ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
璃緒vs男 3となっております。

トリシューラが手に入りました。 …シンクロの方の。
こっちが制限以上になるなんてまあ無いでしょうし、そもそも3枚持ってるから使わないんだよなぁ。

それでは、どうぞ。


第117話

遺跡のナンバーズのおかげでライフは負けてはいるが、戦況は璃緒に傾きつつある。

このまま押し切ることができれば、璃緒の勝利だが…相手はナンバーズ持ちのバリアンの刺客。

楽に勝てる相手ではないだろう。

 

「俺のターン、ドロー‼ …いいカードを引いたぜ。なあ、オイ‼」

男はドローカードを見ると璃緒にそんなことを喚く。

何を引いたんだ…?

「金華猫を召喚‼」

 

金華猫

スピリットモンスター

☆1 闇属性 獣族

ATK 400

DFE 200

このカードは特殊召喚できない

召喚・リバースしたターンのエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る

このカードが召喚・リバースした時、自分の墓地からレベル1モンスター1体を選択して特殊召喚できる

このカードがフィールド上から離れた時、この効果で特殊召喚したモンスターをゲームから除外する

 

男のフィールドに白い猫が一匹現れる。

その猫の足下から伸びる大きな猫の影がこの猫がただの猫ではないことの何よりの証明である。

「金華猫の効果発動‼ 墓地からホワイト・ダストンを特殊召喚‼ さらに地獄の暴走召喚を発動‼ ホワイト・ダストンを選択し、デッキと墓地からホワイト・ダストンを2体特殊召喚する‼」

「私はグリーン・ダストンを選択する。デッキに同名カードは無いから特殊召喚はできない」

男のフィールドにレベル1が4体揃った。

…エクシーズ召喚は確実だとして、一体何をするつもりだ?

 

「俺は2体のモンスターでそれぞれ、オーバーレイネットワークを構築‼エクシーズ召喚‼ 来い、No.13 ケインズ・デビル‼ No.31 アベルズ・デビル‼」

 

No.13 ケインズ・デビル

★1 闇属性 悪魔族

ATK 500

DFE 500

レベル1モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる

相手フィールド上のモンスターは、全て表側攻撃表示になり、このターン攻撃可能な場合このカードを攻撃しなければならない

この効果は相手ターンでも発動できる

また、自分フィールド上に「No.31 アベルズ・デビル」が存在する限り、以下の効果を得る

・エクシーズ素材を持っているこのカードは戦闘及び効果では破壊されない

・このカードへの攻撃によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける

 

No.31 アベルズ・デビル

★1 闇属性 悪魔族

ATK 500

DFE 500

レベル1モンスター×2

1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材をつ取り除いて発動できる

相手フィールド上のモンスターは、全て表側攻撃表示になり、このターン攻撃可能な場合このカードを攻撃しなければならない

この効果は相手ターンでも発動できる

また、自分フィールド上に「No.13 ケインズ・デビル」が存在する限り、以下の効果を得る

・エクシーズ素材を持っているこのカードは戦闘及び効果では破壊されない

・このカードへの攻撃によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける

 

男のフィールドに細部は微妙に異なるものの、似た形状の張り付け拷問器具が現れる。

「ナンバーズ…‼」

「それも2体同時に…‼」

「これでお前は終わりだ‼ ターンエンド‼」

 

男 LP2900

手札 0

モンスター 2

No.13 ケインズ・デビル 攻撃

No.31 アベルズ・デビル 攻撃

魔法・罠 0

 

「私のターン、ドロー‼」

「璃緒さん、相手はわざわざ攻撃表示で晒してきたナンバーズだ。油断はできない」

「ええ…」

「そんなにコイツの効果が気になるか? なら、教えてやろう。ケインズ・デビルの効果発動‼ ORUを1つ取り除き、相手モンスターを攻撃表示に変更‼ このターン、攻撃可能なモンスターは攻撃しなければならない‼ そして、アベルズ・デビルがいる限り、ケインズ・デビルが発生させた戦闘ダメージはお前が受ける‼」

バトルマニアのことといい…やはり、相手は攻撃を強要するデッキか。

しかし…

「…発動タイミングが間違っています。今なら、フィールドにいるモンスターを取り除けばかわせてしまいます」

その通り。

発動するならメインフェイズ終了時に行うべき効果だ。

今のタイミングでは璃緒の言う通り、回避されてしまう。

 

