ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
シャーク&璃緒vsドルべ 6となっております。

色々遅くなってしまい申し訳ないm(_ _)m
誰だよ! 来週後期考査なのにガンダムブレイカー2でゲシュペンスト作ってた奴!
私だ。
じゃあ来月レイジバースト出るからってGE2やり直し始めたのは!
それも私だ。

それでは、どうぞ。


第137話

「ここは…?」

 

俺がふと、意識を取り戻すと闇に塗り潰された世界が俺の前に広がっていた。

両足で立っているのだから、床はあるんだろうが、壁も天井も何も見えねぇ。

「何処だ…?」

 

ー俺とお前の境目だー

 

「‼ 誰だ‼」

暗闇に突然響いた声に俺が叫んで聞き返す。

すると、俺の視線の先に突然赤いマントを翻しながら紫の体躯の男が現れた。

紅と蒼の瞳から放たれる視線が俺へと突き刺さる。

「はじめまして、だな。神代凌牙」

「…お前が、ナッシュか」

「ああ。そうだ」

俺の言葉に男ーーナッシュは頷いて返した。

こいつがナッシュ…

なるほど、確かに俺と似ている気がしないでもねぇ。

「要件はわかってる。力を貸せってんだろ」

「ああ」

そう言うとナッシュは僅かに目を細めた。

 

「いいぜ。貸してやっても」

「何?」

アッサリとそう言ってのけたナッシュに俺は少し驚く。

そんな物分かりのいい奴じゃねぇのは俺でもわかる。

…何を企んでやがる。

「ただし、力を貸してほしいならそれに見合うだけの力を見せてみろ」

そう言うとナッシュの背後で何かが揺らめくように動いたように見えた。

なんだ…?

「お前の力を俺に見せてみろ、凌牙‼」

そう叫ぶや否や、暗闇から紅い巨大な槍が突き出された。

「‼」

槍ーー

速い、かわしきれねぇーー‼

俺がとっさに身体を守ろうと両腕を盾にした瞬間

 

ガギンッ‼

 

そんな音が辺りに響く。

俺がゆっくりと顔を上げたそこにはーー

「シャーク・ドレイク…‼」

紫のヒレで槍の一撃を防ぐシャーク・ドレイクの姿があった。

シャーク・ドレイクが振り払うように槍を弾くと、ナッシュの背後から闇を突き破るようにしてく紅と黒の鎧を着込んだ巨大な戦士が現れた。

飛んだ槍を難なく掴むと、再び構えの姿勢をとる。

すると、俺達の前に突然石板が現れた。

「こいつは…?」

「こっちの方がわかりやすいだろ? いけ‼」

「くっ…迎え撃て、シャーク・ドレイク‼」

俺達の言葉に2体はそれぞれ応えるように飛び出した。

 

そのまま、シャーク・ドレイクが口から光線を吐けば、戦士が槍で両断し、戦士が槍を振るえばシャーク・ドレイクがヒレで弾くといった通常行われるデュエルでは見られないような攻防戦が繰り広げられる。

 

「お前、何の為にドルべを助けるつもりでいるんだ」

唐突に、ナッシュが俺にそんなことを聞く。

「お前とドルべは敵同士。助ける程ドルべのことを知ってるわけでもねぇし、そもそも助けてやる義理もねぇ」

「何が言いたい」

「お前、メラグに流されるままに頷いただけじゃねぇのか?」

「…‼ そんなわけが…‼」

「メラグの姿にお前の妹の姿がダブっただけなんじゃねぇのか」

「‼」

ナッシュの言葉に俺が少なからず動揺すると、上空で大きな音が聞こえた。

続いて、風を切るような音が聞こえ見上げると戦士の槍が至近距離にいたシャーク・ドレイクを吹き飛ばしたところだった。

吹き飛ばした勢いのまま、シャーク・ドレイクは地面に叩きつけられる。

「シャーク・ドレイク‼」

 

「流されて戦う理由を見出せないような奴に俺が力を貸す理由はねぇ」

「くっ…‼」

倒れたシャーク・ドレイクを前に戦士は槍を構えた。

「トドメだ。やれ‼」

ナッシュが叫ぶと、それに応えるように戦士は槍を構えて大きく身を逸らし槍を投げた。

矛先にはシャーク・ドレイクの姿がある。

 

