ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
シャーク&璃緒vsドルべ 5となっております。

テレビデオが動いたので、03年度の鋼の錬金術師を久しぶりに見ました。
色々見返して、思い出補正もあるんでしょうが、やっぱこっちの鋼が面白いなぁと。
そんな私の好きなキャラクターはフランク・アーチャー大佐。
終盤に色々と面白いことになった彼が私は大好きです。

それでは、どうぞ。


第136話

「璃緒…」

 

こちらを見る璃緒は姿形こそ俺のよく知るものだが、顔つきや醸し出す態度が明らかに異なっている。

「…じゃねぇな、誰だ」

「ーー私はメラグ。かつて、バリアン七皇の1人だった者」

バリアン七皇…それが璃緒の中にいた。

いや、璃緒だけじゃねぇ。

あの遺跡での記憶の通りなら、璃緒にそっくりだった奴がメラグ…ということはあの俺は。

「貴方の内にもナッシュはいる」

俺の思い至った思考を璃緒ーーメラグは言葉にする。

「でも、安心して。私も、そしておそらくナッシュも、今の貴方や璃緒を飲み込むつもりはないわ。今だって想定外のようなものでしかない」

「想定外だと?」

「そう…アビス・スプラッシュ、そしてクリスタル・ゼロ。あの2体が倒れたことで、痛みを感じたでしょう?」

「そういえば…」

たしかに、あの2体が破壊された時、俺も璃緒も痛みを感じた。

「あれは、貴方達が深い縁で結ばれていたことが原因」

「縁?」

俺の言葉にメラグは頷きで返す。

「そう、あのベクターとの戦いで貴方も見たはずよ。あの二神の姿も」

そう話すメラグの言葉に俺の脳裏にベクターの指示のままに力を振るうアビス・スプラッシュの姿、そしてそれを止める為に身を投げる璃緒と直後に現れたクリスタル・ゼロの姿がよぎる。

「まさか…」

「あの時点で、ナッシュの生まれ変わりーーつまり、貴方と私の生まれ変わりである璃緒は私達を通して二神と結ばれた。だからこそ、破壊された時に痛みを受けたの。璃緒は、結び付きが強くて、だからこそ貴方よりもダメージが大きかった。だから、私が表層に出て来てしまった」

あの2体と俺達の間にそんなことがあったなんて…

「待て、なら璃緒はどうなる」

「璃緒はーー」

 

「メラ、グ…」

メラグが口にしかけた言葉を遮るようにドルべが小さく口を開く。

「ドルべ…」

ドルべの言葉にメラグは返すも、その表情は暗い。

「ドルべ、こんな形で貴方ともう一度話すとは思わなかったわ」

「………」

「言いたいこともあるのでしょう。けど、まず私に話させて」

そう一言前置きを挟むとメラグは一度深呼吸をし、再びドルべへと顔を向けた。

 

「ドルべ、私は彼らとの歩みを違えるつもりはない」

「何…?」

「私は今璃緒が進む道を変えるつもりはないと言ったの。ドルべ、貴方は知らないでしょうけど…私もナッシュも一度は消滅する寸前まで追いやられたの」

消滅だと…?

「ナッシュがバリアン世界を統治し始めた時、多くのバリアン世界に住む者は歓迎したわ。けれど、それが気に入らない者もいた。誰かわかるかしら?」

「ベクター…か?」

「その通り」

あのベクターが俺の知る現在のままなら、ベクターがナッシュを嫌うのはわかる。

奴は自分を負かした奴を恨まずにはいられねぇはずだ。

「ある時、ベクターはナッシュを襲撃した。もちろん、ナッシュはベクターを返り討ちにしたわ。けれど、逃走の最中、私がベクターに捕らえられた。そのまま、ベクターは私を虚空へと叩き落とし、後を追うようにナッシュも飛び込んだ」

「消滅する手間まで行ったのはわかった。だが、それがどう俺達と繋がる?」

「…私達は消滅する寸前、こちらに投げ出された際アビス・スプラッシュに促されるまま、人の身体に入り再起を待つことにした。子どもが2人、事故に巻き込まれて生死の境を彷徨っていたから、入り込むのは容易だった」

