ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
遊馬vs真月零 4となっております。

本作のラストバトル。
もはや、何も言うまい。

それでは、どうぞ。


第157話

「くそっ…」

 

どうすりゃ、どうすりゃいい‼

「遊馬、もう時間がない。このままじゃ、俺達全員が、世界の衝突に巻き込まれる」

真月の今までにない程真剣な声が聞こえてくる。

「ターンを流せ。そうすれば、俺がサレンダーをする。それで、このデュエルは終わりだ」

「…っ‼」

 

サレンダーだと…‼

 

「ふっざけんな、真月‼ そんなんでデュエルが終わっても、俺がお前に何も見せられねぇじゃねぇか‼」

「なら、遊馬‼ この状況から、お前は俺に何か見せられるのか⁉︎」

真月の言葉に俺は詰まる。

たしかに、俺には真月をなんとかしてやれるウルトラCが思いつかない。

でも、もう考えるだけの時間はねぇ。

ほっといたら、世界はぶつかる。

どうすりゃいい…‼

 

『遊馬』

「‼ アストラル」

『1つ、方法はあるかもしれない』

「あ、あるのか⁉︎」

アストラルの言葉に俺は思わず前のめりになって聞いてしまう。

俺の言葉にアストラルは1枚のカードを取り出す。

「それは?」

『真月がさっき渡してきたカードだ。 …見てみろ』

そう言うと、カードを裏返して俺に見せる。

「これは…」

 

そこには、薄らぼんやりとだがカードの絵柄や名前、効果なんかが見えるようになっていた。

「N…ヌメ…ン…ダメだ、読めねぇ」

『こうなったのは、真月とのデュエルが始まってからだ。真月と我々のライフポイントが減るにつれて、より鮮明になってきている』

まるで、俺達のライフを吸ってるみたいだ。

いや、そんなことよりも。

「このカードが真月を助けるのに役に立つってのか?」

『わからない』

わからないって。

『別にふざけているわけじゃない』

俺の雰囲気を悟ったのか、アストラルがそうやって俺に言う。

『遊馬、真月がこのカードについて言っていたことを覚えているか?』

そのカードのこと?

たしかーーー

 

 

 

 

 

「まあ、どっちにしても役に立ちそうなキーカードがこの有様じゃあどうしようもないけどな」

 

 

 

 

 

「ーーーだったっけか」

俺が思い出したままに言うと、アストラルは頷く。

『このカードは「役に立つ」かもしれないキーカードだ。上手くいけば、このカードが現状を打開する可能性はある』

「そうか…‼」

 

たしかに。

真月がそうまで言ったカード。

何も浮かばず、時間もかけられねぇ今。可能性があるのは、金色のドラゴンみたいなのが描かれたそのカードだけだ。

 

「俺のターン…‼」

次のターン。真月はサレンダーすると言った。

それはつまり、俺に残されたのはこのターンのみ。

手札は1枚。

同じ攻撃力のビヨンド・ザ・ホープとアンブラルが睨み合っている以上、このドローに全てがかかってると言っていい。

 

『遊馬、私は信じている。君なら、絶望を踏破できる』

アストラル…

「ああ…‼」

このドローで全てが決まる。

「‼ その光は…‼」

俺の手に真月がやったように、眩い光が溢れ始める。

この光に全てを賭ける‼

「かっとビングだ、俺‼ ドロー‼」

 

光る手をそのままに、カードを引き抜く。

心臓がドキドキしてるのがわかる。

でも、信じるしかねぇ。

ドローしたカードはーーー

 

 

 

 

 

 

「ーーー俺は、ビヨンド・ザ・ホープで仮面魔踏士アンブラルを攻撃‼」

遊馬の声と共にビヨンド・ザ・ホープは剣を握りしめ、大きく跳んだ。

それとほぼ同時に、アンブラルは手に持つ杖を握り、まるで鈍器を扱うように、低く構える。

 

「ホープとアンブラルの攻撃力は同じ3000」

「このままだと、相討ちする‼」

 