くそっ、俺じゃコイツには…

 

 

ー諦めんな、シャーク‼ー

 

 

「遊馬…?」

俺の耳に何処からともなく、そんな遊馬の声が届く。

すると、シャーク・ドレイクの隣に新たな石板が現れ、新たな存在が槍を弾いた。

「ホープ…⁉」

 

そこにいたのは黄色と白の最早忘れることのねぇ、遊馬のエースモンスター。

希望皇ホープがそこにいた。

 

「なん…だと…?」

弾かれた槍は大きく宙を舞うとナッシュの近くに突き刺さる。

「ホープ…」

俺に背を向けたままのホープの姿に遊馬の後ろ姿が…いや、遊馬だけじゃねぇ。

カイトの、璃緒の、Ⅳの、真月の姿が重なる。

 

…そうか、そうだったな。

 

「お前の言う通りだ、ナッシュ。俺はたしかにあの時、メラグの顔に璃緒がダブった」

「………」

「けどな、それだけじゃねぇ。それだけじゃねぇんだ」

 

そうだ。

俺にとっての闘う理由はそんな誰かに流されてなんてもんじゃねぇ。

 

「多分、俺はきっと、『デュエル』が好きなんだ。デッキを組む時、誰かと闘う時、勝った時、負けた時…その全部が好きなんだ。だから俺はデュエルをする」

ったく、俺も遊馬を馬鹿にできねぇな。

でも、それが俺だ。

でなけりゃ、表舞台から降りたあの日にデュエルを止めちまってたはずだ。

 

「…なら、ドルべとのデュエルも楽しいからだけか?」

「なわけあるかよ。ドルべを助けることは、俺なりのドン・サウザンドへの意思だ」

「意思だと?」

「『喉元咬みちぎってやるから覚悟しやがれ』ってな。だからこそ、こんなところでつまづくわけにはいかねぇ‼」

そう叫ぶと、ホープが白い光を放ち始めた。

その光はシャーク・ドレイクを包み込むと、2体が光の中へと消える。

わかるぜ。

お前がそこにいることがな。

いくぞーー

 

「シャーク・ドレイク・バイス‼」

 

そう叫んだ瞬間、光を散らすようにしてシャーク・ドレイクを一回りは上回る白い体躯を露わにした。

聞き慣れた雄々しい咆哮を上げると、一息で戦士へと近付き肉薄する。

反応に遅れた戦士が一呼吸遅れて槍を振るおうとするも、鋭い爪の着いたヒレで槍を振り払う。

受けろよ、俺達の一撃をーー‼

 

「カオス・デプス・バイトォ‼」

 

 

 

 

「ーーいいだろう」

「あぁ?」

シャーク・ドレイク・バイスの一撃で戦士の土手っ腹に風穴を開けた後、ナッシュは俺を見ながら俺にそう呟いた。

「お前に力を貸してやる。ドン・サウザンドにもベクターにも、色々と貸しがあるからな」

「そうかよ」

貸しがどんなものか、気にはなるが…まあいいか。

今はどうでもいい。

「ただし、使うのはこれっきりにしろ。バリアンの力は人間が乱用するようなもんじゃねぇ」

「ああ、わかってる。俺も反則的な力を使ってまで勝ちたいわけじゃねぇ」

そう返すと、ナッシュは手を差し出した。

俺も片手を伸ばすとそのまま握手を交わす。

すると、メラグの時と同じ意識が闇に落ちる感覚がし始めた。

ナッシュの顔がぼやけたモノへと形を変える。

「凌牙」

「なんだ」

「メラグによろしく伝えてくれ」

「ああ」

「それから、ドルべにはーー」

「…わかった」

「頼むぞ」

それだけ言うと俺の視界は完全に闇へと落ちた。

そのまま、引っ張られるような感覚が起こったかと思うと耳から風の音が聞こえてくる。

 

