璃緒さん」

「零君?」

「少し話がある」

「今から?」

「ああ、今から」

「わかったわ」




いかがでしたでしょうか?
実は今回よりも大変なのは次回だったり。
何が大変か、は次回をお楽しみに。
それでは

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