ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
vs七皇 導入2となっております。

最近寒い日が続きますが、皆さん大丈夫ですか?
私の家では私以外が風邪になりました。なのに私は風邪をひかない不具合。
ヒント:馬鹿

それでは、どうぞ。


第124話

運良く近くに停車されていたトラックの荷台と運転席に転がるようにして乗ると猛スピードでその場を離れ、商業区へと入っていく。

荷台に人を乗せるという、人に見られようものなら止められるであろう光景を止める人はいない。

何処かへと避難した人もいるのだろうが…おそらく、大勢の人が人柱となってしまったのだろう。

 

「みんな無事か‼」

「ああ‼」

とはいえ、遊馬はハートランドとの戦いで消耗し、カイトはグロッキー…シャークやⅣをはじめ、戦力としては未だ申し分ないと言えなくはないが、しかし決して油断できるような状況ではない。

奴らは数の暴力に訴えてきた。例え、1人1人が大したことがないとしてもこの人数で抑えつつ、ベクター達と事を構えることができるとは…

 

「‼ 来たぞ‼」

シャークの叫び声に振り向くと疾走するバイクの集団と共にビルからビルへと異様なスピードで飛び移る黄色い影が目に入る。

あれは…

「ミザエルか…‼」

 

 

 

「見付けたぞ‼」

私の斜め前を走る軽トラックの荷台に真月のオレンジ髪が視界に写る。

真月、我が2人目の好敵手…‼ 奴らに先を越されてなるものか。

「私の最初の相手はお前だ‼」

そう叫び、大きく踏み込み跳躍した瞬間

 

「うおりゃあああ‼」

そう叫ぶ声と共に赤い髪の小娘の乗った砲身の付いた小型の何かから何発もの砲弾が飛んでくる。

「何⁉」

空中で身を守っては反動で地面へと落ちてしまうのは必然‼ 致し方ないが…‼

「ハッ‼」

一先ず車は後回しにし、近くの屋上へ着地し障壁を張り砲弾から身を守る。

「何奴‼」

「俺は…アンナだ‼ この身に賭けて俺の遊馬に指一本触れさせねぇ‼」

爆煙の向こうで着地した小娘が私の問いかけに答える。

俺の遊馬…なるほど、九十九遊馬の仲間の1人というわけか。

「小娘が現れたところで容赦はせんぞ‼」

「容赦はしねぇだと? それはこっちの」

 

「こちらのセリフだ‼」

 

小娘ーーアンナの言葉に被せるように男の声が聞こえる。

「誰だ‼ 何処にいる‼」

「ここだ‼」

男の声の方向に顔を向けるとここよりも高いビルの屋上に青いマントと赤い覆面を身につけた男が立っていた。

「今日も正義の大盤振る舞い‼ エスパーロビン、仲間の危機に只今参上‼」

 

 

 

「アンナ⁉」

「それにエスパーロビンも‼」

「兄様‼」

「ああ…どうやら、世界の危機に決闘者達も立ち上がったようだ」

「言ってる場合か‼ 来るぞ‼」

Vの言葉にⅣが叫んで返す。

たしかに、足止めを食らったミザエルが離脱したとはいえ、小回りのきくバイクと荷台に大勢の人を乗せたトラックでは…‼

「‼ あそこに誰か立っているぞ‼」

Ⅳが前方を指さす。

そこには赤いジャケットを着た二色の栗色の髪の男と緑のベレー帽をかぶった赤い髪の俺達と同じ学校の学生服の男がいる。

「奴らもバリアンの手先か⁉」

「いや、待ってくれ‼ あの2人は…片桐プロに有賀さん…⁉」

俺達を乗せたトラックがそのまま2人の脇を通り抜ける。

「なんだってあの2人が…‼」

ともかく、Dパッドで連絡を…‼

 

コール音が鳴ること数回。片桐プロと連絡が繋がる。

[やあ、真月君]

「なんでそこに‼ 巻き込まれないうちに早く逃げてください‼」

[うん。最初は僕も有賀君もそうしようかと思っていたんだけどね。 …ふと、真月君。君のことがよぎったんだ。よく覚えてはいないけど、君は豹変してしまった僕と戦って助けてくれただろう? そう思ったらさ、カッコ悪いなと思ってね]

「カッコ悪いって…‼」

あの時の俺は、助けるだなんて思っちゃ…

[大丈夫さ。僕だって以前よりも強くなった自負はある]