「ここは…」

目を開けたそこにはドルべの姿があった。

そうか…帰ってきたんだな。

「帰って、これたのね」

そう言うとメラグはひどく疲れたような顔をする。

「大丈夫か?」

「そろそろ、まずいわね。ナッシュには会えたかしら?」

「ああ、問題ねぇ。 …ドルべ‼ お前にナッシュから伝言がある」

俺の言葉にドルべはピクリと反応を示す。

「『お前の盾は何の為にある』だとよ」

「何の為、だと…私の盾は」

「ドン・サウザンドの為か? 違うだろ。お前の盾はそんなもんじゃねぇはずだ」

「黙れ‼ 私の事を知ったような口で語るな‼」

「知らねぇよ‼ だけどな、知らねぇし見えねぇからこそ、見えるモンだってあるんだよ‼ いくぞ、俺のターン‼」

これがこのデュエル、ラストドローだ。

これで全てが決まる。

頼むぜ、ナッシューー‼

 

「‼ その力は‼」

「バリアンズ・カオス・ドロー‼」

光を放ち始めたデッキトップに指を添え、思いきりドローする。

すると、ほぼ同時に俺の身体を痛みが駆け抜けた。

頭のてっぺんからつま先まで、鈍い痛みが駆け抜ける。

「っ…‼」

「凌牙‼」

「問題、ねぇ…‼」

それよりも、ドローしたカードだ。

このタイミングで俺がドローしたいカードはあのカードしかねぇ。

どうだ…?

 

「…よし‼ 俺がドローしたカードはRUM−七皇の剣‼」

「なんだと⁉」

「この効果は知ってるな? 俺はエクストラデッキのオーバーハンドレッドナンバーズを特殊召喚し、カオス化させる‼」

俺がそう宣言すると共に俺のエクストラデッキから光が溢れ始める。

「これは…⁉」

メラグの驚き混じりの声が聞こえてくる。

「俺はエクストラデッキのNo.101 S・H・Ark Knightを特殊召喚‼」

 

No.101 S・H・Ark Knight

★4 水属性 水族

ATK 2100

DFE1000

レベル4モンスター×2

このカードのエクシーズ素材を2つ取り除き、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する

特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動できる

選択したモンスターをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする

「No.101 S・H・Ark Knight」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない

また、フィールド上のこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる

 

エクストラデッキからカードを引き抜き、セットすると、俺達のフィールドに白と紫の方舟が現れた。

側面には自身の証である101の数字がある。

「そのモンスターはナッシュの…‼」

「まだ終わりじゃねぇ‼ Ark Knightを対象にオーバーレイネットワークを再構築‼カオス・エクシーズ・チェンジ‼ 現れろ、CNo.101 S・H Dark Knight‼」

 

CNo.101 S・H Dark Knight

★5 水属性 水族

ATK 2800

DFE 1500

レベル5モンスター×3

1ターンに1度、相手フィールド上の特殊召喚されたモンスター1体を選択して発動できる

選択したモンスターをこのカードの下に重ねてエクシーズ素材とする

また、エクシーズ素材を持っているこのカードが破壊され墓地へ送られた時、自分の墓地に「No.101 S・H・Ark Knight」が存在する場合、このカードを墓地から特殊召喚できる

その後、自分はこのカードの元々の攻撃力分のライフを回復する

この効果で特殊召喚したこのカードはこのターン攻撃できない

 

Ark Knightが水色のエネルギー体へと姿を変えると空高く昇っていく。

すると、紅い大きな爆発が起こりあの空間で見た紅と紫の戦士が現れた。

腰の鎧には同じく101の数字が刻まれている。

「ナッシュのオーバーハンドレッド…‼」

「Dark Knightの効果発動‼ 相手フィールドの特殊召喚されたモンスターをこのカードのCORUにする‼ 俺が選ぶのは、CNo.102 光堕天使 ノーブル・デーモン‼」

俺の言葉にDark Knightが槍を振るうと、ノーブル・デーモンが紅い十字架になり、Dark Knightの前に突き刺さる。

「…ドルべ、貴方には見えるんじゃないかしら? 私とナッシュ、そして貴方自身の姿が」

「ぐっ…‼」

「俺はセイバー・シャークを召喚‼ さらに、浮上を発動‼ 墓地のキラー・ラブカを特殊召喚する‼」

セイバー・シャークの隣に身体をくねらせ、黄色いウツボが現れる。

「セイバー・シャークの効果で、キラー・ラブカのレベルを1つたげる」

 

