ベクター?誰それ、俺真月   作:野球男

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こんにちは。
前回の続き+αとなっております。

奴のキャラ付けはこんなもんでいいんだろうか…

それでは、どうぞ。


第112話

「真月」

 

俺の名前を呼ぶとシャークは振り向いた。

「俺は俺だ。他の誰でもねぇ、神代凌牙だ。そう言っただろ? 真月」

そう言うとシャークは斜に構えたような笑みを浮かべた。

 

「…だったな」

そう言うと俺は心中でホッと息を吐いた。

さっきの男の言葉を信じなかったのか、それとも何か考えがあるのか…まあ、「お前はもう死んでいる」なんて突然言われたところで、信じるわけがないか。

ここは世紀末でも無ければ、やられ専門のモヒカンがいるわけでもない。

 

「…で、今のは何だったんだ」

話に着いてこれなかったのか、Ⅳが俺達にそういっ話しかけてくる。

まあ、当たり前か。

今の話に着いてこれそうなのはアストラルくらいだ。

「なんでもねぇよ」

そう言うとシャークはチラリと葉が生い茂る柱を見ると、近付き払いのけた。

そこには点を中心にサメの上下の歯の型があり、下の歯のさらに下には筆を払ったようなマークがある。

 

「そのマークは…?」

「…どうやら、あの遺跡の記憶は本物だったらしいな。真月、俺の前世は本当に王だったみたいだ」

まさか、そのマークの確認に…?

 

「もうここでやることはない。帰るぞ」

そう言うとシャークは歩き出した。

「おい、凌牙」

置いてけぼりのⅣはシャークを追って歩き出す。

 

「話せよ、凌牙。今のは何だったんだ」

「なんでもねぇ。ただの俺の家の家紋の話だ」

そんなことを話ながら2人はズンズン進んでいく。

 

 

 

「………」

最初のナンバーズの遺跡。

そこにやって来た私はペガサスと騎士の伝承を洗い直してみた。

ナッシューー王に仕えた騎士の話。

あの時と違い、落ち着いて読み返すことができるが…読めば読む程に私の内に蘇る記憶と合致していく。

 

もはや疑いようもない。

私はかつてーーバリアンの戦士となる以前、人間だった。

 

だが、やはり腑に落ちない。

 

人間だった頃の私がおり、ナッシュがいて…何故裏切りが現れる?

あの遺跡で覗き見たナンバーズのーーそして、神代凌牙と璃緒の記憶を見る限り、ナッシュは配下が身を呈して守ろうとする程に慕われている。

…わからない。

もしやと思い、遺跡に来たがそれについての記述は無いようだ。

このまま徐々に記憶が戻るのを待つしかないのか…?

 

 

『…お待ちしておりました、我が主よ』

移動しているうちに広間に辿り着くと、唐突にそんな声が聞こえる。

 

「誰だ⁉」

私がそうやって声を上げると光が集まっていき、やがてそれは以前見たことのある男の姿になった。

「お前は…‼」

たしか、九十九遊馬とデュエルをしたナンバーズの守護者。

 

「お待ちしておりました」

「待っていた、だと…?」

そういえば、たしかコイツは遺跡の伝承のペガサス自身…だったか。

「…残念だが、私はお前の待ち人ではない。お前の知る騎士ドルべは死んだ。ここにいるのはバリアンのドルべだ」

「ですが、貴方は紛れもなく私と共に幾たびの戦場を駆け抜けた」

私の言葉に意思の強い眼光で言葉を発する。

どうやら言い分を改めるつもりはないらしい。

 

…まあ、いい。この男にそうやって言われて心地良く感じている私がいるのも事実。

「1つ聞きたい」

「なんでしょう」

「お前は私の最期を見たか?」

そう言うと男は少し驚いた顔をした。

どうやら、ようやく正解に辿り着けたらしい。

 

「…はい」

「教えてくれ。私はどのようにして逝ったのだ」

「…覚悟はおありですか?」

「?」

「私は貴方に最期を見せることができる。しかし、それは貴方の目で貴方の死ぬ瞬間を見るということ」

「構わない。その程度は覚悟している」

私は私自身の最期を見なければならない。

例えそれがどのような結末であろうとも、それを知らずして私は先へ進むことができない。

 

「…わかりました。では」

そう言うと男から眩い光が溢れ出し、私の視界を白で塗り潰した。

 

 

「ここは…?」

私の視界には倒れたままのペガサスとその前に立つ満身創痍の銀の鎧を着こんだ男ーーかつての私、そしてその前に立ち剣を構える3人の騎士の姿があった。

伝承通り、騎士の最期の場面というわけだ。

問題はこの後のことだ。

一体何が…

 

「…クククッ…」

「‼ 誰だ‼」

騎士が見た先には1人のフード姿の人物がいた。

 

「貴様にはバリアン世界の住人にとなり、我が復活の為の手駒となってもらおう」

「何を…⁉」

そう言って騎士がたじろぐとフードの人物が闇色の炎のようなものを纏わせ、姿が消えたと思うと悪の化身のような存在が現れた。

いや、あの存在は…⁉

 

「なっ…⁉」

騎士が突然の姿の変貌に驚くとほぼ同時に男の身体から1枚のカードが落ちる。

あのカードは…ナンバーズ…か?

「受け取るがいい‼」

そう言うと悪の化身ーードン・サウザンドは1枚のカードにバリアンの力を込めると騎士に向けて投げた。

「ぐあっ…⁉」

騎士にそのカードがズブズブと入り込んでいった。

騎士はそのまま生き耐えてしまったのかパタリと倒れてしまう。

と、同時に周囲が一瞬暗くなり、広間の風景が視界に広がる。

 

 

「今のは…」

私の最期の姿なのだとしたら、私が死んだ理由は正しく我らバリアンの神、ドン・サウザンドによるものが原因…なのか…?

つまり、私はドン・サウザンドに…?

「お気を確かに」

男が倒れそうになった私を支える。

 

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ…」

今のが間違いなく私の最期なのだとしたら…我らバリアン七皇はドン・サウザンドの…奴の手駒ということになる。

こうしてはいられない…‼

 

「伝えなくては…この恐ろしい事実を…‼」

そう言うと私は立ち上がり、空間に穴を開くと男に注意を向けず、バリアン世界に向けて飛び立った。

 

誰に話すべきか。

ミザエル…ダメだ。ミザエルはそもそも我らが人であったことを信じてはいない。

ギラグとアリトも復活してからというもの、何処か人が変わったようにも見える。

となると、残るは…

 

「ベクター…」

奴しかいない…‼

ベクターは自尊心が強い。ドン・サウザンドによる生前の書き換えが行われていることを知れば、恐らく怒り狂うだろう。

力を借りることはできなくとも、同じ方向を向いて戦うことはできるはずだ。

…正直なところ、手を借りたい相手ではないが、しかし贅沢を言える状況でもない。

急がなくては…‼




いかがでしたでしょうか? 推奨BGM:勇敢なるデュエリスト(遊馬のテーマ)

遺跡のナンバーズの力を借りて人間だった頃の記憶を取り戻したドルべ。
だが、その記憶はドン・サウザンドに殺されたという恐ろしい事実だった。
それを知ったドルべは単身、ベクターの下へと向かい、協力を取り付けようとする。

「ベクター‼ 我々はドン・サウザンドに騙されている‼」

「何ィ?」

「共に戦おう‼ ベクター‼」

次回 砕け散る白き盾

「ナッシュ、非力な私を許してくれ…」

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