ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
突然ですが、今回で本作は最終回となります。
次回から、その辺の古本屋で買った薄いブックスをバリアンの(面)白き盾こと、ドルべさんに解説してもらう

突撃!その辺のブックス!

を執筆予定です。お楽しみに。
それでは、どうぞ。


第27話

「零、君…?」

「………」

 

 目の前に立つ零君は私の呼びかけに、まるで人形のような無機質な視線をこちらに投げかけるだけで、なんの反応も示さない。

 

 [そいつはなァ、真月零の残りカスだ]

 残りカス…?

 

 [アイツが俺の身体を使っていた期間が長かったせいか、アイツと身体は予想以上に上手く定着していてなァ。完全に食らいきれなかった。だから、俺は考えたのよ。俺が消せねェんなら、お前らに消してもらおうってなァ]

「じゃあ…」

 [そう、目の前の男は紛れもなく、真月零だ‼ 意識なんてカケラも残っちゃいない人形だがな。そして璃緒ちゃん、お前が勝てばこの真月は今度こそ消える‼]

 …‼

 

 [そしてェ? 真月が勝てば、どうなるかぐらい想像はつくよなァ?]

 …つまり、私が勝てば私は生き残り、零君は消える。

 零君が勝てば、零君は生き残り、私は…

 

 [汚ぇぞ‼]

 [何言ってやがる。それもこれも遊馬‼ お前が関係ない奴らを巻き込んだのが原因だろうがよォ]

 

 …私の命か、零君の命か。

 どちらも手放したくない。でも、どちらか選ばなければ…‼

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚。来い、セイクリッド・ビーハイブ」

 そうして機械騎士が現れると、空から雷が零君目掛けて落ちた。

「零君‼」

「くっ…」

 

 真月 LP3200→2700

 

「いけ、ビーハイブ。深淵に潜む者に攻撃。ビーハイブの効果発動。ダメージステップ時ORUを1つ取り除き、攻撃力を1000ポイントアップする」

 

 セイクリッド・ビーハイブ 2400→3400

 

「きゃあああああ‼」

 ビーハイブの猛攻に、深淵に潜む者はそれでも抵抗していたが、拳が撃ち抜くとなす術なく破壊された。

「うっ…くっ…‼」

 そのまま吹き飛ばされ、地面を数回バウンドすると、瓦礫に当たり動きを止めた。

 

 璃緒 LP1600→400

 

 [璃緒‼ 大丈夫か⁉]

 凌牙が画面越しに私に呼びかけるが、私にはもう、返事をする余裕すら残っていない。

 

 私のライフポイントは残り400…

 エクシーズ召喚をする度にライフポイントを500削らなくてはならないサルガッソの効果で、私はエクシーズ召喚を封じられたも同然。

 対する零君はこのターンのエンドフェイズを迎えても2500。

 つまり、エクシーズ召喚を中枢に置いている私のデッキでは、零君に勝つことはできない。

 

「ターンエンド。サルガッソの効果でダメージを受ける。くっ…」

 

 真月 LP2500

 手札 2

 モンスター 1

 セイクリッド・ビーハイブ 攻撃

 魔法・罠 1

 異次元の古戦場ーサルガッソ

 

「立て」

 零君から感情のない声をかけてくる。

 

「………」

「ドローしろ」

「………」

「ドローしないならサレンダーしろ」

 

 …サレンダー。

 それもいいかもしれないわね。

 サレンダーすれば、ひょっとしたら零君に会えるかもしれない。

 凌牙やみんなを置いて行くことになるけれど…今の私は、決定的な部分が折れてしまっている。

 ああ…私は、どうして起きてしまったんだろう。

 目を閉じ、周りを遠ざけてしまえば、こんな苦労はしなかったのに。

 

 そうして私が目を閉じようとした、その瞬間。

 

 ー諦めるな‼

 

 そう叫ぶ声が聞こえた。

「え…?」

 今のは…? 零君?

 

 ーもう、璃緒さんは一歩前に踏み出す勇気を手に入れたんだろう?