キラー・ラブカ ☆3→4

 

これでフィールドには2体のレベル4のモンスター。

ドルべの心に届かせる為には…‼

「俺は2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ こい、No.44 白天馬スカイ・ペガサス‼」

俺のフィールドの2体のサメが水色に輝くエネルギーとなり、爆発を起こす。

すると、爆煙の中から馬の嘶きが聞こえ、一匹の純白の天馬が現れた。

 

「スカイ・ペガサス…ぐっ、あああ…‼」

スカイ・ペガサスを見たかと思うとドルべが頭を抱えて膝をつく。

「洗脳が解けかかっているのかもしれないわ‼ 凌牙、早く‼」

「ああ‼ スカイ・ペガサスの効果発動‼ ORUを1つ取り除き、モンスターを1体破壊する‼ この効果はライフを1000支払えば無効に出来るが、ドルべのライフは1000をきっている‼ よって、俺は光天使スローネを破壊する‼」

スカイ・ペガサスの周囲を回るORUが1つ弾けると、猛烈な光を放ち始める。

その光はスローネを飲み込むと、そのまま光の中へと消え去った。

「っ…まだ終わってはいない‼ リバースカードオープン‼リビングデッドの呼び声‼ 蘇れ、グローリアス・ヘイロー‼」

ドルべのフィールドに再び、輝く弓を片手に持ったモンスターが現れる。

 

「グローリアス・ヘイローは光属性。もし、ドルべのあの2枚のどちらかにまたオネストがあったら…」

「…どうだろうな」

そう呟きながら、俺は手札に残る最後の1枚へと目線を下げた。

…最後に残ったのがこのカードとはな。

これも運命ってやつか?

「ドルべがもし、オネストを握っていたのなら、このターンを流したとしても無駄だ。次の奴のターン、オネストで強化したグローリアス・ヘイローの強襲で俺達のライフは尽きる。なら、俺は戦う方を選ぶ‼ 最後のカードだ‼ 俺は団結の力を発動‼」

 

団結の力

装備魔法

装備モンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体につき800ポイントアップする

 

「俺はスカイ・ペガサスを選択する‼ 俺のフィールドにモンスターは3体。よって、2400ポイントアップだ‼」

 

No.44 白天馬スカイ・ペガサス

1800→4200

1600→4000

 

クリスタル・ゼロとDark Knightの力を受けて、スカイ・ペガサスは力強い嘶きを上げる。

「勝っても負けても、これが最後のバトルフェイズだ‼ いくぞ、ドルべ‼」

「…こい、神代凌牙‼」

「俺はスカイ・ペガサスでグローリアス・ヘイローに攻撃‼」

俺の指示に天馬が嘶き、空高くへと飛び、一直線にグローリアス・ヘイローへと飛び込む。

 

Dパッドには『ダメージステップ開始』の表示が出る。

ドルべに動きはねぇ。

さっきのこともある。

オネストを打つならここじゃねぇ。

 

Dパッドの表示が『ダメージ計算前』に変わる。

ドルべに動きは…ねぇ。

 

ドルべ LP450→0

 

ドルべはスカイ・ペガサスの攻撃に煽られ、吹き飛ぶとそのまま地面に倒れた。

同時に、ドルべの姿がバリアンの姿から人の姿に変わる。

「今のは…」

俺達の勝利を告げるブザーが鳴り響くが、俺にはそんなことに気を使う余裕はない。

 

見間違えじゃねぇ。

ドルべは、両腕を降ろし攻撃を受け入れた。

 

「っ…見事だ、神代凌牙」

「ドルべ、お前そのカードは…」

散らばったドルべの手札の1枚にはオネストの姿がある。

それを発動すれば、俺達は負けだったはず。

「フッ…私も目が覚めた。ただ、それだけだ」

「…そうかよ」

思うところが無いわけじゃねぇが、まあいい。

今はそれでよしとする。

 

「ドルべ、お前はこれからどうするつもりだ?」

「…私は今のデュエルで全てを思い出した。愛馬に跨がり、騎士の1人として剣を振るう日々。掛け替えのない友との時間。そして、ドン・サウザンドに狂わされた騎士達の姿…私はドン・サウザンドを許すわけにはいかない。奴が私達の運命を狂わせた諸悪の根元‼ ならば、奴を打ち砕くのもまた、七皇であるべきだ」