「残念だったな‼ アベルズ・デビルの効果も同じだ‼」

「何…⁉」

「つまり、ケインズ・デビルとアベルズ・デビル。2体がフィールドにいる限り、俺が戦闘ダメージを受けねぇってわけだ‼ さあ、足掻いてもらおうか‼」

 

璃緒のライフは残り2000。

クリスタル・ゼロの効果で自身の攻撃力を1100まで下げればライフは900残る。

万が一、次のターン奴が悪魔族を2体並べた上でキングゴブリンを召喚した場合、璃緒に成す術はない。

…どうする。

 

 

 

「くっ…」

今の私の手札にはあの2体の拷問器具を突破できそうなカードはない。

…ここは賭けにでるしかーー

 

ー待ちなさいー

 

「………」

「? 璃緒さん?」

…零君や男には聞こえなかったらしい。

でも、今のは…?

そう考えていた次の瞬間、世界が止まった。

飛んでいた葉はそのまま止まり、零君も男もピクリとも動かない。

「これは…⁉」

 

「こっちよ」

 

声が聞こえた方向へと視線を向けると私の目の前に私によく似た存在がいる。

 

「…こうして顔を合わせるのは初めてね」

「貴方はあの遺跡の…」

「ええ。貴方があまりにも不甲斐ない闘いをしていたから来たわ」

「なっ…」

「当然でしょう? 貴方はまだ力を引き出せていないのだから」

 

力を引き出せていない…?

 

「どういうこと?」

「貴方の兄…ええと、神代凌牙だったかしら? 彼がやっていたでしょう?」

「凌牙が?」

凌牙がしていたこと…

 

私がそうやって凌牙のことを思い出そうとしていると

「ああもう、色々時間が足りないの。借りるわよ」

そう目の前の私が言うと私の意識が遠退いていった。

 

 

 

「………」

「…璃緒さん?」

璃緒が顔を伏せたまま黙り込んでしまった。

一体どうしたんだ…?

 

「ふぅ…」

顔を上げた璃緒は息を吐くとそのまま顔や手を開いたり閉じたりし始める。

「うまくいったみたいね」

 

うまくいった?

 

「さて、それじゃああまり時間も無いし、『私』が煩くなる前に済ませましょう」

「ああ? 何言ってやがる」

「このターンで終わらせると言っているのよ」

このターンで? 何か起死回生の一手があるのか?

「お前、状況が理解できてないのか? お前が自爆する以外、このターンで終わることはねぇ‼」

「いいえ。私は勝つわ。負けるのは貴方」

そう言うと璃緒はチラッとこちらに視線を向けると男へと視線を戻した。

 

「私はクリスタル・ゼロでオーバーレイネットワークを構築‼」

「何⁉」

大きく跳躍したクリスタル・ゼロが眩い光を放ち始める。

 

エクシーズモンスターでエクシーズ召喚…

RUMもそうだし、俺の持つセイクリッドトレミス M7なんかもその1枚だ。

だが…璃緒は何か持っているのか?

 

「フルアーマーエクシーズチェンジ‼ その矛で全てを刺し貫け‼ 降臨せよ、FA−クリスタル・ゼロ・ランサー‼」

 

FA−クリスタル・ゼロ・ランサー

★6 水属性 戦士族

ATK 2200

DFE 1600

水属性レベル6モンスター×3

このカードは自分フィールド上の水属性ランク5のエクシーズモンスターの上にこのカードを重ねてエクシーズ召喚する事もできる

このカードの攻撃力は、このカードのエクシーズ素材の数×500ポイントアップする

フィールド上のこのカードが破壊される場合、代わりにこのカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事ができる

また、1ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる

相手フィールド上の全てのモンスターの効果をターン終了時まで無効にする

 

光の中からクリスタル・ゼロが降り立つ。

その手には黒紫の一振りの槍と盾が握られている。

「フルアーマー…」

あの槍はブラック・レイ・ランサーの槍にとてもよく似ている。

「クリスタル・ゼロ・ランサーはORUの数だけ攻撃力をアップする。今のユニットの数は2つ。よって、レミューリアの効果も合わせて、攻撃力は1200アップ」

 

FA−クリスタル・ゼロ・ランサー 2200→3400

 

「だが、それがどうした? 俺のフィールドには無敵の双子悪魔がいる‼ 自分で自分の首を締めただけだ」

「少し黙りなさい。私が何も考えずに召喚するわけがないでしょう? クリスタル・ゼロ・ランサーの効果発動‼ ORUを1つ使い、相手フィールドのモンスター効果をエンドフェイズまで無効にする‼」