まさか…や

「俺達の身体に入り込んだのか…?」

俺の言葉にメラグはただ無言で頷くのを見ると、膝から力が抜け、視界がグラっと揺れるのを感じた。

事故っていうのは多分、あのクラゲ野郎が親父の運転する車に激突した事故だ。

「なら、俺は…」

俺はあの時、既に…

「違う‼」

膝をつきかけたその瞬間、メラグが大声で叫んだ。

「たしかに私達はあの時貴方達の身体に入り込んだ。でも、それは貴方達の残った生命力を私達が後押ししただけに過ぎない。貴方はナッシュではない。神代璃緒の兄。神代凌牙よ」

「だとしても‼ お前達はいずれ俺達を呑み込んで外に出てくるつもりだったはずだ‼」

「その通りよ‼ 私もナッシュもそのつもりだった‼ けれど、そんな私の考えに変化が訪れた」

変化、だと…?

「真月零の登場よ」

「真月、だと…?」

「真月零…彼は性格こそ違えど容姿、声はベクターそのものだった。当然よね? 彼はベクターの隠れ蓑として生まれたのだから」

そうだ。

たしか、ベクターは本来真月はその為に俺達の知らねぇ別の場所から呼び出した存在だと言った。

「バリアンがこの世界へと進攻するだろうことはわかっていたわ。だから、ベクターがこちらに来たことも驚きはしなかった。でも、予想外の事態もあった」

「予想外の事態だと?」

「璃緒が彼を好きになり、付き合い始めたこと。私はベクターを出会いから今この瞬間に至るまで、ただの一度も背中を預けることのできる仲間だと思ったことはないわ。だからこそ、璃緒がベクターの隠れ蓑でしかなかった彼を好きになったことに驚いた。璃緒は日を追う毎にどんどん彼を好意的に見るようになっていった。この辺りは貴方も知っているんじゃないかしら?」

「ああ…」

 

たしかに。

璃緒は1日毎に真月のことを話す回数が増えていった。

毎日相手をしていたからその辺りはよく覚えている。

「私は2人を見ている内に復活よりもこの2人を見守りたいと、そう思えるようになった。その為に力を貸したいと。不思議なものね。私は復活だけを考えて璃緒の身体に入り込んだというのに」

そう言うとメラグは薄っすらと笑みを浮かべた。

「でも、私の生きた時代は平和じゃなかった。私のいた国は比較的平和ではあったし、充実もしていたけれど…寝ても覚めてもあっちこっちで国同士の小競り合い。そんな中、一体どれだけの人間が恋をし、結ばれたか…そう思えばこそ、私は私自身の意思で2人の仲を裂きたくはない。そう思ったのよ。それに、私も彼のことは気に入ったしね」

そう言うと璃緒がそうするようにイタズラっぽい笑みを浮かべた。

 

「だから、私は璃緒の選んだ道を私の意思で違えるつもりはないわ。邪魔をするのなら、誰であっても退いてもらう」

そう言うと俺達を睨むドルべへと顔を向ける。

「…話はそれだけか? メラグの真似をしたところで、私の闘志は折れはしない。私の意思はドン・サウザンドと共にある」

「…そう。なら、まずは私が誰か知ってもらうところから始めましょう。私のターン、ドロー‼ リバースカードオープン‼リビングデッドの呼び声‼ きなさい、旧神ノーデン‼」

 

旧神ノーデン

☆4 水属性 天使族

ATK 2000

DFE 2200

SモンスターまたはXモンスター+SモンスターまたはXモンスター

このカードが特殊召喚に成功した時、自分の墓地のレベル4以下のモンスター1体を対象として発動できる

そのモンスターを効果を無効にして特殊召喚する

このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される

 

フィールドに突如大波が襲う。

それと同時に、何処からともなく馬の嘶きが聞こえると、波を裂くようにして巨大な貝の上に乗った老人が馬を引き、槍を片手に現れた。

 

「旧神ノーデンの効果により、墓地のセイバーシャークを特殊召喚する。見せてあげるわ、ドルべ‼ 私の決意の証を‼ 私は2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ 来なさい、全てを凍てつかせる氷結の淑女‼ No.103 神葬令嬢ラグナ・ゼロ‼」

