ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
閑話 ラストになっております。

これが終わればいよいよラストも目前。
最後まで頑張ります。

それでは、どうぞ。


第118話

「凌牙…‼」

 

嫌な予感に突き動かされるままに自宅へと急ぐ私の視界に凌牙の乗るバイクの姿が映る。

無人のバイクには今朝渡した荷物の姿もあり、これが凌牙のものである何よりの証明でもある。

「璃緒さん‼」

荷物を片手に零君が私に追いつく。

 

「これは…シャークの…?」

「零君‼ 凌牙を探すのを手伝って‼」

「あ、ああ…わかった」

そう零君が返事をしたところで

 

「ぐあああああ…っ‼」

 

そんな叫び声が聞こえてきた。

今の声はーー

「凌牙⁉」

「璃緒さん、こっちだ‼」

走り出した零君の後を追って私も続く。

迂闊だった…‼

私がバリアンの刺客に襲われたということは、凌牙も…いや、みんな襲われる可能性があった。

 

今の声は間違いなく凌牙のものだった。

ということはーー‼

 

「凌牙‼」

門を曲がった向こう、広い公園には紅い壁を隔てた向こうに地面に倒れ伏す凌牙と凌牙を見下ろすーー

 

「バリアン…⁉」

 

デュエルディスクを構えるバリアンの1人ーードルべの姿があった。

 

 

 

「凌牙‼」

「ぐっ…‼」

壁の向こうにシャークの姿が見える。

「シャーク…ッ、ドルべ‼ これがお前の選択か‼」

「…何を馬鹿なことを。私はバリアン七皇。貴様達からナンバーズを回収し、バリアン世界を救い、人間世界を滅ぼすことこそ我が使命」

「なん…⁉」

 

ドルべから放たれた言葉に俺は思わずたじろいだ。

俺の知るドルべは敵対してはいても、俺達のことや自身の記憶のことに理解を示すような奴だった。

少なくとも『滅ぼす』なんて言葉を使うような奴ではない。

 

「………」

どうもおかしい。

だが、とりあえずDゲイザーで現場を確認するしかない。

 

ドルべ LP2400

手札 1

モンスター 1

No.32 海咬龍シャーク・ドレイク

魔法・罠 0

 

シャーク LP 300

手札 0

モンスター 0

魔法・罠 1

⁇?

 

「なっ…⁉」

隣から息を飲む璃緒の声が聞こえてくる。

そう言いたくなる理由もわかる。

璃緒がしていなければ、俺がそうしていただろう。

 

冷たい目でシャークを見下ろすドルべのフィールドには黒いシャーク・ドレイクがいた。

「シャーク・ドレイク…」

何故、シャーク・ドレイクがドルべの手にある?

シャーク・ドレイクはシャークのナンバーズのはず…

それにあんなに黒くはーー

 

「ぐっ…‼」

シャークはフラフラと立ち上がる。

「まだ、立ち上がるのか」

「俺は負けるつもりはねぇ…‼」

「何を拒む理由がある? 君はナーー」

「黙れ‼」

ドルべの言葉をシャークが遮るようにして叫ぶ。

 

「バリアンでも無ければナッシュでもねぇ‼ 俺は、俺だ…‼」

「………」

「いくぞ‼ 俺のターン、ドロー‼」

ドローカードは…

 

「死者蘇生を発動‼ 蘇れ、バハムート・シャーク‼」

シャークのフィールドに低い唸り声を上げながら青と白の二足歩行のサメが現れる。

 

「バハムート・シャーク…強力なモンスターだが、そもそも攻撃力が足りないな。そんなもの何の役に立つ」

「こうするだけだ‼ リバースカードオープン‼ エクシーズ・シフト‼」

 

エクシーズ・シフト

通常魔法

自分フィールド上のエクシーズモンスター1体をリリースして発動できる

リリースしたモンスターと同じ種族・属性・ランクでカード名が異なるモンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚し、このカードを下に重ねてエクシーズ素材とする

この効果で特殊召喚したモンスターは、エンドフェイズ時に墓地へ送られる

「エクシーズ・シフト」は1ターンに1枚しか発動できない

 

「バハムート・シャークをリリースし、墓地のシャーク・ドレイクを特殊召喚する‼ 蘇れ、シャーク・ドレイク‼」

バハムート・シャークが大きく咆哮を上げ、光の塊となり開かれた穴へと飛び込んでいくと穴から再び光の塊が現れる。

その光は形を作っていくと弾け飛び、シャーク・ドレイクの姿を現した。

 

「シャーク・ドレイク…‼」

シャークも墓地からドレイクを引っ張り出してきた。

紫色のシャーク・ドレイクと黒いシャーク・ドレイクが互いに紅い瞳を光らせ、同じ唸り声を上げながらギラつかせる。

「2体のシャーク・ドレイク…」

「これは一体…」

どういうことなんだ?

 

「シャーク・ドレイク1体でオーバーレイネットワークを再構築‼カオス・エクシーズ・チェンジ‼ 来い、CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク・バイス‼」

爆発と共にシャーク・ドレイクを越える白い大きな姿が現れる。

ヒレを大きく広げると唸り声をあげる。

「シャーク・ドレイク・バイスの効果発動‼ ORUを1つ取り除き、墓地のバハムート・シャークを除外しお前のフィールドのシャーク・ドレイクの攻撃力を0にする‼」

 

No.32 海咬龍シャーク・ドレイク 2800→0

 

「くっ…‼」

「やれ、シャーク・ドレイク・バイス‼ 紛い物の、シャーク・ドレイクを破壊しろ‼」

「ぬっ…ぐおおおおっ‼」

 

ドルべ LP2400→0

 

「くっ…‼」

終了と共に紅いフィールドが消え去るとシャークは膝をついた。

「凌牙‼」

璃緒が駆け寄り、シャークの様子を見る。

しかし、シャークがここまで追い詰められるとは…

「所詮、紛い物は紛い物に過ぎないということか」

そう言ったドルべの手にあったカードが紅い光になるとそのまま弾けて消えた。

「紛い物…?」

「フッ…まるで、お前のことのようだな。真月」

そう言うとドルべの顔が僅かに歪む。

…コイツ…

 

「紛い物なんかじゃない‼」

 

「‼」

「…璃緒さん」

「零君は紛い物なんかじゃない。零君の気持ちは零君のもの。ベクターの紛い物なんかじゃない」

璃緒の剣幕にその場が一度静まりかえる。

「…ナッシュ、メラグ。君達がそちら側に立つというならそれもいい。私のやるべきことは既に終わった」

そう言うと1枚のカードを取り出し、裏返した。

そのカードはーー

 

「冥界龍 ドラゴネクロ…⁉」

「真月、お前の部屋から拝借した。強力なカードのようじゃないか」

「そのカードを返せ‼」

そう叫び俺がドルべに近付こうとすると強烈な光が放たれた。

「くっ…‼」

「このカードは貰っていく。我らが神の為にな」

「待て…‼」

そう叫ぶも強い光を前にそれ以上踏み込めず、腕で目を守っていると光が消え去った。

そこに既にドルべの姿はなく、残されたのは俺とシャークと璃緒だけだ。

 

「…大丈夫か、真月」

「ああ…だが」

ドラゴネクロを奪われてしまった。

あのモンスターはナンバーズとはまた違う…おそらくはシンクロ寄りであろうモンスター。

何が起こるかわからない。

 

それに、ドルべのあの言動は腑に落ちない。

…あれは本当にドルべだったのか?




いかがでしたでしょうか?

裏話やらデッキレシピやらを例によって活動報告の方に載せていますのでよければそちらもどうぞ。
それでは。

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