ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。

後編となっております。
これが俺のファンサービスだ!

それでは、どうぞ。


エンタメvsエンタメ 後編

[榊選手は一体何処へ…⁉︎]

 

突然姿を消した遊矢に、会場がザワつき始める。

ブラック・デーモンズ・ドラゴンの攻撃により、大地は一瞬の内に焦土と化した。

そこにいた遊矢諸共、である。

…『もしかしたら』…

「遊矢、あの中にいるんじゃ…!」

 

そう呟いた瞬間、黒い灰の山がモコっと動いた。

そこから遊矢と傷ついたオッドアイズの姿が現れる。

「遊矢…!」

[いました! 榊選手、オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを盾にして、難を逃れていたァ!]

 

「大丈夫か、オッドアイズ?」

遊矢の声にオッドアイズは弱々しく唸り声をあげる。

「やるね。でも、攻撃力3200を突破できるかな?」

「やってみせる! その為の下準備も済ませた!」

そう言うと同時に、オッドアイズの後ろから黒い影が躍り出た。

[あれは…たしか、そう! EM ドラミング・コング⁉︎]

「ウィップ・バイパーが破壊された瞬間、EMリバイバルを発動した! この効果で、墓地のEM ドラミング・コングを特殊召喚!」

「! …ペンデュラム・コールの時か!」

 

「その通り! 俺のターン、ドロー! お待たせいたしました。第二幕の開幕でございます! 一幕目で吹雪さんのモンスターを倒したものの、更なる強力モンスターブラック・デーモンズ・ドラゴンにより私は大ピンチ。ですがご安心を! 私はここから再び、巻き返してみせましょう!」

 

[な、な、なんと! 榊選手、巻き返し宣言です! まだ何か手が残っているのかァ⁉︎]

「いきましょう! 私は融合を発動! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとEM ドラミング・コングを融合!」

遊矢が融合を発動すると、まずドラミング・コング、続いて傷ついたオッドアイズが大きく跳躍し、眩い光と共に1つに溶け合う。

 

「ふた色の眼の龍よ!巨獣のしぶきをその身に浴びて、新たな力を生み出さん! 融合召喚! いでよ、野獣のまなこ光りし獰猛なる龍! ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

光が消えたそこに、クリーム色の体表面のオッドアイズをより獰猛にしたようなドラゴンが現れる。

[出たァー! 榊選手の融合ドラゴン! 融合モンスターには融合モンスターといったところかァ⁉︎]

 

「ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン…けど、残念。そのドラゴンの攻撃力は3000。ブラック・デーモンズ・ドラゴンの攻撃力3200にはまだ僅かに及ばないよ」

「勿論! なので、こうしましょう! アクションマジック、飛翔! 私のモンスター1体の攻撃力をバトルフェイズの間だけ600ポイントアップする!」

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ATK 3000→3600

 

[ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンの攻撃力が上がったぞォ! これなら突破可能だァ!]

「バトル! いけ、ビーストアイズ!ブラック・デーモンズ・ドラゴンに攻撃!」

 

「それだけではない! ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンは戦闘破壊した時、素材となった獣属性の攻撃力分のダメージを与える効果がある!」

「じゃあ、もし戦闘ダメージをかわされても…!」

「ドラミング・コングの攻撃力は1600。これが通れば遊矢の勝ちだ!」

 

「いけ、ビーストアイズ! ヘルダイブバースト!」

「いい攻撃だ。けど…甘い! リバースカードオープン、ハーフ・シャット! モンスター1体の攻撃力をこのターンのエンドフェイズまで半分にし、戦闘破壊を無効にする! 僕が選ぶのは、ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

「なんだって⁉︎」

 

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ATK 3600→1800

 

効果の影響を受けたビーストアイズの大きさが半分程まで縮む。

「僕が自分のターンに破壊した方が盛り上がるだろう? いけ、ブラック・デーモンズ・ドラゴン!」

ブラック・デーモンズ・ドラゴンから業火が放たれる。

「うわあああっ!」

 

遊矢 LP1750→350

 

焼けて傷ついたビーストアイズが遊矢と共に地面に落下する。

「遊矢!」

[榊選手、なんとか踏みとどまりましたッ! ですが、流石は天上院選手。万事休す寸前のところから榊選手のモンスターを焼き払い、盛り返したァ!]

「そんな…!」

後一歩まで追い込んだにもかかわらず、自分が更に追い込まれ、更には見せ場の為の情けをかけられる結果となったことに遊矢は呆然とし、膝をつきかける。

しかし…

 

「おっと」

「! 吹雪さん」

つきかけた瞬間、いつの間にか近くにいた吹雪が遊矢を受け止めた。

「エンターテイナーが観客の前で膝をつくのはいただけないな」

「でも…」

「『ピンチの時こそふてぶてしく笑え』」

「!」

 

「僕が学生時代の頃、後輩がピンチの時程よくやっていたことさ」

そう言うと、吹雪は遊矢から身体を離す。

「君はエンターテイナーとしてこのデュエルの幕を開けたんだ。なら、終わる瞬間までエンターテイナーであり続けないといけない」

「…はい! 俺はカードを1枚伏せてターンエンド! ビーストアイズと、ブラック・デーモンズ・ドラゴンの変化した数値は元に戻る!」

 

遊矢 LP350

Pゾーン

慧眼の魔術師:スケール5

時読みの魔術師:スケール8

手札 0

モンスター 1

ビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴン 攻撃

魔法・罠 1

⁇?