要するに、ドン・サウザンドと戦うということだな。

まったく、素直にそう言えばいいものを…

「なら、一緒に行かないか? 俺達の目的はドン・サウザンドの打倒。でも、1人で勝てるなんて思い上がっちゃいねぇ。なら、手を取り合うことも悪くねぇだろ?」

「しかし、私はお前達に迷惑をかけた。そんな私を仲間に引き入れたところで…」

「めんどくせぇな。仲間が嫌だってんなら、同盟だ。俺と同盟を組め、ドルべ」

俺の言葉にドルべはぽかんとした表情で俺を見返す。

「そうだ。一先ず、ドン・サウザンドを倒すまで俺達は休戦する。一緒に協力してドン・サウザンドを倒すぞ。着いてこい、ドルべ」

そう言って手をドルべに差し出すと、ドルべは俺の顔と手を交互に見つめ、何を思ったのか急にフッと笑った。

 

「お前は強引な奴だな、凌牙」

「お前が強情なだけだ」

そう言うとドルべは俺の手を取った。

「わかった、お前と同盟を結ぼう」

「ああ」

ったく、最初っからそう言やいいものを。

…まあいいか。

とにかく、ドルべとの争いはこれで一先ず集結だ。

次は…

「璃緒、いつまでメラグの真似しているつもりだ?」

璃緒の方だ。

 

「…あら、気付いていたの?」

「ああ。いつ入れ替わった?」

「凌牙がナッシュと戦いに行った辺りよ。かなり力を使ったらしくて、引っ込んだわ」

「そうか」

メラグにナッシュ。

…思うところが全く無いかと言われたら、嘘になる。

けど、それも後回しだ。

少なくとも、今は俺達と2人の意思は統一されている。

 

「ねぇ、凌牙。どうして私だとわかったの?」

「メラグはお前より大人っぽかったからな」

「私が子供っぽいって言いたいの?」

「さあな」

俺がそう言って璃緒の視線をかわすと、ドルべの笑い声が聞こえてきた。

「何よ」

「いや、似ていると思っていたがそうでもなかったようだ。メラグはもっと物静かだった」

「なら、似てねぇな」

「どうせ私はうるさいわよ」

そう言うと璃緒はそっぽを向いてしまう。

拗ねちまったらしい。

「いいわよ、別に。私には零君がいるんだから」

そう言うと璃緒はDゲイザーを再び起動させると、そのまま弄り始める。

 

「もしもし、零君? そっちはどうかしら?」

「はぁ…やれやれ、だ」

溜め息を吐きドルべを見たところで、ふと疑問がよぎる。

「ドルべ」

「なんだ?」

「お前、どうして操られていたんだ?」

これまでのバリアンの行動から鑑みるに、ドルべは感情的になるような奴じゃない。

どちらかといえば、冷静な方なんじゃねぇかと思う。

そんな奴がどうして操られるような事態に…

「…私が人間だった頃の記憶を取り戻した時、他の七皇も記憶を植え付けられているんじゃないかと思った。だが、私がそう言ったところで誰が信じる? ミザエルは頑なに認めようとはしないだろう。アリトやギラグも何処か様子がおかしい」

おそらく、ドルべの予測に間違いは無い。

俺ですら、すぐに受け止めることができなかったんだ。

『人間だった』なんて突然言われたところで、誰も信じねぇ。

「だから私は、一縷の望みを託してベクターを訪ねた」

「ベクターだと…⁉」

「どうかしていたと私も思う。そこでベクターはーー」

そうドルべが言おうとしたところで

「え、れ、零君?」

璃緒が混乱したような声をあげる。

「どうした?」

「わからないわ。『逃げろ』って」

「逃げろ?」

それはどういうーー

 

「‼ 凌牙、璃緒‼ 危ない‼」

ドルべがそう叫ぶと、突然突き飛ばされる。

「きゃっ」

「ってぇ…‼ いきなり、何を…⁉」

俺が抗議の声をあげようとドルべの方を見るとーー

 