 

「それは…」

 たしかに、私は一歩前へ踏み出す勇気を零君から教わった。

 でも、今踏み出すことは…

 

 ー璃緒さんの敵になるよりはずっといい。

「零君…」

 

 ーさあ。立ち上がれないなら、俺が手を貸そう。

 

 そう聞こえると、鉛のように重く感じていた私の身体がフッと軽くなった。

「…そう、それが零君の意思なのね?」

 そう呟いた私は立ち上がる。

 

「………」

 目の前の零君は相変わらず何も話さない。

 でも、感じる。零君は今、私の側にいる。

 

「私のターン、ドロー‼ モンスターをセット‼ 1枚伏せてターンエンド‼」

 

 璃緒 LP400

 手札 3

 モンスター 1

 裏側守備

 魔法・罠 2

 ⁇?×2

 

「俺のターン、ドロー。セイクリッド・ハワーを召喚」

 

 セイクリッド・ハワー

 ☆2 光属性 魔法使い族

 ATK 900

 DFE 100

 このカードをリリースして発動できる

 自分の手札・墓地から「セイクリッド・ハワー」以外の「セイクリッド」と名のついたモンスター1体を選んで表側守備表示で特殊召喚する

 

 零君のフィールドに黄色と白を貴重とした小柄な魔法使いが現れる。

 手には身の丈程の杖があり、それを油断なく構えている。

「セイクリッド・ハワーの効果発動。ハワーをリリースし、セイクリッド・レオニスを特殊召喚」

 

 セイクリッド・レオニス

 ☆3 光属性 獣族

 ATK 1000

 DFE 1800

 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分のメインフェイズ時に1度だけ、自分は通常召喚に加えて「セイクリッド」と名のついたモンスター1体を召喚できる

 

 ハワーが杖を振るうと姿を消し、そこには白い甲冑を着た青い髪の男が現れた。

 そのまま両手のビームサーベルをクロスし、防御の構えをとる。

さっきおろかな埋葬で送ったのはレオニスだったのね。

「レオニスの効果により、セイクリッド・カウストを召喚」

 

 出た‼ 零君のデッキを支える中核のモンスター、セイクリッド・カウスト‼

 今はレベルが4と3で違う。けれど…

「カウストの効果により、レオニスのレベルを1つ上げる」

 

 セイクリッド・レオニス ☆3→4

 

 そう、カウストのレベル変動効果。これでレベル4が2体。

「さらにフィールドのサルガッソを手札に戻し、墓地の精鋭のゼピュロスを特殊召喚する」

 

 BFー精鋭のゼピュロス

 ☆4 闇属性 鳥獣族

 ATK 1600

 DFE 1000

 このカードが墓地に存在する場合、自分フィールド上に表側表示で存在するカード1枚を手札に戻して発動できる

 このカードを墓地から特殊召喚し、自分は400ポイントダメージを受ける

「BF-精鋭のゼピュロス」の効果はデュエル中に1度しか使用できない

 

真月 LP2500→2100

 

 零君のフィールドに黒い翼の鳥と人間の中間のようなモンスターが現れた。

 切れ長な瞳が私を真っ直ぐに貫く。

 

 レベル4が3体…⁉

「3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚。来い、No.104 仮面魔踏士シャイニング」

 シャイニング⁉ シャイニングはベクターのカードじゃ…まさか。

「零君のデッキに何か細工を…」

 あのベクターのすることだ。可能性はある。

 

「墓地の終末の騎士とハワーを取り除き、カオス・ソルジャー-開闢の使者-を特殊召喚」

 

 カオス・ソルジャー-開闢の使者-(制限カード)

 ☆8 光属性 戦士族

 ATK 3000

 DFE 2500

 このカードは通常召喚できない

 自分の墓地の光属性と闇属性のモンスターを1体ずつゲームから除外した場合に特殊召喚できる

 1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる

 ・フィールド上のモンスター1体を選択してゲームから除外する

 この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない

 ・このカードの攻撃によって相手モンスターを破壊した場合、もう1度だけ続けて攻撃できる

 

 相手のフィールドにセイクリッド達の着る甲冑とは全く異なる青い騎士甲冑を着た騎士が現れる。

 その騎士がひと睨みすると、それだけで私はすくみ上がってしまった。

「あれが、開闢の使者…」

 

 聞いたことがある。

 たしか、少ない枚数しか世に出回っていないにも関わらず、そのあまりの強さから、終焉の使者と並んで公式大会で長い間禁止カードになっていた伝説のモンスター…‼

 

「開闢の使者の効果発動。このターン、攻撃を放棄する代わり、相手のモンスターを1体ゲームから取り除く」

 開闢の使者の目にも止まらぬ斬撃は一瞬で私のセットモンスターを切り裂いた。

「いけ、セイクリッド・ビーハイブ。ダイレクトアタック」

「その攻撃は通さないわ‼リバースカードオープン‼ 強制終了‼」

 