 

No.103 神葬令嬢ラグナ・ゼロ

★4 水属性 天使族

ATK 2400

DFE 1200

レベル4モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、相手フィールド上に表側攻撃表示で存在する、元々の攻撃力と異なる攻撃力を持つモンスター1体を選択して発動できる

選択したモンスターを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする

この効果は相手ターンでも発動できる

 

フィールドの2体のモンスターがそれぞれ青い球体へと姿を変えながら空高く昇っていき、紅い大きな爆発を起こした。

すると、空から白と真紅のドレスを身に纏った紫色の肌をした女性が1人現れる。

頭部の右側には自身がナンバーズである証の103の数字がある。

「オーバーハンドレッドナンバーズ…‼」

「これが私のオーバーハンドレッドナンバーズよ。さらに、マジック・プランターを発動‼ フィールドのリビングデッドの呼び声を墓地に送り、2枚ドロー‼ 使わせてもらうわよ?」

「ああ」

「ハンマー・シャークの効果を発動‼ ハンマー・シャークのレベルを1つ下げて、手札のボルト・ペンギンを特殊召喚する‼」

 

ハンマー・シャーク ☆4→3

 

これでレベル3が2体。

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ きなさい、No.17 リバイス・ドラゴン‼」

2体のモンスターが球体へと姿を変えると、ついさっき起こった爆発と同じ爆発が起こる。

すると、そこには何度も見た青いドラゴンの姿があった。

「リバイス・ドラゴンの効果発動‼ ORUを1つ取り除き、攻撃力を500ポイントアップする‼」

 

No.17 リバイス・ドラゴン 2200→2700

 

「いくわよ、ドルべ‼ 私はクリスタル・ゼロでグローリアス・ヘイローを攻撃‼」

グローリアス・ヘイローの攻撃力はレミューリアの効果を受けて2600。

この攻撃力を通せば…‼

「ドン・サウザンドの玉座の効果発動‼ このカードを墓地に送り、ナンバーズへの攻撃を無効にする‼」

クリスタル・ゼロが振り下ろした剣は当たる寸前、突然現れた玉座が盾となりグローリアス・ヘイローを守った。

「くっ…‼」

「まだだ‼」

そうドルべが叫ぶと、グローリアス・ヘイローが光を放ち始める。

「なんだ⁉」

「ドン・サウザンドの玉座の効果はこれで終わりではない‼ 攻撃したナンバーズを素材に同じ数字のカオスナンバーズをエクシーズ召喚する‼」

「なんだと⁉」

この為に転生の予言でノーブル・デーモンを墓地から回収したのか‼

「私はグローリアス・ヘイローでオーバーレイネットワークを再構築‼カオス・エクシーズ・チェンジ‼ 現れろ、CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン‼」

フィールドに再び鈍く輝く槍を持った紅と紫のモンスターが現れる。

「くそ、また来やがった…‼」

しかも、よりにもよってグローリアス・ヘイローがユニットになっている。

あれが外れたらまた1500ポイントのダメージを受けることになる。

「…バトルは終了するわ。カードを1枚伏せてターンエンド‼」

 

璃緒(メラグ) LP500

手札 0

モンスター 2

No.103 神葬令嬢ラグナ・ゼロ 攻撃

No.17 リバイス・ドラゴン 攻撃

魔法・罠 2

⁇?

忘却の都 レミューリア

 

「私のターン、ドロー‼ ノーブル・デーモンの効果発動‼ CORUを1つ取り除き、ラグナ・ゼロを選択‼ 攻撃力を0にし、効果を無効にする‼」

 

No.103 神葬令嬢ラグナ・ゼロ 2600→200

 

ノーブル・デーモンの槍がラグナ・ゼロの曲刀を弾き飛ばすと、その曲刀を握り、ドレスの中にあるであろう両足へと突き刺した。

「ラグナ・ゼロ‼」

「ぐっ…‼」

「ドルべ…⁉」

突然、ドルべが頭を押さえて膝をつく。

なんだ…?