シャークや璃緒の声が辺りに響く。程なくして、必殺の一撃が互いのモンスターに叩き込み合い、2体は同時に果てる。

 

「ホープが降ってくるぞ‼︎」

 

到達点に達したのか、空中で静止したホープが、シャークの言葉とほぼ同時に重力に引かれて落下を始める。

視線の先には、杖を構えるアンブラル。

 

このままでは、モンスターは無駄に命を散らす。

だが、この場で見ていた全員は、本能的に理解している。

このデュエル、誰がどうなるにせよ、このターンで全てが終わると。

 

「いけ、ホープ‼」

「やれ、アンブラル‼」

 

ビヨンド・ザ・ホープが剣を振り下ろし、アンブラルの杖が振り上げられる。

『ホープがアンブラルを切った…‼』

ビヨンド・ザ・ホープの攻撃がアンブラルの肩から胴へと深々と斬りつけられる。

だが…

 

「ただじゃやられない」

アンブラルもまた、ビヨンド・ザ・ホープの横っ腹に杖の先を深々と捩じ込み、ビヨンド・ザ・ホープの姿勢を不恰好なものへと変化させている。

 

「うわっ」

「くっ…‼」

 

互いのモンスターが一瞬光ったかと思われた次の瞬間、2体のモンスターは爆発を起こし、姿を消した。

モンスターは消え、フィールドは空になる。

『ここまでは想定通りだ。遊馬‼』

「おう‼ 俺はエクシーズ・ダブル・バックを発動‼ 俺のフィールドにモンスターがおらず、このターンエクシーズモンスターが破壊された時、このターン中に破壊されたエクシーズモンスターとそのモンスターより攻撃力の低いモンスターを特殊召喚する‼」

『蘇れ、ビヨンド・ザ・ホープ‼』

「そして、俺が特殊召喚するのはコイツだ‼ 来てくれ、希望皇ホープ‼」

 

アストラル、そして遊馬の言葉にフィールドに開かれた暗い穴から、先程相討ちで倒れたビヨンド・ザ・ホープ。

そして、並び立つようにして希望皇ホープが姿を現す。

 

「真月のフィールドにモンスターは守備表示のセイクリッド・ポルクスが1体だけ‼︎」

「2体の攻撃が通ったら、零君は…‼」

 

「いけ、ビヨンド・ザ・ホープ‼」

遊馬の声にビヨンド・ザ・ホープが再び剣を構えると、踏み込みと共にそのまま切りかかる。

そのまま膝をつくポルクスを残す、真月のフィールドへと踏み込もうとしたーーー次の瞬間。

 

『なんだと⁉︎』

真月のフィールドに突如現れたセイクリッド・プレアデスにビヨンド・ザ・ホープは動きを止める。

「な、なんでプレアデスが⁉︎」

「俺はエクシーズ・リボーンを発動し、墓地のプレアデスを特殊召喚した‼」

真月のフィールドに現れた、セイクリッド・プレアデス。

その後ろには、光を放つエクシーズ・リボーンの姿がある。

「エクシーズ・リボーンの効果はわかってるよな? セイクリッド・プレアデスのORUになる‼ さらに、セイクリッドの星痣の効果で1枚ドローする」

『まずいぞ、遊馬…‼』

 

アストラルが呻くようにして、呟く。

遊馬のフィールドには、突如現れたモンスターを前に攻撃を止めたビヨンド・ザ・ホープ。

そして、希望皇ホープの2体。

真月のフィールドにはORUを備えたセイクリッド・プレアデス。

「プレアデスの効果発動‼ ORUを1つ取り除き、ビヨンド・ザ・ホープをエクストラデッキに戻す‼」

ORUが弾け、セイクリッド・プレアデスがマントを翻すと動けずにいるビヨンド・ザ・ホープを包み込んでしまう。

一瞬の後、再び広げたそこには何の姿もなかった。

 