 

「僕のターン、ドロー! おっと、ラッキードローだ。僕はカップ・オブ・エースを発動。表が出れば僕が、裏が出れば遊矢君。君がドローする」

フィールドに現れたコインが大きく宙を舞い、地面に落ちる。

出目はーーー表。

 

「2枚ドローだ」

ドローしたカードを見た吹雪は僅かに目を見開いた。

「遊矢君。このターンがラストターンになるかどうか、それは君の次第といったところかな? 僕は真紅眼融合を発動! デッキの真紅眼の黒竜とメテオ・ドラゴンを墓地に送り、融合する!」

[天上院選手、フィールドの次はデッキからの融合だァ!]

「さあ、おいで! メテオ・ブラック・ドラゴン!」

 

フィールドに現れた真紅眼の黒竜とメテオ・ドラゴンが1つに溶けて、混ざり合う。

その姿が、光の中に姿を消すと、火山が噴火し、その中から巨大な紫色のドラゴンが姿を現した。

[天上院選手、ブラック・デーモンズ・ドラゴンの次はメテオ・ブラック・ドラゴンの登場だァ! なんという勇姿! なんという壮観な光景でしょうか!]

「攻撃力3500…!」

 

「さあ、いくよ! まずはブラック・デーモンズ・ドラゴンでビーストアイズ・ペンデュラム・ドラゴンを攻撃! メテオ・フレア!」

「っ…!」

 

遊矢 LP350→150

 

ブラック・デーモンズ・ドラゴンから三度放たれた業火が今度こそ、ビーストアイズを焼き払う。

[ついに榊選手のフィールドにモンスターが消えてしまった! 対する天上院選手のフィールドには攻撃力3500のメテオ・ブラック・ドラゴン! これで決まってしまうのかァ⁉︎]

「いくよ、遊矢君! メテオ・ブラック・ドラゴンでダイレクトアタック!」

吹雪の宣言と共に、メテオ・ブラック・ドラゴンの掌に火球が生まれる。

真紅眼の黒竜の放った火球が小さく見える程の巨大なサイズに成長する。

 

「バーニング・ダーク・メテオ!」

吹雪の言葉と同時に、メテオ・ブラック・ドラゴンの手を離れた火球は真っ直ぐに遊矢へと向かう。

「遊矢!」

「ーーリバースカードオープン!」

柚子の言葉とほぼ同時。

遊矢が伏せていたリバースカードを開いた瞬間、巨大な火球が突然燃え尽きるようにして消え去った。

 

[これは一体…⁉︎]

「俺はEMピンチヘルパーを発動! この効果でダイレクトアタックを無効! 更に、デッキからEM トランプ・ウィッチを効果を無効にして特殊召喚する! こい、トランプ・ウィッチ!」

遊矢の言葉に応えるようにして、ポン、という音と共にフィールドに小柄な魔法使いが現れる。

[か、かわしたァァーーッ! 榊選手、2体の強力なドラゴンの効果を見事、かわしきりました!]

「綺麗な勝利にこだわり過ぎたかな? 僕はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

 

吹雪 LP600

Pゾーン:無し

手札 0

モンスター 2

ブラック・デーモンズ・ドラゴン 攻撃

メテオ・ブラック・ドラゴン 攻撃

魔法・罠 2

補給部隊

⁇?

 

「かわしたのは見事だった。けど、フィールドにいるモンスターはトランプ・ウィッチたった1体。ペンデュラム召喚をしても、最高攻撃力は2500のオッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン。そんな状況下で、(エンターテイナー)(観客)に何を魅せてくれるのかな?」

「決まってます、あっと驚く大逆転劇ですよ」

厳しくも、口元には笑みが浮かぶ吹雪の言葉に、遊矢も口元に笑みを浮かばせる。

 

「私のターン、ドロー! さあ、舞台も第三幕目に突入でございます! 私の前に立ちはだかるは強力な2体のドラゴン! 対する私のフィールドにはEM トランプ・ウィッチが1体のみ! ですが、皆さんお任せを! 私が今から、あのドラゴンを2体共倒してみせましょう!

ーーーそう!」

 

「お楽しみは、これからだ!」

 

ーワアアアアアアアアッ‼ー

 

[さあ、榊選手! 2体のドラゴンを倒すと宣言しましたァ! 果たしてどのようにして倒すのか! 実況の私も、とても楽しみでェす!]