「なんだと⁉」

クリスタル・ゼロ・ランサーが槍を振るうと切っ先から槍の色と同じ、黒紫の閃光がほとばしり、男のフィールドを襲った。

2体のモンスターの身体からぶら下がっていた拷問器具が地面につく。

 

「これで貴方の悪魔のモンスター効果は無くなった。そして、エクシーズ・ユニットを発動」

 

エクシーズ・ユニット

装備魔法

エクシーズモンスターにのみ装備可能

装備モンスターの攻撃力は、装備モンスターのランク×200ポイントアップする

また、自分フィールド上の装備モンスターがエクシーズ素材を取り除いて効果を発動する場合、このカードは取り除くエクシーズ素材の1つとして扱う事ができる

 

「クリスタル・ゼロ・ランサーに装備します。クリスタル・ゼロ・ランサーのランクは6。よって1200ポイントアップ」

 

FA−クリスタル・ゼロ・ランサー 2900→4100

 

「こ、攻撃力4100…⁉」

「やりなさい、クリスタル・ゼロ・ランサー。ケインズ・デビルを打ち貫きなさい」

「ぐああああああ‼」

 

男 LP2900→0

 

クリスタル・ゼロ・ランサーの投げた槍は真っ直ぐにケインズ・デビルを貫き、その後ろにいた男にぶち当たった。

ブザーが璃緒の勝利を告げるとARビジョンが消えていく。

「お疲れ様、璃緒さん」

そう言いながら歩み寄ると璃緒はこちらへと身体ごと視線を向け、笑みを浮かべる。

 

「はじめましてかしらね、真月零君」

「はじめまして?」

「ええ。私はナンバーズの精霊…ということになるのかしら? クリスタル・ゼロの中にいるものです」

「クリスタル・ゼロの…中?」

オウム返しで聞くと俺の脳裏にあの遺跡での一件がよぎる。

「まさか…あの遺跡で見た」

「ご存知でしたか…あら?」

そう言うと璃緒は突然バランスを崩したのか倒れ始めた。

慌てて抱き止める。

 

「あら、優しいのね? あのベクターとは大違い」

「俺はベクターじゃない」

「ええ。貴方は真月零という1人の存在です。 …零君、きっと貴方はこれから辛い戦いに飛び込んでいくことになるでしょう」

「辛い戦い?」

「ええ。辛い出来事や、道半ばで倒れた仲間を置き去りにしなくてはならないこともあるやもしれません。 …ですが、決して心を折ることのないよう。貴方の行動が全てのものに等しく変化を与えてゆくことになります。いいですね?」

「あ、ああ…」

変化を与える、か。

肝に命じておこう。

 

「それともう1つ。『私』を決して放さないように。引っ張られるのではなく、きちんとリードしなさい」

「え? いっ…⁉」

「返事は?」

「は、はい」

そう言うと璃緒は笑みを浮かべ、すっと目を閉じると、再び目が開かれた。

璃緒の纏う雰囲気ががらっと変化する。

 

「え? ちょ、な、なん…⁉」

ああ、少しテンパっているが俺の知ってる璃緒さんだ。

そう考えながら俺はそのまま璃緒を抱きしめた。

 

「れ、零君⁉」

耳元で璃緒が騒いでいるが、とりあえず無視をする。

 

放すな、かーー

「絶対に放さないさ」

「零君⁉ は、放さないのは嬉しいけれど、でも今は人もいるしーー」

俺の声に反応した璃緒がそんなことを言っていると

 

「あ…ああ…」

突然、目の前で倒れた男がうわ言をあげる。

同時に浮き上がったナンバーズが紅い光を放つと、そのまま男を取り込み、何処かへと飛んでいった。

 

「な、なんだったんだ…⁉」

今の光はーー

 

「…凌牙?」

突然璃緒が俺の腕の中で呟く。

「璃緒さん?」

「凌牙に…凌牙に黒い牙が迫っている…‼」

それだけ言うと俺の腕から抜け出し、走り出した。

 

「璃緒さん‼」

俺も慌てて後を追う。

シャークがどうしたっていうんだ…⁉




いかがでしたでしょうか?

そんなわけで、もう1話だけ続くんじゃよ。
シャークに一体何が…⁉(読めてる)
それでは。

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