[真月君]

「有賀さん‼」

[真月君、君には君にしかできないことがあるはずです。ほら、漫画的に言うとアレです。『ここは俺に任せて先に行け』って場面ですよ]

そう話す有賀の目は軽い言葉とは裏腹に強い意思を感じる。

彼らは俺には推し量れない程の決意を既に済ませているのだろう。

 

「…わかりました」

[おっと、それじゃあ真月君。 …頑張って]

「はい。片桐プロと有賀さんも」

それだけ言うと通信を切り、後ろを振り向いた。

2人の姿は既にかなり小さくなっている。

「…零君」

「…大丈夫さ。きっと大丈夫」

心配気な璃緒さんに俺はそう答えることしかできない。

 

 

 

「大丈夫かい? 有賀君」

真月との通信を終了した片桐は有賀に声をかける。

「………」

無言で返す有賀の顔色は優れない。

じんわりと汗をかいており、足が少し震えている。

「…怖いですよ。すごく怖い」

「でも、逃げないんだね」

「ええ」

そう返す目は鋭い。

きっと、誰も有賀の意思を折ることはできないだろう。

そう感じさせるだけの気迫を有賀は漲らせていた。

 

「…そういえば、片桐プロ」

「何かな?」

「どうして『エンジョイデュエル』なんですか?」

「ああ…僕が昔出会った決闘者がね、そういう人だったんだ。その人は今や人口的にも少ない融合使いだったんだけど…ハハハ、コテンパンにやられちゃってね。けど、僕が楽しくなるくらい本当に楽しそうにデュエルをする人だったんだ。えーっと…なんて言っていたかな…たしか、ガッチョ? とかなんとか」

「ガッチョ?」

「まあ、そんなことがあってね。僕もあんな風にデュエルがしたいと思った。だから、どんな時でもエンジョイデュエルさ。もちろん、今もね」

 

片桐がそう零すとバイクのエンジン音が大きくなってくる。

音は1台や2台ではなく、見えるだけでも7、8台はおり、あっという間に視界には虚ろな決闘者で埋まる。

「さあ、エンジョイーー」

 

 

 

「くそっ‼」

商業区の外れ。

その屋上に降り立ったギラグは未だ見付からない遊馬達にいきり立っていた。

「あの煙幕が無けりゃあ押し潰せたものを…‼」

あの人数に加えて現状揃いうるバリアンの戦士は全員揃っていた。

にも関わらず、あの煙幕で奴らにまんまと逃げられた。

「…ともかく、こうしてても始まらねぇ…」

そう呟き、その場を離れようとした瞬間、1枚のカードが何処からともなく現れ、ギラグの足元に突き刺さった。

カードには『風魔手裏剣』と書かれている。

「誰だ‼」

ギラグの叫びに応えるかのように、2人組の男が何処からともなく現れる。

 

「ここから先へは通さんぞ」

「覚悟するんだな」

 

その2人の声は先程煙幕を放った声と同一のものであり、途端にギラグに苛立ちが募る。

「お前ら…さっきの煙幕の奴らだな?」

「我が弟子の後を追いたくば、ワシらを倒してからにしろ」

「面白ぇ‼ 望み通りぶっ倒してやる‼」

「ゆくぞーー」

 

 

 

「くっ、何処へ行きやがったんだ⁉」

場所は変わって野球場付近。

移動し続けていたアリトが立ち止まり、周囲を見回し遊馬達を探すも動いている車の姿はない。

 

「‼」

カァンッ‼という金属のもので何かを打ったような音がし、振り向くと飛んできた野球ボールを掴んで止める。

「ナイスキャッチ」

アリトの視線の先には浅黒い肌のしたオレンジ髪のまるで猛る獣が服を着たかのような男と紫と黒の不思議な髪色をしたスーツを着た女性がいる。

「貴様ら、どういうつもりだ‼」

「テメェの行く手を阻むんだよ‼」

「私達に付き合ってもらおうか‼」

女性の言葉にニヤリと不敵な笑みを浮かべるとバットを捨ててデュエルディスクを構える。

「いくぜーー」

 

「「「「「「デュエル‼」」」」」」




いかがでしたでしょうか?

片桐プロをコテンパンに打ちのめした融合使い…一体誰なんだ(棒)
それでは。

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