 強制終了

 永続罠

 自分フィールド上に存在するこのカード以外のカード1枚を墓地へ送る事で、このターンのバトルフェイズを終了する

 この効果はバトルフェイズ時にのみ発動する事ができる

 

「リバースカードを墓地に送り、このターンのバトルを終了する‼」

 …なんとか首の皮1枚繋がったらしい。

 

「ターンエンド」

 

 真月 LP2100

 手札 1

 モンスター 3

 セイクリッド・ビーハイブ 攻撃

 No.104 仮面魔踏士シャイニング 攻撃

 カオス・ソルジャー-開闢の使者- 攻撃

 魔法・罠 0

 

 ゼピュロスの効果のおかげで、なんとかライフポイントの差は少し縮まった。

 けれど、フィールドはビーハイブ、シャイニング…そして開闢の使者がいてかなり不利な状況。

 

 …この次のドローで全てが決まる。

 零君、私に力を…‼

 

 ーいこうか、璃緒さん。

 

「ええ」

『俺と‼』

「私の‼」

  『「ターン‼」』

 

 私は、踏み出す‼

 

『「ドロー‼」』

 このカードは…‼

 

「テラ・フォーミングを発動‼」

 

 テラ・フォーミング

 通常魔法

 デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える

 

「私が手札に加えるのは忘却の都 レミューリア‼ そのままレミューリアを発動する‼」

 すると、サルガッソは海に沈み、廃墟となった神殿が現れた。足下には沈んだ古代都市の姿も伺える。

「レスキュー・ラビットを召喚し効果発動‼ このカードを取り除き、デッキからトビペンギンを2体特殊召喚する‼ 来なさい、トビペンギン‼」

 

 私のフィールドにヘルメットをかぶった兎が現れ、姿を消すとそこには大きな耳を持ったペンギンが2匹現れた。

「レミューリアの効果で攻撃力が200ポイントアップする‼」

 

 トビペンギン×2 1200→1400

 

「レミューリアの効果発動‼ 自分フィールド上の水属性モンスターの数だけ、水属性モンスターのレベルを上げる‼ 私のフィールドの水属性はトビペンギン2体‼よって、トビペンギンのレベルを2つ上げる‼」

 

 トビペンギン×2 ☆4→6

 

『「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ 来い、セイクリッド・トレミス M7‼」』

 私のフィールドのトビペンギンが渦の中に入り、爆発が起こると零君が残していったカードである、機械の巨龍が現れた。

 

「これ、は…」

「トレミスの効果発動‼ ORUを1つ取り除き、シャイニングを手札に戻す‼ 消えなさい、シャイニング‼」

 私の声に反応したトレミスが羽を羽ばたかせ、突風を起こすとそのままシャイニングを吹き飛ばした。

「くっ…」

「さらに巨大化を発動‼」

 

 巨大化

 装備魔法

 自分のライフポイントが相手より少ない場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を倍にした数値になる

 自分のライフポイントが相手より多い場合、装備モンスターの攻撃力は元々の攻撃力を半分にした数値になる

 

「装備対象はトレミス‼ 私のライフが相手より低いので、トレミスの攻撃力は2倍になる‼」

 

 セイクリッド・トレミス M7 2700→5400

 

「攻撃力5400…‼」

 …この攻撃が決まれば、私は勝てる。

 零君…‼

 

「…トレミスで開闢の使者に攻撃‼」

「ぐおおおおあああっ‼」

 

 真月 LP2300→0

 

 トレミスの放った光線が開闢の使者を飲み込むと零君は吹き飛ばされた。

 そのままゴロゴロと転がり、壁にぶつかると動きを止める。

 

「零君‼」

 私が駆け寄ると零君は目を閉じたまま、一言も発さず光になって消え去った。

 消えたそこには、零君の使っていたデッキだけが残される。

 

「零君…‼」

 零君の残したデッキを握る私の手は震え、目からは涙が止まらない。

 

 …私は、零君に取り返しのつかないことをした。

 




なーんちゃってwww
嘘だよ嘘ォ‼今日はエイプリールフールだからなァ‼
次回から別小説などとその気になってたお前の姿はお笑いだったぜ(cv.家弓家正でございます)
…以上、悪役とネタキャラの中間を彷徨う2人のコントでした。

というわけで、辞めません。まだまだ続きます。
本作もZEXALの鬱展開に負けず劣らずの展開になってきたところで、はたしてどうなるのか。
絶望感漂うまま、次回に続く。
お楽しみに。

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