「ぐっ…‼」

「ドルべ⁉」

 

そこには、ボロボロのベクターの腕が突き刺さったドルべの姿があった。

 

「ぐっ…ベクター…‼」

「悪いなァ、ドルべよォ。俺の力になってくれや」

そう言うと、ドルべの腹から腕を引っこ抜くと、支えを失ったかのようにドルべは崩れ落ちる。

側に立つベクターの手には

「ベクター‼ てめぇ…‼」

「お前らコイツの洗脳を解いちまったのか? あーあー、洗脳されたままならコイツも幸せだっただろうによォ」

そう言うとベクターはドルべを踏み、嗤い始めた。

「その汚い足を退けなさい‼」

「あン? コイツはお前らの敵じゃねェか。何言ってやがる」

「違うわ」

ベクターの言葉に璃緒は真っ向から切り返す。

「ああ、違うな。ドルべは俺の仲間だ」

「仲間だァ?」

「そうだ。俺の掛け替えのない仲間だ」

そう言うとベクターはドルべから足を降ろし、俺を睨む。

「…その言い分だ。テメェ、やっぱり気に食わねぇ。お前の顔が、態度が、全てが俺をイライラさせる‼」

そう言ったところで、バイクのエンジン音が聞こえてくる。

 

「チッ、もう来やがったか。残りは何処に行きやがった…‼」

「待ちなさい‼」

璃緒がそう叫んで呼び止めるも、ベクターは何も言わずそのまま空間が裂けると、その中に消える。

「クソッ‼」

「ドルべ‼」

怒りのままに叫ぶと、璃緒の声が聞こえ振り向いてみれば、ドルべを起こそうとしていた。

「…2人共、無事…か?」

「ああ。お前が庇ってくれたおかげで無事だ」

「そうか…良かった」

「ドルべ、どうしてあんな真似を…」

「フッ…フフフッ…私は、誰かを守る為の盾、だからな」

そう言うと弱々しく笑みを浮かべる。

「ベクターは、おそらく…バリアン世界へ向かったはず…」

「バリアン世界へ?」

「ああ…ドン・サウザンドさえ、倒せば…バリアン世界は、敗北したも同然。九十九遊馬やアストラルは、それに気付いているはず…」

「‼ あの船か」

俺達がサルガッソや遺跡移動の為に乗っていた船。

あれならおそらく、バリアン世界へ行くこともできるはずだ。

ギラグやアリトも洗脳されてるんなら、ドン・サウザンドの命令に従って足止めくらいはしているかもしれねぇ。

 

「…凌牙。私を仲間だと、そう呼んだな」

「ああ」

「…まったく、甘い男だ。だが、その甘さは、悪くない」

そう言うとドルべは一度目を閉じ、俺達を…いや、俺達を通して2人を見つめる。

「…ナッシュ…メラグ…私は盾として、役目を果たせたか…?」

 

…ドルべ…

 

「…ああ。立派だった」

「ええ。後は私達に任せて」

「そう、か…」

それだけ残すとドルべを紅い光が包み始める。

やがて、その光はドルべを包み込むと、俺達の前で徳之助がそうだったように、光となって消え去った。

 

「………」

 

黙って空を見上げる俺達の前にバイクが止まる。

「今の光は⁉」

「…ドルべだ」

そう返すと、真月は苦虫を噛み潰したような表情をすると、顔を一度伏せる。

 

…ドルべ…‼

 

「許さねぇぞ、ベクター…‼」




いかがでしたでしょうか。
今過去ー未来もー

そんなわけで、考査終わるまで一時中断します。
2月4日には終わりますので、次回更新は2月5日以降になるかな?
それでは。

オマケ −vsドルべ ラストターン初期案−(会話のみ)
「俺は死者蘇生でドルべの墓地のオネストを蘇生‼ 効果で手札に加える‼ いくぞ、ドルべ‼ これがラストバトルだ‼」
「こい、神代凌牙‼」
「いけ、スカイ・ペガサス‼ グローリアス・ヘイローに攻撃‼」
「「ダメージ計算前にオネストを発動‼ 相手モンスターの攻撃力分を自分のモンスターに加える‼」」
「オネストの同時発動…‼」

…絵的には生えるんですけどね。

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