「いきます! まずは、慧眼の魔術師の効果発動! 片方のペンデュラムゾーンに魔術師かEMがいる時、このモンスターを破壊し、デッキから新たに魔術師と名のついたペンデュラムモンスターをペンデュラムゾーンにセットする! 私は慧眼の魔術師を破壊し、デッキから竜脈の魔術師を選択!」

慧眼の魔術師が手に持つ杖を振るう。

すると、慧眼の魔術師の姿がボヤけていき、消えたそこには竜脈の魔術師の姿があった。

スケールも5から1へと変更される。

 

「竜脈の魔術師のスケールは1! よって、私は2から7のモンスターが同時に召喚可能! 揺れろ、魂のペンデュラム! 天空に描け、光のアーク!

ーーーペンデュラム召喚! もう一度来てくれ、私のモンスター!」

遊矢の言葉に、再び穴が開き光が落ちてくる。

 

「EM ドラミング・コング! 最後に、雄々しくも美しい竜! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

[出ましたァァーッ! ペンデュラム召喚! さあ、ここから何が起こるのでしょうかァ!]

「そして、これが最後のカード! 融合を発動! オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴンとEM トランプ・ウィッチを融合!」

遊矢の言葉にオッドアイズとトランプ・ウィッチが溶け合い、混ざり合いながら光になる。

「あやかしの技を操りし者。まばゆき光となりて龍のまなこに今宿らん! 融合召喚! 出でよ、秘術ふるいし魔天の龍! ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

光が消えると、そこには巨大な金色の輪を背負い、オッドアイズがより丸みを帯びた姿になったドラゴンが姿を現した。

 

「バトルだ! ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンで、ブラック・デーモンズ・ドラゴンに攻撃!」

[おっとォ⁉︎ 榊選手、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンよりも攻撃力が僅かに高いブラック・デーモンズ・ドラゴンにそのまま攻撃するぞォ⁉︎]

「ご安心を! 攻撃宣言時、ドラミング・コングの効果発動! モンスター1体の攻撃力を、バトルフェイズの間だけ600ポイントアップします! 私が選ぶのは、ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン!」

 

ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン

ATK 3000→3600

 

「いけ、ルーンアイズ! シャイニーバースト!」

「うっ…!」

 

吹雪 LP600→200

 

「…補給部隊の効果でドロー!」

[届いたァ! 榊選手、ついにブラック・デーモンズ・ドラゴンに手が届きましたァ!]

「まだだ! ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンは融合素材になった魔法使い族モンスターのレベルによって、追加攻撃できる! EM トランプ・ウィッチのレベルは1! よって、2回の攻撃ができる!」

[ななな、なんとォ! ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴンには連続攻撃の効果があったァ! 天上院選手のライフは残り200! 万事休すかァ⁉︎]

「いけ、ルーンアイズ! メテオ・ブラック・ドラゴンに攻撃! 追撃のシャイニーバースト!」

 

遊矢の言葉に従い、ルーンアイズが円の中心に集めたエネルギーをメテオ・ブラック・ドラゴンへと放つ。

「遊矢君、君は素晴らしい決闘者だ。もしかしたら、君は僕の後輩に届きうるかもしれない」

「吹雪さん…」

遊矢の言葉に吹雪はニッと笑う。

「ーーけど、今回は僕の勝ちだ! リバースカードオープン! 決闘融合−バトル・フュージョン! 自分融合モンスターに相手モンスターが攻撃してきた時、そのモンスターの攻撃力をダメージステップ終了時まで加える!」

 

メテオ・ブラック・ドラゴン

ATK 2000→5600

 

「攻撃力5600⁉︎」

「いけ、メテオ・ブラック・ドラゴン!」

「うわあああああああ!」

 

遊矢 LP550→0

 

 

 

 

 

 

ブシューッという音が遊勝塾の一室に響き渡る。

[テスト終了。お疲れ様、遊矢]

耳に届く柚子の声に遊矢は現実に引き戻される。

「ここは…」

 

LDSのセンターコートとは違う、見知ったデュエルコート。

遊勝塾だ。

「そうか、俺…」

「どうだ、遊矢! 古今東西あらゆる決闘者と戦うことのできるLDSの新技術『仮想シュミレーター』は!」

駆け寄ってきた修造が遊矢の肩をバシバシと叩く。

「痛いって、塾長。本物そっくりの感触だったよ。相手もすっごい強かったし」

「そうかそうか! よし、次やってみるか!」

「はいはーい! 次僕がやるー!」

「よぉーし! 柚子、準備はじめてくれ!」

 

ワイワイ騒いでいる塾の面々を背に、遊矢は歩き出す。

そのまま遊勝塾の外に出てみれば、既に夕陽がかなり傾いている。

もう少し経てば、太陽は土手の向こうに沈んでいくだろう。

 

ーピンチの時こそふてぶてしく笑えー

 

「…吹雪さん、次こそは俺が勝ちます」

そう呟く遊矢の口元には自然と笑みが浮かぶ。

 

 

 

「お楽しみは、これからだ!」




いかがでしたでしょうか?

遊戯王の番外編的なものはやるとするなら今後もこんな形でやるかもしれないということで。
次回先もチマチマやってはいるんですけどね。
そっちはまあ完成したらということで。
一応、裏話もありますので良ければそちらもどうぞ。

それでは。

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