「いや、今はそんなことより…‼」

ノーブル・デーモンが光を放ち始めやがった…‼

「っ…今度こそ、これで終わりだ‼ やれ、ノーブル・デーモン‼」

ドルべの声に応えるようにノーブル・デーモンから放たれた光が俺達へと襲いかかる。

「残念だけれど、そのダメージは通らないわ‼ リバースカードオープン‼ ダメージ・ポラリライザー‼」

 

ダメージ・ポラリライザー

カウンター罠

ダメージを与える効果が発動した時に発動する事ができる

その発動と効果を無効にし、お互いのプレイヤーはカードを1枚ドローする

 

「‼」

光が俺達を呑み込む瞬間、俺達の前に現れた盾が俺達の身を守った。

光が盾に割られ、左右へと流れていく。

「ダメージ・ポラリライザーの効果で私は1枚ドローする。さあ、ドルべ‼ ドローしなさい‼」

「…ドロー‼」

ドルべがドローすると、メラグが指をデッキトップに乗せる。

すると、手がドルべがそうしたように紅い光が灯り始める。

「…バリアンズ・カオス・ドロー‼」

そのまま、勢いよく紅い軌跡を残してカードをドローした。

「ぅ…っ」

「おい、どうした」

「っ…なんでもないわ。璃緒の身体だから、少し負担があっただけ。問題ないわ」

「今更何をドローしたところで、私の勝利は揺るがない‼」

たしかに。

今は奴のターン。カードをドローしたところで発動もできなけりゃ、セットもできねぇ。

ラグナ・ゼロの攻撃力は200。

2800ポイントものダメージを受け止めるだけのライフは俺達には残ってねぇ。

「やれ、ノーブル・デーモン‼」

ノーブル・デーモンが槍を振り回すと腰を低く構え、ラグナ・ゼロへと襲いかかってーー⁉

「何⁉」

攻撃対象はーーリバイス・ドラゴンだと⁉

「ダメージ計算前にオネストを発動する‼」

 

オネスト(準制限カード)

☆4 光属性 天使族

ATK 1100

DFE 1900

自分メインフェイズに発動できる

フィールドの表側表示のこのカードを手札に戻す

自分の光属性モンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時からダメージ計算前までに、このカードを手札から墓地へ送って発動できる

そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする

 

CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン 3000→5700

 

「攻撃力5700…‼」

「終わりだ‼」

「いいえ、まだ終わりじゃないわ、ドルべ‼ 私はダメージ計算時、クリボーを発動‼」

 

クリボー

☆1 闇属性 悪魔族

ATK 300

DFE 200

相手ターンの戦闘ダメージ計算時、このカードを手札から捨てて発動できる

その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる

 

リバイス・ドラゴンがノーブル・デーモンの槍に貫かれ、悲鳴のような咆哮を上げて倒れると、その槍はそのままメラグへと向かう。

だが、その槍は当たる直前で何処からともなく現れた小さな悪魔が大量に増殖し、攻撃を防いだ。

「クッ、クリボー…だと…‼」

「…ドルべ。何故、ラグナ・ゼロを狙わなかったの? ラグナ・ゼロを狙えば、オネストを発動しなくても倒せたはず」

「…どちらでも結果は変わらない」

「いいえ、違うわ‼ 貴方はラグナ・ゼロを攻撃することを避けた‼ それは貴方の意思よ‼ ドン・サウザンドと共になどない貴方自身の意思‼」

「私はカードを2枚伏せてターンエンド‼」

 

ドルべ LP450

手札 2

モンスター 2

CNo.102 光堕天使ノーブル・デーモン 攻撃

光天使スローネ 守備

魔法・罠 2

⁇?×2

 

「何を言われようとも、私にそんな戯れ言は届かない‼ さあ、神代凌牙‼ お前のターンだ‼」

そう怒りを滲ませながらドルべは叫ぶ。

その姿は、何処か無理をしているようにも見える。

 