「どうする、遊馬? 俺達のフィールドにはホープとプレアデス。互いの攻撃力は同じ2500だ」

「…へっ‼ 決まってんだろ‼」

真月の言葉に、遊馬は不敵に笑って答える。

元より、このターン何もしなければ次のターンに真月はサレンダーしてしまう。

遊馬にもアストラルにも、動きを止めるつもりはない。

 

『遊馬‼︎』

「おう‼︎ 俺は墓地のスキル・サクセサーの効果発動‼︎ コイツをゲームから取り除き、ホープの攻撃力を800ポイントアップする‼︎」

 

No.39 希望皇ホープ

ATK 2500→3300

 

「ホープの攻撃力が上回った…‼︎」

「いけ、ホープ‼ セイクリッド・プレアデスに攻撃‼」

希望皇ホープが剣を振り上げると、大きく跳び、回転しながらセイクリッド・プレアデスに切りかかる。

「墓地のネクロ・ガードナーの効果発動‼︎」

言葉と同時に真月のフィールドに現れたネクロ・ガードナーが拳を構え、振り下ろされたホープの剣目掛けて拳を引き絞ると、唸る風をそのままに振るう。

 

拳と剣。

 

2つがぶつかり合うと、ホープは大きく姿勢を崩しつつ、遊馬のフィールドに降り立つ。

『おろかな埋葬の効果で送ったモンスターか…‼︎』

2人の言葉に真月は頷いて楽しそうに笑みを浮かべる。

「遊馬、このデュエルは楽しかったか?」

「え?」

「俺は楽しかったよ」

そう言うと、真月は遊馬から目線を外し、何処か遠くへと向ける。

 

「ベクターの都合だったけど、この世界に来て、思いっきりデュエルを楽しんで…そりゃあ、痛い思いもしたし、勝った分だけ負けたりもしたけどさ」

そう言うと、そのまま目を閉じる。

 

 

「でも、遊馬に会えた」

 

 

「アストラルに会えた」

 

 

「なにより、璃緒さんに会えた」

 

 

「…遊馬、俺がわざわざこんな面倒なことをしたのはな。少し、話す時間が欲しかったんだ」

そうやって、まるで噛みしめるように言うと、ゆっくりと目を開き、遊馬へとゆっくり視線を合わせる。

「けど、それももう終わり。ここが境界線だ」

そう言うと、真月はまるで恋人を抱き止めるようにして手を大きく広げる。

「その残ったカードが俺を倒すには充分な力があるのはなんとなくわかってる。最後に言いたいことも言えたし、もう充分だ。満足した。 …さあ、来い」

 

『…遊馬』

アストラルが遊馬に言葉を促す。

「真月、ここに境界線なんかねぇよ」

「何?」

「境界線なんか俺にはねぇ。そこに崖があるなら、飛び越える‼︎ 壁があるならぶっ壊す‼ 何があろうと、俺がお前に手を伸ばして掴んでやる‼︎ 真月を引っ張ってやる‼︎ それが俺のかっとビングだ‼」

遊馬がそう言ったと同時に、アストラルの持つカードから光が溢れ始める。

 

『‼ きたぞ、遊馬‼』

「おう‼ 俺はダブル・アップ・チャンスを発動‼ このターン、攻撃が無効になったモンスターの攻撃力を2倍にしてもう一度バトルをする‼ 限界突破だ、ホープ‼」

 

No.39 希望皇ホープ

ATK 3300→6600

 

ダブル・アップ・チャンスの効果を受けたホープ自身が、まるで日輪のように強い光を放ち始める。

「これが、ホープ(希望)の光…‼」

「いけ、ホープ‼ 真月にダイレクトアタック‼」

 

遊馬の言葉にホープが跳び上がった。

最高点に達した瞬間、真下にいる真月へと顔を向けると、回転しながら、剣を振り上げた。

 

「ホープ剣・スラッシュ‼」

 

真月 LP1150→0




いかがでしたでしょうか?

少々遅くなりましたが、vsバリアンの裏話を活動報告の方に乗せました。
よければ、そちらもどうぞ。


それでは。


最終回まで後2話。

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