vsラスボス 導入後篇となっております。
ラスボスを『ラスボス』としたのは意味もありまして。
最後までお楽しみに。
それでは、どうぞ。
第147話
「くっ…‼︎」
ベクターの手を握っていた感触の残る手をそのまま握りしめ、地面に叩きつける。
「ベクター…ッ」
俺達の目の前でベクターはドン・サウザンドに吸い込まれてしまった。
これじゃあ、俺の戦った意味も…‼︎
ーフハハハハハ‼︎ 力が満ちる‼︎ー
勝ち誇ったようなドン・サウザンドの声が聞こえ、顔を上げると巨大なドン・サウザンドが光を放ち始める。
ー打倒を誓った敵を目の前で奪われる。中々面白い見世物だったぞ、真月ー
「ドン・サウザンド…‼︎」
ーワハハハハハ‼︎ 見世物の礼だ。面白いものを見せてやろうー
ドン・サウザンドがそう叫ぶと、再び大きな揺れが起こると、離れた場所に何かが現れる。
あれは…‼︎
「ハートランドシティ…⁉︎」
所々、紅い巨大な岩が隆起しているが、街の風景やビル街の中心に広がる遊園地の姿ーーー間違いない。
あれは俺達の街、ハートランドシティだ。
『まさか、融合してしまったというのか…⁉︎』
ーその通り。後一歩遅かったようだなー
人間界とバリアン世界が1つになった。
それはつまり、人間界は奴のエネルギー源になってしまり、アストラル世界への侵攻の準備が整ってしまったということだ。
これじゃあ、もう…‼︎
「まだだ‼︎」
「‼︎ 遊馬」
「まだ、ドン・サウザンドを倒せばチャンスはきっとある‼︎ 諦めるにはまだ早ぇ‼︎」
遊馬…
ーフハハハ…面白い。ならば、我が真の力を解放し、九十九遊馬、貴様から葬り去ってくれる‼︎ー
「望むところだ‼︎ お前は俺がぶっ倒す‼︎」
遊馬がドン・サウザンドにそう叫んだ次の瞬間
ーガッ…⁉︎ー
ドン・サウザンドから無理矢理息を吐き出したような、不可思議な声が漏れる。
「なんだ、あれは…⁉︎」
『手…?』
ー絶望の化身たる貴様の希望が最も満ちるこの時を待っていたぞー
突然、辺りに女性の声が響き渡る。
誰だ…⁉︎
ーグッ、貴様一体…‼︎ー
「‼︎ あそこだ‼︎」
シャークが指さした先、ドン・サウザンドの背後に何者かの影が動き、姿を見せる。
そこには、黒いドレスを着た青い瞳の女性の姿があった。
なんだ、コイツは…⁉︎
「我が名はe・ラー。お前達の希望の光を消し去る絶望の神」
e・ラー…⁉︎
「希望の光を消し去る…」
『絶望の…神』
アストラルがそう呟いた瞬間、紅い岩とハートランドシティから地平線まで黒く短い柱が延々と続く風景へと一瞬で変化する。
「ここは…⁉︎」
「ここは全ての希望の尽き果てる場所…これこそが、我がこれまで破壊し続けた希望そのもの‼︎」
「なんだと⁉︎」
じゃあ、この柱全部が…墓標だっていうのか…⁉︎
「さて、まずは貴様だ。ドン・サウザンド」
そう告げると、片手がドン・サウザンドの頭を掴む。
「仮にも我と同じ絶望の化身を名乗る存在。その貴様が持った希望とはどれほどの力であろうか」
そう言うと貫いていた腕を回し、傷を広げ始めた。
ー何…⁉︎ー
「フフフ…傷が治らないのが不思議、といったところか。まあそれも、当たり前といえば当たり前。貴様の力は今、我が奪っている」
ーなんだと⁉︎ー
「貴様の内の力は貴様には勿体無い。我が使おう」
そう言うとドン・サウザンドの身体の光が指先から少しずつ消えていく。
「フハハハ、絶望が上回ってきたな。いいぞ」
ー…この我が、ドン・サウザンドがァ…‼︎ー
ドン・サウザンドの身体から完全に光が消え去る。
「さらばだ」
そう呟いた瞬間、ドン・サウザンドが闇色のエネルギー体となり、地面に落ちた。
煙々と上がる土煙が晴れたそこには、他のものと同じように黒い柱が立っている。
「…ッ‼︎」
『あの』ドン・サウザンドが呆気なく消え去った今、次の狙いは俺達へと向けられるだろう。
…怖い。
勝てるのか?
相手はドン・サウザンドすらも上回る化け物中の化け物。
そんな奴を相手に、俺達は勝ちをもぎ取ることがーーー
「…ああ。そういえば、忘れるところだった」
そう言うと、e・ラーは掌を宙へと伸ばした。
そこに、何かが現れる。
「コイツは貴様等の仲間だろう? 喜べ、感動の再会だ」
そう言うと、掌から金色の何かが落ちる。
あれはーーー
「ミザエル…⁉︎」
空から落ちてきたミザエルに急いで駆け寄る。
「ひでぇ…ボロボロじゃねぇか…‼︎」
「ミザエル、しっかりしろ‼︎ ミザエル‼︎」
必死になって身体を揺すり、声をかけると小さく身じろぎをし、目を開く。
「真月、か…」
「‼︎ ミザエル‼︎」
「すまない。奴に不覚を…くっ…」
「無理するな。とにかく、今は手当てを…」
そう俺が言おうとすると、ミザエルが腕を動かし、1枚のカードを取り出した。
そのカードには名前はおろか、何のテキストも書かれておらず、かろうじてフレームの色でエクシーズだとわかる程度だ。
「このカードを、お前達に託す…その為に、私はここまで来た…ッ」
「ああ、わかった。確かに受け取った‼︎」
そう言い、ミザエルの手を掴むと、ミザエルは小さく口を歪ませ、笑みを浮かべる。
「真月、忘れるな…希望は、必ずある…‼︎」
「‼︎ ミザエル‼︎」
告げるだけ告げたところで、ミザエルは再び意識を失ってしまう。
「フン…さて、次は貴様等の希望を消し去り、次いで人間界、バリアン世界、アストラル世界の希望も我が飲み込んでくれる‼︎」
「そんなことはさせねぇぞ、e・ラー‼︎ お前は俺達が倒す‼︎」
「コイツを倒せば、この戦いも終わりだ‼︎ ここをお前の墓場にしてやるぜ‼︎」
…希望はある、か。
「…零君?」
「璃緒さん、ミザエルを頼む」
このカードが何かはわからない。
けど、このカードにはミザエルが託すだけの何かがあるはずだ。
まだ、全てに絶望するには早い。
何よりーーー
「璃緒さんを、みんなを‼︎ 大事なものを諦めるにも、まだ早い‼︎」
さあ、立とう。
俺1人じゃ怖くて、苦しくて、立てなくても、俺には信じ合える多くの
「よかろう。お前達の運命を絶望へと転がり落としてやろう」
「いくぞ、e・ラー‼︎ これが俺達の最後の戦いだ‼︎」
「「「デュエルディスク、セット‼︎ Dゲイザー、セット‼︎」」」
いくぞーーー
「「「「デュエル‼︎」」」」
いかがでしたでしょうか?
ドン・サウザンドは小物っぽい(暴言)
まあ、再生怪人は勝てないということで(特撮並感)
というわけで、次回からvse・ラー戦が始まります。
気合いは大分いれましたので、お楽しみに。
それでは。