「…凌牙」

「なんだ」

「…こんなことを言うのはおかしな話かもしれないけれど…ドルべを助けて」

「お前…わかって言ってるのか? ドルべは俺達の敵だ。そこまでする義理はねぇ」

「わかってる。けれど、ドルべは多分、完全に洗脳されたわけじゃない」

「…だろうな。万全を期すならラグナ・ゼロを狙ったはずだ」

「ええ…ドルべが洗脳から解き放つことができるのなら、私はドルべを助けたい。けれど、私じゃドルべには届かなかった。お願い、凌牙」

 

………

 

「…ライフは残り500しかねぇ。圧倒的に不利なこの状況で奴を助けることなんてできるわけがねぇ」

そう言うとメラグは眉を僅かに下げる。

ったく…

「『1人ならな』」

その言葉にメラグは驚いたように俺へと顔を向ける。

忙しい奴だな。まあ、その辺りは璃緒に似てるか。

「凌牙…貴方、まさか」

「1つ教えろ。お前、何処からクリボーを出した? 璃緒のデッキにクリボーのカードなんて無かったはずだ」

璃緒はデッキのアドバイスを俺に振ることがある。

最近見た中に、クリボーなんて無かった。

もちろん、璃緒が自分で入れた可能性もある。

けど、言っちゃあ悪いがクリボーよりもいいカードはある。

見た目をとったと言えばそこまでだが、バリアンとの戦いが近かったことは璃緒も承知していた。

なら、何処かに仕込んでいた?

…いや、璃緒はそこまで馬鹿な奴でもねぇ。

第一、デッキからのドローでなけりゃデュエルディスクに弾かれるようになっている。

きちんと発動したということは、正真正銘デッキからのドローで手札に加わったということ。

「バリアンズ・カオス・ドローで手札に加えたのよ」

「ドルべもやってやがったな。なんだ、それは」

「カードの創造、と言えばわかるかしら?」

「カードの…創造だと…? そんなこと起こるわけが」

「ゼアル」

メラグが突然、その言葉を口にする。

「九十九遊馬とアストラルが合わさった姿の時、彼らも同じことをしていたわ」

 

 

 

ーシャイニングドロー‼ー

 

 

 

「‼ まさか、あれが…⁉」

「そうよ。バリアンも同じことができる。消耗が激しいから、1度のデュエルでできるのは1度だけだけれどね」

「………」

今ある手札を見下ろして見る。

今の状態なら、なんとか1度だけならエクシーズ召喚ができそうか。

…1度のデュエルで1度だけできる裏技のような力…

「なら、決まりだ」

「…無理よ。貴方の中にナッシュはいるけれど、ナッシュではない。バリアンではない貴方にバリアンズ・カオス・ドローは…」

「ああ、そうだ。俺は神代凌牙だ。でも、俺の内側にはナッシュがいるんだろ? なら、簡単だ」

「…何をするつもり?」

「俺がナッシュの力を引きずり出す」

バリアンであるナッシュの力があれば、バリアンズ・カオス・ドローができる。

ドローしたいカードは既に決めてある。

やるしかねぇ。

 

「力を貸せ。俺が自分でやる」

「…ダメよ。第一、入ったら、私は力を貸すことはできない。それはつまり、戻れないかもしれないということなのよ?」

「俺がそう簡単にやられるかよ。俺はシャーク。一度食らいつけば、離すことは決してしない。ナッシュの力を引きずり出したら帰ってくる」

俺の言葉にメラグは顔を伏せたが、すぐにまた顔を上げてこちらに手を伸ばした。

「貴方にバリアンの力を流し込むわ。手を握って」

「ああ」

…そういや、璃緒の手を引いて昔はよく歩いたっけか。

いつの間にかデカくなったもんだ。

「何をしている」

「お前を倒す為の作戦ってやつだ」

「いいわね?」

「ああ。始めてくれ」

そう言うとメラグの腕から俺の身体へと何かが流れ込み始めた。

「っ…‼」

身体が熱い。

流れる血液が全て沸騰したみてぇだ。

同時に、視界が意識を失うかのように段々と暗くなっていく。

 

「凌牙。ナッシュによろしく」

 

その言葉を最後に、俺の視界から光は消えた。




いかがでしたでしょうか?

長期休暇のサボりグセがついていかん。
なんとか安定させたい…んですが、テストが近付いておりまして。
手前勝手ながら、終わるまでは微妙です。

それでは。

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